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海洋冒険小説の家
(4)空飛ぶ船「かぐやひめ丸」
(4)
その籠の上にはとてつもなく大きい丸いものが浮かんでおり、ゴーッ、ゴーッという不気味な音がした。それは、巨大な熱気球だった。籠に三人を乗せると、ゆっくり速度をあげて湖の方へ飛んでいった。城の者たちは、ずーっと、それを眺めていた。暫くして大きな火が闇夜にパーッと光り広がった。そして爆発音が聞こえた。光で、湖面の全体が照らし出された。
そこに舟が一艘見えた。これがあの忍者どもの乗った舟に違いない。空の船から光が落とされ爆発する光景が何度となく繰り返された。光が広くまき散らされ、沢山の星屑のようにも見え、美しい見ものになった。とともに、湖の状況がよく見渡せた。やがて、舟の上に、火が達して爆発した。
籠の中に転がりこんだ助左衛門は、あちこちにある強盗提灯の灯の下で、足でなにかを踏んで、大きな風車(かざぐるま)をまわしている次郎丸を見つけた。
「次郎ではないか」
「はい」
「どうや、空を飛ぶ気分は?」
「気持ちいいです」
次郎丸は足踏み水車のような物を回し、どうも大きな発条(ぜんまい)を巻いており、風車は発条の力で動いているようである。時々休んで、また踏み始める。この「かぐやひめ丸」の推進力は風車の回転で得られているようだ。
他にあの、敦盛殿と若者が一人いた。実朝殿らしい。こちらを向いた顔を見て、助左衛門は驚いた。女ではないか。美しい顔だちで、きりっと引き締まっており、髪は男のように後ろで括り、女の弱さなど微塵も感じさせない、学者の風貌をしていた。眼が澄んでいて、冷静沈着さを感じさせる。その眼が助左衛門を見て、小さく会釈した。
「助左衛門殿、驚かれたか。ははははは。名前は徳子(とくこ)というのじゃが、本人は女名前では人に軽んじられるといって、実朝と名乗っておる。そしていつも男の衣装を着ておるが、わしにとっては、優れた弟子には変りはないのじゃ」
公秀殿は目を細めて、その仕事ぶりを満足そうに見ていた。
(続く)
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