海洋冒険小説の家

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(19)海賊衆が逃げたあとで・・・



 大二郎が一言言った。
 「さすが海賊やなあ、逃げっぷりの見事なこと。尻に帆をかけてんのんとちゃうか」
 阿智助が「うまい!」とほめた。
 助左衛門が回りを見渡して声をかけた。
 「怪我をしたものはいないか?」
 すぐ後ろから声がした。
 「たいしたけが人はいないようや。どうや。わしの備えは?」
 助左衛門は、権大納言の方を振り向いて、真面目な顔で、
 「感服つかまつり候」
 と答え、顔を見合わせた。そして、クックックッ、とだんだん顔が崩れて、二人は勝利を得た満足感から笑いが噴出した。公家衆も、堺の衆も、晴れ晴れとした顔やら、ほっとした顔やらしていた。
 「公家衆は強いなあ」
 秀五郎は今更ながら、感心するように言った。
 「腕も凄いけど、つこうてる刀が違う。備前の一文字という刀工のものや。権大納言殿のものは、一文字則宗作の名刀という話やで。これはよう切れる」
 六兵衛が解説した。
 「海戦では、たたっ斬るだけやから、力と体の敏捷さだけでええけど、しかし、公家衆の太刀さばきは見事やなあ」
 ほんまや、弓でも槍でも刀でも、見事なもんや。よう打毬で勝てたもんや」
 大二郎が言う。仁助が、
 「南海丸がいくさをする時は、こんな風にしてるんやろな」
 「ちゃう、ちゃう。もっと凄くて、大掛かりや。大砲もあるしな」
 首無しの吉兵衛が首を振って、その海戦のもの凄さを説明する。
 そうこうしているううちに、騒ぎを聞きつけて、村井長門守の配下の者が、駆けつけて来た。これで、海賊たちのことは、彼らにまかせた。倒れている賊たちは彼らが屋敷の外に運んでいった。そのうち、長門守自身がやってくるだろう。
                   (続く)


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