KUROうさぎの『コンサートを聴いて』

新国立「神々の黄昏」でトーキョーリングは終演

鑑賞日：2010年3月21日(日)14:00開演入場料：￥7,560 C席４階（R2列）主催：新国立劇場リヒャルト・ワーグナー作曲『ニーべルングの指環』第３日楽劇「神々の黄昏」（全３幕　ドイツ語上演／字幕付）会場：新国立劇場・オペラ劇場指　揮：ダン・エッティンガー管弦楽：東京フィルハーモニー交響楽団合　唱：新国立劇場合唱団＜初演スタッフ＞演　出：キース・ウォーナー装置・衣裳：デヴィッド・フィールディング照　明：ヴォルフガング・ゲッベル出演：ジークフリート：クリスティアン・フランツブリュンヒルデ：イレーネ・テオリンアルベリヒ　　：島村武男グンター　　　：アレクサンダー・マルコ＝ブルメスターハーゲン　　　：ダニエル・スメギグートルーネ　：横山恵子ヴァルトラウテ：カティア・リッティングヴォークリンデ：平井香織ヴェルグンデ　：池田香織フロスヒルデ　：大林智子第一のノルン　：竹本節子第二のノルン　：清水華澄第三のノルン　：緑川まり感想：　2003年プレミエの再演。昨シーズンの「ラインの黄金」「ワルキューレ」、先月の「ジークフリート」に続く４作目に当たり、今回公演で『ニーべルングの指環』の終演となる。　強風や事故で交通機関が乱れる中、地下鉄を乗り継いでどうにか開演時間に間に合い、休憩含め６時間越えの長丁場に挑んだ。　第１幕、序奏ともに舞台底から大きな正方30面体（立方体６面に同じ大きさの立方体を付けたもの。海岸のコンクリートブロックにも同様形状有り）が現れ舞台上部に消え、続いて巨大な映画フィルムリールと複数の赤い矢印が現れ、３人のノルンが登場。フィルムを見ながら過去と未来を語る。運命の綱が切れた所で、ジークフリートとブリュンヒルデが小屋のベット上に登場。　ジークフリートの胸には「８」の文字（エイトマン？）、ブリュンヒルデの胸には「Ｓ」のスーパーマンマークのシャツを着ている。ブリュンヒルデがジークフリートにすべての叡智を与えて英雄に育て上げ、自らは無力な女となったと歌っているのでその印か。　ジークフリートはジグソーパズル片の指環をブリュンヒルデに渡し、馬の玩具を緑色ボール紙の鞄に入れ修行へ旅立つ。　幕が下がり、鳥の彫刻のようなものが映し出され？と思っていると、「CIBICH」表示されギービヒ家であることが判る。床が左右に動き、グンター、ハーゲン、ジークフリートが登場。左右のソファーにノルンとラインの乙女が３人ずつ座っていたのは、神の世界から覧ているとのことか。ハーゲンの策略でシークフリートが記憶喪失＆惚れ薬を入れた酒を飲んだ途端、妹のグートルーネを愛し、グンターと兄弟の契りを結び（互いの血を注射器で抜き取って酒に混ぜて飲む）、グンターの妻にしようとブリュンヒルデを連れに行くのだが、ブリュンヒルデが与えた叡智はどうなったのか？　ジークフリートは魔法の仮面をかぶりグンターに姿を変えブリュンヒルデを捉える場面では、幽体離脱のように仮面をかぶったジークフリートが手前に座り歌い、無言のグンターが動くことで表現していた。　ここまでで既に２時間を超え、お尻が痛くなってきた。　休憩を挟んで第２幕。幕の前のギービヒ家でソファに座った、アルベリヒとハーゲン父子が登場。アルベリヒは酸素マスクを付け瀕死の状態。二人のやり取り途中、ハーゲンが酸素ボンベを止め、枕でアルベリヒを窒息死させてしまう。ハーゲンが結婚式の準備を化学薬品工場の作業着の様な衣装の家来達に命ずる所で、初めて合唱が登場し盛り上がる。その後のやり取りでシークフリートの心変わりで恨みに思ったブリュンヒルデが背中が弱点であることをハーゲンに教えてしまうのは？　第３幕はきらきら光る映像を床に映しライン河畔を表現。ラインの乙女達は上下白のつなぎのタイツ姿、ふくよかな体型がそのまま出てしまうのはご愛敬。ジークフリートがハーゲンに誓いの矢で背中を刺され、正気に戻り、ブリュンヒルデの名を呼びながら壮大な音楽で息絶える。　ギービヒ家でジークフリートの火葬を行おうとする場面で指環を奪い合ったハーゲンがグンターを倒す。ブリュンヒルデは自分こそジークフリートの妻なのだと名乗り、指環をはめ、馬（の玩具）とともに火葬の小屋の中に入る。人々は倒れ、その舞台は下と後に下がり、大きなスクリーンが登場し、映し出されたジグソーパズルの空き部分に指環のピースが入り完成。そして舞台奥から人々が表れ、映写機で上映しようとする所で幕。　前３作と同様に既に新国立HPに写真掲載されている。　管弦楽は前回同様ハープ４台、コントラバス６台、ワーグナーチューバも入った大管弦楽を指揮者ダン・エッティンガーがコントロールし、ダイナミックレンジの広い壮大な音楽を表現していた。　歌手陣も前作同様で、ジークフリート役クリスティアン・フランツ、ブリュンヒルデ役イレーネ・テオリンが強弱音とも素晴らしかった。ハーゲン役ダニエル・スメギも良く響く低音で存在感があった。その他歌手陣も揃っており、初めて登場した合唱も良かった。　昨年２月から１年掛けてトーキョーリング４作を全てを覧ることが出来訳だが、斬新な演出だったので初演時は批判もあったようだが、色々な意味掛けが統一して仕掛けられており、途中眠ることなく最後まで興味を持って観ることが出来たのは演出の功績でしょう。　これら大掛かりな舞台装置を保管するには多大な費用が掛かり、今後廃棄されるらしいとのことで、トーキョーリングは今回で見納めらしく、残念。　今後統一されたリングを観るには、バイロイトまで出かけなければならないのか？End