お霊参り2

お霊参り2

加藤一の著書




加藤一



「町の散髪屋さん」
ある男性が行きつけの散髪屋さんへ行った時のこと。
その日は体が重く、だるくて、店のクーラーで涼もうと思っていた。
いつもはニコニコを迎えてくれる老夫婦が、ジロジロと男性を見ている。
『やれやれ、どこで何をしてきたのか』
爺さんは、見たこともないしかめっ面で男性を一番奥の椅子に座らせると
新しい上着に着替えて、神棚へ向かった。
老夫婦が並んで拍手を打ち、爺さんが朗々と声を張り上げた。
ほたら祓うか、とポツリと言うとバリカンを手にした。
『爺ちゃん、丸刈りは勘弁してよ』
『黙てーぃ!』
丸刈りを終えると、両手を組んで頭、両肩、背中と打ち始めた。
『よし!何とかなった』
ふぅと力が抜けた男性が鏡を見て、悲鳴を上げそうになった。
自分の背中から黒い影のような物が出て来て、やがて消えた。
すると、今まで重かった体がスーっと軽くなった。
『あんまり妙な場所で遊ぶんじゃねぇぞ』
爺さんは朗らかに笑い、汗を拭った。



「バイト」
フリーター時代に塗装屋でバイトしていた男性の体験。
親方から筋が良いと褒められ、一時は一生の仕事にしようかと思ったこともあった。
そんなある日、あるアパートの仕事が入った。
現場に行くと、紙が壁一面に張られている・・・お札だ。
塗装をする前に、塗装面をサンダー(ヤスリ)で綺麗にしなくてはならない。
サンダーを使い、表面を削ろうとするが何箇所かが、削れない。
親方に、その話をすると『トラックから白い道具箱を持って来い』と言われた。
白い道具箱の中には粗塩が入っていた。
親方は粗塩を手に取ると、壁にこすり付けていく。
すると、綺麗にお札が落ちた。。
『サンダーで落ちないのに、粗塩でおちるんじゃホンモノだ』
その日、家に帰ると高熱と悪寒に襲われ、そのまま数日床に伏した。

それがきっかけで、そのバイトを辞めた。



「セクハラ」
ある女性の体験。
会社帰り、突如、抱きつかれた。
『ひえ~』と声を上げると
『驚いた?』と聞き慣れた声。
取引先の男性だった。
『これって、セクハラですよ』と言うと
『ごめんごめん、急ぐからまたね!』
豪快に笑いながら去って行った。

翌日、同僚にその話をした。
すると、その取引先の男性は先月に亡くなっていた・・・・
『またね!』と言われたことを思い出し、セクハラより困る。




「友達」
情報処理部門でセキュリティを担当する彼女には
中学校からの友達がいるという・・・
コックリさんがもとで、一人ぼっちになってしまった彼女が
友達にしたのが、他ならぬコックリさん。
さびしくなると、10円玉で「オジュウ」と名づけたコックリさんを
呼び出していたという。
今はパソコンの壁紙とマウスポインターで手軽に友達と会えるんだとか。



「てんぷら」
台所で母が夕飯の支度をしていた。
その日の晩ご飯はてんぷらだった。
『あー!!』
母が大声を出した。
『ジュ!!』ひときわ大きな音。
火傷でもいたのかと思い、台所へ駆け込む。
<ピチピチピチピチピチ>
何かが勢い良く足元を通過して行く。
それは、台所を抜け、居間に入り狂ったように暴れる。
やがて、それは動かなくなった。
父が帰り、油にまみれた『それ』を摘み上げると
まぎれもなく、こんがり揚がった海老の天ぷらだった。



「甘味」
彼氏と八王子城址へ肝試しへ行った女性の体験。
その帰り道、彼氏とファミレスへ寄るとたまらなく
甘い物が食べたくなった。
ダイエット中なので必死に我慢・・・。
その夜、着物を着たたくさんの女性が世話をして
くれる夢を見たが、お饅頭をすすめられた時は
夢の中なのに必死で我慢した。
目覚めると、甘い物がたまらなく食べたくなり
我慢できずにファミレスでデザートを3品平らげた。
帰宅後、寝込んでしまった夢の中で・・・
たくさんの着物を着た女性が喜んでいた。
『ありがとうございました』
『おいしかった』と涙を流していた・・・・。



「壁紙」
こっくりさんソフトを使っていた人の話。
パソコンのマウスポインターが10円玉の役目を果たして
質問に答えてくれるという。
ある日、いつものように『お帰りください』と言うと
『いいえ』と答えが出て帰ってくれない。
何度やっても『いいえ』と出るので、無理やり『はい』へ
動かしてお帰りいただいた。
『ふ~』と安心のため息をつくと、メールが来ていることに
気が付いた。
『あれ?』自分からメールなんておかしいな~と思いながら
開封すると『かってにかえすな』・・・・
それ以来、ソフトも削除して、壁紙も削除したが、時々
マウスポインターが勝手に動くという。
でも、パソコンを買い換える余裕はないらしい・・・



「家」
ある投稿者から、ある理由によって日本一強い神社のお守りを手に入れたいと
著者へ相談が入る。日本一強い神社の話は平山夢明氏が執筆したため
氏へ問い合わせるが、もう忘れてしまったとのことだった。
そこで『ある理由』というのを聞いてみると・・・・
学生時代の友人が結婚して、資産家である夫の実家へ入ってからというもの、不幸続き。
実家の税金滞納を肩代わりさせられた他、義理の兄の借金までも肩代わり・・・・
そして子供たちは原因不明の病気で入院してしまう始末。
友人自身は、立派な家と資産を子に継がせたいという一心で不幸にしがみついていた。
姑は姑で先祖を大事にしないばかりか、義理の母を死ぬまで小屋へ追いやっていた。
そのため、今の不幸は先祖霊のためではないかと思い、日本一のお守りを友人に
渡したかったとのこと。
一度、入院した友人の子供の見舞いに行くと
『おばさん、この病院お化けが出るの。でも、家よりはよっぽどまし』
その後、友人は夫と離婚して家を出た。
それから数年後、以前と変わらない友人と会って、安心したとのこと。



「2008年3月4日にメールで送られてきた話」
ある高校生の男子がアルバイトで叔父の仕事を手伝っていた。
昼も近くなったことから、叔父が昼飯をコンビニで買ってくると言う。
暇だった彼は、何気なく持っていた携帯電話でトラックの助手席周りを
撮影してみた。

撮影してみては映像を確認するということを何度かしていたのだが・・・
どうも最初に撮った映像にだけ、居るはずのない女性の顔が映っている。


問題の動画は こちら
18~20秒目と23~27秒目で映っているサイドミラーの右下に
女性の顔が映っています。
MP4ファイルなので、リアルプレイヤー等でご覧ください。



「地下住居」
定年後は、沖縄で暮らすために家まで購入していた男性の体験。
ある時、出張で沖縄へ行くことになった。
出張のついでに、購入した家に泊まって草むしりでもしようと思っていた。
家に到着すると、近くを散歩しよう歩き出す。
前から気になっていた防空壕へと足が向く。
天然の洞窟を利用して、太平洋戦争時は数百人もの人たちが避難していたとのこと。
現在は史跡として、数百円払えば誰でも入場できる。
入り口は質素なものだった。
受付の老人に入場料を払うと、懐中電灯を渡され
『中は暗いので、気をつけてください』
洞窟の入り口から中に入ると、大人3人が並んで通れるほどの道をを奥へと進んだ。
すると、少し広い空間に出た。
そこには、鍋や釜の生活用品が散乱しており、当時より手付かずの状態のようだ。
そう思った途端、周囲に数百人の気配がしてきた。
息遣い、衣擦れ、足音、焦げ臭いにおい・・・
『取り殺される』と思い、体を動かそうとするが金縛りになったように動けない。
それでも渾身の力を振り絞り、這うようにして洞窟を出ると体から汗が噴出していた。
受付を出ようとすると、彼を見た老人が
『そんな真っ青な顔をしてどうしたんですか。それに頭から水をかぶったように
びっしょりだ』
そう言いながら、その老人には驚いた様子が全くなかった。



「仲間」
毎朝、ジョギングをしているという方の体験。
5時に起きて30分ほど走る。
出会う顔ぶれはほとんど決まっている。
それと、姿のない足音に出会うという。
1度、足音にぶつかって、いつの間に脱げたのか
ジョギングシューズが目の前から足音と共に
走り去っていったそうだ。
未だ、走り去ったジョギングシューズは見つからないとのこと。



「近所迷惑」
深夜、一人暮らしのアパートで横になりながら歌っていたら
所狭しと天井いっぱいに張り付いた数十個の顔に
『しーー』とたしなめられた。
『「しーー』に、人差し指は付かなかったとのこと。



「自慢の心霊写真」
ある女性が里帰りをした時に行った墓参りで取った写真。
心霊写真ということで『あなたのしらない世界』へ応募。
見事、番組で採用され、出演していた霊能者には
『たいへんに良い写真』
と太鼓判を押されたので大事に保管していた。
数年後、彼女の店に霊能力があるという人が来た。
そこで『たいへんに良い写真』と言われた自慢の心霊写真を見せようとすると
写真の入った封筒を見せただけで『恐ろしい』と言いながら帰ってしまったという話。



「やまめ」
ある男性が野草を採るために山に入った。
かなり歩いた場所でとても立派な1本のクヌギの木を見つけた。
夏になると、クワガタやカブトムシがこの木に群がるのだろうな~と思っていると
目の前の枝に蛇の尻尾が見えた。
マムシだと危ないな~と思いながら見ていると、今までに見たことのない蛇の模様。
そして、蛇が鎌首を上げると・・・そこには平安時代を思わせる女の顔があった。
その女の顔が何か珍しい物でも見るように、こちらを眺めている。
どれくらいにらめっこをしていた後だろうか、女が言った。
『あんたぁ~、ここきたら~、あかんよぉ~』
馴れ馴れしい、京都訛りの若い女の声だった。
思わず腰を抜かし這うようにして、その場を逃げ出した。
後日、山に詳しい友人に話すと、それは山の女で「やまめ」というらしい。
魚のやまめとは別ものとのこと。



「狩猟」
昭和初期の尋常小学校でのこと。
何をしでかしたのかは憶えていないとのことですが
クラスの男子と校舎の外の川の前に立たされた。
教室の前なので、教室から丸見えの場所。
『おまえが悪い』だの『おまえのせいだ』だの
言い争っているうちに、ふいに大人の背丈の手の長い
ものすごく猫背の『何か』がクラスの男子を後ろから
羽交い締めにしたかと思うと、そのまま川に飛び込んだ。
『ああああああああああ~~~』
大声を上げると教師や生徒が集まってきた。
事の顛末を告げると、警察、消防が捜索したが、結局
男子は見つからなかった・・・



「握手会」
あるおばあさんがシンガポールのホテルに宿泊した時のこと。
寝ていると天井から何本もの腕が下りてくる。
その手を見た瞬間に「兵隊さん」と思った。
咄嗟に、その手と握手。
片っ端から握手をすると、手は満足したのかスルスルと天井へ帰って行った。



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