お霊参り2

お霊参り2

木原浩勝&中山市朗の著書 





「病の間」
大学時代の同級生の実家のある部屋の話。
その部屋に泊まった人は、次々と自殺を遂げてしまうというもの。
夏休みに、その実家へ遊びに行った体験者が『病の間』をカメラで撮影。
映っていたのは、映るはずのないカメラをセットしていた自分・・・・
そして、真っ白な女。

数年後、実家を取り壊すことになり、その工事に立ち会った同級生が見たものは
『病の間』の礎石に使われていた、おびただしい墓石の数々だった。




「お姉さん」
ある女性が大学の卒論に苦労していた時のこと。
気分転換に、近くの喫茶店で資料の読み込みをしていた。
すると、彼女と同年代くらいの女性が現れ、他の席が空いているにも関わらず
相席したいと言ってきた。
前に座ると
『お姉さん、卒論をやっているんですよね。今の時期は大変ですね』
お姉さん?誰だろう?知っている顔ではないし・・・・
その後、一方的に自分の兄の話をして、話が終わると帰ると言う。
帰り際
『そうそう、私、アメリカへ留学に行くんです』

それから数年後、ある男性と恋に落ちて結婚することになった。
結婚式当日、新郎の父から、アメリカ留学から帰って来た娘との紹介があった。
彼からの話でしか知らない妹だったが、数年前に自分を『お姉さん』と言った女性と
気づいてびっくりした。
妹さんは『やっぱりお姉さんだった』と言って笑った。




「手紙」
結婚が決まって、部屋の中を整理していた女性の体験。
手紙の束を見つけ、懐かしさに浸っていると、未開封の手紙を発見。
それは、彼女が高校生の時に亡くなった母からのものだった。
切手が張ってあり、消印も押してある。
消印の日付は、母が亡くなって一年後のものだった。
開封して、中を見ると更に驚く内容だった・・・
『おめでとう、。もうすぐ結婚式ね。出席できなくてごめんなさい。
幸せになってね。 母より』




怪談之怪は、京極夏彦、木原浩勝、中山市朗、東魔雅夫の4人で結成された秘密結社。
目的は「怪談を聞き、語り、愉しむ」こと。
この4人と共に「怪談を聞き、語り、愉しむ」怪しい客人は、春風亭小朝、中島らも
山岸涼子、佐野史郎、山田誠二、岩井志摩子、露の五郎、高橋克彦、佐伯日菜子の9名。
ちょうど、怪談話を皆で披露するような構成になっている。
1回に1~2人の客人と共に、怪談之怪の面々が「怪談を聞き、語り、愉しむ」内容が
網羅されている。



木原浩勝


中山市朗



「白いセダンに乗っていると・・・・」
富士五湖道路、国道138号線。
もし、車でこの道を行くなら、白いセダンは避けた方が良いという・・・
あるドライバーがこの道を白いセダンで走っていた。
すると、バックミラーに赤い点が見えた。
それは見ている間に大きくなり、4人の血を流した女性の乗る軽自動車だとわかった。
ドライバーはかなりのスピードを出していたが、それをはるかに凌ぐスピードで追いつき
ドライバーを睨んだままの女性たちは
『こいつじゃない、こいつじゃない』と悔しい表情で追い越していった。




「狐の化身」
北海道出身の男性が学生時代に体験した話。
仲間数人と肝試しをすることになった。
山へ向かっている1本道の途中にある神社へ指定した物を置いてくるというもの。
彼の順番になってスタート。しばらく登っていくと、着物姿の女性が立っているのが見えた。
その横顔を見ると・・・綺麗だ。そして、山からハイカーの男性が降りてきた。
男性は着物女性に声を掛ける
「すみません、駅へ行くにはどう行けばいいのでしょうか?」
「この道をまっすぐ行けば30分くらいで着きますが、今の時間では2時間ほど駅で
待つことになりますから、よろしければうちに寄って行きませんか?」
女性が誘っていると確信した彼は、そーっと2人の後をついていった。
ほどなく大きな家があり、中からは男女の嬌声が聞こえてくる。
障子の窓を見つけると、指で穴を開けた・・・・
中では、二組の足が絡み合い、上下しながら移動していく。
「おい、おまえ何やってるんだ?」
彼の帰りが遅いので、仲間が様子を見に来た。
なんと、彼が覗いていたのは馬の尻の穴だった・・・・
落語で同じような話があるが、こんな恥ずかしい体験を作ってまで人にしないとのこと
(体験者談)



「つかんだもの」
千葉の九十九里へキャンプへ行った男性の体験。
真夜中の海は気持ちがいいということになり、夜の海で遊んでいた。
しばらくすると、足が立つような浅瀬の下から何者かに足をグイと引っ張られた。
『あ』と声を上げて足をバタつかせるが、足首をしっかりとつかまれており
引き込まれるのは時間の問題だった。
それでも、助かりたい一心で今度は手を動かして、つかまる物を探した。
すると、硬いしっかりとした物に手が届いた。
その瞬間に足首をつかんでいた物から開放され、皆が待つ浜辺まで誘導される形で
帰ることが出来た。
浜から上がってきた彼を見て、皆が大声で言う。
『お前、何を持っているんだ!』
彼がつかんでいたものは、卒塔婆だった・・・



「先祖の声」
男性の体験。
ある占い師にみてもらっていると
『あなた、ご先祖の墓参りに全く行ってないでしょ』
と言われてドキっとした。
そこで、30年ぶりくらいとなる墓参りに行くことにした。
妻と二人の子供を連れて、霊園に到着。
地図を見ながら、ご先祖の墓を探すがわからない・・・
挙句の果ては、霊園の中で道に迷ってしまった・・・・。
『一体、うちの墓はどこにあるのだろうね』と
奥さんと話をし始めると
(コッチダヨ)
と背後から聞こえた。
振り返ると、そこがご先祖の墓だった。




「山小屋の客」
ある男性が山のガイドを始めて間もない頃の話。
ある冬の登山のガイドをしていた時のこと。
山小屋に6人のパーティが3組泊まった。
外は雪。
しかし、吹雪とまでは行かない雪で明朝には止むだろうと話していた。
夜の9時頃、当然ながら山小屋の外は暗黒の世界。
風の音だけが鳴り響く・・・。
すると『ザク、ザク、ザク』という足音が聞こえてきた。
『誰か上がって来ましたね』
足音が山小屋の入り口前で止まると、外側の戸を開ける音がした。
そして、内側の戸の前まで足音が聞こえると、今度は体の雪を払う音がした。
山小屋の戸は室温を逃がさないために二重構造になっており、外側の戸を開けて
内側の戸まで進み、内側の戸を開けると室内に入れる仕組みになっている。
内側の戸付近にいた人が内側の戸を開けた・・・・
しかし、そこには誰もいない。
「確かに音がしましたよね」と話をしていると
また「ザク、ザク、ザク」という足音が外から聞こえて来た。
そして、先ほどと同じように山小屋の外側の戸の前で足音が止まると
戸を開ける音、内側の戸までの足音に続き、体の雪を払う音・・・・
今度こそ人がいるだろうと内側の戸を開けると、誰もいない。
気味が悪いと騒ぎ始めると、同行していたベテランガイドの男性が言った。

『こんな時間にやって来るのは人じゃないんだよ』



「ひとこと」
ある男子大学生の体験。もうすぐ卒業だというのに就職先が決まらない。
決まらないと焦っていたら、今度は卒業できるかどうかということになってきた。
悩み症の彼は悩んだが、悩んで解決するわけもなく・・・
どうにでもなれ~という気持ちから
『あ~、死んでしまいたい』
と一人暮らしのアパートの一室でつぶやいた・・・
すると、天井から
『じゃあ、いっしょに』・・・・
女性の声だったそう・・・・



「本堂の灯り」
お寺のお嬢さんから聞いた話。
彼女が8歳の時、深夜、トイレに起きると本堂に灯りが点いていた。
お父さんがお勤めをしているのかと思い、立ち止まると後ろから肩を叩かれた。
振り返るとお父さんがいた。
本堂に灯りが点いていることを告げると『おまえは寝なさい』と言い置いて
本堂へと向かった。
それから8年後、その時のことを聞かされた。
その日の昼、近くの廃寺から動物の無縁仏の墓石を引き取り、裏山へ奉ったと言う。
その夜の深夜、本堂に灯りが点いていたとのこと。彼女が知っているのはこれだけ。
お父さんが本堂へ向かうと、犬猫や鳥、鼠、狐、狸、馬、牛が頭に火の点いた蝋燭を
頭に立てて、びっしりと本堂を埋めつくしていた。
これは、お経を唱えてくれということだと思い、一心に読経した。
すると途中で、気配がスーッと昇っていくのがわかり、成仏してくれたと思ったとのこと。
『人間だけでなく、動物たちを鎮めるのも仏の道なんや』
お父さんは、そう言ったそうです。



「蔦」
あるお坊さんの体験。
彼は、小学生の時の事故がもとで両足が不自由なため義足を使用していた。
将来を悲観し、ずいぶんと無茶をしている彼を見ていた祖母の計らいで
お坊さんが修行するよう、説得に来るようになった。
高校生になった彼は『坊主の道もありかな』と思い、初めての修行へ出かけて行った。
修行僧は1列になって雪の積もった高野山へ登って行く・・・その殿を彼は歩いた。
しかし、義足と杖で歩く彼は皆からどんどんと遅れていく。やがて、見えなくなる。
そこで杖が滑り、彼は崖から転落した・・・が、なんとか蔦に手が届き
一命は取り留めたものの、両方の義足と杖は崖下へ落ちてしまっていた。
懸命に腕の力だけを頼りに、何時間も掛けて崖の上を目指した。
しかし、義足も杖も崖下へ落ちてしまったのだから、上がれても移動する手段がない。
そう思った彼は
『この世に仏なんていない』
と呟いた・・・
崖を登り切った彼がそこで見たものは、崖下へ落ちてしまったはずの義足と杖だった。
『仏はいる』



「いってきます」
女子大に通う姉と、中学に通う妹の二人暮らしの姉妹。
父は単身赴任、母は早くに亡くなったので額縁の中で笑っている。
妹はクラブ活動で朝が早いため、姉が起きる時間に家を出る。
玄関から大きな声で『いってきま~す』と聞こえる。
玄関から見れば、正面に母が笑っている。
それにしても、妹はいつからバカでかい声で『いってきます』を言うようになったのか。
近所に響き渡る大きい声、そして誰も答えてはくれないというのに・・・
ふと姉も玄関で靴を履いている時に、妹のように大きな声で挨拶してみる気になった。
『いってきます!!』
『いってらっしゃい』母の声だった・・・



「托鉢僧」
ある神社に、長旅をしてきたと思われる托鉢僧が1晩の宿を求めてきた。
旦那さんは「坊主がなんでわざわざ神社に泊まるのだ」と怒ったが
奥さんがとりなして托鉢僧へ食事を出した。
食事を終えた僧へ更に風呂を勧めた。
僧が風呂に入ってしばらくすると、何かあったのでは?と気になり出した。
そして、待てど暮らせど、一向に出てこない。
風呂の中で倒れていても困ると、業を煮やした旦那さんが風呂場へ見に行った。
風呂場の近くまで来ると「ピチャ、ピチャ、ピチャ」お湯の音がしているので
確かに入っているようだと思い、今度はそ~っと覗いてみた。
すると、そこに僧の姿はなく、代わりに大狸が縁に乗り「ピチャ、ピチャ、ピチャ」と
大きな尻尾を湯船に浮かし、動かしていた・・・・・・・・・・・
逃げた大狸が使った茶碗と箸が、今もその神社に保管されているとのこと。




「郵便物」
ある日、送られて来た郵便物には、なくした財布が入っていた。
1週間ほど前に、彼女とボーリング場の廃墟へ肝試しに行った先で
他のグループと喧嘩になり、その時に落としたものだった。
幸いなことに、自転車で通りかかったおじいさんが仲裁してくれて怪我もなかった。
お礼を言いたくて、差出人の住所と名前から電話番号を調べた。
そこは老人ホーム、電話をかけて事のいきさつとおじいさんの名前をいうが、信用しない。
1ヶ月前に亡くなっているので、いたずらと思われた様子。
埒が明かないので、現地へ向かった。
財布が送られて来た封筒を見せると、確かにおじいさんの筆跡だとのこと。
担当者は、恐る恐るおじいさんの写真を持ってきた。
『確かに、この人です。本当に亡くなっているのですか?』
騒ぎを聞きつけて、老人が集まってきた。
そんなバカな話があるか、という人がほとんどだったが、おじいさんと親しかったという人が
『それは、あの人に間違いない。彼は、ボーリングに勤務して、毎日、自転車で通っていた』

それからは、腹が立って喧嘩をしそうになるとおじいさんを思い出すと言う。
そうすると、気が休まるのだとか。
今も封筒は大切に保管してある。



「命日」
大学卒業が近づいた頃、友人に誘われて彼の実家へ行った男性の体験。
東北の山奥ながら彼の実家は旧家で、建物を見ると『お屋敷』というたたずまいだった。
到着すると、彼の家族が皆、歓迎してくれることはわかったが、何か雰囲気がおかしい。
友人に尋ねると『もう少ししたら話す』とのこと。
だが、二日目の夜が明けると、今までの雰囲気とは一変。
彼の親戚が全て集まってきたような大勢の人たちでが、飲めや歌えやの大宴会が
始まっていた。
彼の両親に見つかると『まあ、一杯』と酒をすすめられ、次は祖父、祖母・・・
目が覚めると布団の中だった。
二日酔いの重い頭を持ち上げて起き出すと、宴会はまだまだ続いているようだった。
席に戻ると、またまた酒を注がれる・・・たまらなく、外へ逃げ出した元へ友人が
追いかけて来た。
そして『理由を説明する』という。
すぐ近くの先祖代々の墓へ案内されると、墓の裏を見るように言われる。
墓の裏には没した日にちが刻まれえているが、ほとんどの墓石の日にちが3月27日に
なっていた。
酔いが一瞬で醒めたところで友人が説明をはじめた。
『大往生だったり、事故だったり、死因についてはバラバラだけど3月27日に死ぬ。
そのため3月28日になっても皆が無事だと、今年は誰も亡くならなかったことを祝い
親戚中が集まって1~2日宴会するんだ。まるで、呪いや祟りみたいだろう?』



「百円」
体験者が5歳の時の話。
近くに、ひいおばあちゃんが住んでいて、遊びに行くと百円くれるので毎日通っていた。
そして、ひいおばあちゃんの近くには、いつもひいおじいちゃんが無言で座っていた。
ある日、ひいおばあちゃんが亡くなった。悲しかった。
百円が欲しくて通ったわけではなく、ひいおばあちゃんが好きだったんだと気づいた。
ひいおばあちゃんの葬儀が終わった後に家に行ってみると、雨戸が閉められていた。
その雨戸を無理やり開けて中に入ると、座っているひいおじいちゃんに向かって懸命に
百円をねだった。
懸命さが功を奏し、ひいおじいちゃんが奥の間を往復した手には百円が握られていた。
それから毎日、ひいおじいちゃんから百円をもらって、駄菓子屋へ通った。
ある日、毎日どこへ行くのかと父に尋ねられた。
ひいおじいちゃんちと答えると、父の顔が曇って、誰も住んでいないと言われた。
ひいおじいちゃんがいるのに変なことを言う、と思い、無視して出かけた。
駄菓子を家に持って帰ると、父に詳しく説明させられ、2度と行くなと言われた。
しかし、次の日もひいおじいちゃんの家に行き、雨戸を開けようとしたが釘が
打ち付けてあって開かない。
家に帰ると父に抗議した。
すると、父にひいおじいちゃんの容貌を聞かれ、毎日見てきた姿を答えると・・・・
「ひいおじいちゃんは、おまえが生まれる、ずーっと前に死んだんだ」



琉球金剛院正一位法会師の肩書きを持つ男性が2日間に渡って
著者に語った体験談。
彼の仕事仲間の男性が婚約した。
婚約した女性は、彼も良く知る人物だった。
その頃、仕事仲間の男性をしきりに誘惑しよとしていた妖艶な双子姉妹がいた。
姉妹は、男性が婚約したことを知ると、婚約者の女性を執拗にいじめるようになる。
面と向かって罵倒、塩酸を掛けたり、犬の生首を彼女のアパート玄関に置いたりと・・・
エスカレートしていくいじめに耐えられなくなった彼女は自殺する。
彼女のアパートからは、姉妹を呪う書置きや藁人形が出てくる。
彼女の死後、二人の姉妹の周囲で奇妙な事件が続発、やがて被害は実家へも。
実家の父親の依頼で、琉球金剛院正一位法会師の彼が実家へと向かう。
大豪邸に住む双子姉妹家族。
それが、最後には全焼。生き残ったのは父親だけだった。
そして、なまなりさんと関わった琉球金剛院正一位法会師の彼も多くのものを失う。
なまなりさん、それは自殺した女性の怨念と、家系を呪うものの合体したもの。
怨念は、呪う相手を倒した後も、そこに居座り続ける・・・・




© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: