お霊参り2

お霊参り2

鳥飼誠


「つねる」
ある女性が20代前半の頃、仕事や人間関係で悩みに悩んでいた。
折角、熾烈な就職活動で入社した会社だったので
一生懸命頑張った・・・・が、もう限界だった。
『死のう』と思った。
病院で処方されている抗うつ剤を飲んで実行すれば、恐怖が
和らぐだろうと思い、一気に薬を口に入れて水で流し込もうとした。
”グイッ”
左頬を思い切り抓られた痛みで、薬も水も一気に吐き出した。
あっけにとられていたが、頬をつねられる感触から記憶が蘇った。
それは、幼かった頃に悪いことをすると頬を抓られた
大好きだった祖母のことだった。
もう、随分前に亡くなったはずなのだが・・・・
『おばあちゃん・・・』
吐いた薬と残った薬、全てを捨てた彼女は会社を辞めた。
今は、派遣社員として資格取得を目指しているんだとか。

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