おしゃれ手紙

2008.12.26
XML
テーマ: 愛しき人へ(903)
カテゴリ: 父の麦わら帽子

点滴の針をさした足をさすりながら、涙がこぼれた。
一週間前は、お粥食べたのに・・・。
退院できると思ったのに・・・。

年老いた、母を残して逝かないで・・・。
お父ちゃんには、まだまだ聞きたい事がいっぱいあるのに・・・。
私を残して逝かないで・・・。

父は、ハア、ハア、ハア、ハアと呼吸をしていた。
熱で、口が渇いてるだろうと思ったので、看護婦さんに

「肺炎ですから、水を飲ませると、どんなことになるか分りません。絶対、止めて下さい。」と言われた。

私は、こっそり、コットンに水を含ませ、父の口に含ませた。
2回、3回・・・。おいしそうに、水を飲む父を見て思った。
「喉が渇いたまま死んでいくのは、つらいだろう。
こうなったら、私の責任で、水を飲まそう。」

2日後は、蜜柑を持って行った。
皮を剥いて、蜜柑の袋に小さな穴をあけ、父の口に入れた。
多分、蜜柑は食べられないだろうと思ってたら、力なく吸い出した。
もう、やめにしとこうとすると、頭を持ち上げてきた。
妹と泣きながら笑った。
「ほんとに、食い意地がはってるんだから。この分やと、まだまだ生きるね。」


父の最期の食べ物は、蜜柑だった。
私が食べさせた、蜜柑だった。

今日は12月26日に、89歳で死んだ父の月命日だ。
蜜柑を食べながら、また涙がこぼれる。

・・・・・
●これは、2002年12月26日に書いたものです。
削除していたので、再度アップしておきます。
・・・・・・・・・・・・・・・
バナー
ボタン

◎自然と人間が仲良く暮らしていたころの話です。
★12月26日 *父の麦わら帽子:目次* UP
・・・・・・・・・・・・・





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2008.12.28 09:34:32 コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Favorite Blog

『疑史世界伝』 1 New! Mドングリさん

ジムの母親が肝っ玉… New! hoshiochiさん

映画『ドラキュラ Z… New! あけみ・さん

京都文化博物館 500… New! ぶどう^_^さん

サトシンの絵本楽し… New! maki5417さん

Keyword Search

▼キーワード検索

Calendar


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: