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2025.02.21

街道をゆく42：三浦半島：司馬遼太郎

テーマ：読書備忘録(1488)

カテゴリ：読書

内容紹介（「BOOK」データベースより）
横浜のホテルに宿泊して勤め人のように通いつつ取材する著者。
目的地は、ごく小さな場所ながら日本史を旋回させる舞台となった、三浦半島だ。
あまたの武者の血を吸った鎌倉の地を歩いては、現代の日本にとっても重要な要素である武士の起こりと「中世」の成立を考える。
横須賀では記念艦として保存されている戦艦「三笠」を再訪し、『坂の上の雲』取材時の「秘話」もつづる。

■目次（「BOOK」データベースより）■
武者どもの世／血と看経／時代の一典型／伊豆山権現／三浦大根と隼人瓜／三浦大介／房総の海／崖と海／“首都”の偉容／銀の猫〔ほか〕

■著者情報（「BOOK」データベースより）■
司馬遼太郎（シバリョウタロウ）
１９２３年、大阪府生まれ。
大阪外事専門学校（現・大阪大学外国語学部）蒙古科卒業。
６０年、『梟の城』で直木賞受賞。
７５年、芸術院恩賜賞受賞。
９３年、文化勲章受章。
９６年、死去。
主な作品に『国盗り物語』（菊池寛賞）、『世に棲む日日』（吉川英治文学賞）、『ひとびとの跫音』（読売文学賞）、『韃靼疾風録』（大佛次郎賞）などがある（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）

●公家は、後生のために殺生をおそれ、数世紀のあいだ、死刑さえ廃した。

●京そだちの頼朝は祖父や父のように多妻の気分が強かった。
この時代でも、零細な農民は一夫一妻で、ともにその田を守ってきた。
政子は、頼朝に対し、生涯、農夫のように一夫一妻であることを強制しつづけた。

●みうらは、奈良朝およびそれ以前は、御浦と表記されていた。
（略）その背景に水田地帯を擁していたからではないか。
日本の古代国家は、コメが穫れないと、その地は尊ばれない。

●ときに、文治二年（1186）八月十五日のことで、西行は六十九歳、頼朝は四十歳であった。
（略）頼朝がわざわざ速記者を置き、いやがる西行から徹夜でききだしたのは、歌のことではなく武芸のことだったという。
このあたりも、いかにも実質主義者めいた頼朝らしくていい。

*西行は、武士だった。

（略）
いわば在野の武人が、元近衛士官から武の文化をきいたことになる。

●小田原城が天正十八年（1590）七月五日に落城。
秀吉は間をおかずに会津にむかった。

その途中（略）鎌倉への道をとったらしいのである。

（略）やがて秀吉は、画像の中の頼朝に語りはじめた。

「およそ日本広しといえども、微賎より身をおこして天下を統一し、四海を掌（たなごころ）ににぎったのは、あんたと私だけだ」
「しかし、あなとは名門の流れを汲んでいる」、と秀吉は言い、
「そこへゆくと私は匹夫より出た、その点、私の方が上だと言いたいが、
されば孰（いずれ）れも」と面持ちをやわらげ、
「 あんたと私は、天下友達というべきだな 」
と、肖像の肩のあたりをほとほとたたき、大笑いして去ったという。
（略）秀吉の場合、この陽気さこそかれの七難をかくしていた。

●坂東人にとって、おのれか、おのれの祖父がその地を拓き、耕して農地にしたのである。
が、律令制によって私有は認められなかった。
その土地を公家や社寺に寄進し、みずからは下がって、その管理人になった。

●坂東のひとびとが頼朝に期待したのは、統治者というよりも（略）関東の地で恒常的におこっている農地の所有をめぐる争いの裁き人としてであった。

●「畠」という文字がおもしろい。
漢字でなく国字である。
日本では水田のことを田というが、漢字の本家の中国では、田の字は、稲作、麦作、または蔬菜（そさい）畑を区別しなかった。
ところが、日本の奈良朝はコメをもって基盤としたため、ハタケは軽んじた。
朝廷の書紀たちは、ハタケのことを、とくに「白田」と書いた。
白とはコメはゼロという意味である。
ついに二字が重なって、畠という字ができた。
（略）畑という字も国字である。

●北条高塒は、葛西ケ谷（かさいがやつ）に籠り、東勝寺で自害した。
このとき高塒に従って切腹した者は門葉（もんよう＝血液関係のある一族）だけで二八三人、あわせて八七〇人ほどだったという。
鎌倉で語るべきものの第一は、武士たちの説義というものだろう。