~おとのは ことのは~ のブログ

~おとのは ことのは~ のブログ

公演後記1~虔十公園林~ふるやのもり

【公演後記1 虔十公園林-ふるやのもり】 (2008年4月26日公演)
2008年4月26日(土) 18:30~
 江戸川区立中央図書館 4F 視聴覚ホール

同図書館企画・語り舞台「本を聴く」シリーズに出演。(無料)
「ふるやのもり」( 朗読 ・約15分)
 文/今江 祥智  絵/松山 文雄 ポプラ社刊
「虔十公園林 (けんじゅうこうえんりん) 朗読 ・約35分)
 作/宮沢賢治 


たくさんのご来場、ありがとうございました!
アンケートの回収率も予想以上! 本統に(←賢治のマネ)感謝感謝です!


ふるやのもり
【あらすじ】
むかしむかしの小さな家。そこでの怖いものといえば、
泥棒よりもオオカミよりもはるかに怖い「ふるやのもり」だった。その正体とは!? …
古家の漏り 、つまり雨漏りのこと。
泥棒とオオカミの単なる「勘違い」から巻き起こる壮大なるスペクタクル!…ではなく、
演じる側はいかにお客を笑わせるかというとっても楽しいお話。
我々も稽古の始めから、とても楽しかった作品です。
最初の段階でほぼ完成してしまうくらい笑いのツボがハッキリしているのですが、
それでも稽古中どんどんエスカレートしてしまい、
本番で自分らで笑ってしまわないように演出・アドリブをセーブしたくらいでした。
よし!この作品があればいつでも子供の会にも行けるゾ!

…待てよ。今の子どもに「雨漏り」が解るのか?

虔十公園林
【あらすじ】
虔十さんの「虔」は「つつしみ」、「つつましい」と読むそうです。
「敬虔(けいけん)なるクリスチャン」という言葉は馴染みがありますね。
名前にこの字をもらった虔十は、
働き者だけど、ひとには「バカだバカだ」と笑われていました。
そんな虔十が初めて両親にねだったものは、杉の木の苗700本。
小さくも立派な林になり、その杉並木には毎日子どもたちが集まります。
そして虔十の死後、村が街に変わっていっても、その林だけは、
そこで遊んだかつての子ども達が中心となって、「虔十公園林」として守られます。

「全くたれがかしこく、たれが賢くないかはわかりません。」

宮沢賢治について、僕はどうしても、「スバラシイ文章だ!」と、手放しに絶賛したくありません。
でも、 一言一句変えたくないほど、「不思議な魅力に満ちた文章」です。
あえて言えば、「賢治らしい!」と、胸が温かくなったり、ニヤッとしてしまう感覚でしょうか。
それで、てにおはまで正確にするため、芝居ではなく朗読にしました。

ひとことでも表現が違うと、「賢治らしさ」が薄れてしまう気がするのです。
ですから、我々の舞台を観て頂いたお客様にも、
是非もう一度、賢治の文章でこの作品に触れて頂きたいです。

あっけなさ過ぎる主人公の病死
賢治の時代、死はすぐそばにあったんでしょうね。
実際、賢治自身も享年37、気づいたら僕も追い越していました。
死を忌み嫌い すぎる 現代の風潮に、
賢治の意図しなかったメッセージを感じます。

 そして林は 虔十の居た時の通り

 雨が降っては

 すき徹る冷たい雫を

 みじかい草に ポタリポタリと落し

 お日さまが輝いては

 新らしい奇麗な空気を

 さはやかにはき出すのでした。


 まさに「賢治らしい」文章ですよね。
光合成 をこんなに詩的に言い表しています。



岩手「ぶどう座」とのシンクロニシティ
「賢治作品の舞台化は多くても、この作品はあんまりやってないだろう」
などと思っていたのも束の間、なんと知り合いの劇団がやってました(^^;)。
う~む、世間は狭い!(←ちょっと違うな)
そちらの虔十役・演出をなさった田中さんは、
この偶然のシンクロを喜んでくれて、すぐにビデオを送って頂きました。
東北訛りはもちろん、演出もずいぶん参考にさせて頂きました。
ありがとうございました!

東京でも感じられる
意識的・意図的ではありますが、東京は特に、街路樹がとても多い街です。
そう思って見ると、地方の街や幹線道路の街路樹の数は、東京ほどではない気がします。
「東京には空が無い」とチエコは言いましたが、その通り、やっぱり空は狭いです。
でも緑はというと、地方と比べてみても、実は思ったよりたくさんあるのです。
人工的でも、木々に触れる機会はたくさんあるのです。
「電車の乗り継ぎをいかに効率よくできるか」 も良いですが、
「一本早く行って待つか」 と思ってみるのも、遅刻しなくてすみますしね(←実感実感)。
時間に余裕を持って、まわりをちょっと見回してみると、
街路樹の一本から「森羅万象、みんな一緒に生きている」
なんて、哲学する機会がすぐそばにあるのです。


全く全く この公園林の杉の黒い立派な緑、さはやかな匂、

夏のすゞしい陰、月光色の芝生が

これから何千人の人たちに

本当のさいはひ(幸い)が何だかを教へるか

数へられませんでした。



アンケートのお話

江戸川での公演は3度目、アンケートは2回目です。
質問はこのホームページのアンケートにもあるQ3~5と同じ、
Q3●あなたはどんな場所で育ちましたか?
    (山 海 都会 農村 工業地帯いずれかに○)
Q4●それはどんな場所か、具体的にお願いします。
    (記述式)
Q5●心に響く音・なつかしい音・おちつく音はどんな音ですか?
    (記述式)
という欄があります。めずらしいアンケートでしょ?

こんな質問をする最初の意図は、
遠藤も私も、田舎の山の中で育ちましたので、
海育ち、都会育ちの方がどんな思い出をお持ちかを聞きたかったのです。
特に都会育ちの人の「ネオンの光が窓から差してこないと眠れない!」
というようなお話を聞きたかったのです(極端で恐縮です…)。

アンケートって、わりと面倒がられるでしょ?
ですから聞く側としてはあまり過度な期待をせずに楽しみにしている物なのですが、
回答を見て意外だったのは、前回と共通して、みなさんとても細かく書いてくれてる事です。
Q4での回答に、 「生まれは○○、中学までは○○で~」 や、
「前は海、後ろは酪農地帯で~」 など、
時間をかけて思い出してくれてる、時間をかけて書いてくれてるんだなぁと、嬉しくなります。

同じくQ4の回答で、若い人でなく50代後半の方でも
「コンクリートジャングル」 や、 「ビルの谷間」 というお答えがあったのに少し驚きました。
東京の、日本の発展はもうそんなに長きに渡るのですねぇ(←何者だオレは!)。
そしてその方のQ5のお答えは、 「電車の音」、「物売りの声」、「風鈴」、「夕方の雑踏」 など。

質問の意図のもうひとつは、
急き立てられるような現代の暮しの中で、
このアンケートを書く間だけでも、
いっとき子供時代を思い返してもらいたかったのです。

アンケート用紙をめくっているうちに
急に涙が溢れてきてしまいました。
短い文章の中にも、どの回答もみんな
「私が育った所は良い所だったんだよ~」
と、どこか得意げな誇らしさが感じられるのです。
背中の曲がったお婆ちゃんさえ胸を張ったような…。

重ねて、みなさんホントにありがとうございます!


生きとし生けるものと 共に生きている…
  畏怖の感情を持ち 一緒に生きている…

石牟礼道子さんの言葉をお借りしました。
今回の「虔十公演林」、私たちには、特に思い入れの深い作品でした。

とある私の知人が、私たちが「おとのはことのは」の活動を始めたのを知って
「それならコレをやって欲しい!」と言って紹介してくれたのがこのお話でした。


その女性は、私の故郷・熊本で、
今まさに「 虔十さん 」をやっています。
ジャン・ジオノの「木を植えた男」かもしれませんね。

どんぐりを拾い、発芽させ、苗を育てているのです。
彼女は苗を「森の赤ちゃん」と呼び、自分のことを「助産婦さん」と言っています。
そして、その赤ちゃんが巣立っていく・森へ還していくという
「どんぐりプラットホーム」 という活動をしています。


「人が変えてしまった森を 人の手で元に戻したい」
「もののけ姫」のアシタカのセリフにも似た言葉がありましたが、
そんな想いで、大変な作業を楽しんでいらっしゃいます。


やまんたろ かわんたろWEB通信 ホームページへ



© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: