ぽえむのーと

ぽえむのーと

第二章「距離」


だがその感情はあることをきっかけに大きく変わっていった・・・・いや、変わった・・・。

出会ってから1ヶ月と半月ぐらいたったころだろうか、彼女は大阪に住んでいて仕事のたびに東京へ行くため、その間はいつものように笑って話すことはできなくなる。今日もいつものように掲示板を半ば占領状態で話し込んでいた。その日は彼女の出発の日であり出発の2時間ほど前であった。
そのときに彼女がふと一言もらした、
「あと少しでしばらく会えなくなるよ、寂しいなぁ。」
正直「さすがアイドル」そう思っていた。男心をぐっとつかむ言葉回し、それに寂しがり屋なのは知っているだからこそ「寂しくなる」その一言が心を奪っていく。(それに掲示板では会っているというよりも話しているのが適切なのだが・・・)
「僕だって寂しいんだ、だからお互い様、本番は何も考えないでがんばっておいで。」
「うん!わかった!時間だし行ってくるネ!」
「ああ、がんばっておいで」
何事もなく、ただいつもとは終わり方の違うだけのいつもどおりの会話は終わった。ただなぜだろう、今日はこのままパソコンをつけていても何の意味もなくなったような気がした・・・・。
「疲れているんだな」
まるで自分に暗示をかけるかのようにして深い闇の中へと体を任せた。
ただこのまま朝目覚めることがなくても、彼女と話せなくなったとしても・・・・・。
それ以上は考えるのが怖かった。
その夜不思議な夢を見た。

暗い、真っ暗な空間の中にまぶしい光が一つ、とても温かく僕をそっと包み込んでくれた。光は真っ暗な空間の隅々にまで及んでいた。
空間の正体は真っ黒な部屋、光に映し出されるものもまた闇、手を伸ばせば届くはずの距離も限りのないものに思えた・・・・。
僕は光に包み込まれ、いつの間にかその光の中へ入っていた・・・・。
闇に包まれていた真っ黒な部屋は眩いばかりの真っ白な部屋と姿を変えた。
あたりを見渡せば一人の女の子がぽつんと、何かうれしげにそこに立っていた。
長い黒髪に白いワンピース姿で立っていた。
僕が一歩一歩近づくにつれてその子もまた同じように近づいてきた。

一歩・・・・一歩・・・・・。

ゆっくりと近づき残りはもうほとんどない、手を伸ばせば届きそうな距離だ、その子はそこで立ち止まりそして・・・ゆっくりと、顔を上げた・・・。
見覚えのある顔、忘れるはずの無いその顔、彼女は小さくしかしはっきりと、

「ケンヤ」

そう、それはまぎれも無い僕の名前、

「紗絵・・・・」

僕もまたポツリと呟いた・・・・。

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