映像四郎の百人斬り

映像四郎の百人斬り

「閑話」





 「地下鉄A子ちゃん」が、

 まだ、ただの「A子ちゃん」で、

 新宿2丁目で、会ってから、再度、会うまで、

 私は、「A子ちゃん」から、散々、「A子物語」を、

 電話で聞かされていた。



 その「物語」は、「多重人格」を中心とした、

 「A子ちゃん」の「漂流譚」だった。

 起源は、「近親相姦」による「トラウマ」に発するのだが、

 心理療法で、精神の海底を、漁っていくと、

 割と、よく出てくるのが、「近親相姦」なので、

 その真偽のほどは、わからないが、

 重要なのは、「A子ちゃん」自身が、

 それを、事実だとしていることだろう。

 その後、催眠療法により、

 人格の一元化が、計られることになる。

 「漂流譚」の中には、

 「変身譚」も含まれていたわけだ。

 よく考えると、それからというもの、

 会う人の中には、「変身譚」を抱えている人が、

 増えてきた気もする。

 人間なんらかの「変化」は、つき物なので、

 別に、珍しいことじゃないかもしれないが、

 「A子ちゃん」の場合は、私に対しての、

 存在の痕跡が、非常に、強い。

 決め付けはは、よくないし、

 単純な理解は、その人自身を、

 ありのままに見る目を、

 曇らせてしまう弊害もある。

 ただ、縦糸と横糸から形成されるテクストによって、

 自分にとっての腑に落ちる「意味」を暫定的にでも、

 はじき出し、思考の停止ではなく、

 思考の流れのドブ掃除として、

 もしくは、現時点での状況に対しての、

 「あやとり」として、記述している。

 現在、「A子ちゃん」は、元気に暮らしているが、

 やはり、日に日に、身体が、弱ってる気がして、

 生者に対してのコトバと、

 死者に対してのコトバは、

 明らかに、何かが、変容してしまうのではないだろうか、

 という気がして、

 気兼ねない、「A子ちゃん」を、

 自己記録として、メモっている(自己満足)。

 やつが、死ぬことは、おそらくないが。




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