映像四郎の百人斬り

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「池袋北上」





 とある用事のため、

 私は、池袋を、鉄路、北上した。

 おそらく、初めて乗るので、

 よくわからないが、

 ここで、いいんだろうという感じで、

 出発を待っていた。

 車内は、6割混みくらいで、

 人は、ラッシュほどではないが、

 じゃっかん、体温を、感じちゃう程度で、

 多少の余白を残してる。

 すると、女の子が、入ってきて、

 私に、聞いた。

 「○○って、とまるんですか?」

 路線図を見あげると、

 とまるようなので、

 とまると、いった。

 私は、立ったまま、本を読んでいた。

 場内アナウンスが、流れた。

 「今、なんていったんですか、

  ○○に、とまるって、いってたんですか」

 よほど、緊急な用事があるのだろう。

 切迫感を感じさせる。

 本を読んでたので、

 「聞いてなかったけど、○○には、

  とまりますよ」

 ようやく、落ち着いたようで、

 メールを、その子は、打ち始めた。

 列車が、動き出し、

 きゃ、という悲鳴とともに、

 通路を見ると、

 白い物体が、コロコロ転がっていく。

 転がってきた方向を見ると、

 お母さんと、小六くらいの女の子が、

 白い物体のほうを見ていた。

 白い物体は、直線で、転がり続けるかと思うや、

 急カーブを描いて、

 隣のスーツを着た、おじさんの足元に、

 とまった。

 拾いあげて、ふたりに、手渡して、

 あげると、母、少女ともに、

 「ありがとうございます」と、

 感謝してくれて、

 少女は、きゅっきゅと、

 即座に、ペットボトルに、

 白い蓋をはめた。

 目的の駅で、

 降りるときも、

 ふたりは、

 「ありがとうございます」と、

 積極的に、どこか、必死さもこめて、

 感謝してくれていた。

 おかしい。

 何かが、ちがう。

 最初の女の子といい、

 次の親子といい、

 私の、路線の人種とは、

 何かが、ちがう。

 この路線に、乗っている人たちには、

 壁がない。

 私の地元の東北の地方都市よりも、

 ここの人たちには、

 何故か、体温を感じる。

 ここって、本当に、

 東京?

 私の、活動範囲では、

 ちょっとした、やりとりでも、

 列車内や、通行中は、

 どこか、殺伐として感じるが、

 どうやら、ここの路線の人たちは、

 地面に、足のついたココロで、

 生活を送ってるようだ。

 プラットフォームの階段をあがると、

 「地下鉄A子ちゃん」が、待っている。

 もしかしたら、

 この土地なら、「地下鉄A子ちゃん」は、

 「トランス」しないんじゃないか。

 そして、的中した。

 「地下鉄A子ちゃん」は、

 「トランス」しなかった。

 したかったのに、できなかったのだ。


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