映像四郎の百人斬り

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家出青年「B1」




 ちょっと前、私は、家出青年を飼っていた。

 飼っていた、というと、語弊があるが、

 たまに、食費を恵んでやるだけのことだった。

 ※ホモではない、ただの、ダチとしてである。

 家出青年「B1」は、当時、27歳。

 それは、家出じゃなくて、「自立」もしくは、

 「独立」っていうんだよと、

 「右翼バンドマン」は、いったが、

 「B1」は、頑として、

 「家出」であることを、譲らなかった。

 「右翼バンドマン」との「打ち上げ」の、

 歌舞伎町のキャバクラで、仲間になったのが、

 かわいそうなことに、この後、これまた、仲間になる、

 キャバ嬢「コモモちゃん」の、毒牙にかかり、

 家出青年「B1」の「軍資金」のほとんど全ては、

 吸い上げられてしまったのであった。

 「家出」しながらも、歌舞伎町で、豪遊していた「B1」は、

 またたく間に、路頭に、迷える子羊と化してしまったのだ。

 昼間、電話がかかってくる。

 「おなか、へったよー」

 仕方ないので、夜の帰り道、新宿で、

 「B1」と待ち合わせをし、

 千円、恵んでやった。

 だが、彼は、卑屈になることもなく、

 逆に、ふてぶてしさも、かもしだしている。

 ダチの家を、点々としているらしい。

 しばらく、恵んでやる日が続いたのだが、

 「おれ、ホストやるっすよ」などといいつつ、

 結局は、キャバのボーイをやり始めた。

 自分では、いい男のつもりらしいが、

 実際は、ブ男なのだ。

 そのギャップが、切なくて、いじましいのだが、

 逆に、小憎らしくもある。

 そして、私は、「自称、家出青年」のドキュメントを、

 撮り始めた。



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