メキシカン・アメリカンな暮らし

メキシカン・アメリカンな暮らし

お義母さんとの出会い




カリフォルニア州から約20時間余りかけて、テキサス州のとある小さな小さな町にやっと辿り着いた。
その町の標識には、「ようこそ、★★★町へ 人口6000人」なんてことが書かれてあったが、どれくらい小さいかなんとなく想像して頂けると思う。
その町をもう少し先に進むと、ただっ広い農地の中にポツリと一軒だけ寂しそうにたたずんでいる彼の実家が見えてきたのだが、不自然に後塗りされたような家の壁の黄色いペイントがとても印象的であった。

その家の側には、柵で囲われた飼育小屋があり、そこにはやぎや鶏、豚などが数匹ずつ居たのだが、私の父が趣味で飼っていたやぎや鶏などとはどことなく違い、飼育されている生き物はすべて生活の糧というのがなんとなく感じられたほど、、、。
『へー、ここで育ったのか。』なんだか彼の子供時代を少し垣間見れた様な気がした。

『緊張してる?』、と夫が訊いてきた。
彼の家族は写真でしか見たこともないので、緊張というよりも、寧ろ、写真の世界が現実に変わることに対してのわくわく感というものの方が強かったのだが、さすがに、夫が車を家の前に止め、二人でドアの方へ歩いていった瞬間には緊張感も増してきた。
ドアの方に辿り着く頃には、深呼吸が必要な位緊張したものだが、夫がドアノブに手をかけようとするその瞬間に、突然ドアが内側から開き、『@#$%#^&*$$@*(%^#$%!!(←感動の余りかなり早口なスペイン語)』などと言いながら夫にしがみついてきたのは彼の母親であった。
そして、ビールを片手に持った彼の父親が『Oh, my god!』などと言いながら現れたかと思ったら、ニコニコしながら静かに彼の弟まで部屋から出てきた。
とまあ、こんな感じであっという間に一気に家族全員との対面を果たしたことになってしまったのである…。(^^:)

彼の母親は息子との久々の対面に嬉しそうに、何度も何度も息子の頬にキスをしていた。
彼の父親も彼の弟もそれを横で嬉しそうに眺めている。
私は一緒にニコニコしながらも、「こんな時はどうすればいいのか、、、?」、「とりあえず、彼の父親と彼の弟に先に挨拶をした方がいいのか?」、「自分から挨拶した方がいいのか?それとも、夫に紹介してもらうのを待った方がいいのか?」、、、などと頭が一杯で、どちらかというと彼の家族が感じているような感激よりも、不安な気持ちで一杯であった。

そうこうしているうちに、母親との再会の挨拶もやっと終えた夫は、今度は父親と弟とも抱き合う。
その間に、彼の母親とふいに目が合ったので、私は自分から挨拶することにし、『Hello,my name is ***. Nice to meet you.』と言いつつ、手を差し伸べた。
すると、彼の母親は随分とけげんが悪そうな顔をして手を差し伸べるどころか、そっぽを向いてしまったのである。
「あれ、、、? 私、何かまずいことした…?」
思わず出した手を引っ込め、途端に気まずい雰囲気に包まれるのをひしひしと感じた瞬間であった。
それにふと気付いた夫は、何やら母親にスペイン語で喋っているが、何を言ってるのか、私が何をしでかしたのか当時の私にはさっぱり検討もつかなかったのである。
彼の母親は、私の夫に反論しているように見えたが、その後暫くして、私の夫が母親の腕を掴み、その先の手を私の前に差し出させたのだ。
「え?これって嫌々ながら握手するってこと…?」
頭が混乱しつつも、とりあえず握手をし、『Nice to meet you.』と告げた。
その後すぐに、彼の父親と彼の弟とも握手を交わしたのだが、彼の母親との最初の出会いは、私にとってはいまいちすっきりしない出会いであった。


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