メキシカン・アメリカンな暮らし

メキシカン・アメリカンな暮らし

マザコン夫と、お姑ごんにやきもちをやく私




夫が軍隊に属していることもあり、休暇も30日間ほどまとめて取れるという特典もあるのだが、バケーションの行き先はきまって夫の実家だったりする。

もちろん、夫が1人で実家へ行くはずもないので、私も一緒に同行するのだが、その時には私はお決まりのように仕事を辞めるという羽目になるのだ。
軍じゃあるまいし、たかがパートタイマーに30日間という長期休暇をまとめてくれる会社はそうそうない。

私:『2週間ならバケーションとれるし、私だけ先に帰ってくるという手もあるじゃない。』

などということを言っても、夫は、夫婦でバケーションを過ごすことが大事、となかなか折れてくれないので困ったもの。
わざと怒りを露にしてみるものの、それも全く無駄な抵抗であるということは私には分かりきっていることなのである・・・。(ーー;)

夫曰く、『パートだからどうせ大した仕事じゃないし、また復帰したり、他にも探せるさ。』なのだそうだが、私が心配をしているのは仕事がなくなるということではなくて、バケーションで夫の実家へ帰る度にことごとく仕事を辞めなければならないという負担を、彼が全く分かっていないことに私は不満なのである。

それに、遠いからとはいえ、結婚以来、私の実家へは一度も帰っていない。
一度計画は立てたものの、その時は偶然か否か、お姑ごんの離婚騒動が発生してしまい、急遽、お姑ごん宅へ向かうことになったので、結局計画倒れになってしまったという経緯もある。
結局、『今回は本気か!?』と思われた離婚騒動も、いざ蓋を開けてみれば、単なるいつもの騒動に過ぎず、折角の日本帰国のチャンスを無駄にオジャンにされたような気持ちになったのは言うまでもなく、今でもそのことに関しては、不満に思っていたりするのだ。


結局、今回も仕事を辞めて、夫と揃って「夫の実家へ30日間の旅」へ出かけることになったのだが、道中、夫が、

『今回はアリゾナ州のグランドキャニオンに寄ってから、実家へ行こうか?』

と珍しく素敵な提案をしてきたのである。


驚きと喜びの余り、すぐには言葉が出なかったのだが、
実現すると、これが結婚して以来初めての小旅行になるのだ。
夫の提案で、ハネムーンさえも行き先は夫の実家だったので(ーー;)、この機会は絶対に逃すまいと、私は『行こう、行こう!』と二回返事をした。

あゞ、初めての旅行、、、。
初めてのバケーション、、、。
そうよ、お姑ごん宅への訪問なんて、旅行やバケーションの部類には入らないし、入れないわ!

そうこう思いながらも、見えてきたグランドキャニオンは私が想像したものよりも壮大で美しかったのである。
「見とれていた」と形容した方がいいほど、私と夫はグランドキャニオンを
時間を掛けてずっと眺めていた。

すると突然夫は、私の背後から腕を回し、私を強く抱きしめてきたのである。
その時タイミング良く、夕焼けが私たちの目の前で顔を覗かせ、そよそよと優しく温かい風が吹き流れ、鳥たちは太陽のオレンジ色の光を浴びながら森へと飛んでいった――。
まさにうっとりとするような景色とロマンチックな瞬間である。

そして、その時、夫が一言、、、。


夫:『あ~、うちの母さんもここに居たら良かったのになぁ・・・。』

私:『(ーー;)(ーー;)(ーー;)・・・(怒!)』


お姑ごんが私に対して焼きもちをやくことは多々あるが、この瞬間はさすがに私が、お姑ごんに対して焼きもちをやいてしまった。
しかも、折角の綺麗な夕暮れに被さって、お姑ごんの顔まで浮かんできてしまったではないか、、、。(ーー;)

何で? 何で、この瞬間にお姑ごんのことを思うわけ・・・?(ーー;)
しかも、私を抱きしめている時に・・・?(ーー;)
このロマンチックな瞬間にわざわざ・・・?(ーー;)
こいつ、ちょっとおかしいんじゃないのか・・・?(ーー;)
幾らなんでも、マザコンにも程があるだろう、、、!(ーー;)


色々なことを思いながら、夫の手をさっさと振り払い、私は車の方へすたすたと歩いていった。
何が何だか分からずに、夫は私について来たのだが、車に乗り込んだ後も、夫はダメ押しするかのように、『今度は俺のお母さんも連れて来ような。』
と言うではないか、、、。
私の気持ちに気づいていないこの鈍感さといい、二人っきりの空間でも、ある意味二人っきりになれないこのもどかしさといい、私の不満はさらに募るばかり、、、。

そんな私も、まさか『嫌!』と言えずに、『そうね。』と答えたのだが、
この日改めて、私は夫にとってはやっぱり愛人に過ぎず、夫の一番の恋人はお姑ごんなのだと悟ったのである・・・。(ーー;)



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