メキシカン・アメリカンな暮らし

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不妊は誰の所為?




人の何気ない言葉に傷つくこともあれば、逆に何気ない言葉で人を傷つけてしまうこともある。
自分は親切で言ったつもりでも、言葉が足りなかったり、思慮に欠けていたり、または、相手の受け取り方や相手の状況の中ですっかり意味が変わってしまうことだってあるからコミュニケーションはある意味難しい。

そんな中、意図的に傷つけるようなことを言う人も居たり、やたら無神経な人も居たりするから、特に普段から妙な言葉を吹き掛ける姑となると、『今の言葉は本当に何気ない言葉なのか?』と疑いたくなってしまうこともしばしばである。

お姑ごんを知って数年の歳月が流れた今となってはあの毒舌にももう慣れてきて、何を言われても『あ、またかよ。』と右から左に聞き流しているものの、
昔は、特に不妊症のこととなるとかなり敏感に反応したものである。

同性であるということから気を許して、お姑ごんに不妊症の辛さなどを話したことがあるのだが、同情を示す表情もほんの束の間で、お姑ごんは開口一番、

『私の家系には不妊症なんて居ないわね、、、。
皆、普通に子どもを産んでいるわよ。どうしたことかしら。』

である・・・。(ーー;)


今振り返ってみても、『何を血迷ってお姑ごんに心を開こうと思ったのか、私は、、、。』などと自分の浅はかさやナイーブさに呆れると同時に、自分のお尻を自分で蹴ってしまいたくなるほどの反省の念さえ覚えるのだが、最初から私に原因があると話しているのに、お姑ごんの家系に不妊症が居ないことや、お姑ごんの家族が普通に子どもを産んでいることをわざわざ言う必要があったのか、と腹ただしく思ったのは言うまでもなく、『もっとマシな言葉も思いつかないのか!』とお姑ごんを責める気持ちで一杯になった。

しかも、不妊の原因が誰にあるのかというのは、あくまでも、不妊治療において、より効果的な治療を行なう為に追求されることであって、普通に生活する上で、誰に不妊の原因があって、誰が問題かというのは重要視されるべきではなく、不妊で子どもが出来なくて苦しんでいるという事実は、夫婦二人の問題には変わらないと思うのである。


『私の家系には不妊症なんて居ないわね、、、。
皆、普通に子どもを産んでいるわよ。どうしたことかしら。』
などとぶしつけに言われると、
『私の家系が悪いと言いたいのか?』
『普通でなくて、悪かったね。』
と私も私で、ものすごく不機嫌になってしまったのだが、

夫には、
『Don't put words into her mouth.
(『お母さんは実際にそんなことも言ってもいないのに、言ったなんて決め付けるなよ。』)』などと説教される始末、、、。

確かにお姑ごんは、実際に『私の家系が悪い』とか『私が普通じゃない』
などという台詞は一言も言っていない。
けれど、私が不妊症であることを告白したのにもかかわらず、数々ある言葉の中から、お姑ごんはあえて、『私の家系には不妊症なんて居ないわね~、、、。皆、普通に子どもを産んでいるわよ。』なんて言葉を選んだのだ。

そして極めつけは、『私は孫の顔も見ずにあの世へ行かなければならないのね、、、。』と言い出すから、お姑ごんの言動に対する不満はますます募るばかりである。

まあ、こうした不妊症に関するお姑ごんの一連の言葉も、さすがに何回も聞いていると、壊れたレコードが何回も何回も同じフレーズを奏でるかのように聴こえ、今となっては、右耳から左耳へと私を通過し、胸にグサリと刺さることもなくなってしまったのだが、私が不妊症になって学んだことはとても大きい。


人が結婚して暫くすると、周りは自動的に『子どもは?』と訊く行為があるが、親戚に子どもが出来にくい人がいることを知ってからは、そして、私が実際に不妊症になるまではあれが普通に訊かれる質問事項と思っていたし、結婚すれば子どもが産まれるのが自然だと思っていたものだ。

私も結婚前なんかは、友人や知り合いが結婚すれば、『子どもは?』なんて訊いていた頃もあったが、考えてみれば、人様の家族計画に触れるほどプライベートな質問はない。
今では、結婚しても子どもをわざと作らないカップルだって当たり前のように居るし、『子どもは?』という質問は、本当に余計なお世話だと思うようになった。

こういうことに気づくのにも時間がかかってしまったが、言葉を言い換えれば、これらは私が不妊症にならなかったら、または、不妊症の誰かと知り合わない限り気付かなかったかもしれないことである。

不妊症のことを打ち明けてから聞いたお姑ごんの一連の言葉は、どれも私の神経に障り、とても腹立たしく思ったのだが、そんな嫌な言葉はかえって忘れようとせずに、一つ一つ胸に留めつつ、「自分が人に対して使ってはいけない言葉リスト」にして、心に残しておこうと思った。



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