サヨコの土壇場日記

静謐に揺らぐ

静謐に揺らぐ



秋がはじまる
毎年のことながら
この季節独特の静謐な居住まいに耐えられない

どうしてこうささくれるのだろうと
自らのこころをもてあます

片房がいびつになったせいなのか
治療のために付けられた
赤マジックのバッテン印が
放射線で焼き付けられたまま黒ずんで
未だ消えないでいるせいなのか

終わりを閉じると覚悟をしていた生が
続くことになって戸惑うのだ

上手に終われなかった……

必死に通った治療の日々は
こなすことだけが大変で
その先を考える余裕などなかった

おまけのように付いてきたこれからを
扱いかねて喜べない

敏感になりすぎて
少しのことでも痛みを感じる乳先を
原罪のように引きずって
どこへ行こうとしているのだろう
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