「イタリア女は働き者」である。
1930~40年代のイタリア映画の中の、ソフィア・ローレンやジーナ・ロロブリジーダetc演じる女性達、感情豊かで情にもろく、したたかに逞しく、「激しい情熱の女」という表現がピッタリ。彼女達がフィルムの中で、髪の毛振り乱し働いていた姿、その傍らには型にはまったようにグータラで浮気者のイタリア男。
これら多くのフィルムから数十年を経た現在でも尚且つ、この様はほとんど変っていないかもしれぬ。

現在イタリア人の一般平均収入が月12~3万円の中、旦那一人の収入だけでは到底まともな生活は出来ない。よって、必然的に女房達も働く。二人働いて初めて世間並みの生活が保障されるという訳だ。

イタリアの失業率は日本と比較すれば異常に高く、このパーセントは南に行くほど上がる。また、女より男の方が失業する率が高く、私の周りでも無職の夫に替わって、昼夜2種の仕事を掛け持ちし、一家の生計を支えている立派なイタリア女達も多い。

公平という立場から言えば、夫婦共働き、もしくは妻のみ働いている場合、家事や育児など夫婦で分担すべき事だと私は思うのだが、これまた困った事に、一般的にイタリア男達というのはイタリア女に比べて怠け者だ。
[怠け者]という表現が違うなら、彼等に今だ男尊女卑精神が根強く残っているということではないだろうか?
此処イタリアの学校では家庭科なる授業は無く、家庭でも男の子に料理や裁縫・アイロンかけなど教えないので、必然的にイタリア男はこれらの事に無知なのである。

中には休みの日に料理をしたり、子供の学校の送り迎えをしたり、女房に変わって1週間の買物をしたりする近代的な(?)男も居るには居るが、掃除・洗濯・アイロンかけ等の家事をする旦那というのは余り聞かない。
これらの家事はまるで女がするべきものと決めているかのようだ。

それに比べてイタリアの女達は全くよく働く。
休みの日にはゆっくり休養でもしたいだろうに、家の中隅々モップがけ、家中の窓拭き、庭の掃除や手入れなどフル回転。1週間分のパスタソースの仕込みもする。アイロンかけもパンツや靴下などの下着まで当てるのであるから、彼女達の労働量は相当なものだ。
まったく 「偉い!」 の一言である。
最近は減ったかもしれないが、市販のパスタに頼らず手作りパスタまで作る女も居る。
日本で手作りうどんや蕎麦を打つ主婦が果たしてどれほど居るだろうか?
一言で「習慣・文化の違い」だけでは済まされぬものがある。
日本の女達に比べりゃ、手作りのケーキやタルトなどもお茶の子さいさいと出来る。

こんな素晴らしい女達であるにもかかわらず、男どもはあんまり感謝をしとらん。(ように思える)
そもそも[女性の日](3月8日)なんぞ存在する事自体、1年に1回だけ働き者の女性達に感謝の意を捧げよう!と改めて男達に認識させるふざけた話だ。
年がら年中感謝しろ~!

私もイタリア男と再婚するまでは知らなかったし、これら文化の違いが、我々甘チャンの日本女にとって如何に不都合なものであるか実感できなかった。

日本では一部の例外夫を除けば、旦那が汗水して働いて得た給料を全額女房に渡し、 哀れな(?)旦那 は、自分が稼いだお金であるにもかかわらず女房からわずかな小遣いを貰うという、冷静に考えればおかしな構図である。
その点欧米では、こんな事天と地がひっくり返ったって考えられない。
夫の収入は当然の如く全て夫が管理し、専業主婦である女房は、まるで子供のお使い如く買物の度に夫からお金を貰うか、夫と共に買物に出掛け夫が支払うというのが通常。

日本の優雅な奥様方のように、夫は毎日昼食代・タバコ代・コ-ヒー代など必死に節約を心がけ、自分は夫の働いたお金で、友人達と有名レストランでフルコースや懐石などを食すなどということは、一般のイタリア女達にとっては夢のようなお話だ。

しかし、我々日本女から不都合と思えるこの習慣も、此処イタリアではこれらの習慣・文化があるからこそ、多くのイタリア女達が逞しくなり自ら職を持ち自立しているのではないかと思う。
近々結婚するブティック店員の友人の娘、お相手は印刷会社経営のお金持ちである。
日本なら旦那の収入で優雅に生きていける為、店員なんぞ辞めて優雅なマダムに納まる方も多いのではないだろうか?しかし彼女は「
旦那から小遣いを貰う生活なんてイヤ!結婚後も今の仕事を続ける」と言っている。
夫が平均額を相当上回るような収入を得る職業についている場合は、欲しい物があれば猫なで声を出して甘え、甲斐性のある旦那に買って貰うのも好し、結婚しても男に頼らず生きていくも好し、人各々である。

私は此処イタリアで、宮殿なんぞに住んでいる大金持ちの旦那を見付け、専業主婦で優雅に暮らそうなどと思っていたのであるが、現実は早々甘くは無かったのである。

此処イタリアでは女達の会話の中で必ずと言っていいほど
「貴女の職業は?」と聞かれる。女が仕事を持っている事が当然なイタリアなのである。

今の夫と結婚する前にも多くのイタリア男達と付き合ったが、その中の一人、弁護士で車を20台所有し、尚且つオリーブ・ブドウ畑所有者の彼が私に言った言葉、
「僕は職業を持たない女性とは結婚しない、専業主婦だと僕が妻の生活の面倒を見なければならないし、もし離婚なんてことになったら離婚後も職を持たない彼女の生活を一生面倒見なければならないから」
この言葉を聞いた時の私は、未だ此処イタリアの習慣・文化が良く理解できていなかったので
≪ナントいうひどい奴!こんな男と結婚するのはご免だわ!≫と思ったのだが、今思えば此処イタリアではこれは当たり前の事で、彼はとても正直で誠実であったのだと思う。

現夫は結婚当初
「君の収入は君の物、職を持つという事は君自身の自立の助け、家事などして貰う為に君と結婚したのではない」
と言い、実際我が家にはメイドさんがいて彼女が家事をしてくれていた。
しかし、年月というのは人間を大いに変え、今ではハードな家事も女の私がするのが当たり前と相成った。

が、我が夫も哀れな奴である。働き者のイタリア女達に比べれば私なんぞグータラ怠け者、こんな日本女と結婚したばっかりの苦労も多々あることであろう。


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