特許の思想体系

特許の思想体系

2005.02.08
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こんちくは。

例の判決の中で、特に注目しているのは、
「特許法101条2号,4号の間接侵害成立の要件の具体的な判断がでたこと」
です。

そこで、その点(特許法101条2号について)をまとめておきました。長くなってしまいました。結果のみを知りたい方は、この記事の最後へ。



改正された間接侵害の規定である特許法第101条2号の適用要件は以下の通りです。

(1)特許が物の発明についてされている場合であること。
 方法の発明についてされている場合は、101条4号に規定されている。

(2)「対象物(客観的要件)その1」:その物の生産に用いる物であること。


(3)「適用除外」:日本国内において広く一般に流通しているものを除く。
 ねじ、釘、トランジスタ等、世の中に広く普及している一般的な製品をいう。取引の安定性を確保する観点から、一律に間接侵害の対象から外すこととする。

(4)「対象物(客観的要件)その2」:その発明による課題の解決に不可欠なものであること。
 それを用いることで初めて「発明の解決しようとする課題」が解決されるような、発明のポイントに関連する重要な部品・材料等をいう。間接侵害の成立する対象部品を、こうしたものに限定する趣旨である。

(5)「主観的要件」:その発明が特許発明であること及びその物がその発明の実施に用いられることを知りながらであること。
 2つのこと「その発明が特許発明であること」、「その物がその発明の実施に用いられること」を認識していることである(いわゆる悪意)。権利者から警告状を受け取った後は、一般的には悪意と考えられる。

(6)「行為態様」:業として、その生産、譲渡等若しくは輸入又は譲渡等の申出をする行為であること。



今回の事件で、裁判所は次のように判断しました。

「一太郎をインストールしたパソコンは,本件発明の構成要件を充足するものである」とし、一太郎は、「被告製品をインストールしたパソコン」の生産に用いるものであるとし、上記要件(2)、(6)を認め、

「(従来の方法では)キーワードを忘れてしまった時や,知らないときに機能説明サービスを受けることができない」という本件発明による課題の解決に不可欠なものであるとし、上記要件(4)を認め、

一太郎が「日本国内において広く一般に流通しているもの」でないことは明らかであるとし、上記要件(3)を認め、




そして、ジャストシステムは上記要件(4)について、
「Windowsというマイクロソフト社のオペレーティングシステムそのものに,本件発明と同様の機能があるから,被告製品は「その発明による課題の解決に不可欠なもの」ではない」
と主張しました。

しかし、それに対して、裁判所は、
「その主張の趣旨は必ずしも判然としないが,仮に被告がいうように,Windowsのヘルプ表示プログラム等によって,「『ヘルプモード』ボタンの指定に引き続いて他のボタンを指定すると,当該他のボタンの説明が表示される」という機能が実現されるとしても,一太郎の機能は,あくまで被告製品をインストールしたパソコンによってしか実行できないものであるから,被告製品は本件発明による課題の解決に不可欠なものであり,被告製品をインストールする行為は,本件特許権を侵害する物の生産であるといわざるを得ない。」




互いの主張は次の通りでした。

〔原告(松下電器産業)の主張〕

ジャストシステムが業として一太郎を製造,譲渡等又は譲渡等の申出を行うことは,特許法101条2号の要件を満たし,本件特許権の間接侵害に該当する。

・要件(2)、(6)について
一太郎をインストールしたパソコンは,本件発明の構成要件を充足するから,ユーザーが一太郎を購入し,これをパソコンにインストールする行為は,本件第1発明に係る物を生産する行為に該当し,直接侵害行為を構成する。

・要件(4)について
本件発明の課題は,一太郎をパソコンにインストールすることによって解決されるので,一太郎は,本件発明による課題の解決に不可欠なものである。

・要件(3)について
被告製品は,ねじ,釘,電球,トランジスター等の日本国内で流通している規格品又は普及品ではなく,本件発明による課題の解決のために特別に構成されたものであるから,日本国内において広く一般に流通しているものには当たらない。

・要件(5)について
ジャストシステムは,遅くとも松下電器産業が平成14年11月7日に申し立てた別件にかかる仮処分命令の申立書の送達の時からは,本件発明が特許発明であること並びにジャストシステムが本件発明の実施に用いられることを知っている。




これに対し、ジャストシステムは要件(4)について主張しています。

〔被告(ジャストシステム)の主張〕

一太郎は,「発明による課題の解決に不可欠なもの」とはいえない。

「発明による課題の解決に不可欠なもの」は,それを用いることにより初めて『発明の解決しようとする課題』が解決されるような物品をいうとされているところ,本件発明で解決しようとする課題は,「(従来の方法では)キーワードを忘れてしまった時や,知らないときに機能説明サービスを受けることができない」という点である。

そして,松下電器産業が一太郎の機能であると主張する機能は,Windowsというマイクロソフト社のオペレーティングシステムの機能なのである。

ヘルプ表示プログラム等は,他のアプリケーション・ソフトウェアを実行している間においても利用可能であり,一太郎をインストールするか否かにかかわらず,「『ヘルプモード』ボタンの指定に引き続いて他のボタンを指定すると,当該他のボタンの説明が表示される」という機能が実現されている。

したがって,「(従来の方法では)キーワードを忘れてしまった時や,知らないときに機能説明サービスを受けることができない」という課題の解決と,一太郎のインストールとは無関係であり,一太郎は,それを用いることにより初めて発明の解決しようとする課題が解決されるものとはいえず,「発明による課題の解決に不可欠なもの」ではなく,ジャストシステムの行為は間接侵害に該当しない。



更に、これに対し、松下電器産業は次のように主張しています。

・被告(ジャストシステム)の主張について

ジャストシステムは,一太郎の問題となっている機能は,マイクロソフト社のWindowsの機能であって,そのヘルプ表示プログラム等は,他のアプリケーション・ソフトウェアを実行している間にも利用可能であるから,当該機能は被告製品をインストールするか否かにかかわらず実現されており,一太郎をパソコンにインストールすることと本件発明の課題が解決されることは無関係であると主張する。

しかし,たとえ,ヘルプ表示プログラム等がWindowsの機能であったとしても,一太郎がそのWindowsの機能を呼び出すように作られていない限り,問題となっている機能が実現されることはあり得ない。すなわち,その機能の表示画面自体が,一太郎をインストールしていないパソコンでは現れることがないのであり,その表示画面で実現される機能は,一太郎をインストールすることにより初めてパソコンに出現するのである。

そもそも,本件において対象となっている直接侵害行為は,ユーザーが一太郎をパソコンにインストールする行為,すなわち,問題の画面が表示されて問題の機能が実現されるパソコンを生産する行為であって,ジャストシステムが主張するような,「『ヘルプモード』ボタンの指定に引き続いて他のボタンを指定すると,当該他のボタンの説明が表示される」という機能を実現する一般的,抽象的なパソコンを生産する行為ではない。

以上のとおり,一太郎がインストールされたパソコンは,本件特許権を侵害するとともに,本件発明の課題が解決されているのであり,一太郎がインストールされなければ侵害は生じないから,一太郎は,課題の解決に不可欠なものであるといえる。



今回の事件から、間接侵害規定の適用について判明したこと。

・直接侵害行為が構成されるとなれば、要件(1)(2)(6)は認められることになるでしょう。

・要件(3)については、対象製品が、ねじ、釘、トランジスタ等、世の中に広く普及している一般的な製品でなければ、これもクリアされるでしょう。「一太郎」は日本国内で何万本売れているから「日本国内において広く一般に流通しているもの」に該当するという文言解釈的な論理は成り立たないでしょう。

・要件(4)が、今回の事件では議論になりました。他の事件でも、この点が議論になる場合が多いのではないでしょうか。

・要件(5)は、一般的な解説書では、「権利者から警告状を受け取った後」であると解説されていますが、今回の事件では、「仮処分命令申立書の送達の時以降」を原告側は申し立てて、それが認められました。今回の事件では、差止請求のみであり、損害賠償を求めていないので、認定時期を遡る必要がなく、確実な時期にしたのでしょう。この点、今後の他の事件では争いになるかもしれません。損害賠償を求めていれば、期間が長いほど損害額は大きくなるはずですから。


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最終更新日  2005.02.08 12:00:24
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