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★ボンバーヘッド★
レクイエム
時は未来。人々は悲しみに包まれていた。
謎の大地震により壊れた世界、死んだ人たち。
目をつぶっても広がる恐怖と悲しみに人々は悲鳴を上げていた。
そんな中、目をしっかり開けて二つの死体を目に焼きつけている少女が一人。
名はヒロといった。ヒロの目の前に倒れている死体は彼女の両親であった。
無残にも建物の下敷きになり、頭からは血を流し、腕はありえない方向に折れ曲がっている。
口はヒロに何かを言ったのか少し不自然な形に開いている。果たして彼女はその言葉を聞くことが
できたのだろうか。ヒロは泣き続けるばかりだ。
彼女は両親と楽しい休暇を過ごすために今いる地に来ていた。テーマパークだったのかやたらと建物
の多い場所。
「楽しい日になるはずだったのに...なんで父さんと母さんの命日になるの?」
ヒロはポツリとつぶやいた。神なんて、世界に幸せを降り注いでくれる神なんていないのかもしれない。
ヒロは鼻を一度すすって地面に座り込んだ。座り込んだところで、別の疑問が脳裏を横切る。
「私、これからどうなるんだろう?」
姉妹も頼れる親戚もいないヒロにとってこの先をどう生きていったらいいのか想像もつかない。
しかも、まだ16歳なのに...。ヒロは顔を腕に沈めた。
その時だった。顔を伏せたその先に少女は信じられないものを見た。
光だ。死んだ両親の体が光に包まれている。
ヒロが顔を上げると、あたりは光の海へと化していた。男も女も死んだ人たちが光へと変化している。
人々の悲鳴は一層大きくなった。
ヒロも立ち上がってあたりを何度も見回す。もう、どうなっているのか分からない。
涙をぬぐいもう一度両親を見下ろすと、人型の光がふぅっと浮かび上がった。
「父さん!母さん!」
ヒロの腰の辺りまで浮かび上がったかと思うと光は宙を飛び回り始めた。
ヒロが引きとめようと手を伸ばすと、あっけなくヒロの手は両親の体をすり抜けてしまった。
ヒロは両親を追いかけた。たくさんの人ごみの中を掻き分けて、見失わないよう必死だった。
他の人間たちも同じような行動をとっている。悲鳴は鼓膜が破れそうなほど大きなものとなった。
どんどん速さを増す光に両親との距離はだんだん広くなっていく。ヒロは走り続けた。
「父さーん!」
走る。
「母さーん!」
走る。
「私を置いてどこに行くの?私を独りにしないで!」
走…すると急に光が止まった。ヒロが両親に追いついた。何事かと光に手を伸ばしてみると光はテニスボールぐらいの玉となってピタリと宙に静止した。
その時、崩れた建物の中で唯一建ち残った高い塔の上に光り輝く一人の男が現れた。
「ごきげんよう。さあ皆さんこちらを向いて」
男は言った。ヒロがビックリしながら顔を上げると、男はこちらを見ながら少し笑ったかのように見えた。
両手を高く掲げ、しゃべっている男は妙な格好をしていた。
足首まである白い着物のような服を着て、胸や頭には金色や朱色の重たそうな装飾品、髪の毛は墨のように黒く、長く伸ばして団子のように結わえている。あごの辺りには短いひげと、腰には金色の帯をつけたその姿は、そう、ちょうど東の島国の邪馬台国を思わせる格好だ。年齢は中年と見た。
こちらに向けた顔を正面に戻し男は信じられないことを口にした。
「さあ、おれはこれからお前らに楽しいゲームを提供しようと思う」
ヒロは何を言ってるんだこのおっさんと、顔をしかめた。辺りはしんとしている。
「ルールは簡単…」
男は両手を下ろし、右手の親指を立てびしっと自分のほうに向けた。
「おれを殺せ」
にやりと笑った。右手をひゅっと下げると楽しそうな顔で言った。
「おれを殺せた者はきっとその者の、心から思う人が生き返ることだろう。早いもん勝ち。おれはここで待ってるからがんばってくれ」
そう言うと空に大きなスクリーンが出現し地図が現れ、日本の東京タワーが記された。
右下端の方の写真ではボロボロになった街の中に東京タワーだけが建ち残って光り輝いていた。
すると辺りがざわざわと騒がしくなった。自分の大切な人が生き返る…。彼等にとって心から望んでいたことが実現しようとしている。次第に人々の顔が殺気へと変わっていった。
一方ヒロも心の中で喜んでいた。このおっさんを殺したら両親は生き返るのだ。もう、刑務所も神様も関係ない。殺してやると思った。
男が再びしゃべりだす。
「でもやっぱりおれも世界中の人から追われるのはいい気分じゃない。だからほとんどの人には死んでもらったよ。さっきの大地震でな。で、死んでもらった人間たちは…」
男がばっと両手を広げた。
「お前たちの敵だよ…」
静かに言った。すると辺り一面に広がる光の3分の2が空へと飛んでいった。ヒロの両親も行ってしまった。ヒロは叫んだ。
「父さーん!母さーん!」
何度も叫んで最後の方は涙声で小さくなった。
「さあ、死人を倒して死なないようにおれのところまで来い。そして、殺せ。あははははははは....!」
男がパチンと指を鳴らすと、残った大量の光が人の姿に戻った。
「さあ…ゲームを始めよう…」
レクイエム ~第一回戦~
ナイフや銃を片手に死者たちが生き残った人々に襲い掛かってきた。
人々は急に現実に戻りキャーキャー言いながら逃げ回り始めた。
弱い人たちは次々と背中を切られたり、銃で心臓を打ち抜かれたりして死んでいった。
慣れない恐怖の第一回戦が始まった…。
そんな中、ヒロは何も出来ず動けずにいた。まだ現実に戻れていないようだ。
ぼけーっとしながらある思いが脳裏を何度も駆け巡っていた。
『死んでもらった…という事は父さんと母さんは殺されたの?あの変なおっさんに…』
涙が頬に一筋流れ、ヒロは下唇を噛みながら手を爪が食い込むくらいまで握り締めた。
その時、ヒロの目の前に男の死人が現れナイフを高く振り上げた。
現実の世界に引き戻されたヒロは、恐くなって頭を抱えて座り込んだ。もう終わりだ。私はもうここで死ぬんだ。涙が止まってたくさんの思いがいっぺんに頭を横切った。
ナイフが振り下ろされようとしたその時、
「立て!」
という叫び声が聞こえた。
は?っと思って顔を上げると若い男が目の前のナイフを奪い取り、死人の心臓へと突き刺していた。
死人は少し苦しそうな顔をしてからふっと消えてしまった。
「立て!」
男がもう一度叫んだ。しかしヒロの足は動こうとしない。足に力が入らない。
「馬鹿、死ぬぞ!」
男はそう言うとヒロの手を引っ張り、立たせてくれた。
「いったん逃げるぞ」
そう言ってヒロの手を引っ張ったまま男は走り出した。
男は18歳くらいだろうか?さっき死人から奪った銃で死人を撃ちながら走っている。
「どこに逃げるの?」
とヒロが聞いても答えない。ただただ奪った銃で死人を撃ち続け、長い足で死人をけり続けていた。
しかし、そんな男であっても大量の死人をまくことは出来なかった。狭い道に入ると前からも後ろからもやって来てついには逃げ道が無くなってしまった。男はチッと舌打ちし、足元に落ちていた銃を拾うと周りを見回した。高い建物ばかりで上れそうにもない。
「人数が多いと困るなぁ」
そう言うと男はヒロをひょいっと抱えこう言った…。
「飛ぶぞ」
にやりと笑うとヒロが驚く間もなく男は比較的綺麗な高い建物に向かって飛び上がった。飛んでいる間、ヒロは鳥になったのかと思うほどビックリしていた。
建物の上に上がると男はヒロを下ろし、下の様子を伺った。
ヒロも続いて覗いてみると、上に上がれない死人たちが下のほうで両手をこちらに向けてあげ、うごうごと動いていた。その様子を見てヒロはぞぉっとした気持ちになって男に視線をやった。
すると男は床に座り、銃の手入れを始めていた。ヒロも男の向かい側に腰を下ろした。
「助けてくれてありがとう。私はヒロ。16歳。あなたは誰?」
ヒロが聞いた。男は視線をチラッとこちらに向け、再び銃に戻して答えた。
「俺の名前はアキだ。ヨロシク」
「歳は?」
「18」
私と2つ違いか…とヒロは考えた。
~続きます~
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