カクテルのスタイル



一般的に、カクテルは、ショート・ドリンクとロング・ドリンクに分類することが出来ます。
ショート・ドリンクは、ほとんどの場合、カクテルグラスやリキュールグラスなどの、丈の短いグラスで供されることが多いので、“短い”グラスに入った飲み物の事だと思っておられる方も多いようです。しかし、本当は“短い”時間で飲む、という意味の、ショート(タイム)ドリンクなのです。
ロング・ドリンクは、ショート・ドリンクとは逆に、ゆっくりと時間をかけて飲む飲み物、ということになります。


ショート・ドリンク


主として、スピリッツ、ワイン類などをベースにリキュール類、果汁、香辛料などをミックスし、カクテルグラスに注いで飲みます。ミックスには、シェーカー、ミキシング・グラスなどを使い、ほとんどのものが氷で冷たくして、短時間で飲まれます。それぞれのショート・ドリンクは、例えばマティーニなら、マティーニ・カクテル、マンハッタンなら、マンハッタン・カクテルとするのが正式な表記になりますが、ほとんどのカクテルブックなどで、ウイスキー・カクテルなどのように省略が不適当な例を除き、カクテルの部分は省略して書かれています。


ロング・ドリンク


ロング・ドリンクは、使用する材料や作り方などから、共通するスタイルを持つものをまとめて、さらに分類することが出来ます。


バック(Buck)


各種のスピリッツにレモン・ジュースとジンジャー・エールを加えて作るのが、一般的な処方です。Buckには雄鹿(Stag)の意味があり、キックのある(強い、ハードな)飲み物ということから名づけられたと思われます。

コブラー(Cobbler)


氷を詰めたゴブレットやワイン・グラスに、スピリッツやワイン、リキュールあるいは砂糖を注ぎ、十分にステアして、フルーツ、ミントの葉などを飾り、ストローを添える。コブラーには、柑橘類のジュースをほとんど使わないのが特徴です。Cobblerという語には、靴屋、靴直しという意味があり、暑い夏の日に、靴直しが喉の渇きをいやすために作った飲み物といわれています。

コリンズ(Collins)


ジンをはじめウイスキー、ラム、ウオッカなどのスピリッツに、レモンジュースと砂糖を加え、ソーダを満たすのが基本型です。フィズと似ていますが、グラス(コリンズ・グラス)が大きく、量もかなり多くなります。Collinsの名は、このカクテルの創始者の名前(John Collins)からつけたと説と、Collinsには歓待の礼状という意味があることから、前夜のもてなしの礼状を二日酔いの状態で書こうとした人が、この飲み物をつくって飲んだらスッキリしたので、この名がついたという説があります。

クーラー(Cooler)


通常、スピリッツにレモンやライムのジュースと甘味を加え、ソーダやジンジャーエールなどで満たします。Coolerとは、冷たく、快い清涼感を感じさせる飲み物の意味。ノンアルコールのものもあります。

クラスタ(Crusta)


スピリッツ、特にブランデーをベースに、レモンジュース、ビターズ、砂糖などをシェークして、砂糖のスノースタイルにし、らせん状にむいたレモンまたはオレンジの皮をはめ込んだワイングラスに注ぎ、フルーツを飾ったスタイルです。パンの皮を意味する、クラスト(Crust)から、この名前がついたと言われています。

カップ(Cup)


パンチ同様ポピュラーなパーティ・ドリンクで、作り方も似ていますが、ウォーター・ジョッキでつくり、パンチ・カップではなくタンブラーでも飲まれるのが異なった点です。ワインにブランデー、リキュール、ソーダ、フルーツなどを加える処方が基本です。Cupには、キリスト教の聖餐杯の意味と、酒あるいは飲酒の意味があります。

デイジー(Daisy)


各種のスピリッツに、柑橘類のジュース、フルーツ・シロップまたはリキュールを加えます。ゴブレットや大型ワイングラスにクラッシュドアイスを詰め、季節のフルーツを飾り、ストローを添えます。Daisyには、ひなぎくという意味の他に、素敵なものという意味があります。

エッグ・ノッグ(Egg Nogg)


通常、酒、卵、牛乳、砂糖を使ってつくりますが、ノン・アルコールのエッグ・ノッグもあり、ホットで飲む場合とコールドで飲む場合があります。もともとは、アメリカ南部地方のクリスマス・ドリンクでしたが、現在では、四季を問わず世界各国で飲まれています。

フィックス(Fix)


スピリッツに柑橘類のジュース、フルーツ・シロップあるいはリキュールを加えた、サワー系のミックス・ドリンクです。ゴブレットまたはタンブラーにクラッシュドアイスを詰め、季節のフルーツを飾り、ストローを添えます。Fixとは、用意する、魅了するという意味です。

フィズ(Fizz)


ジンなどのスピリッツにレモンジュース、砂糖を加えてシェークし、タンブラーに注いでソーダを満たすのが基本的な処方です。Fizzという名前は、ソーダの炭酸ガスがはじけるシュッという音からきた擬声語と言われています。日本では、リキュールをベースにしたフィズが多く見られますが、外国ではそれほど一般的ではありません。

フリップ(Flip)


ワインやスピリッツに、卵と砂糖を加えてシェークし、サワーグラスまたはワイングラスに注いで、ナツメグを振りかけます。卵(卵黄または全卵)を使う点はエッグ・ノッグに似ていますが、フリップの場合は牛乳を使わないのが基本です。ホット・ドリンクとしても飲まれます。

フロート(Float)


酒の比重の違いを利用して、一つの酒の上に他の酒や生クリームを混ざらないように浮かべたり、ウイスキー・フロートのように、水に酒を浮かべる方法があります。Floatとは、浮かべるという意味です。

フラッペ(Frappe)


材料をクラッシュドアイスとともにシェークして、氷も一緒にグラスに注ぐか、カクテルグラスやソーサー型のシャンパングラスにクラッシュドアイスを盛り、その上から直接リキュールなどを注ぎ、短いストローを添える。Frappeとは、フランス語で「氷で冷やしたもの」の意味です。

フローズン・スタイル(Frozen Style)


材料をクラッシュドアイスとともにブレンダーでブレンドし、シャーベット上にしたカクテルです。クラッシュドアイスの量によって仕上がりの固さが異なってきます。

ハーフ・アンド・ハーフ(Half and Half)


2つの材料を半分ずつミックスします。濃色ビールと淡色ビールを半々に割ったり、ドライ・ベルモットとスイート・ベルモットを半々に混ぜる。

ハイボール(Highball)


日本では、ハイボールといえばウイスキーのソーダ割と考える人が多いですが、本来ハイボールは、スピリッツをはじめあらゆる酒がベースに使われ、ソーダだけでなく、水、ジンジャーエール、トニック・ウォーター、ジュース類など、各種のソフトドリンクがミックスされます。Highballの語源は、ゴルフ用語のハイ・ボール(高い球)からきたという説と、かつてのアメリカの鉄道で使われたハイ・ボール信号機からきたという説など、諸説あります。

ジュレップ(Julep)


アメリカ南部に古くから伝わるさわやかなミックス・ドリンクです。1815年、イギリスのフレデリック・マリアット(Frederick Marryat)という船長が、アメリカ南部の農園で、クラレットやマデイラ・ワインをベースにミントの葉が入った飲み物を知り、その処方を記録しています。当時は、ワインを主に使っていたようですが、その後、バーボンをはじめ各種のスピリッツ・ベースが主流になってきました。クラッシュドアイスを大型グラスに詰め、グラスの表面に霜がつくまで十分にステアします。

ミスト(Mist)


主として、ウイスキー、ブランデーなどのスピリッツをシェークして、氷も一緒にロックグラスに注ぎいれて作ります。また、クラッシュドアイスをいっぱいに詰めたロックグラスに材料を直接注ぐ方法もあります。Mistは霧のことで、グラスの表面に細かな水滴が霧のようにつくことからきたネーミングです。フラッペに似たスタイルです。

オン・ザ・ロックス(On the Rocks)


大き目の氷を入れたロックグラスに材料を注いで作るスタイルです。氷を岩に見立て、「岩の上に」注ぐところからきたネーミングです。材料の持ち味を生かしてミックスしやすいことから、近年、マティーニやマンハッタンなど、従来のショート・ドリンクをオン・ザ・ロックでつくる例も増えてきています。

プース・カフェ(Pousse-Cafe)


数種類のスピリッツやリキュール、生クリームなどを、比重の大きいものから順に混ざらないように積み重ねます。それぞれの酒の比重(エキス分が多い酒ほど比重も大きくなる)をあらかじめ知っておくことが大切ですが、同じ酒類のリキュールでも製造メーカーによって比重が違うことがあるので注意が必要です。エキス分とは、酒に含まれている糖分、灰分、不揮発性有機酸などを指します。酒のうま味や甘味などをつくっているこれらの成分は、酒を加熱した時、水やアルコールのように蒸発してしまわないで残ります。

パンチ(Punch)


ワイン、スピリッツなどをベースに、各種リキュール、フルーツやジュースなどを加えてつくります。パーティー・ドリンクとして多人数分つくることが多いが、1人分用の処方もあります。Punchは、「五つ」をあらわすサンスクリット語のPancha(パンチァ)、ヒンズー語のPunch(ポンシェ)などからきたといわれ、もともとインド地方で飲まれていたアラック、水、レモンジュース、スパイスなど五つの材料を混ぜ合わせた飲み物が起源になっています。

リッキー(Rickey)


スピリッツに新鮮なライムまたはレモンの実を絞り、ソーダで満たすのが基本的な処方です。砂糖、シロップなどは使わず、爽快な酸味がリッキーの身上ですが、マドラーで実をつぶしながら好みの味にして楽しみます。19世紀末、ワシントンのシューメーカーというレストランで創案され、初めて飲んだ客の名前カーネル・ジム・リッキーにちなんで名づけられたといいます。

サンガリー(Sangaree)


赤ワインに甘味を加え、水または熱湯を満たすのが基本型です。Sangareeとは、スペイン語で「血」を意味するサングレ(Sangre)からきた名称で、赤ワインを薄めて作る色彩から名づけられたものです。現在では、赤ワインの他、シェリー、ポート・ワイン、ウイスキー、ブランデーなどもベースに使われます。

スリング(Sling)


スピリッツにレモンジュースと甘味を加え、水またはソーダ、ジンジャーエールなどを満たします。ホット・ドリンクに仕立てることもあります。スリングの語源は、ドイツ語のSchlingen(飲み込むという意味)が転訛したものといわれています。

スマッシュ(Smash)


ジュレップを小型にしたものがスマッシュです。Smashにはつぶすという意味があり、ミントの葉をつぶして香りをつけることからきた名称です。スマッシュにレモンまたはライムジュースを加えたミックス・ドリンクをモジート(Mojito)と呼びます。

サワー(Sour)


ウイスキー、ブランデーなどの各種のスピリッツをベースに、レモンジュースと砂糖などで甘酸味を加えてつくります。シンプルなスタイルですが、柑橘類の味わいを生かした、多数のいわゆるサワー系ミックス・ドリンクの代表的な存在です。ソーダを使わないのが原則ですが、日本を含めてアメリカ以外の国では、ソーダやシャンパンを使う処方も見られます。Sourとは、「酸っぱい」の意味です。

スウィズル(Swizzle)


タンブラーにラムなどのスピリッツ、ライム(レモン)ジュース、砂糖、ビターズなどを注ぎ、氷を加えて、スウィズル・スティック(Swizzle Stick)でグラスの外側に霜がついたような状態になるまで急速にかき混ぜてつくります。スウィズル・スティックは、三つまた、あるいは五つまたの熱帯樹の枝で、一種のマドラーです。日本では白樺の細枝で、ちょうどいいものを探し、やすりをかけて使っています。これがない場合は、マドラーで代用します。西インド諸島生まれの、ミックス・ドリンクです。

トディー(Toddy)


タンブラーかロックグラスに砂糖を入れ、スピリッツを注ぎ、水または熱湯を満たすのが基本的な処方です。イギリスで寒さから身体を守るホット・ドリンクをして古くから飲まれていましたが、今では、コールド・ドリンクとしても親しまれています。




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