あっちゃんの家の前には公園がありました。
滑り台、ブランコ、鉄棒、砂場
あっちゃんは毎日のようにそこで遊んでいました。

その日はお兄ちゃんと近所のお姉さんと3人で遊んでいました。
でも、お兄ちゃんにとっては小さいあっちゃんが邪魔だったようです。
あっちゃんは仲間はずれにされて、一人鉄棒のところから
砂場で遊んでいる二人を見ていました。

お兄ちゃんは砂場に”マッハGO GO”みたいなスポーツカーを作りました。
そして運転席に座り、助手席に近所のお姉さんを乗せ
「しゅっぱーつ!」と楽しそうです。

「あっちゃんも乗りたーい!乗せてー!」
「ダメだよ、これは二人乗りなんだから!」
お兄ちゃんはあっちゃんを無視して「ブウーーーン!」
とハンドルを握るまねをしています。

「乗せてよー!乗せてよー!」
あっちゃんはとうとう泣き出しました。

「うるさい!!」
お兄ちゃんはそう叫ぶと、
そばに落ちていた石を拾ってあっちゃんに向けて投げつけました。

一瞬、何が起こったかわかりませんでした。
何か生暖かいものが、あっちゃんの顔の真ん中を流れていきます。
泣きながらふと目に入ったあっちゃんのズックには
大きな赤い模様がつていました。



あっちゃんのおでこの真ん中、ちょうど髪の毛の生え際には
2cmの長さの白い傷が残りました。
大人になっても消えることはないでしょう。

包帯がまだ取れない頃、
周りの人から尋ねられるとお母さんはこう答えていました。
「この子が騒ぐからうるさくてお兄ちゃんが石を投げたのよ
 それが、たまたま当たっちゃって、
 この子が騒ぐから悪いの。
 もう、お兄ちゃん怒られると思ってシュンとしちゃって
 その姿見てたら、怪我したこの子より
 お兄ちゃんの方が可愛そうになっちゃった」

お母さんは、あっちゃんが騒いだ理由を聞いてもくれません。
あっちゃんが聞き分けがなくて、
お兄ちゃんの言うことを聞かなかったから悪い。
そう決め付けていました。


傷はあっちゃんの心にも残りました。
大人になっても消えることはないでしょう。





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