book 2001
2001年 読書HISTORY2001.12.27
果つる底なき
銀行が舞台となり、巧妙に仕掛けられた裏金作りに迫る伊木悠。
企業内の出世争いなど興味のない冷めた男が 友人の死によって立ち上がる。
人の死の痛ましさが、彼に人間味や魂を甦らせた。
彼に 平凡な暖かい幸せな家庭を築く勇気を持たせた。
果つる底なき
銀行が舞台となり、巧妙に仕掛けられた裏金作りに迫る伊木悠。
企業内の出世争いなど興味のない冷めた男が 友人の死によって立ち上がる。
人の死の痛ましさが、彼に人間味や魂を甦らせた。
彼に 平凡な暖かい幸せな家庭を築く勇気を持たせた。
2001.12.9
Twelve Y.O.
福井晴敏が江戸川乱歩賞を受賞した最初の作品で、彼の資質が大きな話題を呼んだ。
その著者の言葉を まず紹介したい。
「特に文学志向だったわけではなく、湯水の如く金をかけたハリウッド製冒険アクシ
ョン映画に憧れ、邦画では描けないその醍醐味を表現する手段として小説を選んだだ
けの自分が、江戸川乱歩賞という大変栄誉ある賞をいただけた僥倖に、今はただ呆然
自失の思いです。そうそうたる過去受賞者の名に恥じぬよう、これからより一層精
進を重ね、読者の方々に「買って得した」と感じていただけるよう本をかいてゆければと
思っています。本当にありがとうございました。
読んで何かを考えさせられる物語には「得した」と充分感じさせるものがあり、
著者の想いは読者に伝わった。そして続く
「今、この国は変革の陣痛の最中にあります。保護統制を基調とした旧来のシステム
を失い、私達の社会は新たな枠組みの創造を内外から求められていますが、それが
できずに痛みだけが長引いてしまうのも、長い間「国家」と「個人」とを結びつけて
考えようとせず、経済大国という肩書き以外に自らを語る言葉を持てなかった、我々
日本人の精神的空白が横たわっているからなのかもしれません。
かつて、その様を「十二歳の子供」と評した戦勝国の人物がいました。この物語は、
その言葉の呪縛を断ち切るために血みどろの闘争を宿命づけられた男と、彼を取り囲
む人々それぞれの想いと戦いを描いたものです。彼らが手にする「救い」と「希望」
は凡庸なものかもしれませんが、その中にこそ現在の閉塞を突破する可能性があると
言いたいのです。」
十二歳の子供と述べたのは 日本が敗戦を受け入れてから、黒いｻﾝｸﾞﾗｽをかけ
た姿で あたかも日本を見下げたように厚木に現れたあのマッカーサーであることを
読み進めるうちに知ることになる。
そして その頃になってやっと Twelve Y.O.の意味をしる。
Japan is still twelve years old....
自ら「神国」と称した国家は崩壊し、戦後の日本は、ＧＨＱにより西洋的価値観と
合理主義に基づいた近代化つまり「アメリカ化」が成された結果、驚くべき急成長
を遂げる。しかし経済大国として成長しきってみると、日本国民は精神的・道徳的
な空白に侵されていた。
この小説は、自衛隊、国防の自己完結を題材に、国民の精神的・道徳的空白を
訴えているとも言える。しかし、題材は題材として、根底で呼びかけているものは
今、日本が抱えている問題全体を示唆している。
なぜなら、この小説を読みながら 私が考えさせられるのは「切れやすい現在の
子供」についでだからである。自衛隊という組織について語られている小説を
読みながら「現在の子供」に置き換えて考えている自分がいるのである。
アメリカは瓦礫の山と化した日本を救ってくれたと捉えようと思えばそう考えられる。
しかし、その裏にあるそれぞれの思惑に その犠牲になるのは誰なのかと
思わずにはいられない。
Twelve Y.O.
福井晴敏が江戸川乱歩賞を受賞した最初の作品で、彼の資質が大きな話題を呼んだ。
その著者の言葉を まず紹介したい。
「特に文学志向だったわけではなく、湯水の如く金をかけたハリウッド製冒険アクシ
ョン映画に憧れ、邦画では描けないその醍醐味を表現する手段として小説を選んだだ
けの自分が、江戸川乱歩賞という大変栄誉ある賞をいただけた僥倖に、今はただ呆然
自失の思いです。そうそうたる過去受賞者の名に恥じぬよう、これからより一層精
進を重ね、読者の方々に「買って得した」と感じていただけるよう本をかいてゆければと
思っています。本当にありがとうございました。
読んで何かを考えさせられる物語には「得した」と充分感じさせるものがあり、
著者の想いは読者に伝わった。そして続く
「今、この国は変革の陣痛の最中にあります。保護統制を基調とした旧来のシステム
を失い、私達の社会は新たな枠組みの創造を内外から求められていますが、それが
できずに痛みだけが長引いてしまうのも、長い間「国家」と「個人」とを結びつけて
考えようとせず、経済大国という肩書き以外に自らを語る言葉を持てなかった、我々
日本人の精神的空白が横たわっているからなのかもしれません。
かつて、その様を「十二歳の子供」と評した戦勝国の人物がいました。この物語は、
その言葉の呪縛を断ち切るために血みどろの闘争を宿命づけられた男と、彼を取り囲
む人々それぞれの想いと戦いを描いたものです。彼らが手にする「救い」と「希望」
は凡庸なものかもしれませんが、その中にこそ現在の閉塞を突破する可能性があると
言いたいのです。」
十二歳の子供と述べたのは 日本が敗戦を受け入れてから、黒いｻﾝｸﾞﾗｽをかけ
た姿で あたかも日本を見下げたように厚木に現れたあのマッカーサーであることを
読み進めるうちに知ることになる。
そして その頃になってやっと Twelve Y.O.の意味をしる。
Japan is still twelve years old....
自ら「神国」と称した国家は崩壊し、戦後の日本は、ＧＨＱにより西洋的価値観と
合理主義に基づいた近代化つまり「アメリカ化」が成された結果、驚くべき急成長
を遂げる。しかし経済大国として成長しきってみると、日本国民は精神的・道徳的
な空白に侵されていた。
この小説は、自衛隊、国防の自己完結を題材に、国民の精神的・道徳的空白を
訴えているとも言える。しかし、題材は題材として、根底で呼びかけているものは
今、日本が抱えている問題全体を示唆している。
なぜなら、この小説を読みながら 私が考えさせられるのは「切れやすい現在の
子供」についでだからである。自衛隊という組織について語られている小説を
読みながら「現在の子供」に置き換えて考えている自分がいるのである。
アメリカは瓦礫の山と化した日本を救ってくれたと捉えようと思えばそう考えられる。
しかし、その裏にあるそれぞれの思惑に その犠牲になるのは誰なのかと
思わずにはいられない。
2001
DEC24---27
『果つる底なき』 1998 池戸井潤 講談社
DEC20---24
『ミッドウェイ-血と海の伝説』 1991 森村誠一 文藝春秋
DEC11---20
『天涯の花』 1998 宮尾登美子 集英社
NOV.25---DEC9
『Twelve Y.O.』 1998 福井晴敏 講談社
NOV.24---25
『母』 １９９２ 三浦綾子 角川文庫
NOV.19---24
『いよよ華やぐ』上下 １９９９ 瀬戸内寂聴 新潮社
NOV.4---19
『亡国のイージス』 １９９９ 福井晴敏 講談社
OCT.21---28
『アルジャーノンに花束を』 FLOWERS FOR ALGERNON １９８９
ダニエル・キイス Daniel Keyes 早川書房
OCT.13---20
『銃口』上下 １９９４ 三浦綾子 小学館
OCT.13
『ドラゴンの眼』上下 The Eyes of Ehe Dragon
2001 スティーブン・キングStephen King
(雨沢泰訳）アーティストハウス
FEB1---7
『チェ・ゲバラ伝』 1998 三好徹 原書房
2001
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