Performers Radio Station

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2009年10月29日(木曜日)

2009年10月29日に、河北新報により配信された記事です。

We Love EAGLES!
名将去る―検証・野村監督退任(下)来季への課題(河北新報)
<「無形の力」養う>
 2006年から指揮を執った野村克也監督。寄せ集めの弱小軍団を、戦う集団に変えた実績は、確かにあった。

 就任当初から選手に「弱者が勝者になれる要素が野球にはある」と説き、意識改革を図った。特に洞察力や判断力、データを生かす思考力など、目に見えない「無形の力」の養成に力を注いだ。

 春季キャンプでは夜間ミーティングで野球理論、投手や打者の心理などを指導。何げないひと言で選手を目覚めさせた。30代半ばをすぎて復活した山崎武司内野手は「『ヤマを張ってだめなら思い切って三振してこい』と言われ、すごく楽に打席に入れるようになった」。

 弱小チームの野球の質は徐々に変わり始める。「バットに当てるだけだったヒットエンドランも、二塁手と遊撃手のどちらが二塁ベースカバーに入るのか、考えて打っていた」と橋上秀樹ヘッドコーチ。セギノール内野手が盗塁するなど、相手の虚を突く走塁で1点を奪う場面も増えた。

 自由奔放な近鉄カラーの残るチームに、厳しさも持ち込んだ。試合中のベンチで選手に説教をすることもしばしば。茶髪やひげを禁止し、社会人教育も施した。米田純球団代表は「選手の育成や教育が充実してきたのは、野村監督のおかげ」と話す。

 今では球界で当然となった戦術の礎を築いた功績もある。投手のクイックモーションや分業制は、野村監督が初めて日本に持ち込んだ戦略だ。

 指導にとどまらず、「マー君、神の子、不思議な子」などのワンフレーズや独特のぼやきで、野球への関心が低かった人たちを球場に引き寄せた貢献度は高い。河北新報社が10月に行ったアンケートには「愛らしいぼやきからファンになった人も多いはず」(30代女性)などの意見もあった。

 土台は、監督主導でつくられた。球団側が「野村楽天」の次に目指すのは、フロント主導のチームづくりへの移行だ。

<自主性重視型へ>
 「監督全権型ではなく、組織機能重視型を目指している。編成は編成、現場は現場と、それぞれの役割がうまく機能するのが望ましい」と米田代表。理想は、独自の選手評価システム「ベースボール・オペレーション・システム(BOS)」に基づくチームづくりで成功した日本ハムだ。

 この方向性に合致する指揮官として絞り込まれたのが、監督の職権の範囲が明確に限定される米球界で指導歴がある前広島監督のマーティー・ブラウン氏(46)。選手の自主性を重んじる米国流の指導法は、野村監督の下で萎縮(いしゅく)しがちだった選手が、一気に才能を開花させる可能性も秘める。

 だが、リスクも付きまとう。元ロッテ2軍監督でプロ野球解説者の佐々木信行さんは「厳しさからの解放が、緩みにつながるのが怖い」と言う。かつてのロッテが、管理野球で知られる広岡達朗ゼネラルマネジャー(GM)退団後の1997年から、2年連続で最下位となったことを挙げ、「自由になったが緩みも出た。少し負けが込むと選手は責任転嫁も始めた。だから、(98年に)18連敗もした」。

 自主性重視は、一度歯車が狂うと修正が利きにくい。昨季は伸び伸び野球で日本一となった西武が今季4位に低迷したのも、その一例だろう。
 球団は野村監督の築いた土台を引き継ぐ方針を示すが、1軍コーチで残るのは、佐藤義則投手コーチと山田勝彦バッテリーコーチの2人だけ。「野村イズム」がどう継承されるかは不透明だ。

 新体制に野村監督の「遺産」をどう融合させるのか。今度はフロントの力量が問われる番だ。

[ 2009年10月29日木曜日 ]
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