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第三章
町から東へ3キロほど行ったところにある平原でベルとフラッドは寝そべっていた。二人は平原迷彩色のポンチョを着ている。季節はまだ春が来るか来ないかぐらいなので寒い。
二人の目線の先にはグレンが言った白い建物。
さっきから人の出入りも物音も何もない。ただそこに存在しているだけの白い建物。そんなことを思っていると町の方から二台の車がやってきた。悪路に強いバギータイプの車とセダンタイプの車だ。
その車は建物の前でしっかりと止まった。どうやらあの建物の所有者らしいスーツ姿の男が慣れた手つきで鍵を開け、建物の中に入って行った。しかし、他の車からも誰も降りる気配さえ見せない。建物に入って行った人が建物から出てきて車へと戻る。
程なくして地面が揺れだした。建物の横にある地面が大きな口を開けていく。その開いた口へと車が次々と入っていく。一瞬だけ後ろの車の助手席が見える。そこには…
「グレッグさん…?」
ベルが見たのは依頼人であるグレッグ・ミンスターだった。
「今のはグレッグさんか?…この依頼はなんか裏がありそうだな。あの中に入ってみよう」
「うん」
しかし、いざベル達が行こうとすると地面に開いた口はしっかりとまるで何事もなかったように閉まってしまった。
「あ…閉まっちゃった」
それにもめげないでベルは白い建物の中へと入っていく。フラッドはその後ろから付いていくように入る。
建物の中はこぢんまりとしていて、本棚とベッド、それに机とキッチンがあるだけだ。他には埃も無く、生活感を漂わせるものもない。まるで出来立ての家のような空間、それがただ置いてあるだけだった。
「この部屋怪しいね。一見誰かの家のように見えるけど、生活感を漂わせるものもない。きれいすぎる」
ベルが鼻の頭を一撫でして言う。考えるときに鼻の頭を一撫でして言うのはベルの癖だ。
「こういうののお決まりは本棚の本を動かすと動くだったよな」
そう言ってフラッドは本棚にある本をめちゃくちゃに動かす。
ゴトッ、ガタ、バンバン。
しかし叩いてもみたけど何も起こらなかった。強いて挙げるとしたら物音がたったぐらい。
「違うよ、フラッド。そんな簡単な仕掛けじゃない。建物の中に入った人はそれなりの時間を用していた。それなのにあの入り口が開いたのは建物から出てきた後。つまりそれはこの建物から合図を送っていたってことじゃないかな?」
「けど、それなら地面が動くまで時間がかかるというのもあるんじゃないか?」
「それならあんな重たいものを動かすんだからエンジン音か何かが聞こえるはずじゃない?けど、聞こえなかった…それにボクはエンジン音や原動機の音を聞き逃さない」
「そうだな…じゃあ、通信機を探すか。この部屋のどこかにそれはあるんだろ?」
「その必要はない」
突如として後ろの方で聞こえた若い声に驚き、二人は後ろを振り返る。そこには一人の男が立っていた。しかし、逆光のせいで顔がよく見えない。
「俺と一緒に来てもらおう」
二人はまったく動けなかった。たぶん動いたらその場で殺されてしまうような感じがしたからだ。だから大人しくその男の言葉に従い外へと出た。
男に連れられてきたのは町にある酒場。いや、酒場というよりは定食屋に近い。さっきはよく見えなかった男の顔も今ははっきりと見える。いや、男というよりはその顔つきは少年に近いかもしれない。青い短めの髪に青い目の少年だ。フラッドは見たことあるような顔なのだがどうにも思い出せなかった。ベル達の前には多くの料理が並べられている。
「どうした食べないのか?俺のおごりだぞ」
「あなたはもしかして…ギルドハウスにいた人?」
「ああ、俺はずっとあそこであの依頼を受けるレイヴンを待っていたんだ」
ベル達はこの少年の言っている意味がよく理解できなかった。
「ブリーズとフラッドって言ったっけ?君達が探している子、セイスに会わしてあげるよ」
思いもしない言葉にベルとフラッドはびっくりする。
(セイスに会わしてくれる?何を言っているんだろ。)
「今、セイスは俺がかくまっている。それはあの子が狙われているからだ。何に狙われているか、それはあのグレッグっていう女が所属している研究団体から。何故狙われているか、それはあの子が研究成果だから」
少年は聞いてもいない事をペラペラと喋りだす。その間にも料理を食べており、もう二皿食べ終わっていた。ベル達は一口も口をつけていない。
「あの…それでボク達に何をしろと?」
「最初に言っただろセイスに会わしてやるって」
ベル達はこの少年の言っている事がよくわからない。研究団体?研究成果?かくまっている?それに何で自分達にセイスと会わす理由がわからない。わからないことだらけだった。
「ちょっと作戦タイム」
そう言ってフラッドとベルは後ろを向き、ひそひそと話しを始める。
(以下、ベルとフラッドが小声で話しています)
「あの人の言っている事本当だと思う?」
「けっこう怪しいな。けど、俺達はセイスのことを一回も言っていないのに知っているってことはかくまっているってことはないにしても居場所を知っている、もしくは会った事があるんじゃないか?」
「やっぱりそう思うか…じゃあ、話しに乗るっていう方向で」
「おう」
(以下、普通に話しています)
「わかりました。会わしてください」
「よし、そうと決まれば早く行こうか」
そう言って少年は席を立つ。
「あの…名前は?そっちはボク達の名前を知っていて、こっちが知らないっていうのは不公平だと思う」
「俺の名前はノア・F・エンブレム。ノアでいいよ、よろしく」
「ボクはブリーズ・デンヘルダー。みんなからはベルって呼ばれてる」
「俺はフラッド・クスコだ。フラッドでいいよ」
ここでベルがある疑問に気づいた。
「なんでボク達の事を知っているの?」
「グレンから聞いたんだよ。
ブリーズ・デンヘルダー。金髪の短い髪に栗色の目、身長は低めで細身。黒い銃をいつも携帯している。手先が器用で機械の知識に長けている。
フラッド・クスコ。銀色の髪に、銀色の髪。身長は170cm前後。その体よりも大きな剣を背負っている。機械オンチだが手先は器用で木彫りや細工に長けている。
この町では二人のコンビはまぁまぁ有名でかなりの仕事達成率を誇っている。
と、まぁ俺が聞いたのはこんなところかな」
「じゃあそっちもなんか自己紹介してよ」
「好きなものは酒、嫌いなものはピーナッツ。以上」
「うわ!それだけ?」
「ああ、さっさと行くぞ」
簡単な自己紹介も済み、三人は定食屋を後にした。
店員がベル達のいたテーブルの食器を片づけにきて、満足そうな表情を浮かべている。
「全部綺麗に食べてもらえると気持ちがいいわね」
そう言って空になった12枚の食器をキッチンへと下げて行った。
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