ピカルディの三度。~T.H.の音楽日誌/映画日誌(米国発)

May 6, 2008
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「Roll Over Beethoven ベートーベンをぶっ飛ばせ」

 ラズモフスキー三曲のなかで一番アンサンブルが難しい。それはある程度は予想してたけれども、一緒に弾いた三人に励まされながら楽しく練習することができた。Vn 1 自分、Vn 2 マリリー、Va エレン、Vc マルディ。

 速くもなく遅くもない 超ビミョーな テンポ、しかも八分の六拍子という背水の陣な1楽章。

 細かい音符がモルト・アダージョのなかに散りばめられていて、精密なリズム感覚が問われる2楽章。

 全曲のなかで一番まともそうに見えて、実はトリオを何度も繰り返さなくちゃならず、クドすぎる3楽章。

 もう胃が痛くなってしまって、ベートーベンなんてうんざりと思いかけるのに、4楽章プレストで救われる。すごく楽しい楽章。
 不思議なことに、弾けても弾けなくても最終的には爽快感/達成感が残る。ラズモ・シリーズの特長。

 ドボルザークの「アメリカ」カルテット同様、馬が駈けてるような躍動感がある。なんとも垢抜けてないとこもドボさん的。弓づかいも難しいし、一歩間違うとすぐに落馬してしまう恐怖感はあるけど、そこもまたまたギャロップの醍醐味。



59_2.JPG

 スコアを見てるとそんな難しそうには見えないけれど、猛烈な速さの二拍子で弾かなきゃならない。一瞬の数え間違いも命取り。誰から受け継いで誰に受け渡すかなんて規則性など(たぶん)ないから、理屈ぬきでひたすら目の前のパート譜を信じる。焦らずにちゃんと数えて、自分の番が廻ってきたらピアニッシモでタリラ♪と弾く。ナニゲを装うことが大切。
 さらにスリリングなことに、このわずかな休みの間に譜めくりしなきゃいけなかったり!

 ベートーベン様の崇高な哲学観だとか、あるいは音程だとか音量だとかリズムだとかの音楽的なことはこの際どーでもよくなってきて、僕たちってば、この部分だけ倍速にして 自虐的に 練習したり、しかも、「落ちたら(あるいは飛び出したら)罰金5ドル」とか賭けたりして、勝手に盛り上がってしまった。
 あまりに笑いすぎて、チェロのマルディさん、窒息してるし。





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最終更新日  May 11, 2008 08:25:13 PM
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Re:ベートーベン: 弦楽四重奏曲第8番 Op59-2「ラズモフスキー2番」(05/06)  
corcovado  さん
ピカルディの三度THさん

そんなに練習をして、肩 とか大丈夫ですか?
前に私達ピアノを弾く者には悩みの無いのが””音程”と言いましたが、もう一つえらいなあ と思うのが、譜めくり。

室内楽でもピアニストには譜めくりがつきます。
練習でも、はしを折ったり、終わったら落としたり とかしますが、失敗ばかり。
目にもとまらぬ早さでされる譜めくり の術にいつも感心しています。弦楽器奏者は器用で無いと務まらないかな?
(May 11, 2008 11:28:08 AM)

Re[1]:ベートーベン: 弦楽四重奏曲第8番 Op59-2「ラズモフスキー2番」(05/06)  
corcovadoさん

>そんなに練習をして、肩 とか大丈夫ですか?

この日はさすがにぐったり疲れました。結局深夜まで弾きまくりました。彼らとは一年半ぶり(またはそれ以上)の再会だったので話も盛り上がりましたし。

>前に私達ピアノを弾く者には悩みの無いのが””音程”と言いましたが、もう一つえらいなあ と思うのが、譜めくり。

ピアノを弾く方のほうが譜めくりは速いように感じますが。譜めくりの回数そのものも多いでしょうし。

>目にもとまらぬ早さでされる譜めくり の術にいつも感心しています。弦楽器奏者は器用で無いと務まらないかな?

僕もナマで演奏を聴くときは奏者の譜めくりの速さに感動してます。そのあたりも含めて、さすが一流のプロは違いますよね。 (May 11, 2008 11:47:11 AM)

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