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ぴかろんの日常
リレー企画 130
愛情の表現 ぴかろん
イナと2人でのんびりと、海をテーマにしたその楽園を歩いた
かなり歩いた…荷物は軽いけど邪魔だ…
無邪気に人工の街並みを眺めるイナの横顔を時折盗み見ては、口元が緩むのを抑えられなかった
「わぁ…アラビアだ…」
「モスクみたいだねぇ、行ってみる?」
アラビア風の建物が並ぶその一帯に、僕達はぶらりと立ち寄った
本当に異国に来たみたいで、僕は暫くぼーっと突っ立っていた
イナは巨大な二階建てのメリーゴーランドを見つけて、そっちの方に走り出した
「てじゅぅぅぅぅっ乗るっ!」
呼ばれてハッとして、僕はイナを追いかけた
イナはすでに馬に跨っている…こどもだ…
僕はその隣の馬に跨った
メリーゴーランドが回りだした
ふと周りを見ると、カップルは一頭の馬に2人で密着して乗っているではないか!
ちいっ!
あんなところでぼーっと突っ立っていたばかりに
ちいっ!
もう一回乗ろう!今度は二階で…2人で腰をくっつけあって…ぐふ…ぐふふん…
「てじゅ、おれたのしい」
「そそそそうか…よかったな…もう一回乗るか?」
「え?」
「これ止まったら、今度は二階に行こう。んでもう一回乗ろう」
「またのるの?おんなじのに?」
「二階からの方が眺めがいいぞぐふっ」
「ふぅんわかった…てじゅがのりたいならいいよ」
ううっ
僕が乗りたいのはおまえっ!くうううっ
やがてメリーゴーランドが止まり、僕達は二階に行き、2人乗っても大丈夫そうな大きな馬を選んで、イナを先に座らせた
そして僕が後ろに乗ろうとした時に…係員がトントンと僕の肩を叩いた
「この馬は二人乗りですが…親子連れの方か、男女のカップルの方用になっております」
「おっ親子です!」
「は?」
「この子はこう見えても五歳児です!僕が一緒に乗ってやらないと!怖がるんです!」
「…は…はい…そうですか…」
係員は引きつった笑顔で退いた
ふんっ
どうせトランシーバーで業務連絡するんだろう…もういい!どうなってもいい!フン!
「てじゅ、いいのか?ふたりでのっても」
「いいんだよ、この際」
「おやこか?」
「ばか…恋人同士だ…んしょっと」
「あ…やだな…なんかあたるな…」
「あははははー気にするな!」
僕は片手で握り棒を持ち、片手でイナの腰を支え…僕の腰から離れないように支えヘヘン…イナの肩に顎を乗せて囁いた
「好きだよ…イナ」
ひひーんロマンチックゥひひーん
イナもきっと蕩けてるだろう…
メリーゴーランドが止まった
僕は先に下りてイナに手を貸してやった…
のにイナはひらりと馬から飛び降りて、とっとと出口に向かった
なに?どうして?
「イナ!イナどうしたのさイナ!」
「うっえっえっ…」
「イナ…どうしたのさ…」
イナはどんどん歩いていく、僕は荷物をぶら下げながらイナの後を追う
ふいっと角を曲がり、イナは街の路地のようなところで立ち止まった
「イナ…僕何か悪いことした?どうして泣いてるの?イ…」
イナが抱きついて僕の唇を塞いだ
暫くキスを続けて、僕はイナからそっと離れて聞いてみた
「どうしたの?」
「あんなとこであんなこというな…」
「…なんでさ…お前だけに囁いたんじゃんか…」
「てじゅ…」
イナはそれ以上何も言わず、僕の胸でぐしぐし泣いていた
なんで泣いているのかよく解らなかった
「イナ…そろそろあいつらとの待ち合わせ場所に向かおうよ、その前にこの荷物も入り口の方のロッカーに放り込みたいしさ…」
「おれはテジュンが好きです…」
イナが改まって言った
「テジュンが好きです…」
ポロポロと涙が零れている
微笑ましくて可愛らしくて僕はその姿をじっと見ていた
「そばにいていいか?」
ぐすぐすと鼻をすすりながらそう言うイナを、僕は抱き寄せた
「当たり前だろ?そんなに何度も聞きたいのか?言ってやるよ、いくらでも言ってやる。お前が好きだ。ずっと僕のそばにいて、イナ…」
「てじゅ…」
お約束の熱いキスをしようと唇を寄せ、重なり会った時、向こうの角から人がやってくるのが見えた…
僕は慌ててイナの首をあさっての方向に向けた
「いでぇっ…」
「ごめんっ人が…。…ん?…あれは…」
「なにさっ!痛いじゃねぇかよぉっ!もうっ…」
「…なんで同じところに…くそっ…」
「ん?あ…濃厚ちゅーのラブとギョンジン…」
「…くそっ…負けないぞ!」
僕はあっちの方でチューチューしているギョンジンたちに負けじと、イナの唇にむしゃぶりついた
「…ん…てじゅ…やら…しょ…あ…ん…」
ほほほん…可愛い…キスしながらイナの表情を見てると、眉毛がピクピク動いてひひへん…かわいいん…
って油断してると急に強く舌とか吸われてしまうからな…、気を抜いちゃいけないんだ!
僕達はいつの間にか夢中になっていた…
だからすぐそばに、ギョンジンたちがいることに気づかなかった
「そろそろショーが始まるからいきませんか?」
「あいっ?!」
「その荷物何?土産物?」
「あいうっ…」
「ロッカーに入れますか?じゃあもう行かないと」
「あんたたち、もうキス終わったの?早くない?」
「…ええ…たまにはあっさりしたものが食べたいでしょ?」
「…」
ギョンジンは少し真面目な顔をしていた…
ラブを見ると…なんだか大人びた顔をして、僕達の方に微笑んでいる…
ギョンジンは僕の荷物を持って先に歩き出した
僕達も彼の後ろについて、腕を組んで歩いた
ラブは一番後ろを歩いてきた
途中でギョンジンが振り返ると、ラブは嬉しそうな顔をしてギョンジンの腕に巻きついた
なんだか幸せそうだ…
イナが僕の顔を覗き込む
にっこりしてやるとくふふんと笑った
僕も幸せだ…
やがて僕達は入り口付近のロッカーに辿り着き、お土産を仕舞い込み、ショーを見ることにした
ショーまでまだ時間があるので、ジェラードを買って食べ歩きした
すぐに溶けてくるジェラードを、ギョンジンはあっという間に平らげた
そりゃあの口だもんな…いや、イナやラブだってその気になればすぐに…
なのにこのお色気坊主たちはチンタラチンタラ、溶けてくるジェラードと格闘している
その様が色っぽい
あっいかん…僕も格闘しなくては!
ぺろぺろと舐めていたらイナがじっと僕を見ていた
「何…」
「てじゅ…いろっぽい…」
「…ぶぁか…」
僕達はちょっと見つめあいながらジェラードを食べた
ふふん
先に食ったギョンジンはこんな事できないだろうふふん
ん?
ラブのジェラードを…一緒にぺろぺろしているっ!
…
さすがだ
エロ怪人はやはり違うな…
ものすごぉくいやらしい目つきと舌つきで、ラブに何事か囁きながら、ああ…勝手にしろ!
あああっ!そんなっ食べながらチュウをっ!(@_@;)
「うわぁ…らぶたちしゅごい…」
「あんなの見るな!」
「くちのまわりべとべとだじょ…あとであらいにいかなきゃな…」
「あ…ああっそうだなっ!早く食べてしまおう!」
僕はちょっと焦って残りのジェラードを平らげた…
濃厚な2人は濃厚な食べ方をして、ベトベトの口のまわりをまた…濃厚に舐めまわしていた…
もう…勝手にしてくれ…
「イナ…おてて洗いにいこう…」
「…ラブたちも誘おうよ」
「あいつらはいいよ…」
ふと見ると、口の周りのベトベトは舐め終わったらしく、こんどはお互いの指を…
「おまえらっ!公共のこんな場所で何してんだよ!」
「…」
ああ…2人の世界だ…
僕はイナのべとべとの手を引いて、トイレに連れて行った
手を洗ってトイレから出ようとすると、濃厚な2人が濃厚な視線を絡ませながら濃厚にやってきた
周りの人達は、2人の行く先をさっと避ける…
モーゼかよ!
とにかく僕達はやっと、ベタベタを落としてショーを見に行ったのだった…
He's Got A Way オリーさん
「ねえ、ミン…」
「何」
「まだ怒ってる?」
「別に」
さっきからこれの繰り返しだ
ミンは目を吊り上げたままローバーのハンドルを握っている
「引継ぎだもの、仕方ないだろ」
「そうだね」
「顎を掴まれたのは、その、ちょっと想定外だ」
「目が潤んじゃったのも想定外だよね」
これもさっきからの繰り返し
ああ…
車はどこへ寄る事もなくヒルズの駐車場へ入った
僕はあきらめて口をきくのをやめた
無言で車を降り、無言でエレベーターに乗り、降りた
降りたとたん、ミンが吊りあがった目で僕を振り返った
「先にシャワーどうぞ」
「え…あ…はい」
僕はシャワー室へ退散した
そしていつもよりじっくりシャワーを浴びた
丁寧にシェービングをし、じっくり髪を乾かし、軽くストレッチまでした
洗面所の鏡まで磨いてしまった
定期的に入るクリーニングのおかげでピカピカなのに
さらに何かすることはないか考えた
もうここでできる事は何もない…
いよいよ敵地は出向かなくては…
軽く深呼吸してリビングに行くと、敵、いやミンはいなかった
寝室へ行こうとすると窓の方から声がした
「こっち」
ベランダからミンが手招きをしている
僕は意外な気がしてベランダへと歩いていった
「食べよう」
ミンは僕の顔を見てにっこり笑うとベランダのテーブルを指差した
木製のテーブルには白いクロスが掛けられ、ワインクーラーとグラス、皿が2枚のっている
ミンは僕をテーブルの近くまで引っ張って行った
大皿にはそれぞれパスタとブルスケッタがのっていた
「ゆっくりシャワーしてくれたから助かったよ。何とか間に合った」
「これミンが作ったの?」
「そう。パスタはアンチョビとキャベツ」
「短い時間にすごいな」
「簡単なんだ。今日はこれで我慢して」
「ワインはどうした?」
「この間、あそこのスーパーで買っておいた。ペンフォードのグランジがあったから」
「張り込だな」
「ふふ…」
ミンの目はもう吊り上がっていなかった
ミンの選んだワインとミンの料理はすばらしく美味しかった
「冷めちゃうとまずいからパスタの方、先に食べて」
「食べてる。美味いよ」
「ほんと?」
「ああ」
「食べ方が可愛い」
ブハっ!
「な、何、バカな事言ってるんだ」
「だってそうだもの」
「けほんっ」
「僕にも食べさせて」
僕はパスタをフォークにからませるとミンの口元へ運んだ
「うーん、我ながらいい腕。パスタにからまったキャベツの甘味とアンチョビの塩加減、絶品ですね」
ミンは自画自賛しながら口を動かしていた
その笑顔を見ながら僕は聞いてみた
「もう怒ってないのか」
「ん?」
「さっきまで怒ってたろ」
「本気にした?」
僕はワイングラスを持ち上げようとした手を止めた
「冗談だったのか?」
「どうかな」
「いい加減にしてくれ」
「僕が怒る理由が何かあったの?」
「それは、その…」
「ふふ、嘘つけないね。やっぱり有罪」
「ミン…」
「いいから飲もう」
ミンは僕のグラスにワインを注いだ
「もう一回食べさせて」
僕はまたフォークにパスタをからめてミンの口へ運んだ
ミンはそれを頬張りながら、「今度はブルスケッタ」と催促した
バケットの半分をかじると、残りをミンの口元へ持っていった
ミンはパリパリとそれをかじった
「これも美味しいでしょ。バジルがきいてて」
「うん、美味しい」
「僕、テソンさんに弟子入りしようかな」
「その前にmayoさんの試験がある」
「あっ、それじゃ無理だ」
二人で笑ってワインをおかわりした
僕は機嫌の直ったらしいミンに言った
「あまり怒るな」
「わかってる」
言いながらミンは目を伏せた
僕はテーブル越しにミンの顎を掴まえて軽く唇を重ねた
「ミンは笑顔の方がいい」
ミンがはにかんだ微笑みを浮かべた
「ねえ…」
「何?」
「お願いがあるんだ」
「いいよ、何でも」
「ワインのお金は折半にして。思ったより高かった」
「え…」
僕の目を覗き込んでミンはくっくっと笑った
僕も笑って掴んでいた顎を左右に振ってやった
それから二人で折半することになったワインを空け、片付けをして休んだ
「素敵なお祝いだったよ、ありがとう」
そう言った僕の胸に顔をうずめてミンは囁いた、今夜はずっとこうしていて、と
僕は胸の中のミンを丁寧に抱きしめた
ふとスヒョンの事に思いが飛んだ
スヒョンと僕は一緒に歩いているが、互いに違うレーンにいる
時折歩いている互いの姿を確認して、相手が転んだ時は手を差し伸べる
スヒョンが僕を見守るという事はそういう事だ
一緒に手をつないで歩く相手は別にいる
僕もいつかスヒョンのために無理をしてやれる日がくるだろうか
気がつくとミンは僕の胸の中で静かな寝息をたてていた
僕は、もう一度ミンを抱きしめその額にそっと唇を当てた
Disc 1, No, 17 Billy Joel She’s Got A Way
替え歌 「Goodbye day」 by ミンチョル ロージーさん
少しだけ疲れた顔で 僕の胸の中 眠ってる
スタンドの淡い光 そっとまつげの影が出来る
あの夜の子犬のような ミンを静かにだきしめて
費やしたどんな時間も 惜しみはしない僕がいる
Goodbye day 今日が終わり
One more day また一日 始めてゆけば それでいい Oh
Goodbye day ケリをつけて
One more day また一日 新しい日にすればいい
てのひらに口づけすると そっと力をこめてくる
無意識に甘えてるだろ 僕が隣にいることに
こんなにも愛は深いよ 言葉には出来ないくらい
余りにもしあわせすぎて 言葉にするのも怖いくらい
Goodbye day そして I love you
One more day また一日 信じていれば それでいい Oh
Goodbye day そして I love you
One more day また一日 おまえがいれば それでいい
Goodbye day そして I love you
One more day また一日 信じていれば それでいい Oh
Goodbye day そして I love you
One more day また一日 おまえがいれば それでいい
(来生たかお『Goodbye day』)
新しい空気 足バンさん
僕の家に帰ったドンジュンはもちろん機嫌が悪い
引き継ぎの後店を出る頃はギョンビンとしっかり連動していた
でも今日は隠し球がある
「お風呂入ろっと。ひとりでっ」
「おまえが欲しがってたやつ買ってあるよ」
「えっ」
「どうぞごゆっくり」
「入荷してたの?やっほー!」ドタドタドタ
風呂に浮かべる黄色い Rubber Duck
通常のものより丸々していてドンジュンがいたく気に入った物だ
子供かおまえは
子供が長風呂に入ってる間にソファに座り
冷えたバドを片手に例の台本の残りに目を通した
砂浜に立って手紙の封を開けるジン
書いてある文字を見て堪えきれず空を仰ぎ涙を流す
文字(忘れずにいてくれてありがとう)
振り向くと赤ちゃんを抱いて近づいてくるスジョン
微笑んでスジョンに手を伸ばすジン
手を繋ぎ砂浜を歩いて行くふたり 終
読み終えた時僕は思わずため息をついてしまった
眼鏡をはずしてソファに寄りかかり目を閉じる
思いもかけず心に沁みるものがあった
これを自分が演じる?まさかね
軽い気持ちで読みはじめたのだが、いつの間にか引き込まれていた
主人公の気持ちと自分にどこか重なるものがあった
ゆっくり時間をかけて心の闇から抜け出した男
この男は極端な例だけど
人は多かれ少なかれこうして不器用に生きているのかな、なんて
いきなり台本が僕の手から浮いた
振り向くと僕のパジャマを着たドンジュンが冷たい目で立っている
「まさかやる気になってるんじゃないでしょうね」
「目を通してみただけだ」
「それにしちゃずいぶんマジな横顔だったけど」
「そんなふくれてないで。こっちおいで」
「やっ」
「なんでよ」
ドンジュンはソファの背に腕を乗せて僕の顔を覗き込み微笑むと
そっと僕の顎を掴んで上を向かせる
やな予感
「僕、引き継ぎってこんなこともするって知らなかったな」
「あの業界では通常ああやるも」 ベチンッ
「んなわけないでしょっ!ばかスヒョン!」
ドンジュンは僕の顔に台本を押しつけてさっさとベッドに行き滑り込む
あひるちゃんの効力は思ったよりはかなかったかな
「寝ちゃうの?」
「そっ!ギョンビン見習って僕も少しお仕置きする!」
「ギョンビンのお仕置きって…」
「…」
「…」
バコンッ!バコンッ!ボコーーッ!
「変なとこで黙り込むなっ!想像すんな!すけべスヒョン!」
やつは3つの枕を全部僕に投げつけてぷりぷり言いながらシーツを被った
真夜中。ふと目を覚ますと隣にドンジュンがいない
シャワーを浴び、パソでひと仕事して
やつの隣に無理矢理もぐり込んだ時は寝息を立てていたんだけど
頭を上げてみると
間仕切りのブラインドの向こうに小さな灯りが点いている
そっと覗くとキッチンのランプの元
流しの下で膝を抱え込んで座っているドンジュン
急いで近づき覗き込んだ僕に驚き
ドンジュンが涙でくしゃくしゃの顔を上げた
「なんだ?どうしたの?どこか痛いのか?」
「ううん違う…これ…」
「…?…台本?…読んでたの?」
「ん…」
「何でまた…」
「気になっちゃったんだもん」
僕はドンジュンの横に並んで腰を下ろした
「で、泣いちゃったワケは?」
「よかったんだもん…何だか…よかった…途中から涙止まんなくて」
「そうか」
小さな灯りの中で、僕はぐしぐし泣いているドンジュンの頭を抱きしめた
「途中ずいぶんアヤしいシーンもあったでしょ」
「ん…こんな仕事スヒョンが受けたら卒倒しちゃう」
「でも泣いちゃった?」
「ん…よかった…」
「どんなところが?」
「うまく言えないけど…窓を開けて深呼吸したい感じ…」
「深呼吸?」
「ん…からだに新しい空気を入れてあげたくなる」
「…そうか」
僕は抱きしめている腕に力を入れてドンジュンの目にくちづけ
手を引いてベッドに連れて行く
ドンジュンは僕の腕の中でずいぶん迷って
そしてまだ涙の乾かない目で僕を真っすぐ見上げた
「ね、スヒョン…僕…そんな嫌じゃないかも」
「こんな時間に?」
「ばか…映画の話だよ」
「わかってるよ」
ドンジュンの香りに顔を埋める
ベッドの下にやつが握りしめていた台本がするりと落ちた
僕はその時ほとんど決めていたような気がする
こいつをこんなに泣かせた物語の、
ジンという男になってみようかと
怪人ギョンジンアラジン魔人 ぴかろん
僕達は正面となる場所でショーを見た
海を舞台にいくつかの大きな船と、イルカをかたどったジェットスキーが十数台で繰り広げる夢のステージってわけか…
それぞれの船には色っぽいベリーダンサーのおねぇちゃんたちがにこやかに笑いながら乗っている
ラブの方が色っぽい…
あいやっイナでさえ!あの人達に比べればっ…色っぽい
「いてぇぇっ!なんで抓るのっ!お前の事考えたのにっ」
「しょの前にらぶのことかんがえた…」
ちいっ
いいじゃんか!別に好きとかキスしたいとか抱きたいとかもう一度海の底まで行って浦島太郎ぐらい遊び呆けたいとか思ってるわけじゃないんだからっ
「いてええっあっこらっ噛み付くなよぉっひいん…」
「おまえなんかきらいだ」
「…」
「ふんだ」
僕は拗ねている五歳児の唇をぎゅうっと摘まんでやった
五歳児は、ますます拗ねた
くふふん…
まったくもう…
ショーはアラジンのストーリーに則っているらしい
真ん中の…即ち僕達の正面の船に、アラジンも、その恋人のジャスミンも、そのパパも、それからランプの精のジーニーも乗っかっている
だがよく見ると、ジーニーだけは、全ての船に乗っている…
ふぅん…人間じゃないからな…
そしてメインの船の後ろから、邪悪そうな黒っぽい船と、リーゼントに鋭い角度のグラサンをつけられたイルカ形ジェットが数台、じわじわと近づいてきている
物語が始まるってわけね
お察しの通り、邪悪な船に乗っかっている邪悪な野郎が、アラジンやジャスミン達を襲うんだけど、アラジンとジーニーのコミカルな活躍で、邪悪野郎をやっつけて万々歳っていうストーリーだ
戦いの場面は結構面白かった
いやいや、メインの船でカンカンやってるのはありきたりなんだけどさ、その回りを回るイルカジェットの兄ちゃんたちのパフォーマンスが凄い!
急カーブ、急発進、急停車で水しぶきをあげ、そしてぶっ飛ばしながらふわっと空中に浮いてくるりと横一回転して着水する…なんてことを何度もやっちまうわけよ!かっくいー
五歳児と女王様はもう夢中
「きゃあああん、あの兄ちゃんかっこいいっ素敵っ」
「うわあんしゅごいっしんじられらいっおれもやりたいっ」
ときゃーきゃーわーわー2人で手を取り合って騒いでいる
怪人と僕は、後ろからショーとともにそんな2人を見つめて微笑んでいた
少なくとも僕は微笑んでいた
ちらっと怪人を見ると、邪悪な野郎が乗り移ったのかと思うほど邪悪な…いや、邪淫というべきかもしれない…微笑を湛えて無邪気で可愛らしい2人を見ていた…
「おまえ…何考えてんの…」
「…2人を…ふふっ…」
バシン☆
殴ってやった
ラブだけにしろよ!
っていうかラブだけでヘロヘロだろう!
イナにまでその邪悪な毒牙を伸ばすんじゃねぇよ!ぶぁかっ!
「貴方だってラブに邪悪な触手を伸ばしたじゃんか!」
「…」
「黙り込まないでくださいよ!」
「…ごめん…」
「謝んないでくださいよっもうっ!」
あ…怪人が膨れっ面になった…
くふふん
一応お約束どおり、そういったストーリー展開を見せて、後は喜びのダンス
ベリーダンサーズとジーニー達が踊り狂う
ショーの後半はアラジンとジャスミンの愛の物語だ…
メインの船に仕掛けてあるクレーンが伸び、その先の『魔法の絨毯』に乗っかった恋人たちが、海の上を飛び回り、愛を表現している…
おお…ジャスミンちゃん、美しいじゃん…
え?アラジン?
見てるわけないじゃん野郎なんか!
怪人はいつの間にかラブの襟巻きになっていて、ラブを奪い取られたイナはおずおずと僕のところに来た
ああんかわいいん…
僕はイナを背中から抱っこして…つまり襟巻き状態なんだけどな…魔法の絨毯の上の2人を見ていた
「とびたいな…」
「ふふん…飛ばせてやろうか…」
「え?」
「今夜…」
「…」
おいっ!突っ込めよ!ほんとに飛ばせてほしいわけ?どどどどうしようっ!できるんだろうか…ひいん…
「てじゅ…むりしゅるな…」
「…」
いなぁぁぁ…いつか…いつか思いっきり飛ばせてやるっくそぉぉぉっ…
怪人とラブ様は、またまたしっとりと2人の世界に入ってい…
「らぶぅぅジャスミンやってぇんジャスミン」
「はあ?」
「あの衣装着てぇぇんぐふふん」
「ブラつけろっていうの?!」
「それはつけなくていいからぁあの、下だけ…。へそみせてぇきわどいとこからスケスケのパンツ…」
「…そんな衣装もってません!」
「買おう!」
「ばかじゃないの?!」
「ねぇんジャスミンやってぇぇん…」
あんまりしつこいのでラブ様はくすくす笑っていた
「えへっそんでぇ僕は勿論アラジンね」
「ぶははっそんなかっこよくねぇよ!」
「…え…」
「アンタはジーニーだよっ」
「…ジーニー…」
「うるさくてうっとおしくて失敗ばっかしてて…」
「…やだっ!ジャスミンの相手はアラジンだぞ!ジーニーだったらジャスミンとえっちできないっ!」
「…じゃ、アラジンに化ければいいじゃん…ランプの精なんだから…」
「…偽者?」
「ねぇ知ってる?ジャスミン様はアラジンよりジーニーの方が好きだっていう事」
「え?うそ!ほんと?」
「俺がジャスミン様やるんならね。ジーニーめっちゃくちゃ苛めてやる。でもジーニーが好きなの…」
「…くふん…そぉゆうことかぁくふん…ああん僕ジーニーでいいっ!」
「くはは…ばーか」
「…でも…アラジンは誰?」
「…」
「誰だよ!」
「…決まってるじゃん…」
「…」
エロコンビの視線が僕に送られてきた
その視線を遮ろうと五歳児が僕の前に立ちはだかる
なによ…なんかあった?
ラブは僕から視線を外さぬまま、怪人の耳に自分の手をかけて顔を寄せ、反対側の耳に何か囁いている
うううううっ色っぽいっ!いやらしいっ!なんなんだよっ!人の噂すんなよっ!
ナニがなんだかわかんないけどエロコンビはくふふんと笑ってべっとりくっついていた
ばかっ!きいっ!
目の前の五歳児が僕を覗き込む
「てじゅはねぇ…あのいるか…」
「は?」
「ふねのいるかさんだね…かわいいもん…」
お…おまえ…じぶんがどんなにかわいらしいかわかっているのかこのっこのっじゅるるるん…きいっ
思わず抱きしめてしまった…
人がいなければ押し倒してああしてこうして…べちん
ああん殴られたぁぁ…
そんなこんなで僕達のショー観覧は、終わったのだった…
聞き取り調査 れいんさん
ドライブシュミレーション装置…
ドライブシュミレーション装置…
「なぁ、ドンヒ」
「ブツブツ…」
「ちっ!聞いてねえのかよっ」
「ブツブツ…」
「だったら、聞き取り調査、ジホ監督に付き合ってもらうぜ」
「…待て。僕が一緒に行く」
膨れっ面のホンピョの手を掴み、フロアに向かう
ミンチョルさんに依頼された仕事…
忘れ去られたオブジェの様に、店の隅で埃まみれになっているドライブシュミレーション装置…
どう見てもホ○トクラブには不似合いなその機械
何やらいわくつきの代物らしい
とにかく僕はそれを再生させるべく、BHCの皆に聞き取り調査を始める事にした
何かイヤな予感がするのは気のせいだろうか…
まずはミンチョルさんから…
「あの…一人一人のご希望やご意見を伺おうと思いまして。ミンチョルさんは、具体的にはどの様な機能がお望みでしょうか?」
「そうだな…車内の装備はベンツと同仕様程度、座席は本皮シート
僕はそれなりのグレードの物でないと運転したくないから
それに肌に触れる物は本物でないとアレルギーを起こす
それから…大きな声では言えないが、パンの3つ4つ即座に隠せる大型ダッシュBOXが装備されていると尚いい
誰かさんに匂いを嗅ぎ付けられない様、フレグランス機能も充実させてくれるとありがたい」
初めからこれだもの…。先が思いやられる…
次はギョンビンさん
「そうだね。空軍基地に車ごと突っ込む体験、爆破寸前の車内から飛び降りるスリル満点体験などができたら面白いですね
それから、大きな声では言えませんが、運転中に低周波で腰まわりを刺激し、
知らないうちにお腹まわりスッキリ…なんて機能がついていると理想的ですね。誰かさんの為には」
ね?イヤな予感的中…はぁ~
…次はスヒョンさんだな
「ふぅん・あの装置を改造するの?…(遠い目…)あれには触れたくない思い出がある…
あれ程、撤去する様にと言ったのに、ミンチョルの奴…。あ、すまない。個人的な話で
で、そうだね…助手席の同乗者と意味もなく、くるくる砂浜ドライブシュミレーションってのはどうかな?
で、同乗者に目隠し『この場合はドンジュンの事ね』を装着させ、その隙に第三者に『この場合はミンチョルの事ね』スリル満点の熱いキスをするなんてなかなか刺激的じゃない?」
「何コソコソ話してるのさ。またよからぬ相談?
まったく油断も隙もないんだから
え?何?あの装置改造するの?
ふぅん…僕さ、雪山をイメージしたシュミレーションがいいな
ちょっと懲らしめたい人が約一名程いるんだ
もう、とことん寒い、鼻水凍るくらいの極寒のシベリアドライブシュミレーション
今じゃなかなかお目にかかれない、ドロドロの嘘みたいな誰かさんが生で見られるからね
ふん!それが僕流の軽めのお仕置きってわけ」
はぁ~なんだかなぁ~
これをどうまとめればいいんだろ…
そうだ、イナさん達にも電話で聞いてみよう
「もちもち?あっ!テジュらめったららめっ!今電話ちゅうなのっ
あ、ごめんごめん。で、なんだって?
…ふぅん…そうだな…
俺、冷凍車でラスベガスへ体験シュミレーションがいいなっ
寒い車内でがっつりと抱き合って温め合うんだ…あっテジュらめらってば
今すぐの話じゃないのら…あん、くふん
あ…でも、店に戻ってもテジュがいないんら…俺を温めてくれる人いないんら…ぐしゅん
あっテジュが俺の涙舐めちった…ぐしゅぐしゅっ
あ、ところでさ、きちゅねにもうすぐ帰るからって言ってて。とびきりサイコーなお土産買ってくるから楽しみにしてろって
んじゃ…あっテジュはむはむはむはふん…」
なぜ僕がこんな生々しい声を電話で聞かなきゃならない?
そしてもう一組…電話をしなければならない最強のカップルが…
「くふん。それはまあ、ラブとのめくるめくエロスなドライブシュミレーションがいいなぁ~
けひん、例えば、ステージクリアする度に画面のラブが一枚一枚服を脱いでいくとか
くううっ!たまんないっ!ガンガンクリアしちゃうな、僕」
「んもぉ!ほんっとえっちなんだからっ!でも、他の人がそれやって画面の僕を脱がせてもいいの?」
「あ!それはダメだ!僕だけしかダメ!」
「まったく真性えろなんだから!…でも、僕…車にはあまりい思い出はないんだ
昔、悲劇的な結末を迎える逃避行をした事があるから…」
「あん!らぶらぶらーぶ、どうしたの?泣かないでっ」
「ぐすっ、悲しい事思い出しちゃった…えっえっ…ギョンジンっ!」
「さぁ、僕の胸で思い切り泣くんだっ!むぎゅっちゅちゅちゅちゅううう~~はふん」
はぁ~~電話代がもったいない…
次はイヌ先生とウシクさん…
少しはまともな意見聞けるかな…
「…ああ、そう。でも僕の場合、運転中に眼鏡をかけるとウシクが落ち着かなくなるから…」
「え?何っ?先生、もしかして僕の事うっとーしーの?」
「あ、いや、そんな意味では…」
「酷いっ!先生酷いよっ!」
「ウシク、落ち着いて…僕はいつもウシクの傍にいるよ」
「ひっくひっく…じゃ、先生、眼鏡は絶対にかけない?」
「でも、眼鏡をかけないと見えないよウシク」
「じゃ、この眼鏡にして!」
「何だい?これは」
「3D映像用のメガネ。これだとダサくて誰にも先生を盗られない!」
「ウシク…わかったよ…君の望む通りにしよう」
なんだよ、3Dまで出てきちゃって…どうなるのこれ…
あ…テプンさん達だ。一応聞かなきゃ悪いかな…
「俺って運転した事ねえんだよな。チェリムや弟のジソクはできんだけどな
ま、ゲームだからいっか。そりゃもちろん、おめえ、チェリムやテジも乗せられるファミリーサイズにしてくれよな
んで、BGMは『tears』な。きひひ。チェリムの奴、俺の歌声に痺れるぜ
それからな、ボインなレースクイーンがフラッグ振るレーシングゲームってのもいいよな。上げ底じゃなくて本物のボインだぞ」
「ぼくはくるまのうんてんはできません
まつりのときにみんなにおそわろうとしましたが、わけがわかりませんでした
でもそにょんさんはうんてんがじょうずです
ぼくはくるまがとまるたびに、じょうねつてきなちゅうができればそれでいいです」
「僕はメイと二人っきりなら後は何だっていいよ
実際、ゲームがどうこうより、シートを倒して○○シュミレーションができれば…なんちって
メイって男っぽいけど、あれで案外グラマーなんだぜ。いひひ」
だんだんドツボに嵌ってる気がする…
あ…テソンさんだ。テソンさん、ゲームなんて興味あるかなぁ…
「僕は…二人乗りだったらそれでいいけど。…四人乗りはやめてくれる?
ちょっとバランスが微妙になってくるからさ
余計な事考えないですむように二人乗り。希望はそれだけだよ」
なんで四人乗り嫌がるんだろ…ちょっとわけありみたい…
あ…ソヌさんだ。聞くのちょっと怖いな…
「前の車を尾行するショミレーション。トンネル手前で無謀なUターンシュミレーション
無礼な奴にキレてボコボコにするシュミレーション…
そういうのがやりたい。最近刺激が少ないから
一人乗り仕様希望。孤独が好きだから」
ひいいん…会話が続かない…
あ…テジンさんとスハ先生だ…ちょっと癒してもらおうかな
「僕はもう二度とレースはしたくない。60キロ以上のスピードは出したくないんだ。辛い過去を思い出してしまうから」
「テジンさん、僕がついています。…でも、テジンさん、なぜそんなレース用のつなぎなんて着てるんですか?」
「あ…これ?ちょっと昔のを引っ張り出して着てみた。サイズは大丈夫だ」
「テジンさん・素敵です。そんなにセクシーで素敵な人と僕は…
ああっ!やっぱり僕はテジンさんにふさわしくないっ!」
「何を言ってるんだ、スハ。僕にはおまえしか見えない…わかってるだろ?」
「あ、テジンさん…こんなところで…人が見てます」
えっと何の聞き取り調査だったっけ
本題忘れそうになっちゃった
さて、お次はっと
「僕はっもうすぐアメリカに行くのでっ、ぶっちゃけ、そーゆーのはどーでもっ
以前あれで酷い目にあったし」
「チョンマン?本当にアメリカに行けるとでも思ってるの?」
「え?ジホ監督っ!不吉な事を言わないで下さいっ!チニさんとの約束がっ」
「約束なんてものは破る為にあるんだよ」
「そんなっ!」
「大人の僕を蕩けさせるくらいの色気が君に備わったら考えてあげよう」
「そんなの僕にはできませんっ!」
「大丈夫。僕が手取り足取りみっちり教えてあげるから」
「うえっうえっうえーーんっチニしゃーーんっ!」
「さぁ、怖がったりしないで。君もこっちの世界においで」
えっと…それで結局どうまとめればいいんだ…
あ、ホンピョが僕の袖を引っ張っている
「ドンヒ、俺の意見も書いてくれよな。俺なドンヒと一緒に二人ゲームがいいなっ
んで、ふわふわシートな。よく眠れそうなやつ
んで、んでステージクリアしたらガムのおまけとか出てくんだ
いいだろ、そんなの。楽しくって」
うっなんでこいつこんなに可愛いんだっ
誰もいなかったらハグするところだっ
あ、いけない。仕事仕事…
「ソクさんの事だからどうせ僕を膝に乗せて…なんて言うんでしょ?」
「スヒョク…僕は一人であれに乗りたい」
「え?どうして?」
「一人で黄昏て運転したい…」
「何かあったの?ソクさんっ!いつものソクさんじゃない!」
「以前の僕は今の僕とはまるっきり違っていた。どうやらお前に溺れすぎて自分を見失っていたらしい」
「そんな!僕の事が嫌いになったの?」
「いや、そうじゃない。ただ、お前という美しい花に水を与えすぎてしまった様だ
厳しい環境で育った花ほど、強くて美しいと言うじゃないか」
「僕が…僕がいつも拒むから…それで心変わりしたんですね?」
「だから、それは関係ない」
「皆はガンガンやりまくっているのに、僕が身持ちが固いから…それでソクさん、嫌になったんだ!」
「落ち着けスヒョク」
「ひっくひっく…きっとそうだ。だから、一人で黄昏たいだなんて…」
「そんなに泣くな。な?さぁ、今日はもう帰ろう。今夜は僕がスヒョクの所に泊まりに行ってあげるから…ぐふふ」
はぁ~~やっと終わった…
後はこれをなんとかまとめて…
「あのさ、ちょっといいかな。僕も意見出したいんだけど」
「げっ!ソンジェさん!…あのっこれは一応BHCのホ○ト対象の調査でして…」
「何?僕は及びじゃないって事?」
「いえ、そんなわけでは…」
「じゃ、いいんだね?」
「…とりあえず、言ってみて下さい」
「まずね、BGM『tears』ってのはやめてくれる?僕より上手に歌われちゃ立場ないからね
『さくら』オンリーでいってほしいな」
「でも、聞いているうちに手元までふらついてはどうかと…」
「それ、どういう意味?」
「いえ、深い意味は…」
「ふん!聞かなかった事にしてあげるよ。それでさ、ドライブゲームだけじゃつまらないから、福笑いゲーム機能つきってのはどう?
ステージクリアしたら僕のCDプレゼント。いいでしょ?これ」
「は、はあ…」『さくらに福笑いだとぉ?客がドン引きだぜっ!CDプレゼントって…んなもんいらんわいっ!』
そういうわけで、僕は聞き取り調査の結果と計画書と見積書をミンチョルさんに提出した
ミンチョルさんはとんでもない金額に跳ね上がっている見積書をちらりと見て、若干、目が泳いだ
そして腰に手を当て、片手を額に置き、ふうっと溜息をついた
失礼しますと挨拶をして、ホンピョを連れ部屋のドアを閉める時、ミンチョルさんの独り言が聞こえた
「なぜ一人乗り、二人乗り、ファミリータイプと3台もいるんだ…
店のどこにそんなスペースが?
…とにかく…オーナーにFAXだ…ふぅぅ~~」
甘~い時間 ぴかろん
その後僕達はまたフラフラと歩いて、アメリカの港町を模したところを抜け、未来の港のようなところに来た
ラブの目が輝いた
「うきわまんっ!」
「え…」
食いつく五歳児
うきわまんを売っているショップを見つけたってわけだ
五歳児とラブ様は行列に並んだ
早く早くと手を振るかわいこちゃんたち…
僕らはニヤニヤしながら2人のところに辿り着いた
お目当てのうきわまんを一つずつ頬張りながら、また歩いた
「おいしいっおいしいね、イナさん」
「…ん…」
ギョンジンは2人をデレデレと見ている
ああ…ごめん。ギョンジンと僕は…に訂正…
ギョンジンはもちろん二口で食べた
「あんたなんでそんなに早食いなの?」
「ああ…つい…諜報部員は早食いなんだよ…」
「ギョンビンはそんなにはやくないぞ」
「あいつは下っ端だもん!」
ギョンジンはふんっとそっぽを向いた
そっぽを向いたほうに「喫煙コーナー」があった
ギョンジンは僕に
「行きませんか?」
と声をかけてくれた
僕は残りのうきわまんを口に押し込んで、イナにタバコ吸ってくると言ってギョンジンの後についた
「てじゅ…たばこなんかすったっけ…」
「え…イナさん知らな…ケホンコホン」
「…。…。…らぶはみたのか?」
「えほっげほっ」
「しょか…みたのか…ぐしゅっ」
「…あー…落ち込まないでよイナさん…」
「…ん…おちこまない…」
そんなやり取りをしているなんて知らない僕達は、煙の真っ只中で煙を吸った
「ぷはーやっぱ一服はいいですなぁ」
「でも体に悪いですなぁ」
「しかし…辞められませんなぁ」
「いけませんなぁ…●▽◆といっしょですなぁ」
「ぶっ…バカ!」
「…」
ギョンジンはふっと遠くを見た
時々何を考えているのかわからなくなる…
真面目な顔してると、ほんとにおっとこまえ~な兄ちゃんなんだけどな…
僕達はタバコを吸い終わってかわいこちゃんたちのところに行った
離れて見ていてもイナは五歳児に見える…なぜだ!同じ顔なのに…ラブに遊んで貰っている五歳児にしか見えない!くぅっ
「可愛いですよね…イナは」
エロ怪人の呟きに、僕はキッとヤツの方を睨んだ
「でも…扱い辛そ!ひひん」
「…」
おまえの方がよっぽど扱い辛いよ!
僕達が睨み合っているとかわいこちゃんたちが駆け寄ってきた
ラブはギョンジンの首に腕を回し、イナは僕の前で俯いて上目遣い。くうううきいいいっ
抱きしめちゃった…
「てじゅ、たばこすうのか…」
「あ…時々ね」
「おれのまえでは、すわない…」
「…。小さい子供の前でタバコ吸うと、受動喫煙と言って…」
「おれはこどもじゃねぇよ!ふんっ!」
拗ねちゃった
スタスタと一人で先に歩いていく
エロコンビは見詰め合ってなんか囁きあって動かないし、僕はイナを見失わないように目で追ってはいたものの、意地悪してほったらかしちゃった
かなり先に行ってからチラっと後ろを振り向いて、ああんお口に手をあてているぅ…きいっ
遠くから見てもかわいい…(頭デカイよな…)
あ…俯いた…
ぼーっと突っ立ってる…
きっと唇が尖がってるぞ
「ちょっと、お二人さん…イナが行っちゃったから僕も行くよ」
「…ん…んむ…あいんむ…」
またキスしてらぁ…こいつら…まったくぅ…
僕はイナが突っ立ってる場所までゆっくり歩いた
「待った?」
声をかけてもこっちを見ない
本格的に拗ねたのかな?
「イナ…」
「あれ…のりたい」
は?
イナの視線を追うと、池の水面を縦横無尽に走っている巨大な椅子みたいな乗り物があった
乗ってる人達はその池に仕掛けられた様々な水の障害物に、自動的に近づけられ、水を浴びせられたり浴びせられなかったりしている
「勝手に動いてるの?あれ…」
「そうみたい…みずびたしだ…すずしそうら…」
「…濡れちゃうのか?」
「ぬれるんだ」
「…(ごくり)…」
「…ん?」
僕は後ろからいちゃいちゃやってきたラブとギョンジンのカップルを急かしてその乗り物の列に並んだ
「なんですかテジュンさん、こんな幼稚っぽい乗り物あぐっ」
ギョンジンの口を塞いだ
そうだ!どちらかと言えば幼稚かもしれん!イナは幼稚だ!
だが「びしょ濡れ」だぞ!
僕達保護者は乗らないであいつらがびっしょり濡れるのを…ぐふふふふん…見ようではないかっ
そう耳打ちすると、ギョンジンは即座に賛成した
「いいねぇ若者2人が乗っておいでよっ、ジジイたちはここでじっくり眺めてるからさ」
「「…」」
「「なにさ…」」
「「また変なこと考えてるだろ…」」
「「乗りたくないならいいよ!」」
「「…乗りたいっ!」」
「「じゃあ乗ってきてよ、ジジイたちは濡れたくないからここで…ぐふん…」」
「「…」」
2人は顔を見合わせ、僕達を睨みつけながらも、その乗り物に乗った
『水の楽園』と書かれたその池を2人はその『水上回転車』に乗ってキャーキャーはしゃぎまわる
おおっ!水に濡らされているっ!
僕達ジジイ連合は、2人に水がかかるたびにゴクリと喉をならし、目を輝かせた…ああ…僕もついにエロジジイになってしまったか…
最後の最後に、2人に水鉄砲が発射され、2人のシャツはびっちょびちょであるぐふん…
他の人達はそんなに濡れてない…
きっと機械の方も、この2人をずぶ濡れにしたかったんらろう…
「テジュンさん、鼻血でてます」
「ギョンジンさんこそ、鼻血両方からでてます」
「「まぁこれは…、仕方ないですなぁ…はっはっはっ」」
僕達は鼻血をふきふき、かわいこちゃんたちは水をふきふき…ふふっ拭いたって簡単には乾かないのら…あっまた鼻血が…
「なに鼻血だしてんのぉ?…やだっ2人とも…」
「てじゅ!わるいびょうきか?!」
「いや、ちょっとのぼせちゃって…」
「だいじょうぶか?べんちでよこになるか?ひざまくらしてやる」
「あうっ!」ボタボタボタ…
イナがそんなこと言うからまた鼻血がっ。僕は思わず座り込んでしまった
「てっ…てじゅっ!しっかりしろっしぬなってじゅってじゅっ」
慌てたイナは錯乱して僕をぐいぐいひっぱりまくり、抱きかかえようとし、焦りまくっていた
水に濡れていた彼のシャツに僕の鼻血がついてしまった…
「いいいイナ、大丈夫だよ、揺らさないで…よけい血が止まんなくなる…」
「あうっ…てじゅっ…いきてたのかっよがっだぁ…ぐしゅっ」
僕達のやりとりを、怪人と女王様は、少し引きつりながら見ていた
ふんっ笑いたいなら笑えば?!
僕達はその後、ベンチでかわいこちゃんたちの膝枕で、鼻血が止まるのを待った
でも見上げるとかわいこちゃんのお顔が見えるし、彼らのシャツは濡れて透けかけてるし…
鼻血は中々止まらなかった
おかげでのんびりできたけどね…
新旧チーフ オリーさん
「ミンチョル、店にも出ないで何やってる」
「スヒョン、ちょうどいい、ちょっとこれ見てくれ」
「シュミレーター改造企画書、見積書。そう言えばドンヒが騒いでたな。」
「昨日の今日でもうこれを作った。ドンヒは仕事が早い。早撃ちと言える」
「早撃ちはテジュンさんだけかと思ったのに」
ペシンッ!
「意味が違うだろっ!」
「す、すまん。ところでテジュンさんと言えば、イナ達は今日帰ってくる予定じゃなかったか」
「知らん。あいつの事だ、店がはねてから、ただいま~なんて調子じゃないか」
「楽しんでくれてれば今回はよしとしよう」
「あいつ絶対イタいみやげ買って来るぞ」
「イタいみやげ?」
「被り物系とか。やな予感がする」
「あいつそんなに趣味悪くないだろう」
「いや、僕にはわかる。お前に似合うはずだ、とか言ってとんでもない物を買ってるに違いない」
「そうかなあ」
「そうだ。キッパリ!」
「でもネズミーシーだろ」
「だからだっ!ネズミの耳だけ帽子とかジーニーの海パンとか、得体の知れない物ばっかり売ってるんだっ!」
「まあ、今からそんなにカリカリするな。お前だってハネムーンはベタなとこへ行ったじゃないか…あっ…」
「スヒョン、僕はお前のせいでお仕置きの嵐なんだ、これ以上痛い話を思い出さないでくれ」
「すまん、つい」
「話を元に戻そう。シュミレーターだ」
「これ僕は気がすすまないなあ。ドンジュンの奴、悪用しそうだし。雪山の事は忘れたい」
「何言ってるんだ。雪山があってのお前とドンジュンじゃないか」
「そ、そうかな…」
「あれが全ての始まりだ。二人のエポックメイキングとして大事にしろ」
「でも僕KZDSだし」
「客用だ。お前がやることはまずないだろう、心配するな」
「それにしても経費がかかりすぎるな。オーナーがうんと言うか?」
「あのシュミレーターをそのまま捨ててみろ。そっちの方が怖い」
「そうなのか?」
「買ったものはとことん活用する。それがあのオーナーの主婦的経営術だ。
捨てた方が安上がりだが、粗大ごみで引き取ってもらうのに金を使ってみろ、大変なことになる」
「複雑な心理だな」
「改造するとなれば金は出すだろう。不合理だが捨てられない。その辺が妙に主婦感覚だ。理解不能だが」
「なるほどね」
「あとは、今度バーカウンターを設置しろって言われてるだろ?」
「ああ、あれね。そろそろ作らないとな」
「祭でカクテルの味覚えちゃったからな。今のとこ別の事に夢中らしくてせっついてこないが、そのうち絶対思い出す」
「ああ」
「昨日mayoさんにいい事を聞いた」
「何?」
「新人の中に建築関係の仕事ができるのがいる」
「お前、まさか…」
「彼にバーカウンターを作らせる。シュミレーターでオーバーした予算をこっちでカットする」
「ちょっと待てよ。建築関係ったって、専門があるんだぞ」
「そうなのか?」
「知らないのか。建築士とかデザイナーとか色々あるんだ」
「でもど素人よりましだろう」
「かもしらん」
「だったらやってもらおう。経費節減のためだ」
「おい
「ん?」
「お前、チーフやめた途端、チーフらしくないか?」
「え、そうか?」
「シュミレーターだのバーカウンターだの、やけに張り切っちゃって」
「スヒョン、それは…」
「ん?どうした?」
「お前にあまり負担をかけたくないんだ」
「ミンチョル…バカだな。気を使うなんてお前らしくない」
「しかし…」
「わかったよ。シュミレーターとバーカウンターだな。僕が後はやるよ」
「いや、これは僕もかかわる。そうさせてくれ」
「じゃあ、二人でやろうか」
「そうだな」
「ミンチョル…」
「スヒョン…」
「「はいっ!カーーーット!そこまでっ!」」
「ドンジュン!いつからそこへ…」
「ミ、ミンもいたの…」
「はいはい、スヒョン、一緒にシャンパン抜きたいって客が来てるよ」
「親指ハンカチと携帯耳切り、指名入ってます」
「「わ、わっかった。今行く」」
「そ、そのシュミレーターの件はまたあとで相談しよう」
「そ、そうだな、バーカウンターもな」
「はいはい、そういうのはやっぱ全員でやりましょうね」
「そうです、その方が効率的です」
「「……」」
「「何か文句でも?」」
「「ありましぇん…」」
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