ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 147



Give Me A Break 3

今はずーっとでれんでれんだよな?ミソチョル
ミソチョル?
お…おい…お前…狐の脇腹蹴るなよ…

『らってぼくをこんなとこにおくし、おしゃけもくれましぇんもんっミンチョルしゃんっきいっ!』

解ったって、俺が飲ませてやるから!
酒とチーズか?

『ぽてち!』

よしよし…

俺はミンチョルの横にいるミソチョルの口元にポテトチップスを持っていき、食べさせた

『ぱりぱり…おいちいっしゅ。おしゃけっ!』
「ほら…」
『うくうくうっくん』
「そんなごくごく飲むな!」

のみかいにて

ワインも飲ませてやっていた
視線を感じる
ふと顔を上げるとミンチョルが睨んでいる

「イナ…すまないが、ミソチョルに酒をかけるのはやめてくれ!」
「かけてねぇよ、飲ませてるんだよ!」
「…。イナ…。酔ってるのか?」
「俺はこいつの世話で酔う暇なんかねぇよ!」
「…。解った、世話は僕がするからお前、飲め。お兄さんの相手でもしろ」
「えーっいやだよこんなエロ野郎の相手なんか」
「エロ野郎とはなんらよイナっ!あんなにあちゅいくちじゅけをかわした仲なのにぃん…」
「ミンチョル、ミソチョル抱っこしてやれよ!」
「…」
「かわいそうだろ?ミソチョルが!」

きつく言ってやったらしぶしぶミソチョルを抱き上げた
ミソチョルはちっと涙を浮かべていた

泣くなよぉ…

『あうう…ミンチョルしゃんにもっとのましぇてくらしゃいっていうのにい~』

わかったよ…飲ませるからさぁ…

まったく…飼い主といい飼われてるぬいぐるみといい…我儘この上ない!
スヒョンがそんな俺達の様子をにこにこ笑って見ていた
そしてミンチョルの方に手を差し出して

「ミソチョル君、見せて」

と言った


Violation オリーさん

仕事の話をしようとリビングから書斎の方へ場所を移した。
仕事の話になるとてきぱきと話をする君は
プライベートの話になると、とたんに鎧を着る
その落差がたまらない
遥か東の国からやってきて突然目の前に舞い降りた君は
はにかんだ笑顔と強靭な意志を併せ持つ天使
ひと目でその魅力にとり憑かれた
あの店で君を見たときから

予定ではストーンヘンジで落ちるはずだった
なのに君は落ちなかった
単位欲しさに研究室の扉をたたく学生とは違った
その点では読みが甘かったと認めよう
取引は好きではないが、そんな真似をさせたのは君だ
君は口づけに応えながらもかたくなに心を閉ざしている
そんなことは許されない
だが今君は僕の籠に入り、その羽を折りたたんだ
もう逃げることはできない
でも人形のような君を抱くのはつまらない
君には心からこちらを見つめてもらいたい

口づけに応えながら心の扉を固く閉ざす
言うとおりにするといいながらその視線の先は別の所を見ている
そんな君を崩すのはどうすればいいか
君は気づいていないだろう
君が毅然とすればするほど
君の想いが強ければ強いほど
守りたいものを曝け出していることに
君の大切なものは君の支えにはならない
むしろ大きな弱点になる

まずその大切な恋人のことを聞いてみよう
君はつと顔をあげ、答える必要があるかと尋ねる
その眼差しが胸を打つ
あると答える
君は答えたくないと抵抗する
唇を噛んで前を向く君の姿はとても清々しい
崇高ですらある
だがその鎧の胸に小さな穴が空いた
君が抵抗すればするほどその穴は大きく広がる
それを見逃す手はない
近づいて唇を重ねながら長椅子に君を押し倒す
その唇にはっきりと君の揺れが表れている
知っているかな、揺れている時は脆い時だ

揺れている君を組み敷いて進んでみよう
どんな風に君が崩れていくか、とても楽しみだ
唇から首筋へ喉へ丹念に愛撫を重ねる
まだその唇から歓喜の喘ぎを漏らしてはくれない
もう少し穴を広げてみよう
恋人にもこんなに冷たいのかな
君は小さく震え、鎧の穴が大きくなった
いい手ごたえだ

ワイシャツのボタンをはずしてみる
君は目を閉じたまま動かない
あらわになった君の胸に口づける
恋人はどんな風に君を抱くの
君はまた小さく震える
迷いとためらいの狭間で揺れ続ける
義務感が君を縛りつけ拒むことはできない
葛藤する君の姿はとても美しい
もう一つボタンをはずし、その下の肌に口づける
そしてもう一つ
君は固く目を閉じたまま
さらにもう一つ
ボタンをはずすごとに丁寧に肌を愛撫する

すべてボタンをはずし終わった
君を組み敷いたままシャツをめくる
そしてその美しい体を堪能する
君はぼんやりと目を開ける
恋人がこんな君の姿を見たらどう思うだろう
君の瞳が激しい動揺を示す
満足してもう一度君の唇を求める
まだ震えている

もっと残酷になってみたくなる
ボタンをはずしてくれないか
君はためらいの表情を浮かべる
崩れ落ちるまでもう少し
君の手を取ってボタンにいざなう
君はやはりかすかに震える手でボタンをはずす
すべてボタンをはずされたシャツを脱ぎ捨てる
そして君の胸に胸を重ねる
今ここにいない恋人のかわりになろう
君は初めて切ない喘ぎ声を漏らす

キスしてくれないか
君はけなげにまっすぐに視線を返す
瞳にうっすらと膜がかかっているようだ
君の震える手が頬に触れる
君が上体を少し起こし唇を近づける
あとわずかなところで君は最後の力を振り絞ってためらう

気にすることはないよ
背信は罪ではない
隠し通せばむしろ美徳だ
君の瞳が宙をさまよい残っていた力が抜ける
その瞳が欲望に灯をつける

迷っている唇を征服して押し倒す
君は天使なのか悪魔なのか
天使のような悪魔、それとも悪魔のような天使
もうどちらでもかまわない
君が灯をつけた欲望は燃え盛り
もう止まらない

恋人になってあげよう
愛撫しながらそう囁き続ける
君の鎧は剥がされ、その無防備な姿をさらす
そろそろと震える手が肩にしがみつく
そのしぐさにまた興奮する
やっぱり君は天使
ベルトに手をかけた

心を空にしてやり過ごそうとしていたら
教授の声が僕を引き裂いた
閉じ込めて閉じ込めて鍵をかけておいたのに
見る間に僕は彼の顔を思い出す
ねえ、ミン…何してる?
ああ、やめて…
逃げられない、だから思い出したくない
思い出してはいけないのに

心の隙に教授の言葉が巧みに入り込む
彼の瞳が脳裏に浮かぶ
ねえ、ミン…
だめだよ、
今はやめて…
お願いだから
気がつくと教授の長い指がシャツのボタンをはずしている
僕の思考がまとまらなくなっている

教授が執拗に愛撫を繰り返す
その度に彼の唇を指を瞳を僕は思い出してしまう
目を閉じてこらえる
ねえ、ミン…
お願いだから今僕を呼ばないで
不器用に折り合いをつけた気持ちがハラハラとはがれていく
寸断された心をどうすることもできない

彼にこんなところを見られたら…
嫌だ、絶対に…知られたくない…知らせない
会いたくて会いたくて会いたくてたまらない彼…
意識が遠くなる
彼のかわりになろう
僕を愛撫する人が囁く
彼のかわりになれるの?

ボタンをはずしてくれないか
その人が僕に命令する
これは彼じゃない、でも彼かもしれない…どっち?
彼かもしれないその人がまた僕に囁く
キスして欲しいと
僕は言われるままに上体を少し起こす
もう少しで唇が触れそうになる
やっぱり違う
彼じゃない…

そんな僕の意識を蹴散らし
その人は僕に押し入ってくる
背信て何?
僕が彼を裏切る?
そんなことしてない、するはずないのに…
狂おしい愛撫の嵐に僕の心はバラバラになる
何も考えなくていい
恋人になろう
その人は僕に囁き続ける
愛撫と囁きに包まれて僕はどんどん落ちていく
今僕を抱いているのは誰…
僕が抱いているのは誰…

そして、その人の手が僕のズボンのベルトにかかった


恋愛中毒4 れいんさん

「そろそろ帰るわ」
エジュさんがおぼつかない足取りで立ち上がった
よろける彼女に彼が手を貸す
僕と彼とで両脇を支え、店を出て通りまで歩いた

タクシーがなかなかうまく捕まらない
やっと止まってくれたタクシーも
酔った女性客一人では、とドライバーに断られた

「私なら平気。車で来たから乗って帰るわ」
そんな事を言ってるけど、とても運転できる状態ではない

「テジンさん、エジュさんを家まで送ってあげて下さい
お店ももう閉店だし、チーフには僕から伝えておきます」
「でも…」
「スハ君、いいのよ。私もう平気だから。車の中で酔いを醒ましてから帰るわ」
「そんなのダメです。車は明日取りに来ればいいですよ
ね?テジンさん、ちゃんと送り届けてあげて」

「…わかった。スハは少しの間、店で待ってて。エジュを送ってから迎えに来るよ」
「はい」
「スハ君…ごめんね。迷惑かけて…」
「いえ、気にしないで下さい。それよりゆっくり休んで下さいね」

時々足元がふらつく彼女と、それを抱きかかえながら歩いて行く彼
彼と二人で話したかっただろう彼女の気持ちは痛いほど解っていた
物分りのいいスハを演じている僕から彼女へのささやかな気持ちだった


助手席でぐったりとシートにもたれるエジュを横目に車を走らせた
わずかに開いた窓から吹き込む風に彼女の髪がなびく

「テジン…ごめん」
「気にしなくていい。飲ませた責任は僕にもある」
「ふふふ…情けないわね。こんな姿見せちゃて」
「見かけほど強くなかったってわけだ、お酒」
「テジンったらひどいわ。私そんなに酒豪に見える?」
「ははは」
「…ねえ、テジン。スハ君はいいの?」
「大丈夫だ。心配するな」

その時ふいにエジュの表情が苦しげに歪んだ
手は口元を覆っていた
「どうした?」
「ごめ…」
「気分が悪いのか?…もうすぐ着くから…」

僕は急いでマンションの車寄せに横付けし、助手席側にまわった
「歩けるか?さあ、肩に掴れ」

顔色の優れない彼女を支えエントランスに入る
そのままホールを横切りエレベーターに乗り込んだ
彼女に尋ね、階数を押すと、ふわりとエレベーターは上昇した
エジュはぐったりと僕に身体を預けていた
合図の音が鳴りエレベーターの扉が開いた

「部屋の鍵は?」
「…バッグの中…」
バッグから鍵を取り出し彼女の部屋の扉を開ける
躊躇いながらも僕は彼女の部屋へと足を踏み入れた

「ほら、着いたぞ。しっかりしろよ。寝室はどこ?」
エジュは細い指先で奥の部屋を指差した
僕は寝室に行き、灯りを点け、ベッドに彼女を横たえた
細いヒールを脱がせ、薄い上掛けを身体にかけた

「テジン…お水を頂戴…」

僕はキッチンに引き返しグラスを探しミネラル水をグラスに注いだ
寝室に戻ると、エジュは身を起こしていた
青白い顔をした彼女は無理に笑顔を作ってみせた
そして渡したグラスの水をゴクゴクと飲み干した

「…ありがとう…」
「どう?つらくない?」
「うん…」
「今夜はそのままゆっくり眠れよ」
「うん…」
「じゃあ…行くよ」
「うん…」
「おやすみ」
「…」

部屋の灯りを落としてドアの取っ手に手をかけた

「テジン…」
「…?」
「待って…」
「え…?」
「帰らないで」
「エジュ…」
「もう少しここにいて」
「…スハが待ってる」
「解ってる。…だけどお願い、テジン。もう少しだけ…傍にいて…」

「…解った…おまえが眠るまでここにいよう。スハに電話する」

か細い声で震える彼女はいつもの強気な彼女じゃなかった
華奢で、消えてなくなりそうなくらい儚げに見えた
僕はベッドの縁に腰掛けて携帯電話を取り出した

「…もしもし?スハ?…僕だ。…うん、無事に着いたよ
すまないが迎えに行くのが遅れそうだ。…いや、行くよ。だからもう少し待って…」
その時、僕の手元に彼女の手が伸びてきた
「…ごめん。スハ君。…今夜だけ…テジンを私に貸してちょうだい…私の最後の我儘を許して…」
そしてエジュはパタンと電話を閉じた

「エジュ!何をするんだ…携帯を返してくれ」
「嫌っ」
彼女は携帯の電源をOFFにした
「エジュ…」
「嫌よ。電話しないで」
「こんな事をして何になる?僕は…」
「言わないで。解ってるから。あなたが私を愛していない事くらい」
「…」
「だけど…私が愛したのはあなただけ。後にも先にも」

エジュは上掛けの端を握り締め震える声で言った
僕はゆらゆらと手を伸ばし彼女の肩をそっと抱いた
なぜそうしたのか解らない
そうすべきではなかったのかもしれない
でも彼女のどこかに触れていないと、彼女は霞の様に消えてなくなりそうだった

「私を抱きしめて…テジン」
僕は彼女を胸に抱いてそっと髪を撫でた
「ごめんね。あなたの事苦しめたくないのに」
「気分が落ち着くまでこうしているよ」
僕は彼女の艶やかな髪を優しく撫で続けた
彼女の香りがほのかに香った

「私ね、スハ君の事とても好きよ。純粋で優しくて、でも内には稟とした強さを秘めている
そして真っすぐにテジンの事だけを愛している」
「…」
「彼があなたを変えたのね。…会って話してよく解った」
「そう…僕は心の底から笑う事などもうないと思っていた。それは自分への罰だと思ってた
だけど、スハと出会って僕は感情を取り戻したんだ」
「どんなに頑張っても私ではダメだった…」
「エジュ…君はとても素敵な女性だ。僕なんかに囚われるな。もっと君を幸せにしてくれる奴がいるはずだ」
「…ねえ、テジン…私を触って」

彼女はそっと僕の手を取り、彼女の胸元へと導いた
僕の手の中に彼女の柔らかな乳房が息づいていた


テプンとチェリム 4 びょんきちさん

チェリムも泣いていた。甘くてしょっぱい涙のキス
涙に濡れたチェリムの頬には、なぜか小麦粉が付いている
料理かなり悪戦苦闘してるみたいだ。大変だったんだろうな
上気したピンクの頬にキスした時、突然チェリムが叫んだ

「く、くさい!」
「なんだよ。俺ちゃんと風呂入ってきたし、歯も磨いてきたよ」
「ち、ちがうよ。テプンじゃない。キッチンが焦げくさい!」
「本当だ。なんか焦げてる…」

気がつくと部屋中が煙に覆われていた。前が見えないくらいだ
火事か!ついに恐れていたことが起こってしまったのか…
霧状態の中、手探りでキッチンに向かう。急いで火を消す
プライパンの中で炭になっている変な物体…

「これなんなの?」
「チヂミ焼いてたの忘れてた…」
「真っ黒コゲだね」
「うん、もうこのフライパン使えないかも」
「ホットプレートとかある?」
「うん、あるけど…」
「じゃ、それで焼こう。テーブルで食べながら焼いたほうが楽しいから」
「うん」

「このボールの中のやつ全部チヂミのたね?」
「うん」
「ずいぶんいっぱいあるね」
「水入れ過ぎちゃったから小麦粉を足したの。そしたら今度は小麦粉が多くて、それで水を入れたら多過ぎて、そんでまた小麦粉を入れて…」

「わかった、わかった、よしよし」
チェリムの頭を胸に抱き寄せてナデナデした。背中もトントンしてあげた
ひっくひっく体を震わせて泣いているチェリム…
「大丈夫だからさ。一緒に料理しよう!」

窓を全開にして煙を外に逃がした。階下から声がする
「どうかしましたか」
「すみません。ちょっとお料理焦がしちゃっただけですから」
お隣のベランダからも声がした
「すごい煙ですけど、大丈夫ですか?」
「すみません。ご迷惑おかけします。ちょっと焦がしちゃっただけですから」

そんなわけで、しばらくはお謝りタイムが続いた
火事騒動が一件落着して、ふとテーブルに目をやると
山盛りのキムチ、山盛りのジャム入りドーナッツ、山盛りの焼き鳥があった

「これどうしたの?」
「キムチはチャンジュおねえさんからもらったの」
「ドーナッツと焼き鳥は?」
「パッカさんからもらった」

「あのさ、さっきから気になってたんだけど、なんでパッカのこと知ってるの?」
「えっ、だってチャンジュおねえさんとパッカさんって付き合ってるじゃん」
「うっ、うそ…」
「八百屋さんで知り合ったんだって、あの二人。もしかして結婚するかもね」
「えぇ~ そんなこと俺知らないよ~」
「テプンってそういうところ鈍感だもんね」


Give Me A Break 4 ぴかろん

ミンチョルは少し震えながら(絶対意識しすぎてるよな!ぶぁか!)スヒョンにミソチョルを渡そうとして…緊張のあまり…落っことしやがった

『あうあうあう~びええんびええん』

そりゃ泣くよなぁミソチョル…
落ちるときにテーブルの角っこにがんっと頭をぶつけてたもんな…

「よしよし…痛かったか?ん?」

スヒョンがミソチョルの目を覗き込んだ
途端に泣き止むミソチョル
そして頬を染めている

『あ…あい…らいじょぶれしゅスヒョンしゃん…。あう…しょんなにみちゅめられりゅとぼくっ…あうっ…』
「くふふ。お酒好きなんだ」
『あ…ああああいっ』
「イナとお喋りしてたのずっと聞いてたよ」
『くらくらくら~。すすすすスヒョンしゃんっぼくのことば、わかりましゅか?…ひひんへへん…』
「ミンチョルの脇腹、蹴ったの?」
『あ…ちっと…』
「悪い子だな…ふふっ」
『はうっ…』
「イナ、この子のグラスちょうだい」
「おうよ!こいつチーズ好きなんだぜ」
「そうみたいだね…チーズばかり食べてたもの…」
「あの…スヒョン…。いくらイナの歓迎会だからって、イナのお遊びに付き合わなくても…」
「あんな事言ってるよ、ミソチョル君」
『ふんっ。もういいれしゅっ。ぷんれしゅっ』
「ミンチョル、ミソチョル君怒ってるぞ…」
「…」
「ろーしたんれしゅか?ん?このぬいぐるみ、ミンチョルさんそっくりれしゅねぇかわいいなぁ…ちっとだけ抱きしめてもいいれすか?」

ギョンジンが酔った目をしてミソチョルを抱き上げた

『はうううっきけんれしゅっ…』
「ん?僕はぬいぐるみと愛を交わす趣味はないよぉけひひ…。でも…かわいいなぁ…。ちっとだけ…ラブにも似てる…」

そう言って潤んだ目でミソチョルを見つめ、ミソチョルの口があるらしいあたりにぶっちゅううううとキスをしている

「『ぎあああああっ』」

ミンチョルとミソチョルが叫んでいる
ミソチョル!大丈夫か?

『らいじょうぶれしゅ…おにーしゃんのちゅうは、ちっと口からはじゅれてました…ひひん…』

それはよかった…

「んふ…かわいいな…ワイン飲む?」
『けほけほ…はははハイおにーしゃん…』
「はい、どーじょ…」
『うくうくうっくん。ありがとでしゅおにーしゃん…れもあの…スヒョンさんとこにいきたいれしゅ』
「あ…はいはい…じゃまたね」
『あい~』

ミソチョルは再びスヒョンのところに戻った
スヒョンはにこにこしてミソチョルにチーズとワインをやっていた
俺はスヒョンに目配せして、茎わかめを渡してみた

「これは?」
「からだにいいから…」
「ミソチョル君、これ、からだにいいんだって。食べる?」
『あい』あむあむあむ
「おいっ!ミソチョル!なんだよお前っ!俺が食えっちっても食わなかったくせにっ!」
『もぎゅもぎゅ…ちっとしゅっぱいけろかみごたえがあってうまいれしゅなぁ…おしゃけくらしゃい』
「よく飲むなあ、はい」
「あの…スヒョン…」
「なんだい?ミンチョル」
「誰と喋ってるの?」
「ん?ミソチョル君。ねっ」
『あいっ』

ミンチョルの目はまん丸になった…
そして注いであったワインをゴクゴク飲んだ
俺はもう一杯ミンチョルのグラスに注いでやった
またゴクゴク飲んでいた…
そうこうするうちにミンチョルの目が据わりだした…

「ミソチョル君、ご主人様が出来上がっちゃったみたいだよ?」
『うぃっく…ろれ…ちっとしゃべってきましゅね』
「ほい…」

ミソチョルはミンチョルの膝の上に戻ってきた

『ミンチョルしゃん?』
「…あう…」
『もうっ!たまにはぼくにもおしゃけのましぇてくらしゃいよっ、いっちゅもミンとばっかしのんでてぼくはちっとしゃびしかったれしゅよ!ぷんっ』
「…お…あ…」

ミンチョルはきょろきょろと周りを確め、頭をプルプルと振り、そしてミソチョルをじっと見つめた

「…。ミソチョルが…喋ってるんだ…」
『しょうれしゅよっ!んもうっ!…ミンがいないときはぼくがなぐしゃめてあげましゅからっ…。しゃびしいときはぼくをだっこしてねんねしてくらしゃいね?』
「…ミソチョル…」

ミンチョルの目がうるうるしてきた…

『しょりゃあぼくはミンみたいにぐいーんとかひゃひゃひゃひゃとかえいえいとかいったうごきはれきましぇんけろっ』
「う…」

俺達三人は、ミソチョルのその言葉を聞き逃さなかった

「うごき?」

エロミンが口に出して確かめた

『あいっぐいーんってうごくとミンチョルしゃんがはへはへってうぐっ』

ミンチョルがミソチョルの口を塞いで焦っている
エロミンはふへへへといやらしい顔で笑って、何かを思い出しているようだ…
どうせラブとのカーニバルの事だろう…
スヒョンは
スヒョンは…優しい顔で微笑んでいた
口の端が、微妙にひくついているように思えたけど…

俺はミンチョルの手からミソチョルを抜き取って注意してやった

「お前なぁ…。なかよししてる時の事は、いくら酔ってても秘密なんだぞ」
『あい?ぼくなにかいいましたか?』
「言ったよ、ミンがぐいーんて動くとミンチョルがはへはへってうぐっ」

ミンチョルが俺の口を塞いだ…

スヒョンとギョンジンが吹き出した
ミンチョルは困った顔をしてミソチョルに言った

「ミソチョル…ひとりで寂しい時は、君を抱っこするよ…だから…あのその…あんまり…僕とミンの事を人に…言わないでくれないかな…」
『ぼくなんにもいってましぇんっ!』
「…ミソチョル」
『おしゃけくらしゃいっういっくぅぅ』
「ミンチョル、こいつ、酒癖わりぃなぁ…」
「ほんとだ…」
『なんれしゅかぁっ!のましぇてくれないっちうんしゅかぁぁっ!しゃけもってこぉぉおいっきいっ!』

そんなこんなで俺達は、遅くまで飲み続けた
ミソチョルは酔っ払った皆と会話できたってわけだ…
そしてそろそろ寝ようかという事になった

「あ~みなさん、寂しかったら僕のところへ…けひひん…」

酔っ払いのエロ男は、そう言って自分の部屋に消えた

「僕はどこで寝ればいいの?ミンチョルたちの寝室?」
「えっ!」
「くは…もう…。冗談だよミンチョル…。この真ん中の部屋、借りるよ」
「あっ…ああ…」
「寂しかったら僕のところへ…くふふん…おやすみ」

天使はエロ男の真似をし、ウィンクを残してドアの向こうに行った

「…さて、僕達も寝るか」
「ああ」

ミンチョルが俺の後をついてきた

「何よ」
「何って、お前また寂しいっていうだろ?だから一緒に…」
「今日はいい」
「…ほんとか?大丈夫か?」
「ミソチョルと寝るからいい」
「…え…」
『いなしゃんとねましゅっ!』
「…」
「お前一人でしゃびしけりゃ、天使のとこに行って来いよ…黙っててやるぜ」
『しょうれしゅ、くちがしゃけてもミンにはいいましぇんっ』
「…行かないよ…」
「『黙っててやるのに』」
「…お前たちの口の鍵、壊れてるもん…」
「『なんらよっくそぎちゅね!』」
「なんだよ酔っ払いの幼稚園児と酒乱ぎつねっ!」
「『ひどいっぷんっ!』」

俺とミソチョルはぷりぷりして俺の部屋に向かった
ドアを閉める前に振り返ってミンチョルに声をかけた

「ホントにミソチョルと寝ていいか?」
『ホントにいなしゃんと寝ていいれしゅか?』
「『しゃびしかったらミンチョル(しゃん)もいっしょに寝る?』」
「いや…有難う…今日はひとりでゆっくり眠りたい」
「『しょ?じゃな…』」

俺達は俺のベッドに倒れ込んだ…

「…ミソチョル…」
『なんれしゅ?』
「…ちっとさぁ…、俺の携帯持っててくれないか?」
『おやしゅいごようれしゅよ…てじゅんしゃんからのちゃくしん、のがしましぇんからっ』
「…うふふ…じゃあ…頼む…」

ミソチョルの携帯を俺の携帯と入れ替えて、俺はミソチョルを抱きしめた

コンコン

小さなノックの音がした
ミソチョルを見ると、もうすやすや眠っている
ははーん…ミンチョルのヤツ、やっぱりミソチョルを返せって言いに来たんだな…

俺はそっと起きだしてブツブツ言いながらドアを開けた

「お前素直じゃないんだから、ミソチョルと寝たいなら寝たいってうぐっ」

ふいに口を押さえつけられ、俺は部屋の壁に押し付けられた
ギョンジンだった…
ドアを閉めると、奴は俺の口を塞いだまま俺に抱きついてきた

「イナ…すまない…少しだけでいいから…こうしていてくれ…」

怖かった…
あの…氷のようなギョンジンが戻ってきたのかと思った

「…ごめん…驚かせて…。はぁ…。…イリア・クリヤキンがね…がんじがらめに縛られて、光りも射さない地下室に閉じ込められてるような気がしてならないんだ…。なんとかしようともがいてる…」

ギョンジンは俺の口から手を離して訳の解らないことを呟いた

「…イリアは…緻密な計画を立てて、的確な行動をする…とても優秀で一分の隙もない…。けど…ううん…だから…アクシデントに弱いんだ…大抵敵に捕まっちゃう…
ナポレオンがいれば、ぎりぎりのところで助けてくれるのに…。イリアにナポレオンの狡さがあれば…」
「…ギョンジン…何の話?」
「…」
「さっきのスパイドラマの事?わかんないよ…何それ…」
「…ふ…」

ギョンジンは俯いてくふふと笑い、俺を見つめて言った

「お前は解んないだろうと思ってお前のとこに来た…」
「…酔ってるの?相当飲んでたじゃん…」
「大丈夫だ。あれぐらいでは酔わない…」
「…。何か…心配事?…ラブとミンギなら大丈夫だぜ。そういう仲じゃない…」

俺がそう言ってやるとギョンジンはまたふっと笑ってうんうんと頷いた

「ふぅっ…。僕がここで何を思ってても…どうしようもない…僕はもう…ナポさんじゃないしな…」
「…わけわかんないよ…どうしたの?」
「…ただちょっと不安なだけ…。だから…すまないけど…抱きしめてくれないか…。お前しか甘えられる人がいない…」

言われるままにギョンジンを抱きしめた
ギョンジンは何度か唾を飲み込んでため息をついていた

「ありがとう…もうちょっといろいろ調べてみる…。ただの思い過ごしかもしれないし…」

やっと柔らかい笑顔を見せてギョンジンはそう言った
そして俺の肩をポンと叩いておやすみを告げた
出て行くときにギョンジンは俺を見つめて一言付け加えた

「もし…ミンチョルさんの様子がおかしいと思ったら…僕に教えてくれないか…僕も気をつけるから…」
「は…。様子がおかしいのはお前だよ」
「…ふ…」
「…ギョンジン…」
「ん?」
「ちっとかっくいいぞ…」
「ふ…。ばーか…」
「…おやすみ…」
「おやすみ」
「ギョンジン!」
「なに?」
「…なんとか…なるよ…。なんだか解んないけど、イリアって人はきっと…脱け出せるよ…」
「…」
「なんならおまじないのキスしてやろうか?」
「…」

ギョンジンは目を瞑って口元で笑い、サンキュ…と言ってドアを閉めた
訳が解らないまま、カッコいいギョンジンにドキドキしてしまった事を後ろめたく思った

ミソチョルの横に滑り込み、ヤツを抱きしめた

『きえいっ!うぐぐ…』

ヤツは俺の腹を蹴った
ちっとも痛くない…
もっとぎゅっと抱きしめてやった
ミソチョルのお腹が柔らかくて…とても気持ちよかった…

ねむる

おまけパズル1

おまけパズル2

おまけイライラパズル



替え歌 「この空を飛べたら」 ロージーさん

空を飛ぼうなんて 哀しい話を
いつまで考えて いるのさ
あの人に も一度 逢いたいだなんて
どうして考えて いるのさ

暗い土の上に 叩きつけられても
こりもせずに 空を見ている
翼など無いこと そうさ わかっていて
こりもせずに 夢見てる 夢見てる

ああ 人は昔昔
鳥だったのかも 知れないね
こんなにも こんなにも 空が恋しい


飛べるはずのない 空 みんなわかっていて
きょうも走っていく 走っていく 

叶うはずの無い夢 僕はわかっていて
それでも縋ってる 縋ってる
この空を飛べたら どんな自分からも
自由になるような気がして

この空を飛べたら 消えた何もかもが
帰ってくるようで 走るよ 

ああ 人は昔昔
鳥だったのかも 知れないね
こんなにも こんなにも 空が恋しい

ああ 人は昔昔
鳥だったのかも 知れないね
こんなにも こんなにも 空が恋しい

(中島みゆき『 この空を飛べたら 』) 


闇夜の調査&お留守番_5  妄想省家政婦mayoさん

その教会はおよそ教会らしからぬ佇まい..

天井を高く取り..交差リブ(アーチ状の天井を支える梁)や柱..壁に彩色彫刻を施し.
ファサードの壁面に彫像を埋め込み...礼拝堂の天井はドーム型..天井にフレスコ画..
教会といえばルネッサンス様式..バロックかゴシック建築が主流だ...

が..この教会には宗教画は勿論..ステンドグラスもない..
コンクリート打放しの外壁にアイアンの十字架が浮いて取付けられ..その十字架で教会と確認出来る..
十字架は外壁に影を落とし..影は時間で形を変える..
二度目に来た時..十字の影は少し長く外壁に伸びていた..

礼拝堂の内部もコンクリート打ちっ放しで左右にはベンチが階段状に置かれ..
南正面の壁一面は床から天井まで十が打抜かれ..ガラス越しに光が入り込む..
十の縦部分から差込む光は天井と通路に光の筋をぐぐっっと真っ直ぐに伸ばし...
十の横部分は左右の壁に光の筋を伸ばす..

教会の建築としては見事なまでに削落とされている..
それがかえって心を無にさせるような気がした..
内部のコンクリートの壁を触っているとさっきの老神父が側に来た..

「教会っぽく..ないよね?...」

そう言って悪戯っぽく笑った老神父はちょっと可愛かった..

「ぁの...設計は..”あんどう”..ですか?」
「ぉぉ..よく解るね..建築が好きなのかな?」

私が軽く握った拳の親指と人差し指を摘む様にして..「ちょっと..」とすると
神父も真似して指を摘み..「ちょっとね..はは..」っとまた可愛い顔で笑った..

「建築関係の人の見学が多いからね..この 光の教会 ..」
「"あんどう"は有名ですから..」
「最近は偉くなっちゃったねぇ..設計料も上がったってょ?..」
「^^;;...」

「建物見に戻って来た..じゃなさそうだね..」
「...」
「ここは装飾に惑わされることもない..ゆっくり話が出来るよ..自身の心ともね..」

穏和な瞳で私の顔を覗いて言った神父はゆるゆると身体を揺らして奥へ消えた..


一番後ろのベンチに座っていると程なくテソン父が来た..
テソン父は眼鏡を外していた私に首を傾げた後..隣に座った..
私は先に探偵まがいに店に訪れたことを詫びた..

「でも..貴方の家具を見る目は興味本位のそれでは無かった様に見受けられましたよ..」
「家具屋に知り合いがいるもので..じっくり見入る癖がありまして..」
「そうでしたか..」

口元でちょっとだけ笑ったテソン父に今のテソンの状況だけを伝えた..
"ホ○ト"は伏せだが..倶楽部で料理人として働いていること..
仲間4人と暮らし..近々その仲間とパン屋を開店すること..私がその仲間の一人であること..

耳を傾けていたテソン父は自分とテソンの間に何があるか知ってるかと私に問うた..
小さく頷くと口元をきゅっ..としてから..話始めた..

テソン母子が家を出てまもなく会社が傾き..何年か国内を転々をしたこと..
釜山に落ち着いて店を構え..母子の行方を捜し居所は掴んでいたこと..
テソン母が逝ってからテソンは何度か住所を変え..行方がわからなくなっていたこと..

自分のお店を懇意にしてくれる南浦洞の韓服店の主人がソウルに支店を出す時..
縫手にテソン母を紹介し..腕のいいテソン母はそこで顧客を持てた..
少しでも母子の暮らしが楽になることを願っていた..とテソン父は言った..

私はテソンがひとりになってからの事を..私の口から言うのは避けた..
テソン父はしばらく黙った後..ポシャギに包まれた細長いものを私に差し出した

「これを..」
「...??..」

私が受け取るとテソン父が頷いたので包みを開いた..

包みの中は長さが25cm程の螺鈿の筆箱だった..
底を除く5面にびっしりと見事な螺鈿細工が施されている..

「...側面まで..これだけ細工のあるものは珍しいですね..」

細工に見惚れている私を見た後..テソン父が言った

「テソンは..チョットル(満一歳)の時に筆を手にしたんです..」
「占いですね..」
「そう..それで..いくつかの中から私と..妻が選んでテソンに与えました..」
「テソンさんは..料理のお勉強は誰にも負けませんよ..それに..」
「..??」
「テソンさんは..綺麗な字を書きます..」
「そぅ?」

私が頷くとテソン父は口元を緩めた..

筆箱を包んでいたポシャギは袷になっており..
十長生の織模様の絹..甲紗(カプサ)と無地の明紬(ミョンジュ)という2種の絹を使い..
空色..千草色..青色..8色の青色系統で濃淡の市松模様が対角に沿ってグラデーションに配置されている..
手間の掛かる韓国版パッチワークだ..長い年月で所々糸目が掠れていた
端に付けた群青色の紐で包んだ物を括られる様に付けられていた...

「ぁの..ひょっとして..このポシャギは..」

テソン父は無言で頷いた..テソン母が縫ったことを意味している..

「2人が家を出たときに残されました..これが..」
「ずっと..ずっと持ってらしたんですか?」

テソン父はまた無言で頷いた...

「それを..テソンに渡してもらえますか?..」
「覚えているかもしれませんね..」
「どうかな..解らない..ぃゃ..受け取らないかもしれない..」

力無く呟き肩を落としたテソン父に私は無言で首を振った..
しばらくの沈黙の後私が口を開いた..

「テソンさんが会うと言ったら..会いますか?」

肩がビクンとしたテソン父は私を見た後..正面の十字の光を見て言った..

「ひと言..私は...詫びたい..あの子に..」

絞り出す様に吐いた声は重く響いた..

両膝に乗せられた拳は節が白く浮き上がる程ぎゅっ#と握られ..雫が落ちていた..
テソン父の拳の上にハンカチをそっと乗せた..
今朝..出掛けにそこいらのハンカチをバックに詰めた..
たまたまテソンが使っているブルー系のストライプのハンカチだった..
私は必死で奥歯を噛み..反対を向いた..

夕暮れの光は十字の光の筋になって聖堂へ入り込み..
コンクリートの壁と木の床をほんの少し橙に染める...

テソン父は帰り際私の手を握り

「貴方に会えて良かった..ありがとう」と言い..
「どうか..頭を上げてください..」と恐縮する私に何度も頭を下げた..

教会の前で別れ..見えなくなるまで何度も振り返るとテソン父はずっと頭を下げていた..

空港に向かうリムジンを待つ間..ティッシュでチーンチーンっと何度も鼻をかんだ..
頭を振って俯いた顔を上げ..インテリアショップのミンジュンに電話をかけた..
テソン父に聞けなかった..もう一つの疑問を解決するためだ..
折り返しすぐにミンジュンから連絡がきた..

「ソウルに着いたら店に寄れよ..親父と待ってるから..」
「サンキュ..」
「ぉぅ..金浦に迎えに行くか?」
「ぃゃ..バイクなんだ..」
「OK..」

ソウル行きに搭乗する前に夕食までは戻る..と短い電話をテソンにかけた..

機体が地上から浮き上がった時..深く長く..大きなため息を吐いた..

**十長生(シップチャンセン)
太陽..山..水..石..雲..松..不老草..亀..鶴..鹿の10種の韓国の吉兆柄が織られた文様


Paris6  足バンさん

僕たちはリヴォリ通りのサンドイッチショップで
生ハムと野菜のサンドと木いちごのタルト、ミネラルウォーターを買って
チュイルリー公園までのんびり歩く

遥か広がる淡いブルーの空の下、芝生に腰をおろしてうんと伸びをした
小さな子供たちの笑い声が初秋の風にのって運ばれてくる
思い思いの場所で陽を楽しんでる人たちみんなが優しい顔をしてる

「これから一気に寒くなります、今とてもいい季節です」
「あー気持ちいい…スヒョンを連れて来てあげたいなぁ」
「彼女ですか?」
「ううん彼氏」

モドキ君は飲みかけのミネラルウォーターを思いきり吹き出した

「ありゃ…そういう話って苦手?」
「ゲホっ!いいいいえっそんなことないですっ!」
「じゃ得意?」
「はっ…え、いえ、ゲホッゲホッ」
「僕の本業ホ○トだって知ってるでしょ?」
「はいっその辺はもうびしっと」
「変な人生でしょ」
「そそそんなことないですっっ!凄いです!」
「何が?」
「思った道を思ったように進んでいくっていうところです」
「君は違うの?」
「僕は何となくこういう人生なんで…何ていうか…羨ましいです」

「今回僕ギスの会社めちゃくちゃにかき回しちゃってるけど、嫌じゃない?」
「最初は驚きましたけど…でも納得です」
「不安じゃない?」
「僕は…何の取り柄もないですけど…車が好きなんです」
「うん」
「ですからドンジュンさんが夢っておっしゃった時すごく嬉しかったです」
「うふふ Le Reve だっけ」
「このまま頑張って下さい…そのために僕が職を失っても文句は言いません」

太陽の下の明るいモドキ君がすごくいい顔してた

「今の感動した…君ってすごくいいひとだ…キスしよう」
「えっあっちょ…っと…」
「カン・ドンジュンの言うこと聞けないの?」
「ひっ…いえっ」

いきなり覚悟を決めて目をぎゅっと閉じたモドキ君のタコのような口に
僕は笑い転げたいのをこらえてサンドイッチのプチトマトを突っ込んでやった
そのあと真っ赤になって文句言う彼にちゃんと謝りました

気持ちよく笑って食べて大満足のランチのあと
彼にはもう1回活躍してもらった

「君の知識とアイディアの力を貸して」
「え?」
「同僚のお土産なんだけどさ」

僕は任された分のみんなの説明をして彼に分析配分してもらった
ひとりひとりの解説の時間にはモドキ君はひぃひぃ笑ってた
僕の同僚ってそんなおかしいやつらか?
まぁ僕の説明にもかなり尾ヒレが付いてたけどね

テソンさんにはサン・ジェルマン大通を入ったところにある
老舗の食材店”ダ・ローザ”で持って帰れそうなものを見つくろって
ギスの調査に1枚噛んでくれてるらしいmayoさんには
クリスティーヌ・フェルベールのジャムを特別に1個追加

全員とオールインの人達、
忘れちゃいけないオーナーにはジャン=ポール・エヴァンのチョコレート

ホンピョにはオリーブで作った石鹸&ボディブラシでしょ
ドンヒにはピカソのネクタイピンでしょ
テジュンさんとヨンナムさんにはカッコつけて葉巻
イヌ先生とウシクさんにはパリメトロの渋いTシャツ、これけっこうモノがいい

ギョンジンさんには”ミロのヴィーナス”ウォッチ
いつもお騒がせのイナさんにはロダンの”考える人”Tシャツ
パリジェンヌ希望のシチュンには思いきりイタリア人のモナリザTシャツで
怪しいもの希望のジホのおっさんにはキリストのTシャツね

モドキ君の的確な判断のおかげですんごく効率よく買い物ができた

彼を待たせてホテルに土産を置きもう一度外に出た
荷物をまとめに帰る前にもう一カ所だけ行きたい所があった

「ここの下には第1次大戦の無名戦士が葬られているんです」

そんな場所でもある凱旋門の上からは360度パリが見渡せる

僕はその圧倒される情景に身体が熱くなった
自分の足元から放射状に広がるパリの街、フランスの街、ヨーロッパの大地
そしてそのまま世界につづいてる地面と空まで満ちてる空気

「すごい…こういう風景見てると絶対前に進まなきゃって気になる」
「はい」
「さっきの話だけどね」
「はい」
「僕思ったように生きてきたわけじゃないよ…何度だってめちゃくちゃにやられた」
「え…」
「でも確かに…目指してる場所だけは変えなかったかも」
「はい」
「ね…この手の先を真っすぐ、ずうっと真っすぐ行くでしょ」
「はい」
「そうするとね、遥か彼方で見えなくなってちょっと不安になるんだけどね」
「はい」
「ぐるっと地球の裏側を通って…ほら後ろね、反対側から僕の背中に戻ってくるの」
「…」
「真っすぐ進めば必ず戻ってくる、自分にね」
「ドンジュンさん…」
「ばっか…なに泣いてんだよ」

僕はぐしぐし泣いてるモドキ君を抱いて背中をさすってやった

「僕も…ちゃんと捜します…目指すもの…」
「大丈夫だよ…君はきっともう見つけてるって」
「はいっはいっあうぅ」

ドゴール空港までモドキ君は何かっていっちゃすぐ目をうるませてた

最後にあの借りてた携帯でギスに連絡をいれて
それをそのままモドキ君に渡す

「じゃありがとう…レ・ミゼラブルもありがとね」
「はいお気をつけて」
「今度あっちで会議する時無理矢理ついておいで」
「はいっ自分をアピールしますっ」
「じゃねっ」
「はいっあのっ頑張って下さいっ」

僕はモドキ君にでかい投げキスをしてゲートに入った
やつは出迎えの時と同じ笑顔で見えなくなるまでずっと手を振っていた

搭乗の前にスヒョンに電話をいれる
やっぱり向こうはとんでもない時間なんだけどね

『ドンジュン?』
「うん…ちゃんとひとりで寝てる?」
『さあね』
「これから乗るから」
『予定通り?』
「うん」
『じゃ定刻に迎えに行くから』
「うん…ねえ…早く会いたい?」
『ふふ…まぁね』
「素直に会いたいって言えっ」
『おまえは?』
「会いたいよ」
『え?よく聞こえないんだけど』
「あっいったっいっ!」
『えっ?もう1回』
「ばかっ!もういいっ!」
『ドンジュン』
「なによっ」
『早く会いたい』
「…」
『待ってるからね』
「うん…」

僕は電話をきって大きく深呼吸をした

手を広げて待っててくれるひとがいる
だから思いきり遠くまで行ってみられるのかもね

窓から見える空にまたちょっとギョンビンを思い出して
東に向かうひとの流れにまぎれた

僕のパリ滞在は終った


テジュンさんのしごと  ぴかろん

やっと研修が終わる
明日の昼に研修が終了して、それからざっと反省会があって、五時にはここを出る
イナに会える♪
嬉しい

随分寂しい思いをさせたから…帰ったら、アイツの我儘を何でも聞いてやろうと思っている
今から先輩と飲む
その前にイナに電話を…

『あうっも…もちもちっ』
「イナ?僕だ」
『はううっいいイナしゃんはっ今いましぇんっ』
「…イナったら…ふざけてもう…。なんだよかわいこぶっちゃって…」
『ほほほんとにイナしゃんはいましぇんっぼ…ぼくっでんわをあじゅかってて…あのっイナしゃんわすれてっちって…』
「…君が電話を預かった?(イナの奴、可愛いな…子供の真似して遊んでるんだな…よし…乗ってやろう…)しょうなの?」
『は…はいってじゅんしゃんからのちゃくしんは、のがしましぇんっちってぼく、あじゅかったのれしゅが…』
「…かわいいな…。じゃ、イナに伝言してくれる?」
『はっはははいっ』

「愛してるよ…世界で一番愛してる…。明日の夜にはそっちに着くから…。そしたらお前の我儘、なんでも聞いてやる&%@%してくれっていうなら何度でもしてやるし、明日は…朝まで寝かせない…。覚悟しとけよ…ちゅっ」
『あ…あのぉっ…&%@%ってなんれしゅか?』
「…(とぼけやがってこいつぅ…)××を○○して△△でお前が◆◆になっちゃうヤツだっヒヒっ」
『××を○○して△△でお前が◆◆になっちゃうヤツでしゅね?わかりましたっでんごんしましゅっ』
「こらっイナ!」
『らからイナしゃんはいましぇんよ』
「…解った解った、とぼけてろ…明日帰ったらただじゃ置かないからな…ん~ちゅっ。じゃあね」
『…ただじゃおかない…ながいでんごんれしゅ…うけたまわりましたっれは…』
「こらっちゅーは?」
『え…ぼくがしていいんれしゅか?てれましゅ…ちゅ…きゃはっ』
「(くぅぅっ…なんて可愛いんだっじゅるる…)じゃ…待ってるんだぞぉけひひん…。帰る前にもう一度電話するからね」
『あい、しょのようにちゅたえましゅ…』

全くあいつたら…甘えっこなんだからな…ふふふん…
そうだ…先手を打って僕から甘えてやろうふふふ…そういうパターンはきっと…くふん…新鮮かもぉぉん…

「テジュン、何をニヤニヤしてるんだよ!」
「ああ…先輩…。先輩のせいで長く待たせた恋人に電話してたんですよ!」
「なぁに言ってんだか…。いこう」

僕は先輩と研修会場近くのバーに行った
先輩は、僕がホテリアホテルに入った頃は支配人だった
三十手前で総支配人という要職につき、ホテル始まって以来の優秀な人物と言われていた人だ…
家庭の事情で総支配人を辞めざるを得なくなり、皆に惜しまれて退社された方だ…
僕はなぜか気に入られていて、先輩が辞めるとき、僕に次期総支配人をやれと命じたのだ

その後、家庭が落ち着き、またホテルに戻るのだと思っていたら、こんな研修業を始めた…
今のところ、ホテリア系列のホテルや企業の社員教育を行っている
今回もその系列ホテルの接客に関する研修で、中堅どころの人員を集め、よりよいサービスと能率のよい仕事について、一週間のセミナーを開いたのだ
丁度辞めたばかりの僕は、最も実践現場に近い第三者という事で、講師にも受講者にも質問を浴びせられていた

だから…イナに電話する暇もあまりなかったのだ…ふぅ…

薄暗い照明が落ち着いた雰囲気を醸し出しているバーのカウンターに、先輩は腰掛け、バーボンでいいかと僕に聞いた
…バーボンと聞くと…四つの薔薇を思い出す…
それと同時に少し胸が疼く…
僕の胸はきっと…バーボンという言葉に反応して、いつまでもこうやって甘い疼きを感じるのだろうな…
いい思い出にできてよかった…

「なぁんだか色っぽくなっちゃって、やな感じ」

先輩が口を尖らせて言った

「まずは、研修終了お疲れさん…正確には明日の正午までだけどね」

コツンとグラスを合わせて乾杯する

「どうだった?初めての講師は…」
「…僕の知っている接客のノウハウをそのまま喋っただけですから…僕としては思ったよりラクでした…。でも受講者たちは満足できたのかな…」
「辞めてすぐだったからな、現実味があってみんな納得してたぞ。テジュンの講義が一番人気があったみたいだぜ」
「またまたぁ、なんか企んでませんか?僕を持ち上げていい気にさせて、無理難題を押し付けようってんじゃないの?」
「無理難題じゃないよ…。それに、評判がよかったのはほんとだぞ。具体的な例がとてもわかりやすかったって。ほら、今日の後半、感想書かせたろ?ざっと目を通してみたけど、お前がホテルの総支配人を辞めた事が不思議でたまらないって。
ホテルの仕事が大好きだってみんなに伝わったんだよ」
「…はぁ…」






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