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ぴかろんの日常
リレー企画 149
恋愛中毒 6 れいんさん
言われるがまま、彼女の剥き出された背中を抱きしめる
滑らかな肌が僕の胸にぴたりと合わさった
その時、鎖骨のあたりに僅かに痛みが走った
「あっ…痛っ…」
「テジン?」
彼女が身体を離し僕の様子を伺った
鎖骨の辺りに触れて確かめる
僕の指には真新しい血の跡
「あ…」
もう一度同じところに触れてみる
ある物があるかどうかを確かめる為に
僕の…ペンダント…
あいつと揃いで作った…クロスの…
彼女と身体を合わせた時、クロスが僕の身体を傷つけた
ほんの少し切り裂かれたそこからは血が滲み出していた
まるで僕の罪を責める様に…
僕の心の中の霞がしだいに晴れていく
ゆっくりと、ゆっくりと、大切なものの輪郭が見えてくる
霞の中のあいつは寂しげに微笑んでいた
そして睫を伏せ、俯き、僕に背を向け遠ざかって行った
だんだんとあいつの姿が霞みで覆われていく
手を伸ばしても名を呼んでも振り向きもせず、その姿は見えなくなる
行かないでくれ…スハ…
僕は咄嗟に身を起こした
いつも身につけていたそのペンダントはするりと僕の身体から離れた
無残にちぎれたそれは小さな音をたてて床に落ちた
僕はそれを拾い上げぎゅっと握り締めた
「テジン…いったいどうしたの?」
「…」
「あ…血が…痛むの?」
僕は何も答えず、床に放り出されたシャツを拾い上げ
彼女の肩にふわりとかけた
「テジン…?」
「すまない」
「…」
「エジュ、もうよそう。大切なものを…見失うところだった」
「テジン…」
エジュ、よく聞いて
僕は今までいろんな物を失った
誰にも言えない秘密も持ち続けていた
その結果、たくさんの人を傷つけた
君の事も傷つけていたんだろう
僕は今、僕に残った、ただ一つの大切なもの…
それだけは失いたくない
他のものは失くしても、それだけは…すっと守り続けたい
「テジン…何も失くしたりしない。何でもない事でしょ?私達は秘密を守れる」
いや、秘密を持ち続ける苦しみがどれ程のものか僕はよく知っている
もう、自分に嘘はつきたくない
清らかなあいつの前で堂々としていられる自分でいたい
すまない…
エジュ…許してくれ
僕はベッドから立ち上がり衣服を整えた
そしてもう一度、何か言葉をかけようと彼女の方を振り向いた
湖の休日2 足バンさん
大丈夫だと思った
ジュンホ君たちとの楽しい一日は
かえって希望のようなものに繋がるかもしれないと思った
過去と現在が別物であるということをはっきりさせられるのではと
僕はもう新しい今を歩いているんだということを
甘かった
ジュン君の笑った目元はあまりにあの子に似ていて
僕はたちまち足をさらわれ暗いあの頃に引きずり戻される
こういうことに積み重ねてきた忍耐の経験など何の役にも立たない
スヒョクが気にしているのもわかっている、充分わかっている
僕の不安定な状態を扱いかねているのもわかっている
でも今の自分を全てさらけ出したら
あいつはきっとその重さに戸惑うことは目に見えている
自分の傷をやっと忘れかけているあいつに
そんな新たな荷を負わせることはない
スヒョクという人間と出会い
若い人生に刻まれた深い傷口を何とかしてやろうとするうちに
思いもかけずその奥底に惹かれていった
スヒョクが笑う度に僕の中の澱がひとつ消え
スヒョクが拗ねる度にずっと忘れていた優しさなんてものが蘇る
スヒョクを抱きしめる度に生まれ変われるような気がした
このまま生きて行けるんじゃないかと
もう何もかも忘れて笑っていられるんじゃないかと錯覚した
少し前にあの書類が来るまでは
特捜の研究所からの検査要請
特殊な遺伝子操作で生まれた僕の追跡調査の依頼だ
もう前回の検査から2年が経とうとしていたことを僕は忘れていた
正確に言えば忘れようとしていた
それからまたあの頃の夢をみるようになった
しばらくみることのなかった夢
自分の命より大事なものを亡くしたあの地獄のような日の夢
そしてまた飲むようになった
祭の頃からずっと飲まずにいられた薬を
俺は樹々の向こうの高い空を見上げているソクさんの手を握って
草の上に膝をついたままずいぶん長いこと動かずにいた
あまりに暗い目をしたソクさんにかけられる言葉などない
俺が何を言ったってきっとただ言葉が上っ面を撫でるだけに決まってる
本当にひとが辛い時
どんな慰めの言葉も意味をもたないことはこんな俺でも知っている
でも…
俺には何もできないんですか?
俺はこんなあなたを目の前にして
ただこうして側で見てるしかないんですか?
ソクさんは硬く目を閉じ何かを振り切ったように目線を戻した
その声は思いがけず静かで明るささえ感じさせるものだった
「行こう…ジュンホ君たちが心配する」
「ソクさん…」
「悪かった…ちょっと昔を思い出しただけだ」
「ソクさん俺…」
ソクさんはさっと立ち上がって水辺に行くと顔を洗って戻って来た
タオルがないと言ってベストの裾でゴシゴシ拭くと
俺の顔を真っすぐ見て言った
「今の話はもう忘れてくれ、いいね」
「でも…」
「僕個人の問題でみんなの楽しい1日を台無しにするわけにはいかない、いいね」
「でもソクさん…」
ソクさんの口元は微笑んでいたけれど目はそうではなかった
僕の手をとりジュンホ君たちのいる所にずんずん歩きだした
掴まれた手がひどく冷たく感じられる
僕個人の問題…
その言葉が俺の耳に不安な響きを残す
「ソクさんたちどこに行ってたのっ!ほら見て見て1匹釣れたよ!」
「おおっやったな!指はもう大丈夫か?」
「うんっ男はすぐに立ち上がんなくちゃいけないんだよ」
「うははっさすがチャンプの息子だな」
そこにはいつものソクさんがいる
ジュンホ君やみんなの笑顔の隙間にするりと入っていく
自分をねじ伏せて向こう側とこちら側の顔を変えて
まるで歪んだ鏡を通り抜けたSFの主人公のように
ジュン君はひとしきり遊び終わると
違うポイントを探しに行こうとしきりにソクさんを誘った
ソクさんは彼とふたりだけになるのには抵抗があるのか
なんだかんだと渋っていたけれど
結局せがまれ倒されて腰を上げた
ふたりはほぼ対岸まで遠征していった
「ジュンはすっかりソクさんになついちゃったわね」
「ソクさんってかわりましたよね、スヒョクさん」
「うん…そうだね…」
「まつりのさいしょはすっごくこわそうだったんですよね」
「まぁ…そうなの?あのソクさんが?」
「いまとはべつじんみたい…だったんですよね?スヒョクさん」
「うん…」
「何かあったのかしら」
「スヒョクさんとのまめまきがきっとたのしかったんですよ」
「豆まき?スヒョクお兄ちゃんお豆をまいたの?」
「ウォン、とてもすばらしいショーだったんだよ、ね、スヒョクさん」
「…うん…」
俺はジュンホ君とソニョンさんたちの明るい顔から目をそらし
遠くのソクさんを見た
ジュン君に何かを一生懸命手ほどきしているように見える
いつもの笑い声がかすかに聞こえる
大丈夫ですよソクさん、みんなちゃんと楽しんでますよ
何ごともなかったような幸せそうな構図に
フィルターをかけて見ているのは俺くらいのものです
自分のことしか考えていないのは…俺くらいのものです
ぼうっとしていて俺まで針で指を刺した
小さく滲む血をすいながら
俺はその指先を強く噛んだ
闇夜の調査&お留守番_7 妄想省家政婦mayoさん
「ぁ..ぁぅ..ぉ..お嬢...後生だ..."中心"で足踏みしてくれるな..」
「^^;;..(しっちゅれいしみゃした)..」
ガレージから出した
HL-FLH1200
に俺が跨ると..懐にいるはるみは俺の”中心”に立った..
額をぺチン#すると..はるみは..みゃん>o<..っと渋い顔した後..シートの隙間にトン#と足を揃えた..
皮ジャンのジッパーを喉下で止めたところにはるみがちょん#っと首を乗せ..顔を覗かせる..
エンジンを掛け単車を走らせると..はるみの髪がリボンと一緒に風に靡いた..
少し前..ピンクに点滅した携帯がキッチンのカウンターの上をうねうねと走った..
俺の着信ランプはテスがオレンジ..テソンがブルー..闇夜がピンクだ..
他の3人も同じようだが...3人は俺の色はグリーンにしているようだ..
携帯を開いた..
「何処だ..」
「漢南大橋の..」
「すぐ行く..」
俺は3秒で電話を切ってガレージへ降りた..
漢南大橋を望む空き地に闇夜の単車が見えた..俺は隣に単車を止めた..
膝を立てて腰を下ろしている闇夜に懐のはるみを抱かせた..
コツン#
闇夜に小さなぐぅーを落とし..隣に腰を下ろした
「ごめん..」
「ん..ぃゃ..ピンクのランプが泣きべそかいてたからな..放っておけんだろ..」
闇夜は力無く「ふっ..」とため息ともつかない声を洩らした..
「釜山だったんだろ..」
「ぅん...テソンの様子は?」
「んまぁ...いつもよりはちょっと落ち着きが無かったか..」
「そぅ..」
「テスが一日...ねぇ..ねぇ...とテソンにぺとぺとくっついてた..」
「よかった...温かいな..テスシは..」
「ん..はるみも一緒だったよな?」
「みゃ#..^o^」
「調査は大方終わったのか?」
「ぅん..」
「テソンより先に聞くのは憚れるが..どうだった..」
「ぅん..やっぱ..似てる..それに..」
「ん..」
「”あのこと”の前は親子は幸せだった..と思う..そう思える人物だった..」
「ん..それが判っただけでも無駄足ではなかったな..」
「ぅん..でも..」
「...お前の不安はテソンが受け入れられるか..ってことだろう?..」
「ぅん..テソンの中には”あのこと”以来..父親が存在してないんだ..」
「身体に残ってるからな..想い出したくなくても..思い知らされる..」
「ぅん..」
「だが..お前はテソンが理由を知るべきだと思ったんだろ?..」
「ぅん..自分から知ろうとしないと..と思った..」
「俺はテソンに自分から闇夜に聞けと言っておいたぞ..」
「ぉ..」
振り返った闇夜に俺は瞬き頷き顔で答えた..
「...お前ならそうするだろう思って言ったまでだ..」
「サンキュ..」
「ん..」
「テソンには心のバランスを本当に取れるようになってほしいんだ..」
「今は落ち着いてるだろう..お前がいるから..」
「私は居なくなったらどうなる?」
「おい!..」
隣の闇夜は漢江の水面を見据えている..
目を伏せた後..俺に振り返りくすり#と笑った..
「ぁぁ..ったく..お前は..ビックリさせるな..」
「ごめん..」
闇夜は自分の腹を横に擦った..
「ぁのさ..」
「ぷっ..今日の晩飯は..ラムラック(骨付きラムの塊)..遊牧民風...」
「ぁぅ..ラムは苦手なのに..」
「ラムは太らんぞ..」
「わかってるけどぉ..」
動物性脂肪には融点があり..ラム肉の融点は44℃と人間の体温よりも高く..体内で吸収されない..
脂肪を燃焼する効果のある L-カルニチンの含有量は豚肉の2倍以上ある..ダイエットの強い味方だ..
「今日はテソンがいいラムラックを仕入れてきたぞ..」
「ぁぅ..そぅ..」
「オニオンと蒸し煮にした..ソースもオニオンとトマトだ..今日は食えよ..」
「ぁ..アラッソぉ..」
「どうせ朝から何も食ってないだろ..」
「ぉん...」
「まぁったく..その癖は直らんのか#..」
コツン#
俺は闇夜の頭にまた小さなぐぅーを落とした..
「>_<....その"遊牧民風"ての..どこのおなごの料理です??..」
「ふん..言えるか..」
「そう来たか..ならば..当ててやる..」
「ふん..当たるか#..」
「トルコ..アラブ系..ぃゃ..ソースからすると..ぉ!!..ウィグル!!..ウィグルだな..クッチ#」
「@_@..」
(くっそぉぉー...ビンゴだっ##..)
闇夜とはるみがクスクス,,.んみゃみゃ(>▽<)とじゃれている様を見ながら俺の口元が緩んだ..
闇夜の笑いがふっと途切れ..俺と闇夜は漢江の水面に向き直った..
トントン#..
っと..闇夜の背を軽く叩き..手のひらをそのまま背に置いた..
闇夜は俺が手のひらに力入れずとも重みを感じるほどにほんの少し身を傾けた..
数十秒の後..闇夜が小さく深呼吸をすると俺の手のひらが軽くなった..
闇夜ははるみを抱き上げ俺の腿に乗せた..
「もう少し風に当たるんだろ...」
「ぅん..」
闇夜は俺が目と顎で指すと自分のジャンパーのジッパーを首まで上げた..
声なく首を傾げた闇夜に俺はまた..瞬き頷き顔で答えた..
「ちぇみ..テスシに怒られちゃうね..単車に乗って..」
「ぷっ..大丈夫だ..」(んまぁ..抓られて..噛み噛みくらいだろうな..)
「ごめん...」
「気にするな..2人が帰るまでには戻れよ..風邪をひくとテソンが心配する...」
「わかった..」
「ん..」
俺はまた闇夜の背を軽く叩き..はるみを懐に入れ..立ち上がった..
単車のエンジンを掛け走り去る前に闇夜に視線を向けた..
闇夜は両手を後ろについて空を仰いでいた..
ミソチョルの伝言ゲーム ぴかろん
んとんと…こまったれしゅ…
たしかにぼくは、てじゅんさんからのちゃくしんはのがしましぇんっちったけろ…でんごんはのがしましぇんっちってないれしゅ…
れも…ぐしゅっ…れんごんをたのまれたのれ、ぐしゅんうえん…いなしゃんにれんごんしなくでばいげばぜんぐじゅっぐじゅっ…
え?なじぇないてるのかって?
しょれはっ!
てじゅんしゃんがっ!
『いみふめい』な、『なんかいなことば』をしようしたからにほかならないのれしゅっ!
あっ…ぼくが『なんかいなことばぢゅかい』をしてしまいました…きいっ
ちゅいミンチョルしゃんのくちょうをまねしてしまいましたっ
ええっと…いなしゃんはまだかえってきましぇんし…かえってきたとき『しぇいかく』にちゅたえなくては、『しんゆう』…いえ『だいしんゆう』としての『な』がしゅたりましゅ…
ええっと…なんでしたかなぁ~…
『あいちてるよ…しぇかいれいちばんあいちてる』
ん!じゅんちゅうれしゅ
『あしゅのよるにはしょっちにちゅくから。しょしたらおめぇのわがまま、なんでもきいちゃる』
しゅっごくじゅんちょうれしゅ!
れも『もんらい』はここかられしゅ(;_;)
『FAXしちくりっちうならなんどれもしちゃるし』
FAXを?なんどれも?
『あしゅは…あしゃまれねかしぇねい。かくごしちょけよ…ちゆ』
んとんと…FAXをおくりちゅじゅけて『あしゃ』まれねかしぇないっちうことれしゅね?
しょんなまわりくどいことしないで、ちょくしぇちゅいなしゃんにあえばいいれしゅ!
あしゅはてじゅんしゃん、かえっちくるっちってたじゃないれしゅかっ!ぶぁか!
さいごの『ちゆ』ってなんれしゅか!
…あ…『ちっ』てしたうちしたのら!しょうら!
ていせい…
『かくごしちょけよ…ちっ』
しょうら…ぼくはなんで『ちょくしぇちゅ』いなしゃんにあわじゅに、FAXしちゅじゅけるのかぎもんれ、てじゅんしゃんにしちゅもんしたんら…しょしたらましゅましゅ『いみふめい…』
『むふふをぱくしてしゅるるんでおまえが「しゅらいむ」になっちゃうヤツだっヒヒっ』
このままちゅたえていいのれしょうか…いみがまったくとおりましぇんね…
FAXというものはしょんなものれはありましぇん…
てじゅんしゃんはおとななのにFAXのただしいちゅかいかたをしらないんれしゅね…きのどくに…
『むふふをぱくして』
…ああ!わかりまちた!しゅうせいしておきましょう…
『とうふをぱくっとして』
でしゅ!ぶぁか!
『しゅるるんでおまえが「しゅらいむ」になっちゃうヤツだっヒヒっ』
『しゅるるん』で『しゅらいむ…』…
『とうふ』れしゅから…
『しゅるるん…しゅるるん…しゅらいむ…』
ああっ!わかりまちた!
『とうふ』を『ぱかっ』といれて『しゅるるん』としゅりしゅりしゅると!『しゅらいむ』みたいにどろどろになりましゅ!
ちゅまり…とうふを『しゅりこぎ』で『しゅって』、なんらかのおりょうりにちゅかうのれしゅ!しょうにちがいありましぇんっ!
きっととうふを『しゅったもの』をちゅかったりょうりを、いなしゃんはだいしゅきなんれしゅ!ひひん
ぼくって『てんしゃい』ら…
てじゅんしゃんの、わけのわからないことばをこんなにりかいれきるなんて…えっへん
『あしゅかえったらただじゃおかないからにゃ…ん~ちゆつ』
これは…
きっとこうれしゅ…
とうふをしいれたてじゅんしゃんが、りょうりしゅるけどおかねをはらえといってるんれしゅ!けちれしゅぅ~いなしゃんがかわいしょうれしゅぅ~
らから『いやく』をしゅるとこうれしゅね…
『あしゅかえったら、ただではたべしゃしぇないからにゃ…んーっちいっ』
…ふたりはけんかしてるのれしょうか…
とうふとは、しょんなにたかいものなのれしょうか…
しんぱいれしゅ…
ああしょういえば…しゃいごのれんごんがこうれした…
『じゃ…まってるんだじょ…かえるまえにもういちろ、れんわしゅる』
…うっ…こっ…こりは…もしかしててじゅんしゃんは…おこってるしゅか?!
『じゃ…ま…じゃ…ま…。じゃま』!(@_@;)
じゃま?いなしゃんが…じゃま?…しょ…しょんなはじゅはない…
れは…
はっ…
もちかちてぼくが『じゃま』
…
…
あうあうえうえうぐしゅぐしゅ…
でじゅんじゃんにえくっ…ぎらわ゛れ゛だぁぁぁ(T_T)えくっ…
なんてないてるばあいじゃないのれしゅ…
あくまれも『れんごん』を『しぇいかく』にちゅたえなくては…
『じゃまっちってるんだじょ…かえるまえにもういちどでんわしゅるからね…』
おめーはきえろ…と…ぐしゅ…てじゅんしゃんはしょんなことを?あうあう…ぐしゅ…
…
「ミソチョル~ごめんなぁ。俺電話お前に預けっぱなしだっ…。ど…どうしたんだミソチョル、こんなに泣いて!」
『あうあう…てじゅんしゃんからのれんごんをちゅたえましゅあう…』
「え?てじゅから電話があった?」
『ぐしゅ…ありばぢだ…ぼくはぎらわれだのれじゅ…』
「は?なんで?お前てじゅと喋れたの?」
『あい…「じゃま」っちわれまちたぐしゅ』
「てじゅがそんな事いうはずねぇよ!」
『くちょうはやしゃしかったれしゅけど、ことばにとげがありばぢだ…いなしゃんぼ、きをちゅけてくだじゃいあうあう』
「…とにかく…伝言をきこう…」
ぼくはれんごんをちゅたえばぢだ…
いなしゃんはくびをかしげていばぢだ…
『しゃいごにじゃまっちいました…あうあう』
「…」
いなしゃんは、もうよなかだっちうのにてじゅんしゃんにでんわしました
「てじゅ!俺だ!イナだ!…え?恋しい?…ばか…俺も恋しいよ…。明日帰って来るんだろ?…ん…ん…。いや、俺、携帯持っていくのわすれててさ…こうこうこうなんだよな…でその親友がこうこうこういうんだけど…お前ホントにそんなこと言ったの?…え?ええええっ…。…。…。あ…。ぅん…。ぁぅ…。あん…おん…。…。…ばか…。ん…んん…わぁったぁ~おやしゅみ…愛してる…ん…ちゅ」
いなしゃんはでんわをきると、ほや~っとしたかおをして(ちっとミンチョルしゃんのぽやんがおににてましゅ…)ぼくをだきしめました
「ミソチョルによろしくって…。訳のわかんないこと言ってごめんって。お前の事、俺と間違えて変なこと言っちゃったって…くふっ」
ぐ…ぐるじいっ…
『てじゅんしゃんといなしゃん…なかよしれしゅか?』
「けへっあはっ…あったりめぇじゃん…」
『FAXをひとばんじゅうしちゅぢゅけるようななかよしれしゅか?『ふけいじゃい』れしゅよ』
「んだなぁFAXを一晩中じゃ不経済だよなぁ」
『しょれにとうふを…』
「んだなぁ…豆腐は豆腐のまんま、食いたいよなぁ…くふふん…」
『…ぼくをじゃまっちったのは?』
「じゃぁ…待っててねって言ったの!…ミソチョルの事邪魔にするような奴がいたら俺が蹴り倒してやるからな…」
『あい…あい…じゃぼくはきらわれてないれしゅね?』
「当たり前だろ?ずっと前にお前を丁寧にクリーニングしてくれて、ミンチョルのとこまで運んできてくれたこと、お前忘れたの?」
『あうっ…しょうれした…あい…てじゅんしゃんはやしゃしいかたれした…ぼくのかんちがいれしゅね…』
「なあ…伝言ってのは、聞いたことを正確にそのまんま伝えればいいんだぞ。お前が理解できなくてもそのまんま言えば…ってお前に言ってもなぁ…」
『なんれしゅかっ!じかいからはかならじゅや『ごきたいにしょう』ようにがんばりましゅっ!』
「…ぷっ…。わかったわかった(^o^)じゃ、次回からは頼んだぞ」
『あいっ!…ところであしゅはいなしゃんたち…なかよしれしゅか?』
「え゛っ…」
『ミンチョルしゃんとミンみたいにぐいーんとかひゃひゃひゃひゃとかえいっえいうぐっ』
「…」
っとかしゅるんれしゅか?しょのときいなしゃんはやっぱり『あっあってじゅ』とかいやいやしながらてじゅんしゃんにしがみちゅいたり…やっぱりはだかんぼで『くみたいそう』のれんしゅうしたりしゅるんれしゅかってききたいのにっ!いなしゃんはぼくのくちをおしゃえてはなしてくれましぇん…
まっかなかおしておめめがうるうるしてましゅ…
きっと『はーど』なんれしょうね…なかよしくみたいそう…って…けひっ
あしゅになったら…てじゅんしゃんがかえってきましゅね…
よかったれしゅね、いなしゃん…けひっ…
Recollection オリーさん
僕らは2階の寝室へ連れて行かれた
後ろ手に縛られ、ベッドの脇に座らされた
僕を撃った弾は右腕の付け根を貫通していた
「大丈夫か」
教授が僕に囁いた
「それより彼らに心当たりは?」
「ない」
「アラブ系のテロ組織に間違いありません。先生に用があるみたいです」
「そう言えば」
「何か?」
「半年ほど前にMI6が訪ねてきた」
「MI6?」
「例の論文の事だ」
「彼らは何て?」
「あれを書いた経緯を聞かれた」
「それだけ?」
「そう。関係あるだろうか?」
「無関係ではないでしょう」
「これからどうなるだろう」
「わかりません」
押し入ってきた男は4人
配管工の身なりをしていた
変装のつもりだろう
拉致するつもりならすでに連れ出されているはずだ
暗くなるのを待っているのか
それとも誰かと待ち合わせか
僕らを見張っているのは二人、後の二人が階下にいた
腕の出血は完全に止まっていなかった
早く脱出しないと
動けなくなる前に・・
その時、下で動きがあった
外から新しい足音が増え、
しばらく下で止まった後、階段を上がってきた
ドアが開くと先ほどとは違う男が立っていた
見張りの男達が姿勢を正して敬礼した
この男がリーダーだろうか
男は教授をじっと見据えて近づいてきた
そして教授の前で膝を折った
「久しぶりだな、エリック」
男は訛りのない流暢な英語で話しかけた
「まさか、君なのか・・」
教授の声が震えていた
振り返ると顔から血の気が引いていた
「アーメッド・・君なのか・・」
教授は震えながら呟いた
アーメッドと呼ばれた男はにやりと笑った
浅黒い肌に鋭い黒い瞳ときれいな歯が印象的な美しい男
だが引き締まった体からは危険な闘いの香りが遠慮なく発散されている
「エリック、本当に久しぶりだ」
男はその唇を震えている教授の額にあてた
教授と男の短い会話から二人のつながりがわかった
二人はハーバードで出会っていた
もう10年以上昔の話だ
恋人として付き合いながら
互いの知的レベルも競い合って
深い絆で結ばれていたらしい
だがある日男は突然教授の前から姿を消した
夏休みが終わっても大学に戻らず、それきりになった
そして今、教授の目の前に乱暴なやり方で現れた
「そっちの彼は?」
男が初めて僕を見た
「私の助手だ」
「怪我をしたのか」
「あの男がいきなり撃った。手当てしてやってくれ」
男は笑った
「それより用件を話そう」
「・・・」
「君の論文を読んだ」
「論文?」
「とぼけないでくれ。君が10年前に書いたやつだ」
「あれは・・」
「あれは僕のアイディアだ」
「君がアイディアを出し、僕がまとめた」
「そうだな、僕の考えを見事に組み立て理論づけた」
「共著にしたかった。君がファーストオーサーを望むのならそうしてもいいと思ってた
でも君は姿を消してしまった。僕はイランの君の実家まで訪ねたのに」
「よけいなことだ。僕に家族はいない」
「ご両親も心配していた」
「アメリカやイギリスに尻尾を振って生きてる腐った奴らだ」
「今何してる?」
「戦いだよ。世界を根底から作り直す崇高な戦いだ」
「アーメッド、どうして・・」
「今はそんな話をしてる時間はない。君に大事な用があってきたんだ」
「身代金なら用意できない」
「そんなことじゃない。どうだ、僕らと家族にならないか」
「君と家族?」
「迂闊な事に君があの論文を発表した事に最近まで気づかなかった。
君の分析能力は秀でている。二人で組めば最強の戦略が作り出せる」
「僕の専門は心理学だ」
「君の知らないことは教えるよ、学生の時のように」
「僕にテロリストになれと」
「僕に言わせればそっちがテロリストだ。物の見方も立場で変わる」
「詭弁だ」
「カビの生えた古臭い学校で幼稚な学生を相手にしてるよりずっと有益だ」
「アーメッド・・」
「暗くなったらここを出る。また返事を聞きにくる。一緒に行くか、それとも・・」
「アーメッド!」
「僕は君を撃ちたくない。当然だろう、懐かしい恋人だ」
「彼はどうなる?」
「必要なのは君の頭脳だ。君の若い恋人には興味はない」
男はそう言うと立ち上がった
教授はアーメッドと叫んだが、男は振り返らず出て行った
入れ替わりにまた一人男が入ってきた
見張りが3人になった
教授はしばらく目を閉じていた
何かを思い出すように
「初恋だった」
搾り出すような声がした
「アーメッドは僕にとって忘れられない初恋だった」
教授はそう呟いた
「まさかテロリストになったなんて」
「イランの人ですか」
「そうだ、イランの名家の出なのに、なぜ・・」
「ビン・ラディンもそうです」
「信じられない・・」
教授はそう言うと頭を振った
僕はその時、やっとのことで縛られていた手首のロープを解いた
正面を向いたまま隣にいる教授に囁いた
「逃げましょう」
教授は僕を振り返った
「逃げるチャンスはここにいる時しかありません」
「どうやって?」
「トイレに行きたいと言って縄を解いてもらってください」
「…」
「見張りがついて行くでしょう。その隙に僕が残った連中をやります。
帰ってきたら見張りもやりますから、先生はそのまま窓から」
「君は?」
「後から行きます。用心のため銃を持っていってください」
「銃?」
「護身用です」
「うまくいくだろうか」
「いきます。僕はロープがとけてますから心配しないで」
「腕は大丈夫か」
「大丈夫です」
「しかし…」
「逃げなかったらテロリストの仲間入りか、殺されるかどちらかです。
僕はもっと前にやられます。先生、やりましょう」
「…」
「バルコニーから降りる時は気をつけて。怪我しないでください」
教授は僕をじっと見つめた
「顔色がよくない」
「だから早く逃げましょう。ぐずぐずしていたら僕は動けなくなる」
教授が僕の赤く染まった肩先を見つめた
「お願いがひとつあります」
「何?」
「先生のズボンのポケットに銃と一緒に腕時計を入れます。
もし僕が逃げられなかったら、先生、それを持ち主に返してください」
「君…」
「大丈夫、逃げますよ。高い時計なので傷つけたくないんです」
僕は見張りの目を盗んですばやく足首から拳銃を抜いた
そしてはずした腕時計と一緒に教授のズボンのポケットに押し込んだ
「君はほんとうに…」
「もし僕がすぐ行かなくても気にせず逃げて。助けを呼ぶ事が大事ですから」
「…」
「早く…見張りを呼んでトイレに行きたいと言ってください」
教授は僕を見つめていたが、あきらめたように首を振った
そして見張りの一人に声をかけた
「トイレに行きたいんだが」
見張りの一人が振り返り僕たちの方へ近づいてきた
「こんな時にトイレだと?」
見張りがそう口を開いたその瞬間、突然窓ガラスが割れる音がした
そして僕は信じられない光景を見た
恋愛中毒7 れいんさん
その瞬間、目に入ったその光景に僕は凍り付いた
ベッド脇のサイドボードは無造作に開かれていた
彼女は銀色に光るペーパーナイフを自分の喉元に突きつけていた
唇は血色を失くし、体中ぶるぶると震えて
「エジュ!何をするんだ!」
「…あの子の所に戻るのね…」
「やめるんだ!」
「…行かせない」
「エジュ…」
「貴方を殺して私も死ぬ」
「エジュ…落ち着くんだ…さあ、それを僕に渡して」
「嫌よ!」
「いいから…渡して」
「来ないでっ」
僕はそっと彼女に近づき腕を掴んだ
ベッドの上でペーパーナイフを奪い合い、彼女ともみ合いになった
必死だった
もう誰の事も傷つけたくない
なんとか彼女を落ち着かせなければ…
彼女は半ば錯乱状態になっていた
しばらくもみ合いが続き
彼女がバランスを崩してベッドに倒れこんだ
僕は彼女に覆いかぶさる格好になった
「あっ…!」
脇腹の端に強い衝撃を感じた
もみ合った拍子に、銀色の刃が僕の身体を傷つけた
血が滴り落ち、真っ白い寝具がポタポタと赤く染まる
「ああっ…テジンっ!」
その赤い染みを見て彼女の瞳に光が戻った
彼女は呆然と血染めのナイフを見つめ、弾かれた様に手からナイフを取り落とした
小さく響いた金属音でナイフが床に転がり落ちたのがわかった
急に身体の力が抜け、僕はゆっくりとベッドに仰向けになった
「私…私…なんて事を…ごめんなさい…ごめんなさい」
「テジン!テジン!しっかりして…」
エジュが取り乱し泣き叫んでいる
意味もなく僕の傷口を手で押さえながら
彼女の手もまた赤く染まっていた
「大丈夫…ほんのかすり傷だ」
「ああ…テジン…私…」
エジュ…君、どこもケガはなかった?
そう…よかった。、無事で。
…そんな顔するなよ
僕は…君を悲しませたくないし、傷つけたくもない
だから…解ってくれるかい?
あのまま君を抱いたところで君はどうなる?
君は一夜限りの慰めを受ける様な、そんな女性じゃない
愛がない男に欲望のまま求められても、君の誇りを傷つけるだけだ
彼女は顔を覆い小刻みに肩を震わせ僕に縋りついた
僕は優しく彼女の髪を撫でた
エジュ…僕はね、あいつの笑顔を曇らせたくないんだ
自分の気持ちも裏切りたくはない
あいつは僕を信じて待っててくれてる
君の事だってきっと信じているはずだ
僕が君をなじった時だって懸命にかばっていただろう?
そういう奴なんだ
真っすぐで、純粋で…陽だまりの様に愛を降り注ぐ
そして僕はそんなあいつに惚れてるんだ
男だとか女だとかそんな事は問題じゃない
カン・スハという人間の全てを愛している
だから…あいつの所に戻るよ…
胸を張って堂々と…
きっとあいつ…待ちくたびれてるな…
馬鹿みたいに約束通り待ってるんだ
一人でずっと…
早く行かなきゃ…早く…
段々と意識が薄れていった
極度の疲れと痛みで僕の視界がぼやけていった
涙でぐしゃぐしゃのエジュの顔がぼんやりと見えた後、僕は瞼を閉じた
テジュンさんのしごと 3 ぴかろん
昨日先輩がほのめかしていた『不自然なカップル』について、ディスカッションしている
受講者の感想を読んだ中から興味深い質問があったのでと、先輩が切り出した
受講者たちは最もな意見を述べている
ホテルマンとして、どんなお客様にも気持ちよく過ごして頂けるように努力する
その基本は叩き込まれている
しかし、やはり質問者のようにどうしても心の奥底で理解できないでいる…
だから…心からの接客ができていないのではないかと不安になるという意見
あるいは、そんな人もいるのだと、自分とは考え方が違うのだと割り切って普通に接するようにしているという意見
皆、いい加減ではない…
自分なりの考えや答えを持っている
そして、その答えを常に疑問視しながら毎日の仕事をこなしている
前向きな奴等だと思う…
僕は彼らの意見をじっと聞いていた
二十数名の受講者たち全員に先輩は意見を述べさせた
「さて…君はどう思う?」
突然先輩が僕の方を向いた
僕は…明確な答えを用意していたわけではない…
昨日の夜、寝泊まりしている部屋に戻り、この問題について考えようとしていた時、携帯が僕を呼んだ
イナからの電話だ
飲みにいく前に電話を取ったのは、イナの大親友のミソチョル君だそうで…
確かミソチョル君はぬいぐるみのはずなんだが…
僕が喋ったのはそのミソチョル君だと言うのだ…
ほろ酔い気分だった僕は、そんな事もあるだろうと簡単にイナの言い分を受け入れ、そして少しイナと話をした
イナの笑顔が頭のなかを駆け巡る
イナの拗ねた様子が浮ぶ
イナの…温かい手を感じ
イナに抱きしめられているような気がした
僕は
イナが
好きです
電話を切った後、イナと僕はどんな風に見えているのか考えてみた
もしかしたら受講者の中に、僕の恋人が男のイナだという事を知っている人がいるかもしれない…
ホテリアの系列だ…僕の同僚や部下だった奴等を知っているという人が、きっといるんじゃないかな…
明日…先輩の言っていたその質問が出たら…僕はどう答えたらいいのだろう
僕達はいわゆる『不自然なカップル』なのだから…
「みなさんの意見を聞いていて、僕と同じだなと思いました。かつて、僕もあなた方と同じように理解できずにいた。でも、お客様には誠意を持って接したい…。僕の心の乱れをこのお客様は勘付いておられるだろうかと気になる…。けれども僕はやはり理解できない…。そういった場面に出くわすたびに、何度も同じ問答を繰り返しました。出てくる答えはいつも微妙に違う…。それは自分のコンディションにも関係があったな…。
それから、割り切って考えるという人、いましたね?次の段階で僕もやはりそのように考えました。この方々は僕とは違う考え方なんだと割り切って考えれば心を無にして接する事ができる。そう思っていました。それを実行しました。でも…『心が無い』のですから『心の篭ったもてなし』ができるはずがない…。これではいけないと理解しようと務めたこともあります。ところが理解しようとすると…なかなか理解できないんです…。どうして?なぜ?疑問が次々と湧いてきます。本当に、つい最近まで、僕は迷いながらそういったお客様に接してきました…」
皆しーんとして聞いている
僕は少し水を飲み、また続けた
「不自然なカップルとは何か…。定義づけようとするならばそれは…『生命を生み出すことのできない、または生み出すことが出来にくいカップル』となるのではないでしょうか…。年老いた者と若者の組み合わせで、愛の行為を経て命を宿す確率は?
もしも命を宿したとしても、それは『種』として果たして『優良な命』なのか…。『不自然』という言葉は、『自然の掟』から出た言葉だと思います。
生物の愛の行為は本能として組み込まれている…種の保存のための行為だから…、だから『命を宿す可能性のない愛の行為は不自然』と、そう、僕達は『本能に教えられている』のかもしれません。
それでも世の中には老いた人と若者のカップル、同性同士のカップルなどがたくさんいます。どうしてでしょう…。僕もどうしてそうなのか…ずっと解りませんでした」
今なら
イナ…今なら…解るよ…
「本能的に自然か不自然かを分けている僕達。それはさっきも言ったように『種の保存を図るため』に組み込まれているものだと思います。でも、人間は言葉を理解し、言葉によってお互いの心を理解しうる生物です。理解しようと思えば理解できるはずです。
『不自然だ』と決めつけているのは誰ですか?そう思っている自分なんです。『不自然だ』といわれているご本人達にとって、それは『不自然』な事だと思いますか?違うでしょ?ご本人達にとっては『ごく自然の…自分たちにとっては当たり前のこと』なんです…。
その方々は、ご自分たちが世間からどんな目で見られているか、よぉくご存知だと思います。
中には重圧に耐え切れず、自分の気持ちを隠そうとしたり、世間を恨んだりする方々もいらっしゃるでしょう…。
では、ホテルを訪れてくださるそういった方々はどうだろうか…。同じように重圧を感じていらっしゃるでしょう。それでも堂々と、お二人で宿泊される…。
それは…自分の心に…」
イナ…
急に涙がこみあげてきたよイナ…
言葉を止めた僕に、会場の受講生達がざわめく
僕は唾を飲み込んで続ける
「自分の心に正直に生きていらっしゃるからだと…僕は思います…」
何度も唾を飲み込んで、込み上げてくる涙を堪えた
「ただご自分のパートナーが好きなだけ、心から愛しているだけなんです…。僕は…そう思います。みんなが、いわゆる『普通の男女間の恋愛』をするように、『不自然なカップル』の方々は、普通に…普通に恋愛していらっしゃるだけ…、そう思います」
涙が零れそうになり、僕は言葉を止めて俯いた
『なぁイナ…、お前僕の事、好きか?』
『しゅきらよ…知ってるくせに…』
『どうして僕を好きになったの?僕は男なのに…』
『どうしてかなぁ…。れも俺さ…、昔スヨンを好きだったのと同じようにてじゅのことが好きだよ。気持ちは…同じだよ…。ああでもてじゅのことのほうがもっともっとしゅきだけど…』
『…男でもか?』
『お前だってそうじゃんか!どうして俺を好きになったのさ!』
『…それは…。それは…』
『答えられないだろ?俺だってどうしてだかわかんない。きっと何か惹かれるものがあったんだろうなってそれは思うけど…』
『…そうだな…』
『…好きになったのがたまたまてじゅだったって事かもしれない…。たまたまてじゅで、てじゅはたまたま男だったってだけだ…。それじゃ答えになんないか?』
『…いや…。そうだね、僕だって…好きになったのがたまたまイナだったんだよな…』
『不思議だな…』
『不思議だよね…』
『「好き嫌いに理屈はない」ってセリフがさ、ロッキーの中で出てきたんだよ。ほんの、何てこと無いセリフなんだけど…。俺、それって真理ってやつかもって思ったなぁ…』
『お前にしては難しい言葉使うじゃないか』
『バカにしてないか?ふんっ!…でも…俺がてじゅを好きだっていうことには理由付けも理屈こくこともできないんだよな…』
『イナ…』
『ん?』
『頭使いすぎたろ、早く寝ろ』
『もうっ!ふんっ!』
いつだったろう…イナと交わした会話を一言一句間違わずに思い出した…
イナ…お前はやっぱり…凄い奴だな…
いつも自分に嘘をつかない…
ふ…それが悪い方に向いてくときもあるけれど…
僕は、震える声で言葉を繋いだ
「好きになった人が、たまたま老いた人だったり、若い人だったり、同性だったりしただけの事であって…、それは自然界の掟に反する事なのかもしれないけど、でも…彼らは自分の心に正直に生きているのだと思います…。その意味で、僕はその『不自然な方々』も『普通の人』となんら変わりは無いと思っています。
ただ、中にはどちらか片方の方が、悪い事を考えている場合もあります。トラブルになることだって確かにあります。けどそれは『普通の、男女のカップル』
にも同じように言える事です。それをよく覚えておいてください。
世の中にはいい人もいれば悪い人もいる…。全てにおいて言えることです。その判断をどう下すか…。とても難しい。だから僕達は日々お客様に誠心誠意接して、人を見る目を磨いているのではないかと思います。失敗してもめげずに、その原因を考え、今度は失敗しないようにトライする…それを何度も繰り返してやっと一歩進めるのだと思います。ゴールはありません…答えもありません…。いつも自分が納得いくように考えて行動することが大切だと思います…。僕の意見はこんなものでしょうか…」
やっとの事で話し終えた…。果たして僕の気持ちは皆に伝わっただろうか…
こんな答えでいいのだろうか…
そんな不安よりも何よりも、僕はイナに会いたくて堪らなかった
僕の好きなイナと言う人は、とてもとても凄い人なんです…
イナがOKするなら、ホントに連れてまわってやろうか…研修に…
どうする?先輩…
僕は零れ落ちる涙と、緩む口元とをそのままにして、俯いてイナを思っていた
湖の休日3 足バンさん
湖で夕暮れまで遊んだ
予想通り釣りの成果でみんなの空腹を満たすには足りず
持ってきていた材料で夕食を作ることになった
わずかな収穫を炭で焼いているソクさんと子供たちは
とても楽しそうだった
汚れた水をどうやって飲めるようにするか、なんてサバイバル話で盛り上がり
ソクさんのアクション付きの説明にジュン君など目を輝かせて聞き入っていた
斜きかけた陽が3人の笑い声を包んでいる
金色に揺らめく水面がそのシルエットを柔らかく取り囲んでいた
「あれ…スヒョク、どうしたの指…怪我したの?」
「うん…釣り針で…」
「なんだ~ジュン君と同じだなぁ、ねぇジュン君」
「スヒョクお兄ちゃんも泣いちゃった?」
「…泣かないよ」
「大人の男は泣かないんだよ、泣くのは子供だけだ」
「僕もう子供じゃないもんっ」
「小学生が子供じゃなくてどうするのよ」
「ウォン!うるさい!女はいちいちツッコんでくるんだから」
「こーらジュン!何ですかその言い方は!」
ジュンホ君ファミリーの暖かい空気に取り巻かれていると
このまま何でもなく笑って過ごすことができるような錯覚をおぼえる
ソクさんは時折ジュン君をそっと見つめているけれど
何の不自然なところもない
ソクさんの笑い声が幻のように俺の頭に響く
ジュン君たちはもっと遊びたいと言い張ったが
暗くなって少し雲行きが怪しくなってきたこともあり解散ということになった
ジュンホ君もソニョンさんも僕たちとの1日にとても感謝してくれた
特にジュン君はソクさんにしがみついて情熱的に別れを惜しんでいた
「ね、ソクさん、また一緒に遊んでくれる?」
「もちろん」
「約束だよ、今度は僕の飛行機のコレクション見せてあげる」
「飛行機好きなの?パパのお店に戦闘機に乗ってたお兄さんがいるよ」
「ぐえーっその人にも会いたいなぁ」
「さっき言った車のお兄さんやテコンドーのお兄さんもいる」
「おべんきょうをおしえてくれるひともいるよ」
「うっお勉強かぁ~」
「いつかお店の皆さんで遊びにいらしてくださいね」
「みんなで来て来て!」
大騒ぎの別れの儀式のあとジュンホ君たちは帰っていった
彼らのいなくなった湖は実際以上に静かに感じられる
対岸の何組かの灯りと遠く聞こえる笑い声だけが暖かさを残していた
ソクさんは腰に手を当ててため息をつき
俺の視線を感じて微笑んだ
車に寄りかかって煙草を取り出すソクさんをぼんやりと見る
ライターが映し出す仄かな横顔のシルエットはいつだかの夜を思い出す
「ん?」
「思い出した…祭の時のホテルの庭だ…」
「なにが?」
「芝生に座ってそうやって何も言わずに煙草を吸ってた」
「ああ…月の綺麗な晩ね」
あの時
あなたは何でも素直にものを言うドンジュンのことを
「素直でかわいいやつだ…羨ましいか?」と言った
俺が答えられずにいると
「僕は羨ましいな…そういう生き方がしてみたい」って
そして「これからでもなれるかな」って
そう言ったんですよね
俺はゆっくりソクさんに近づき
車にもたれたままの彼にそっと抱きつき肩に顔をうずめた
ソクさんの片腕が俺の腰を優しく抱く
「どうしたの?疲れた?」
「ソクさん…俺はどうしたら…ソクさんの支えになれるんですか?」
「スヒョク…どうしたの?」
「答えてください」
「…」
「答えて」
「僕の側にいてくれるだけで…それで充分だよ」
「充分なんですか?」
俺は肩に頭を預けたままソクさんの指から煙草を取り
浅く吸ってからゆっくりと煙を吐き出した
「側にいるっていうのは身体が側にあればいいってことですか?」
「スヒョク…」
ソクさんは俺の腕を支えての身体を離し顔を覗き込んだ
何も言わずに見つめるその目は
聞き分けのない子供を見るような保護者の目のように見えた
きっとそうではなかったんだろうけれど…
俺はソクさんの指に煙草を差し込んで車の向こうに回り
助手席に乗り込んだ
少し佇んでいたソクさんは煙草を携帯灰皿に入れると車に乗り
何も言わずにエンジンをかけた
道中ずいぶん長い間俺たちは黙っていた
「雨…降ってきましたね…」
「うん」
「レンタカーは明日朝返せばいいんですか?」
「うん」
「どこかに泊まっちゃいます?」
「え?」
ソクさんがハンドルを握りながら何度も俺を見た
俺は苛ついた気持ちになった
いったいソクさんに何を求めたいのか
自分の気持ちをどうしたいのか
どう現していいのかさえわからない自分に苛ついた
「どうしたんだよ…スヒョク…さっきからおかしいよ」
「側にいればいいんですよね」
「スヒョクいったい…」
「いいですよ今日抱かれたって」
ソクさんはひどい急ブレーキをかけ俺は一瞬ベルトにしがみついた
「スヒョクどうしたって言うんだ」
「抱かれたっていいって言ったんです」
俺…何を言ってるんだろう
「言いたいことがあるのか?」
「言わないのはソクさんでしょう」
「スヒョク今日のことは…」
「ソクさん祭で言ったじゃないですか、僕も辛い、でも逃げてないし忘れたふりもしないって」
何のためにこんなことぺらぺらしゃべってるんだ
「逃げても忘れたふりもしてないけどねじ伏せてる」
「スヒョク」
「お子さんのことも奥さんのことも何も解決しようとしてない」
「子供の話は…」
「まだ過去のドツボの中にいるんだ」
「スヒョク!」
ソクさんは一瞬俺の胸ぐらを掴みそうになり…
かすかに震える手を引っ込めた
「何でそこで引っ込めるんです!殴ればいいじゃないですか!」
こんなこと言うつもりなんてないんだ
ソクさんを責めるなんて…そんなのお門違いもいいところだ
「俺はソクさんに会って重たい服を1枚ずつ脱ぐように楽になってきた
ソクさんもすごく変わったって思ってたけど、結局一番奥はしまわれたままじゃないですか」
「スヒョク…」
「鍵かけて誰にも触らせないようにして何も見せてくれない!」
「…」
「俺は結局何の役にも立ってないんじゃないですか!」
ソクさんは無表情に俺から目をそらして
雨つたう向こうの窓の外を長いこと見つめていた
そしてエンジンをかけた…無言のまま
何か言ってください…
涙が出た
情けなくて
自分が情けなくて
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