ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 156

なえいるぎ☆じゅの_3  妄想省家政婦mayoさん

○月○日
ヨンジンと歩いていたときにヨンジン母にバッタリ会った
僕は挨拶したけど..ヨンジン母は僕とヨンジンをきっ#と睨んですたすた歩いていった..
ヨンジン母は僕という人間を見ようとしない..僕の条件が気に入らないのだろう..
ヨンジン母の親友ジュリおばさん(ジュンホママ)も男運が悪くて苦労したらしい
貧しい男が壊れていく様をヨンジン母は目の当たりにしているのだ..
ヨンジン母はヨンジンに結婚するか別れるかどっちかにしろ!!っと言ったらしい
ヨンジンは結婚すると息巻いている..
頑固な母と頑固な娘だ..ふぅ..

○月○日
ヨンジン母に会った..僕の下宿を見たいと言うので連れてきた
僕の部屋を見てヨンジン母は呆れ果て..絶句した
そりゃそうだ..僕の部屋は土足の[倉庫]だから
ヨンジン母の積もり積もって胸いっぱいに詰め込んでいた感情が吹き出た..
僕への不満や苛立ち..自分の娘への情けなさや切なさ..言葉にこめて声を荒げ吐き出した
僕は俯いて黙って聞いていた..散々吐き出したヨンジン母は踵を返し帰って行った
僕を心配して飛んできた大家さんに情けなく笑うしかなかった
カンアジは僕が抱き上げるとくぅん..っと鳴いた..カンアジぃ..僕も哀しい..

○月○日
ヨンジンが突然「結婚しましょう」と言った..

「後悔しないのか?」「絶対しない..」
「当分は苦労するよ」「喜んでする」

仕事も立派な部屋も後でいい..僕さえいればいい..とヨンジンは言ってくれた

○月○日
ヨンジン家に行ってヨンジン母に会った.
僕たちが結婚すると告げると..四角顔のヨンジン母は

「無謀なのか勇気があるのか解らないっ..結婚の意味がわかってるの!!」っと言い放つ..
「結婚するならしてみろっ..」...恐ろしい形相..

でもヨンジンは「結婚する」っと母に言った..

「マンデロヘっ!!」(勝手にしなさいっ)..母の返事
「私たちが本気だと言うことを認めて貰うために結婚するわ」..ヨンジンは静かに母に言った

妥協しない母..妥協しない娘..ふぅ..

○月○日
テヒョンの見舞いに行った..
顔の包帯は取れていた..頭を固定している器具はもうすぐ取れるらしい
テヒョンは訪ねる僕の声色でヨンジンと僕の様子がわかるみたいだ
人の心配してる場合じゃないのに..
僕はテヒョンの足をマッサージしてあげた..感覚が戻るように願いを込めて..

○月○日
車のバイトまでの空き時間..ヨンジンとカラオケに行った
僕はヨンジンのために「君を愛してる」と歌いました
♪朝が訪れて 目を覚まし 君に囁く
 君を愛してる ノム ノム サランヘ(いっぱいいっぱい愛してる)
 君を優しく包んであげる
 僕たちに哀しい別れはない~~♪♪
高音がちょっとキツかったけどヨンジンの顔を見ながら一生懸命歌った(^o^)

○月○日
ヨンジンと2人で大学の恩師に仲人を頼んだ..結婚式の牧師役だ
恩師は「障害が多い程絆は強くなる..」と僕等を激励してくれた
ヨンジンは僕の手をぎゅっ#っと握ってくれた
僕たちは辛いけど不幸じゃない..僕等は挫けません...

○月○日
僕は部屋の模様替えを始めた..
倉庫を土足厳禁の[部屋]にしてヨンジンとの生活を始めたい..
荷物を全部出して壁にペンキを塗っているとレース仲間のヒョンヒ..ヒョンウクが来た
僕がペンキを塗っていると2人も手伝ってくれた
スンヒが遅れてきた..「もう来ないからね!!」っと僕に悪態ついたけど
僕は「スンヒもみんなも大事な友達なんだ」っと言った
そしたらスンヒは僕のことを「最低..」って言うんだ..
「何でだよ..」って僕が膨れて聞いたらさ..
「結婚するのに僕が素敵だから..」だって..僕..ちょっと照れた

○月○日
走行運転のバイトの前にテヒョンの顔を見にいった..
頭を固定していた器具が取れた..顔を動かせるようになったテヒョンは明るい声で僕を迎えた

「上半身も動かせるようになったんだ」
「本当か?」
「ぁぁ..」

嬉しそうなテヒョンの笑顔も僕に勇気をくれる..
必ず歩けるようになる#..頑張れ..テヒョン

「僕たちが愛し合ってることを皆に知らせたいんだ..」
「じゃ..しっかり見てやるさ.」

テヒョンは結婚式に来ることを約束してくれた..
希望のある人は貧しくなんかない..
僕には仲間もいるし..こんな僕と一緒に歩もうとするヨンジンがいる

○月○日
結婚式が終わったら..大学復帰..
車のバイトは一回5万ウォン..20回で100万ウォン..学費が130万ウxンか..
やっぱり車のバイトがない日はホ○トかなぁ..でも一日幾らなんだろう..
ヨンジンにはBHCの話はまだ言ってない..
ちょっと狡いけど一緒に暮らしてから言おうっと..
結婚式が終わったらあの”にゅーはーふもどき”に連絡してみよう..

僕の結婚式はもうすぐです..
ち○うの回数も増えた..結婚したらち○うより先に進みます..くふふっ#(*^_^*)
~~~~~~~~
ジュノはにやついた顔で日記のノートを閉じた..
ジュノの顔を見たカンアジは尻尾を振った


闇   ぴかろん

僕はラブを抱きしめたままベッドに転がった
ラブは僕の体に覆いかぶさり唇を求めた
今僕を求めているラブは、僕の話を聞いたらどう変わるだろう…
怖い…
この子もまた離れていくのだろうか…

ラブは唇を塞いだまま僕のシャツのボタンを外しにかかる
丁度その時、ドアの開閉音がした
僕ははっとしてラブの腕を掴んだ

「待って…」
「…アンタが欲しいんだもん…」
「…ラブ…」
「全部欲しいんだもん…俺のモノだって思いたいんだもん…」

涙が幾筋も流れている
僕の話を聞いた後も…そんな風に思ってくれる?

僕はラブの頭を胸に抱き寄せて寝っ転がったまま話をはじめた
どこから話していいのか解らなかった…


ギョンジンがぽつりぽつりと話し出した
あのホテルにギョンビンを探しにやって来たギョンジン
諜報部を辞めてホ○トになるとの連絡を受け、ギョンジンはせせら笑いながらあそこに行ったんだそうだ…
そして知った
可愛くて仕方のない弟が、自分に反抗ばかりしている弟が、唯一の家族である弟が…
恋している
それも男に…
許せなかったとギョンジンは言った
女ならまだしも男だなんて…

奥さんを亡くし、息子を遠ざけ、一人ぼっちになったギョンジンの心の支えはギョンビンだったんだ
反発していても自分を愛してくれていると感じてたって
だからギョンビンの幸せを願って、いい家庭を築いてほしかったって…
でもギョンビンは婚約者を亡くし、仕事に全てを賭けるようになった
ギョンジンと同じ仕事だったからうまくフォローもできたし、危険から遠ざけていたんだって
一度だけ、連絡がうまくいかず、ギョンビンを殺しかけたって言ってた

「もしギョンビンがあの時死んでたら、僕もすぐに後を追ったと思う…」

それ程大切に思っていたんだね…
ぎくしゃくしていた兄弟仲をなんとか修復したくてたまらなかったって…
二人とも、愛する人を失った…だから今度こそ解り合えると思ったんだって
失う事を怖れて、二度と人を愛さないなんて言ってたのに…ギョンビンは愛する人を見つけた…
それが男だった…。身も心も捧げてしまったらしいって聞いて、ギョンジンは逆上した…
どんな手を使っても取り戻したいと固執し執着した
深く愛していた分だけ憎さも増した
周りは敵だらけで自分からギョンビンを奪おうとしている…
ギョンビンはこんなところで幸せになれるはずがない…
でも当の本人はすっかりミンチョルさんに参っている…
ギョンジンは、自分の心が歪んでいるのを感じてた…
でもそれをどうする事もできず、歪みはどんどん大きくなっていった…

「皆に憎まれてた
あの時はそれが面白かった
なのにイナは僕に興味を示した
弟よりも僕の方が好きだなんて言った
今でもそうだけど、イナはいつのまにか僕の心に入り込んできて、痛いところを突くんだ
誰にも知られていない部分を…あいつは本能で見つけ出すんだ
冷静な僕の心はイナを見るとかき乱された
うっとおしくてうるさくて、僕はなんとしてでも弟を連れて帰るんだと頑張った…

祭の前の日だったろうか…。一々つきまとうイナが邪魔で邪魔で仕方なくて、黙らせてやろうと思った…
テジュンさんの部屋のベランダに張り込んで、テジュンさんとイナの情事を盗み見た
終わった後、テジュンさんは仕事に戻りイナだけがベッドの上でまどろんでた…
僕は部屋に忍び込んで…イナを…犯してやろうと思った…
できなかったけど…
だって…その時欲しかったのは…」

そこまで言って次の言葉を出すのを躊躇っている
ギョンジンの顔を見た
蒼ざめている
目には涙が溜まっている
それで俺はその時ギョンジンが求めていたのが…実の弟だったのだと解った…

「僕は…狂ってた…。弟が許せなくて…。僕は弟が大好きだった…。僕の生きがいだった…。男を愛するのなら…なぜ僕じゃないんだって…僕は…狂ってた…」

弟を思い通りにしたい…自分のものにしたい…
そんな事、男同士で…ましてや実の兄弟で許されるはずがない…
でも大切な弟は穢されてしまった…
ならば自分が犯しても穢れはしないだろう
だって自分は弟を誰よりも愛しているのだから…
弟を抱いてやる…その思いに囚われた
実の兄に犯されたら、きっと弟は狂うだろう…
そしたら…殺してくれるかもしれない…
愛する弟に殺されたら本望だ…
もうひとりぼっちはイヤだから、弟を犯して、弟に自分を殺してもらおう…その後、弟はきっと狂ってしまい、自ら命を絶つに違いない…
自分達兄弟に残された道はそれしかない…破滅への道筋をギョンジンは何度もシュミレーションした…

「それを止めてくれたのがイナだ
止めただけでなく、囚われていた僕の心を解きほぐしてくれた…
そんな風に固まっていた僕のそれまでの人生を…イナは根気強く柔らかくしてくれたんだ…
僕はイナを犯そうとしたのに…」

弟を抱いたって誰も幸せになれない…
自分が弟に持っている愛情は…肉親の愛情だったから…
恋じゃないから…
どろどろの気持ちが一つずつキレイになって、ギョンジン自身がそれを一つずつ飲み込んでいった…

「弟を犯さなくてよかったと思った…
もしあの時、イナがいてくれなかったら…
昨日話しただろう?ギョンビンがゲイの教授に襲われてるかもしれないって…
その時のギョンビンの気持ちや言葉が、僕の中に落ちてきてて、どうしていいか解らなかったって…

もしあの時…、僕がギョンビンを犯していたら…
ギョンビンはこんな風に苦しんでたんだって…
そう思った

怖かった
僕はそんな怖ろしい罪を犯そうとしてたんだ…
自分の執着心が怖かった…
弟を壊してしまったかもしれないと思うと怖ろしかった…
そして今…一体どうなってるのか解んないけど、弟が壊れてしまってたらどうしようと思う…
ミンチョルさんを行かせてよかったのかどうか…わかんない…
不安で堪らないって言ったのはそういう事だよラブ…。とても短時間では話せないだろ?
多分もっとドロドロだったと思う、僕のあの時の思いは…」

僕にはそういう…好きな人に執着するところがあるんだ
きっとお前にも執着してしまうだろう…
怖かったら…離れていってもいいよ…
もし離れるのならお前にもっと執着する前に…
今のうちにそうしてくれる?
今なら僕は狂わないから…

ゆっくりと…気持ちの整理をしながら話してくれたギョンジン
テジュンとの四日間の後、ギョンジン、めちゃくちゃおかしくなってたくせに…
俺を振り向かせたくて自分を見失ってて…

「知ってるもん…大丈夫だよギョンジン…俺、怖くなんかないよ…。アンタになら殺されたって構わない…」
「ラブ…こんな僕でもいい?」
「…愛してるよ…ギョンジン。大好きだよ…」
「ラブ…」
「ありがとう…辛い事思い出させてごめんね…」
「ううん…お前が居てくれたから僕はこんなに幸せになれたんだ…。ずっと愛されてないと思い込んでた…父さんにも母さんにもギョンビンにも…
でも…お前が僕を受け止めてくれて、僕は気づいた…。僕は愛されてたんだって事に…。僕は…今とても幸せなんだ…ラブ…」

ギョンジンの話はそれほど衝撃的ではなかった
俺よりも話すギョンジンが辛そうで見てられなかった
そんな風に思いつめて自分を追い込んでたんだね…
知らなかった…
だからイナさんに頼るんだね…
よく解ったよ…

前よりもずっとアンタが愛しくなったよ…
愛の深い人だね…でも…

アンタはどうだろう…
俺の…俺の事を知ったら…
今までみたいに愛してくれるんだろうか…

「俺の事知ったら…アンタはどうなるだろ…。幸せだなんて言ってられないかもしれないよ…」
「え?」
「…俺の方が怖ろしい人間かもしれない…」
「…ラブ?…」

ずっと隠しておけばいいのかもしれない…
けどそれじゃ俺は本当の俺じゃない…
本当の俺を知って、それでも俺を受け入れてくれるだろうか…
俺は…唾を飲み込んで、掠れた声で話し始めた…


La mia casa_25  妄想省家政婦mayoさん

1階のベーカリーは昨日工事が終わった..南側の正面は例のアイアンパネル..
東側は外壁に続きパタパタと折れる開閉式のガラスドアになっている
天気のいい日にはちょっとしたオープンカフェになる..
とはいえ小テーブル3にチェアが6しかない..なので外壁の前にアイアンのベンチを置いた

男3人で店に風を入れ..床やカウンター掃除をしたり..ウィンドウを磨き終えた頃合いに
しなやかな手のひらをぱぁっと広げ..カフェの方からヨンジュンが顔を見せた..

「ハァ~イ〃^o^」
「ぁ..ヨンジュンさんだっ^_^」
「ったく..クチバシ長い奴だ..」
「ぉ..それは..何か美味しい物あるわけね..先輩」
「無花果のケーキがある..食うか?」
「もっちろん#」

テスがテソンと一緒に工房で粗熱を取っていた無花果のケーキと紅茶を持ってきた..
無花果のケーキはトルコ産の白無花果を白ワイン..ローリエ..シナモンで一日マリネし..
3割を角切り..残りをペーストにして生地に練り込み..型に入れ..フレッシュ無花果で表面を覆い焼いた物だ

「先輩..こんだけ?もっと大きく切ってくださいよぉ~」
「ぷっ#..食ってみろ..結構ガツンと来るはずだ..」
「どれどれ..」

ヨンジュンがフォークで切ってひとくち口に運んだ

「これ..食後の酒欲しくなるなぁ..」
「ん..食後用だからな..量は食えん..」
「少し持っていく?ヨンジュンさん」
「ぁ..いいの?..はは..持ってく持ってくぅ^^」

テスとテソンが手土産の分を詰めに工房へ入っていった..

「ヨンジュン..また何処ぞのおなごか?」
「まぁね..」
「ったく..ぉ..この間の分は振り込んだ..追加の仕事もあるかもしれん..」
「先輩..この間の続きになる..」
「恐らく..」
「OK..」

ヨンジュンと俺は低い声音で短く受け答え小さく頷いた..
テスからケーキの入った箱を受け取ったヨンジュンはまた手のひらをぱぁっと広げ帰っていった

テスとテソンが俺等3人の紅茶を持ってきた

「ちぇみ..」
「ぅん?..何だ..テス」
「リュルさんってさ..似てるんでしょ?」
「ん..一応な..だが向こうの方が顔デカイ」
「ぷっ#..ちぇみより大きいのかぁ..どんな人?」
「何故気にする..」
「ぅん?..ちぇみ顔だしさぁ~」
「ん..」
「ちぇみより大人..みたいだしさぁ~」
「ぁぅ..なぁ..テス..リュルの方がいいのか?」
「僕は大丈夫だよ..僕は"ちぇみが"好きなんだもん..」
「はは..だよな..」

「リュルさんって元々飲食業界の人だよね..」
「知ってるのか?..テソン..」
「ぅん..聞いたことがある..レストランやカフェ持ってるよね..」
「ん..そうだ」
「やり手だって闇夜が言ってたけど..そうなの?」
「ん..あちこちに事業展開してる..それに飲食・ホテル業界共同出資の雑誌の製作責任者でもある」
「ひぇ..そうなんだぁ..」
「仕事にはかなり細かいな」
「だからさっき資料チェックしてあげたんだね..ちぇみぃ..」
「ん..そういうこった..」

「かなり強引って噂..本当?」
「ぷっ..闇夜が言ったのか?..テソン..」
「ぅん..」
「[ブラックリスト名誉会長]の異名を持ってる..出版社の[メゾネット]は最近吸収したんだ..」
「そぅなんだ..」
「ん..」

「でもさぁ..ちぇみ..何で会社じゃないの?」
「リュルは郊外にも事務所を構えてるんだ..まぁプライベート用の事務所だな」
「ふ~~ん..自宅は?」
「ん..棟続きで自宅になってる..どちらも自社の撮影で使う時もあるし..他社からインテリアの取材も来るらしい」
「へぇ..」
「今日はそこで撮影があったんだろ..奴は忙しいからな..」
「ふ~~ん..」

「奴の言うにはだな..[僕の時間はね↑?..ダイヤモンドと一緒だよ↑?..]何だとっ##」
「ちぇみ..何..その..↑?..」
「ん..奴のクセだ..語尾が上がる」
「それ..いつも?」
「幹部の前ではかなり違うが..大方そうだな..」

「僕..ちょっと2階に行ってくる..」
俺等と紅茶を飲んでいたテソンがすぅ~と椅子から立ち上がり..
工房から2階へ上がる階段を登っていった

「テソンさん..ちょっと心配なんだ..【ちぇみ顔】のリュルさん..」
「ふっ..奴は一筋縄ではいかんからな..」
「ちぇみぃ~~大丈夫?..mayoシ..」
「何が..」
「リュルさん怒らせるとかさぁ..あと..さぁ..」
「丸め込まれるってか..」
「ぅん..」
「大丈夫だろ..闇夜だ」

っとテスに言って安心させたが..
あの強引なリュルを闇夜が躱せるのか..ちょいとだけ心配な俺でもあった..


2階へ上がるとリビングのPCは閉じていて.側に資料があった
闇夜とはるみは部屋にいて..闇夜はクローゼットを開け着替えの途中だった
闇夜のクローゼットにある数少ないパンツスーツはすべてメンズの生地で作られている..

穿いている黒のパンツと同じ黒の上着が椅子に掛かっていた..
上半身がまだ黒のタンクトップのままだ..シャツに迷っているのだろう..
僕は闇夜のタンクトップから覗く白い腕を取り胸に引き寄せ..僕の胸へ呼び込んだ
デスクにちょっと腰を落とし闇夜の後腰で両手を組んだ..

僕が言葉の代わりに後腰の両手をクイと引いた..闇夜は僕の頬を両手で包んだ..
また僕が両手をクイと引くと..闇夜はしなやかな腕を僕の首に絡め唇と舌で僕の喉仏を擽った..
僕が嫌々と首を振ると..僕の稜線をゆっくりと舌が辿り..僕の唇の隙間をつついた..
舌が絡み合い僕は痺れを感じ後腰の手を緩めた..僕の首に絡んだしなやかな腕が解かれ
僕は闇夜を頭からそっと包んだ..

僕に解放された闇夜はクローゼットから一枚のシャツを取り出し..タンクトップの上に羽織った

「ケーキ出来た?」
「ぅん..夜にはもっと落ち着くだろうって..ちぇみが..」
「そ..」
「ぅん..」

僕は闇夜の玉虫色のシャツのボタンをかけ終えて肩から腕をすぅっと撫でた..


Partner 3 れいんさん

どのくらい時間がたったんだろう
窓の外に白みがかった空が見えた
外界とは遮断されたこの場所で
独りぼっちで放り出されたみたいに、眠れぬ夜を過ごした

遠い昔を思い出した
恋人も友達も俺の前から姿を消して、俺は一人刑務所の中
あの時俺は何もかもいっぺんに失った
生きる希望さえも失いそうだった
無情な世間を恨み、無気力な日々を送っていた。

あんなのはもう嫌だ
独りぼっちなんてもうたくさんだ
やっと人並みに、嬉しいとか楽しいとか人の心が温かいとか…
そう思えるようになったのに…
膝を抱えて丸まったまま俺は今の孤独に耐えていた

微かにノックの音が聞こえたような気がした
俺は耳をそばたてた
トントン…
気のせいじゃない…

「誰だ…」
「…僕だ…」

…ドンヒ!
俺は弾かれた様に飛び起きた
我ながら驚く程に狼狽した

心のどこかでは待っていたんだと思う
来てくれると信じていたんだと思う
…嬉しかったんだと思う

俺はドアまで駆け寄った
ドアの取っ手に伸びた手がふと止まった

…どんな顔して会えばいいんだ
すぐに開けちゃ待ってましたと言わんばかりだ
ここは一つ素っ気無く振舞って…
俺はドア越しにぶっきら棒な掠れ声を出した

「なんでここが解った」
「ヨンナムさんが教えてくれた」

ちっ!兄貴のお節介め
「何の用だ」
「…上着、届けに来た」
ガチャリと扉を開け、渋々と顔を覗かせてみた

「上着も持たずに飛び出して、寒くないかと思ってさ」
「んなもんわざわざ持ってくんな」
俺は照れ隠しにあいつの手から上着を引っ手繰った

「ポケットに財布と携帯入れといた。ないと困るだろ」
「けっ!ガキじゃあるまいし」
俺ってどうしてこう素直じゃないんだろ
ありがとう…ってなんでこいつに言えないんだ…

「それから…腹減ってないか?これ…食べろよ」
ドンヒはギプス嵌めてる両手で、不器用に包みを差し出した

「なんだこれ」
「キムパブだ」
「作ったのか?」
「ああ」
「お前が?」
「上出来とは言えないけど」
「…」
「それじゃ」
「…」
「何かあったら電話しろ」
「…」
「風邪…ひくなよ」

ドンヒは口の端をちょっとだけ上げて笑った
そして俺の頭をくしゃっと撫でた
何か言おうとする前に重い扉ガバタンと閉まった
俺は重い足取りでベッドに戻り、上着を放り投げた

胸の中がもやもやしていた
言いたいのに言えない言葉
素直になりたいのになれない自分
こんな時ってどうしたらいいんだ?
俺わかんねえよ…
誰か教えてくれよ…

むしょうに腹がたってきて頭を掻き毟った
そしてベッドにドサリと足を投げ出して、手渡された包みを開けてみた
中には見た目あまり綺麗とは言えないキムパブがぎっしりと詰まっていた

あいつ…
ケガしてんのに…
身の回りの事さえ不自由だったってのに…
こんな俺のために…


摘み上げると今にも崩れそうなキムパブを一つ口に頬張った
…ドンヒ…
ぐすん…めちゃめちゃマズイぞ…
こんな物食えたもんじゃねえ…
胸が苦しくて喉に詰まって…食えねえよ

もう一つ手に取った
涙がぽとんと落ちた
しょっぺえな…
しょっぺえよ…ドンヒ…

二個目を飲み込む前に俺は廊下に飛び出した
廊下の先でエレベーターを待っているドンヒの背中を見つけた
俺は猛ダッシュしてあいつの背中に抱きついた
抱きついた、と言うよりも体当たりに近かったかもしれない
あいつがはっと身を固くしたのが解った

「ホンピョ…」
「くお…」
「え?」
「一緒に食おう」
「ホンピョ…」
「あんなマズイの一人で食えねえよ」
「あ…」
「責任取ってお前も食えよ」

「怒って…ないのか?僕の事…」
「怒ってるさ。カンカンに怒ってるぜ。…でもよ…お前とな一緒に食いてえんだ」
「ごめん、ホンピョ。ほんとにゴメン」
「馬鹿野郎…」
「責任とって一緒に食べるよ…な?僕の相棒…」
「あ?相棒…?」
「僕達いい相棒だろ?違うか?」
「おおそうだな。特別に俺の相棒第一号にしてやるよ。感謝しろよな。あれ食ったら帰るぜ。相棒」

俺はあいつの背中にくっついたまんまそう言った
あいつの背中はやけに広くて温かだった


Interception オリーさん

階段の最後のステップに足をかけた時気づいた
君の病室の外にたたずむ影に
その影は病室のドアにもたれ、俯いていた
しばらくするとゆっくりと顔をあげ、一瞬天井を振り仰ぐと
何かを振り切るように歩みだした
この階段の方へ
僕は最初君の姿を見ているのかと錯覚した
が、すぐ違うとわかった
怪我はしていないし、髪の毛はメッシュの入った茶色
黒いタートルネックに、モスグリーンのブレザー
黒のスラックスを着こなした姿は君より数段大人びている
彼だ
ひと目でわかった
君の大切な人だと
階段ですれ違う瞬間、つい声をかけていた

「あの…」
「何か?」
「これはあなたの物ですね」
とっさに君に預かった腕時計を差し出した
彼が一瞬大きく目を見開いた
そして僕を見上げた
「どうしてこれを?」
いぶかしそうに首を少し傾けた

君の彼と病院のロビーの椅子に腰をかけた
ちょっと話をしたいと言うと、彼は少し戸惑いながらも後をついてきた
君から時計を預かった経緯を簡単に話した
君と一緒に仕事をしてること
仕事中に襲われたこと
君が撃たれたこと
君が僕を逃がそうとしてくれたこと
その時に時計を託してくれたこと

君の彼は黙って聞いていた
話が終わると頭を垂れ、目を閉じた
何かをこらえているかのように、頬の筋肉がわずかに痙攣した
膝の上で組んだ手が少し震えていた
君は彼に何も話していないのだとわかった
公私の区別をつけていると強がっていた君らしい
よけいな事を話しただろうか
でも彼は知っておいた方がいいだろう
君がどんなに勇敢だったか、そしてどんなに潔かったか

君の彼はしばらくすると大きく息を吐いた
「教えていただいてありがとうございました」
そう言って僕の方を向き直った
その瞳には驚くほど深い色が浮かんでいた
「余計なことだったかもしれません」
言い訳めいた言葉に彼は静かな笑みを浮かべた
「ミンは仕事の事は僕に何も話しません。これも聞かなかった事にします」
「それでいいと思います」
「でも正直、知りたいという気持ちはどこかにありましたから…」
君の彼はそう言うと目を伏せた
時計をもう一度彼の方へ差し出した
「持ち主に返さないと」

君の彼は手を伸ばして時計を掴もうとした
が、時計に触れる手前でその手を握りしめた
「いえ、結構です」
「あなたの物でしょう?」
「僕の時計です。でも今は受け取れません」
「なぜ?」
「ミンから返してもらいます。その時がきたら」

君の彼が色違いの時計をしていることをその時気づいた
それを見た途端、心の中で何かがゆるりとうごめき
その下で小さな炎がちらちらと揺れだした

「それでは失礼します」
彼はそう言うと目礼して立ち上がった
思わず呼び止めていた
「何か?」
「お名前を教えてもらえますか」
「僕の?」
「そう、あなたの」
君の彼は少しの間考えていた
が、決心したように答えた
「イ・ミンチョルといいます」
「私は…」
「いえ、結構です」
「…」
「仕事の事に口を出すと叱られますから
あなたのような方が仕事のパートナーだという事がわかっただけで十分です
お名前を聞いてしまうと想像の世界が具体的になってしまう気がしますので」
私の名前を知らなくていいというその落ち着いた答が
さきほどちろちろと揺れていた小さな炎に油を注いだ
それはあっという間に大きな炎となって姿を現した

「もう一つだけ…」
行きかけた君の彼に声をかけた
「ギョンビン君は仕事だけでなく、ベッドの中でも素晴らしい」
君の彼が立ち止まると同時に振り向いた
振り向いた君の彼の顔を見て
投げかけた言葉が予想以上に効果があったことに気がついた


病室の扉が開いたとき
僕は彼が戻ってきたのかと思って急いで顔を上げた
教授だった
僕は思わず落胆と安堵のため息を吐いた
「具合はどうかな」
教授はもういつもと変わらない様子になっていた
「順調です」
なぜか怪我だけが順調に回復している皮肉な現実があった
「それはよかった」
教授がベッドのそばにきて腰かけた

僕は決めていた事を話そうと思った
「先生、お話があります」
「何だろう?」
「仕事の事です」
「何か?」
「以前の条件を変えていただけないでしょうか」
「条件?」
「何でも言うとおりにするという…」
「どうして?」
「僕には無理でした。ひとつだけどうしても出来ない事があります」
「君に出来ないことがある?」
「おわかりでしょう。僕には資格がありません」
「簡単に資格がないなんて口に出すもんじゃない。無能だと言ってるようなものだ」
「無能でかまいません」
「君は優秀だよ」
「先生のおっしゃるすべてに応える事ができません」
教授は何も答えずポケットに手を突っ込んだ

「これを返すのを忘れていた。大事な物だろう?」
そして背広のポケットから何かを取り出し僕の手のひらにのせた
彼の時計だった
そうです、とても大事な物です
僕は時計を握り締めた
「魅力的な彼に会って里心がついたかな」
「え…」
「君の彼に会ったよ。さっきロビーでね」
どうして…わかったのだろう
彼と教授は何を話したのだろうか
そんな僕の心の声に答えるように教授が続けた
「君に助けてもらったお礼を言っておいた」
「それは…お互いさまです」
「で、彼と一緒に帰る段取りなの?」
「違います」
「そのために来たんじゃないの」
「いえ、それも違います。彼は明日帰るでしょう、僕とは別に…」

僕はまた窓の外を見た
長い時間をかけて飛んできた彼に、僕は本当に帰れと言ったのだろうか
言ったんだ、ひどい事を…

「泣いているの?」
教授の声で我に返った
気づかないうちに頬に涙が伝わっていた
「すみません…」
時計を握り締めたままの拳でそれを拭った
「先生、それよりさっきのお話ですけど…」
「君にできない事がある、という話か」
「もし条件を変えていただけないなら、僕はこの仕事を降ります」
「今更やめると?」
「腕なんか失くしてもかまいません、でも…
僕はあの人を失くしたくないんです、どんなことをしても」
僕はそこまで一気に言うと唇を噛んだ

涙のせいだろうか、教授の顔が歪んで見えた


枯れた花  ぴかろん

「俺は…一度死んだんだ…」

ギョンジンの瞳が僅かに泳いだ
俺は息を吸って仰向けになった
空を見つめ、心の奥深くに入っていく
干からびた感情が投げ入れてある陶器の壺
手を伸ばして、乾いた植物の繊維を取り出す

俺が作り上げた乾燥花
花弁や葉っぱに触れると、それはパラパラと壊れて落ちていく
脆い部分は大地に散らばり、やがて塵になって消えてゆく
細い筋が…消えずに残る
弱々しく見えて強い筋
無理に引っ張って千切ろうとすると、俺の掌を傷つける
枯れて、死んでいるのに生きている

俺が枯れさせた花 俺が散らした枯れた花
捨てることができずに収めておいたその花の骨
火をつければ燃えるだろう…
燃え尽きてしまうだろう…
これが燃え尽きるのは俺がこの世から消える時…
燃え尽きたとき俺は、初めて安らぎを感じるのだろうか…

久しぶりに手にとって眺める
何の感情も湧いてこない
だってもう原型を留めていないもの…
俺だけが知ってる
この骨の元の姿を…

壺に入れて心の片隅に置いてある
いつでも触れられるように
蓋もしてない
忘れないように

カラカラに乾いているのに
こいつだけは壊れない
壊せない
壊してはいけない…

何度も手繰り寄せて、そぎ落として骨にした
随分昔に終わらせた作業
俺が…生きていくためにとっくに終わらせてた作業…

ギョンジンが手繰り寄せた、まだ生暖かい感情と違って
俺のその過去はすっかり干からびている
決して無くならず、俺の心の中で、乾いたまんま生きている

「俺は…人を殺している…」

ギョンジンの瞳がまた揺れた
最初の殺しの記憶から話し始めた

肩の入れ墨を彫った兄貴が、翌日刺されて死んでしまい、彼の仕事が俺に回ってきた
入ったばかりで何も解らず、とにかくこの男の体に鉛の弾を5、6発ぶち込めばいいと言われ、その通りにした

興奮した
俺が放った銃弾が、その男の肉体に突き刺さり、今まで生きていた身体が動かなくなる…
俺がそうしたんだ…俺が…

怖ろしさと緊張と弾をぶっ放した時の解放感と人を征服した昂ぶりと言い様の無い不快感が一遍に訪れて
俺の頭は爆発しそうになった
頭の中がガンガンした
そのまんま俺は車で逃げた
どこを走っていたのか覚えてない
気づいたら女たちが手招きしてた

近寄ってきた女が車でやらない?と言ったので、俺はその場で女を抱いた
抱いたというより、買ったのか…
何がなんだか解らなかった
俺の体の頂点と、あの男を撃った瞬間が重なって、気持ちいいのか気持ち悪いのか解らなかった

俺は組織のボスに命じられるまま、こっちに帰ってきた
ある人物にカバンを渡す…それがボスの命令だった

自分の国に帰ってきた俺は、人を殺した事を忘れて楽しんだ
ううん…忘れようとしてたのかもしれない…
カバンはロッカーの中
何が入ってるかなんて興味なかった
俺はナイトクラブに遊びに行き、そこで彼女と出会った

彼女の名前はチュニャンという
チュニャンは俺を『運命の人』と呼んだ
その日俺のホテルについてきたチュニャンと、俺は寝た
やっぱり頂点であの瞬間を思い出した
異常に興奮した
怖ろしさと快感と不快感…

俺にとってチュニャンはただの欲望の捌け口だった…
だけど彼女はこんな俺を、出会った時から愛してくれていた
一緒に過ごすうちに俺は彼女が気になりだした
でも、カバンを渡す仕事を終えたら、俺はまたアメリカに戻るつもりだったから…
だからチュニャンは欲望の捌け口でしかなかった…

チュニャンは俺をアメリカに行かせたくなかった
それでロッカーの鍵を隠した
やっとカバンを渡すべき人物が現れた
それは昔からの知り合いで、悪い仲間のペクチュンだった…

俺は鍵がない事を知り、鍵を捨てたというチュニャンを殴ったり蹴ったりした
…女の子なのにだよ…
ひどいだろ…
鍵がないと殺されると思ってたから…
俺は人一人殺してるのに…やっぱり自分の命は惜しかったんだね…

ペクチュンは鍵が無いと解ると、俺がチュニャンにしたように俺を殴ったり蹴ったりした
殺される…そう思った…
俺がボコボコにされるのが耐えられなくなって、チュニャンは隠していた鍵を出してきた

俺達はペクチュンにカバンを渡した
ペクチュンは俺に詫び、俺達三人は、その日から暫く遊び歩いた

俺の知らないところでペクチュンはチュニャンにちょっかいをかけていた
カバンの中身は金だから、これを持って二人でトンズラしようって…

…クラブでひっかけた女を連れ込んだペクチュンは、その女とトラブった
その翌日、俺のいない間にチュニャンを自分の部屋引っ張り込もうとしてたペクチュンは、トラブった女の仲間にボコボコにされた…
ペクチュンは…部屋に寝っ転がり、動かなかった
死んでると思った
俺達は逃げ出した

チュニャンはちゃっかりロッカーの鍵を頂戴していた
そして俺と一緒に遠いところへ逃げようと言った
ボスに連絡を取ろうとしても電話が繋がらない…
俺は躊躇ってたけど、チュニャンの言うようにしようと思った

だって俺はチュニャンを愛し始めてたから…
何度も肌を重ねて、ずっと一緒にいて…
俺が初めて得た安らぎだった…

一度お互いを探して迷子になりそうになった事がある…
その時はっきり解った
俺はチュニャンと一緒にいたいんだって…

親父に引き裂かれそうになったけど、俺は外国に逃げてチュニャンと二人で幸せになるんだと決めていた…
金はある…だから…できると思ってた

カバンを持ってタクシーで空港に向かう途中…死んだと思ってたペクチュンが乗り込んできた
俺は必死で奴から逃げた
ペクチュンはカバンを返せと追い、ナイフを出してきた
何度かどこかを刺された…
揉み合ううちにペクチュンにナイフが刺さった
そして奴はまた、動かなくなった…

これで二人…

チュニャンと俺は逃げた
途中でカバンを開けようとしたけど…開かなかった

人を二人も殺してる…
どうしたらいいのか解らなかった…
衝動的にチュニャンが欲しくなって、隠れていたショールームで俺達は縺れ合った

何かの拍子にカバンが開き、俺達は夢中になって中を見た

入ってたのは金じゃなかった

銃とメッセージカード

Kill the Love…

俺を…消せってことか…
ペクチュンがその役だったのか…

警察が俺達を探し回ってた
俺達はそこから逃げた
カップルの車を銃で脅して奪った
逃げ切れるとは思ってなかった…

車の中でチュニャンと二人きりになって
俺は初めて彼女に言った
愛してるって…

彼女が俺を愛してくれたから、俺は彼女といる間、幸せだった…
人殺しだったけど幸せだった…

彼女のこれまでの人生も悲惨だった
だから幸せなまま死にたいって言い出した…

逃げるのもいや、貴方と離れるのもいや…
こんなまま生きていくのもいや…
そう言って俺の手に銃を握らせた

パトカーに包囲されても俺は落ち着いていた
俺ももう逃げるのも彼女と離れるのも、このまま生きていくのもいやだったから…

違う場所で、違う出会いをしていたら…もしかしたら幸せになれたかもしれないのに…
死んで生まれ変わってまた出会えるように祈った
あの世ででもいい、また彼女と出会って、今度こそ幸せになりたいと祈った

前を向いて車を走らせ、涙を流しながら俺は彼女のこめかみに銃を当てた
俺も車も大きく揺れたように感じた瞬間、引鉄を引いた
銃声と、硝子の割れる音と、彼女の頭がドアにぶつかる音が聞こえた
俺は真っ直ぐ前を見ていた
彼女の方は見たくなかった…
その後俺は自分のこめかみに銃を当て、引鉄を引いた

俺の車は高速道路の壁面に突っ込んだ

三人…殺した…


僕の美しい人だから  れいんさん

その夜僕たちはほとんど毎日の日課となっている
愛の確認作業をし、そのままベッドでまどろんでいました

ソニョンさんに腕枕をし、ソニョンさんの艶やかな黒髪を丁寧に手で梳きます
ソニョンさんは心地よさそうにに目を細めて
僕の胸を愛し気に撫でました

これは僕たちの愛の確認作業が満足の行く形で終了した事を意味します
ソニョンさんがそのまますやすやと眠りにつく事もよくあります
これも、起きていられないくらいのかなりの満足度と見て間違いないと思います
今日は作業終了後にソニョンさんとお話をしました

「ジュンホさん、この前湖で釣りをしたでしょう?あの日はとても楽しかったわね」
「そうですね。ソクさんとスヒョクさんのおかげです」
「子供たち、とっても喜んでいたわね。特にジュンはすっかりソクさんの信奉者よ」
「ソクさんはとてもいいひとです。まつりのはじめのころはこわいひとにみえましたけど
スヒョクさんとだいのなかよしになったからですね」
「まあ、怖そうだったなんてとても信じられないわ
釣りから帰る時だってジュンがソクさんから離れなくて随分手こずったもの」

「そうでした。あのあと、なきつかれたのか、くるまのなかでぐっすりねむってしまいました」
「そうそう。家に着いても起きないからジュンホさんがベッドまで運んでくれたのよね」
「ソクさんはだいじなえほんまでくれました」
「『もっとはやいものは』でしょ?あれから毎日寝る前に読まされているわ。あの子達の宝物になったみたい」

「ソニョンさん、もしかしてジュンはぼくよりソクさんのほうがすきなのでしょうか
ぼくはいいちちおやではないのでしょうか」
「何言ってるの。ジュンホさんは子供達の永遠のヒーローよ
そして私にとっては神様が贈って下さった大切な天使」
「ほんとうに?」
「そうよ。自信を持って。私の素敵なチャンプ」

ソニョンさんは僕のおでこに優しくキスをしてくれました
その時、ソニョンさんのお腹が鳴りました
「「あっ…」」
ソニョンさんは慌ててお腹を押さえました
そして二人で顔を見合わせてくすくす笑いました

「嫌だわ。私ったらこんな時に」
「おなかがすきましたか?」
「どうなのかしら。大丈夫よ」
「いっぱいうんどうしたからですね。ぼくなにかつくります」
「いいのよ、ジュンホさん。貴方も疲れているんだから」
「いいえ、。つくってあげたいんです。ソニョンさんはここでまっててください」
「それなら私も手伝うわ。一緒に作りましょう」

僕達はガウンを羽織ってキッチンへと行きました
子供達やお義父さんを起こしてしまわない様に、キッチンの小さな手元灯だけを点けて
「ソニョンさん、なにがたべたいですか・といっても、ぼくがつくれるのは…」
「「ラーメン…」」
二人で顔を見合わせてまたくすくす笑い合いました
大きな声を出さない様にお互いの唇に人差し指を立ててシーっとしながら…
親の目を盗んで悪戯している子供の様な、そんなわくわくした気分でした

あちこちへこみのある年季の入ったアルミ鍋にたっぷりとお湯を張りました

「昔を思い出すわ。あの時もこんな風に…」
「あのときはおゆをこぼしてしまって、けっきょくたべられなかったんですよね」
「そう…でもあの時、初めてキスをした…」

「ぼくはしがないボクサーで、ソニョンさんはさいしょくけんびのおじょうさんで
とてもてのとどくひとではないとおもってました。まぶしいくらいにうつくしくて…」

「でも私はあなたに恋をしたの。貴方の瞳が忘れられなくてすっかりあなたの虜になったのよ」
「ソニョンさん…」
「ジュンホさん…」

「僕、ソニョンさんにキスをしたくなりました」
「私もよ…」

僕達は顔を寄せ合い長い長いキスをしました
あの時みたいにお湯をこぼしたりはしませんでした
その夜二人で作ったラーメンの味は格別でした
熱い鍋からはふはふしながら二人で食べました



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