ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 168

ミソチョルの勇気 オリーさん ※167からの続き

「とにかく、あの二人が持ち主になるでしゅ」
「そうかあ。あの二人がなあ」
「それででしゅね、おいおいわかると思いましゅけど、ぐいーんを見ても驚かんといてや」
「またぐいーんかいな?何やのそれ?」
「おいおいわかるて」
「もったいつけんと、はよ教えんかい」
「口ではよう説明しきれんわ」
「そうか・・ぐいーんやな」
「そや」
「でも、まあ綺麗なとこやし、話相手はおるし、やっぱわいはラッキーやったわ」
「ぬいぐるみとしてはラッキーやで。言葉のわかる人間もおるしな」
「へえ、そんなんもおるん?」
「おるて」
「そら助かるわあ」
「イナさんちゅうてな、5歳児やねん」
「なんや子供かいな」
「子供とちゃうで。見かけは大人や。かなり強そうやで」
「それが何で5歳児なん?」
「それもおいおいわかるて」
「へえ、大人の5歳児て、興味あるわ」
「結構楽しめるで。酔っ払うと持ち主とも話せるしな」
「そうかあ。持ち主と話せるっちゅうのはええわな」
「ええやろ」
「楽しみやなあ」
「厳密に言うとエロいのは僕の持ち主やから、あんたあっちの釣り目の方にしたらええ」
「どっちも同じ顔やん」
「ちゃうちゃう。よう見んかい。釣り目の方は仇名が硬派で元スパイやで」
「スパイっ!」
「そや。エロいのと比べて体が締まっとるやろ」
「そやな。それっぽく怪我もしとるしな。イギリスもジェームス・ボンドいう有名なスパイおるわ」
「こっちはそれほどメジャーやないけどな」
「でエロい方は何してるん」
「元レコード会社の企画室長や」
「これまたナウい仕事やな」
「でも今は二人ともホストや」
「ホスト!?」
「そや。同じ顔したホストばっかりおる店があってな、みんなそこで働いとる
さっき言った5歳児もホストや」
「えろう、進んだ世界やな」
「そやで」

「そう言えばさっき来てた客も同じ顔やったな」
「あれもホストや」
「これまた面白そうや」
「退屈せえへんで。あの客達とミンミンは微妙な関係やからな」
「びみょーかあ。わて何や思いっきり楽しくなってきたわ」
「そらそや。ここは居心地ええし、ぐいーんさえ我慢すれば楽園やで」
「ぐいーんは楽しくないんか」
「やってる本人達は楽しそうでもあり苦しそうでもあるわな。けど、見てる方は何やこっぱずかしいわ」
「こっぱずかしいんか」
「そや」
「こっぱずかしいん、ぜひ見たいわ」
「へたに目が合ったりすると掴まれるから気ぃつけや」
「わかった、気ぃつけるわ」

「で、あんた名前はあるんか」
「ミソチョルいうねん」
「ミソチョルか。わてはぱでぃんとんや。よろしゅうな」
「ぱでぃんとんかあ。一緒に袋に入ってたんも、ぱでぃんとん言うんか?」
「そや。けどあいつらはパディントンや」
「どこがちゃうねん」
「片仮名と平仮名や」
「なんでや」
「わて、訛りがあるやろ。何や知らんけど生まれた時からこの喋りやねん」
「ほお」
「でパディントンベアとして世界に売り出すにはちっと問題があるらしいねん」
「見てくれは変わらへんけどな」
「そやろ。でもある種の欠陥商品らしくてな、片仮名にしてもらえなかったんや」
「何やさびしい話やな」
「まあな。けどぬいぐるみは行った先が勝負や。片仮名も平仮名もあるかい」
「そらそや。あんたええとこに来たで。ここの環境は抜群やさかい」
「何やそんな気ぃしたわ。ま、そんなんでひとつよろしく頼むわ」
「僕にまかせとけば何も心配あらへん」
「いやあ頼もしいわあ。わて、えろう嬉しいわ」
「僕も仲間ができて、えろう嬉しいわ」
「お互いよかったっちゅうこっちゃな」
「そや!」

僕はちょっと感化されやすい性格のようでしゅ
途中から言葉使いが変になってしまいました
でもこの熊は悪い奴ではなさそうでしゅ
ちょっと言葉使いが変でしゅけど、それくらいは我慢しましゅ
らって、これで留守番の時はひとりではないでしゅから
やっぱり、ミンチョルさんは僕の事をちゃんと考えてくれていたんでしゅね
というわけで一件落着でしゅ
あとはぱでぃんとんにぐいーんを見せて免疫をつけるだけでしゅ

皆様、長々と僕のお話を聞いてくれてありがとうでしゅ
今度はぱでぃんとんと一緒にまたお話に来ると思いましゅ
その時はよろしくお願いしましゅ
でもって硬派と天然はお客が帰った後はぱおのベッドでお昼寝に入りました
ジェットラグだそうでしゅ
それって何でしょうかっ・・


ミソチョルの夢 びょんきちさん

テンツクテンツクチリトテチン~♪ 
寄席の出囃子にのり、ド派手な背広と蝶ネクタイで登場した2人…
えっ、違うって?2匹?きつね?くま?ぬいぐるみ?なんやねん?

「えぇ~ 本日はお日柄もよろしく」
「なにゆうとんねん。結婚式やないんやで」
「ほな、なに言うねん?」
「まずは名前言わなあかんやろ」

「ミソチョルで~す」
「ぱでぃんとんで~す」
「「2人合わせて…えぇっと…」」
「わてらコンビ名決めとらへんやないか」
「そやかて、昨日会ったばっかりやん」
「それもそやな、ほな自己紹介しよか」

「イギリス生まれのぱでぃんとんです。世界的に有名で~す」
「韓国生まれのミソチョルで~す。局地的に有名で~す」
「こんな紹介でわかるんかいな?」
「わかるやろ。たぶん」

「それにしても派手な服やな。それどこで買うたん」
「紳士服のコ●カやで。ええやろ」
「アホ、そんなとこで買うたんか。わてのは英国製オーダーメードやで」
「嘘つけ!タグに洋服の青●って書いてあるで」
「えへっ、ばれたか…」

「そやけど、わてら、なんでこんなとこで漫才してるん?」
「そりゃ、わてらがコテコテの関西弁やからやろ」
「今思ったんやけど、なんでミソチョルも関西弁なんよ」
「しょんな殺生な…ぱでぃんとんはんから伝染したんれしゅ」
「伝染やて!人をバイキンみたいに言わんといてや」
「人やないやろ。あんた熊やろ」
「そんな突っ込まんといてや」
「突っ込まな漫才にならへんやないか」
「…」
「「どうもありがとうございました」」

「ひえぇ~」
「どないしたん?」
「いま、しゅっごく変な夢をみました」
「どんな夢?」
「ぱでぃんとんしゃんと漫才の舞台に立っている夢でしゅ」
「そりゃ、正夢かも知れへんで」
「なんででしゅか?」
「わてらは生まれながらに芸人の血が宿っているんや」
「ぬいぐるみなのに血液があるんでしゅか?切ったら血が出るんでしゅか?」
「そやないて、先祖代々受け継いだ遺伝子っちゅうか…」
「ぬいぐるみなのに、遺伝子があるんでしゅか?」
「そんな突っ込まんといてや」
「ひょえぇ~夢でも同じセリフをしゃべってましたあ~」
「そっか、じゃ間違いないで、正夢や」
「どういうことでしゅか?」
「近いうちにクリスマスパーチーがあるらしいで、天使は映画に出るらしいし」
「えっ、しょれって、舞台や映画に出られるってことでしゅか?」
「そや、サプライズなゲストとして2人にオファーが来るかも知れへんで」
「でも、なんで漫才なんでしゅか? 俳優や歌手のほうがかっこいのに…」
「それも、そうやな」
「なんでやろ」

頭を抱える2人、いや、2匹であった


主役  ぴかろん

頬に触れる滑らかな肌が小刻みに震えているのを感じて俺は目を覚ました
小さな嗚咽が頭の上の方から聞こえる
俺を抱きしめる腕が泣いている

泣かないでよ
お前が泣くなよ

ぼそぼそと呟くその唇にキスをする
それでもお前は泣きやまない

そんな顔見せるなよ
離れ難くなる…

大丈夫だから…ここにいるから…

震える唇を何度も啄ばんだ
笑って
泣かないで


いつまでも泣き止まない男を抱きしめる
何で泣くのか聞いてみる

「僕は…自分の事ばかりだ…ごめんなイナ…ごめんな…」
「お前、ここに来る前に『謝らない』って言ったくせに…」
「ごめんな…。僕、お前の望み…何にも叶えてやってない…」
「…。ばか…」

もう叶ってるよ
お前がここに来てくれたことで
お前が俺のトコに帰ってきたことで
もうちゃんと叶ってるのに

「一緒にいられない様な事ばかりしてしまう…」
「…テジュン。仕事、やりたいんでしょ?」
「…ん…ごめん…」
「何で謝るのさ…。ヨンナムさんの事でも謝るし、今だって…」
「お前を苦しめる事ばかりしてる…」

俺は泣きじゃくるテジュンの顔を両手で挟んで覗き込んだ

「お前、やりたくてやってる事なんでしょ?」
「…」
「仕事だってヨンナムさんちに住む事だって、そうしたくてやってる事なんでしょ?」
「…ん…」
「だったらいいじゃん」
「…でも…」
「お前はお前の思う通りやればいいじゃん」
「イナ」
「俺だってそうしてる。だろ?…どうしてもずぅっと一緒にいたいなら、お前についてくよ。けど俺は仲間と一緒に仕事したいんだ
お前の仕事と俺の仕事、分けて考えたのは俺だよ。お前を待ってるって決めたのは俺だよ。お前が謝る必要なんかない」
「…」
「お前の人生だろ?主役はお前じゃん…。思う通りにやれよ。俺も俺の人生、自分の思う通りにやってる」
「我慢…してない?」
「…お前、俺の性格解ってるだろ?やりたい事は迷わずやるけど、やりたくない事はやんないって」
「けど…僕はお前を振り回してる…」
「だから…お前はそう感じるかもしれないけど、それは俺がそうしたくてやってる事なんだ」
「…イナ…」
「シャワー浴びようよ…。そろそろ準備しなきゃ…」
「…ん…」

涙目のテジュンの背中を押してバスルームに行った
まだシュンとしているテジュンの背中をごしごし擦ってやった
欲を言えば一緒にいたいさ
なんでBHCで働いてくれないのかって寂しかったさ…
俺と一緒に住むんじゃなくてヨンナムさんちに住むって事も腹が立ったさ…
それでもお前がそうしたいのなら、そうすればいい
俺だってそうだもの…
俺のしたいようにしてるだろ?テジュン…
俺は寂しさを感じるけど、納得してるよ
『俺』は『お前』じゃない
『俺』は『お前』を操るような事、したくない
そんな事、誰にもできない…だろ?
『自分』を動かせるのは『自分だけ』だもん…

「弱気になるなよ」
「イナ…」
「ん?」
「ごめん…」
「また謝る!…謝るよりして欲しい事がある…」

俺はテジュンの赤くなった背中にシャワーを当てながら言った

「俺の事…スキ?」
「…何だよ…解ってるだろ?」
「…言葉にして…」
「…。好きだよ…」
「それだけか?」
「…解れよ…。照れるじゃん…」
「テジュン」
「ん?」
「綺麗な言葉や温かい言葉ってさ、力あると思わねぇか?」
「…」
「ただ聞いただけでもジンとくる」
「…ああ…」
「心のこもった言葉だとより一層震える」
「…」
「心込めた素敵な言葉を貰うとさ、勇気が湧いてくるって俺は思ってる…。今までにも俺、皆から沢山のそういう言葉を貰った
だから俺もそうしたいと思ってる」
「イナ…」
「いつも素敵な言葉で語れるといいんだけどさぁ…、俺、まだコドモだから時々カッとなって人を傷つけちまう…
そうでなくても思ったことスルッと言って人を不愉快にさせたりもする…」
「…イナ…誰だってそうだよ…お前だけじゃないし…そう言えば僕もお前に貰った言葉で勇気付けられた事がある…」
「そ?」
「…お前は凄いヤツだよ…」
「そうかなぁ…」
「お前の言葉は飾りがない。飾りがないし含みもない」
「…単純ってことかよ…」
「まぁね」
「…ちぇ…」
「だから…お前は凄いんだよイナ…。お前の言葉がお前自身なんだもの…」
「?」
「解んない?」
「…コドモって言いたいの?」
「…ふ…そうだな…純粋って言いたいんだけどな…」
「俺の事はどうでもいいからさぁ…。お前の気持ちを聞きたい」
「気持ち?」
「だから…俺のこと、好き?」
「さっき言ったじゃないか、好きだって」
「そうじゃなくて…」
「何なんだよ…訳解んないよ…」
「…お前、俺の話聞いてた?」
「聞いてたじゃない!お前の事も褒めたじゃない!」
「…」

イナが急に俯いた
シャワーを止めてスタスタとバスルームを後にする…
僕は訳が解らず、イナを追いかける
濡れた体にバスタオルを巻いて、僕は裸のままのイナの腕を掴んだ

「ほら…タオル…体拭かないと風邪ひくよ」
「…きれいなことばやあたたかいことばって…ちからあるよなぁ…。なぁっ!」
「あ?…あ…ああ…」
「こころがこもってたらひとをうごかせるし、ひとをすくえるよなぁ!」
「…うん…」
「おれ、さっきからそういってるよなぁ!」
「うん…だから?」
「…何で『だから』なのさ…」
「…。解んないよ…なぞなぞか?何だお前泣いてるのか?」
「てじゅのぶぁか!」
「何でバカなんだよ…」

涙に濡れた瞳と、水滴のついた体のままで、イナは僕に抱きついた

「おれを…救ってよ…」
「…」
「…おれに力をくれよ…てじゅ…」
「…あ…イナ…」

イナの欲しいもの…
イナが今して欲しいこと…
僕は本当にバカだ…
ちゃんと解るように話してくれてるのに…

「ごめんな…」
「…ちがうもん…」
「解ってる…」
「じゃあ…ちょうだいよ…」
「イナ…」

ぎゅっと体を抱きしめてから肩を掴んで離す
瞳を見つめてありったけの心を込めて僕の気持ちを告げようとした
涙が込み上げてきて上手く喋れない…
僕の恋人はコドモのくせにやっぱり凄いヤツだ…
明日先輩に聞かせてやる…
きっと先輩の手帳はイナ語録で一杯になるはずだ…

僕は深く息を吸ってもう一度イナの瞳を見つめる
心を込めて言葉を発する…

「イナ…愛してる…」

イナは僕の言葉を受け止めて涙を一筋流した
そして僕の大好きな笑顔を見せた

「それ…。それで俺、一週間ぐらい生きていける…」
「じゃ、メンテナンスは一週間後でいいんだな?」
「らめ…。早めがいい…」
「ん…。僕もそのほうが都合がいいな…」
「おれも…あいしてる…」
「…イナ…」

僕はオプションの濃厚なキスをサービスした
足がもつれてベッドに倒れこんでしまった…
僕は大切な事を教えて貰った
僕は強い力を貰った
お前と出会えてよかった…
お前に力を与えられるように、僕も頑張るよ、イナ…

ガチャ☆

「げっ!」

バタン☆

「「ん?」」
「今誰か入ってきた?」
「ドア開けられたかな?」
「そんな…ノックもせずにか?」
「…気のせいかな…」
「しょだな…てじゅ…きしゅのちゅじゅき…」
「あぅん…時間ギリギリまでしてあげるよぉ…」

ちうちうはむはむ


いなてじゅ伝説~ぱお部屋にて~  ぴかろん

はぁはぁ…びっくりした!
あの二人のキスは何度も見ているが、『その最中』は初めてみたっ…どきどきどき…
…確かテジュンさんが上で、イナの腕がテジュンさんの背中と首筋に巻きついてて…
えっと…ぐいーん?してたかな…見逃したかな…一瞬だったしな…
んーっとぐいーんの時は…普通ああでこうでああだから…
けほ…ぐいーんではないな、多分もう少し細かな動き、或いは動きを止めてキス…げほっ…

イナがいないと思ってイナの部屋にお土産のハートパディントンを持って行ったのに、いるんだもの…
それもあんな…昼間っから…
僕達がこっちの部屋にいるって言うのに…
帰ってきたなら帰ってきたと一言声をかけるべきだし
あんな事するならせめてDon’t Disturbの札ぐらい出すものだっ!
もしくは鍵をかける!それが『エッチケット』…あ…くふ…ちょっと僕らしくない洒落を言ってしまった…ミンに報告しようくふ…
というものだろう!見境のないヤツだ…礼儀知らずめ!
テジュンさんは本当に『けんしゅうのこうし』なのか?!こんな『礼儀知らずの破廉恥講師』でいいのか?!ったく…
イナの影響だな…

僕は昼寝のぽやぽや状態から一気に目が覚めて、僕達の寝室に戻った
ハートパディントンをミソチョルとうちのパディントンの横に座らせ、ミンの横に行った
ミンは唇を尖がらせたまんま、すやすやと眠っている…
ああ…全く…まだドキドキしている…
ミンの腕がはやく治りますようにっ…ドキドキドキ…

「あの…ぱでぃんとんさん…」
「何やパディントン」
「僕って『五歳児と正統派』担当ですよね…」
「そやで。あの天然がお前ひっ掴んで五歳児の城に持ってったと思たのに何で帰ってきたんや?」
「そそ…それがですね…」

「ええっ?『正統派が攻撃開始』してる場面にいきなりでくわした?!」
「はい…僕はあまりはっきり見えなかったのですが、天然のブツブツ情報によりますと、『ぐいーん』ではなく『細かな動きもしくは停止状態』らしかったのです。それであの天然が驚きのあまり僕を五歳児に渡さないでUターンしやがったのです…」
「「…ごくり(細かな動きもしくは停止状態ってなんじゃ?!)…」」
「あ…ご挨拶が遅れました。僕、『五歳児&正統派』担当のパディントン(片仮名)です。ミソチョルさんの事はボスからの通信で皆知ってます
今後ともどうぞよろしくお願いいたします」
「つ…通信?」
「はい。僕達パディントンズには特殊な通信装置が組み込まれていて…まあ…肉体の神秘ですね」
「ああ…、しょれは僕と同じれしゅね…。あ…申し遅れました。ミソチョルれしゅ…こちらこしょよろしくれしゅ…
しかし…はひん…イナしゃんいきなりそんなトコを…全くあの正統派は…」
「ええなぁ…俺も見たかったなぁ…『大人やのに五歳児』を攻撃する『正統派』…」
「…僕がいちゅか見せてあげましゅ…」
「ほんまか?!」
「ミソチョルに二言はありましぇんっ!」
「…信じるわ…」
「有難うごじゃいましゅっ…」
「ミソチョルさん…あの『五歳児』は、毎晩『正統派』とああなんですか?」
「いえ。『正統派』はマジメな仕事人間でもありましゅから…しょれに幸い住まいは別でしゅ」
「おお…。流石『正統派』やなぁ、焦らして攻める…高度なテク使いよる…」
「ボス、そうなんですか?!」
「何やお前、ビビっとんのかい!そんな事では『パディントン』としてやっていけへんで!しっかりしいや」
「…あ…あい」
「なんせここにおったら『えろに慣れやな生きていけへん』ようやしな、なぁ兄弟!」
「き…兄弟って…僕でしゅか?」
「そや兄弟…お前ちっと太りすぎやで…ダイエットせい」
『…なな…何でしゅか…ミンのようなこと言ってましゅ…。はっ…やはりぱでぃんとんさんはミンのモノでしゅね…厳格でしゅもん…』
「黙りこくるな!コミュニケーションしてかんとアカンねん!」
「は…はい」「ラジャ!ボス!」
「おうゴサ担、お前袋の中の皆に、貰われていく先の情報、出来る限り教えたれや」
「ラジャ!」

「あのぅ…ぱでぃんとんさん…、ゴサ担って?」
「ちっと頭働かせぇや!『五歳児担当』略して『ゴサ担』やないか!あほんだら!」
『ひっ酷いっあほんだらなんてタラ、知らないでしゅっ!』
「…おっと…ちっと疲れが出たな、なんせ狭い袋に詰め込まれてたからなぁ…、疲れると性格キツなんねん、すまんなぁ…」
「…しょ…しょうでしゅか…」
「ミっしゃん、俺、ちょっと寝るわ」
「…ミっしゃん?!」
「『ミソチョルはん』を略したら『ミっしゃん』しかないやろが!」
「…じゃ…アンタは『ぱしゃん』?」
「あほぉ!そんなマヌケな呼び方すなやっ!俺は昔から『ボス』もしくは『おやびん』で通ってきとんじゃっ!どっちかにせぇや、寝る!邪魔すなや!解ったな!
ほなおやしゅみ~」

『何なんでしょう…眠くなると激しい性格になる熊のようでしゅね『ぱしゃん』は…。ふん。誰が『おやびん』なんて呼ぶもんでしゅか!
アンタは『ぱしゃん!』ふんっ!』

様々な思いが飛び交うミンミンのぱお~んな寝室であった…

その後正統派はミンミン達に挨拶もせずにひっそりと帰ったらしい
後々その事が『テジュン、上辺人間説』となってBHCメンバーの噂に上るとも知らずに…


Revolution No,…  ぴかろん

店でイナさんから部屋の鍵を貰った
僕はそれを大事に懐に仕舞った
先生に、明日行ってみようと言うと、先生は少し戸惑うような顔をした
まだ迷ってるの?

ウシクがイナさんの部屋の鍵を受け取った
明日、部屋を見に行くことになりそうだ
僕はどういう顔をしていいのか判らず、曖昧な表情を浮かべてしまった
ウシクが僕を少し睨んだ

そんな弱々しい顔してたら我慢できなくなるからねっ!
先生にそう言いながら、体の芯が熱くなるのが解った
あれ…僕って…ちょっとアレかなぁ…
急に恥ずかしくなって先生に背を向けた

怒った顔でプンと僕に背を向けたウシクをぼんやり見つめた
我慢できなくなる?え?
暫くその言葉の意味を考え、それから恥ずかしくなってウシクの背に背を向けた
僕に指名が入った
黒板振り向きをリクエストされた

先生に指名が入った
黒板に白線を引いて振り向く技をリクエストされている
途中でがっつりチョークが折れ、振り向く角度が微妙にズレている
ダメじゃん!それじゃ渋くないじゃん!
はにかんでるみたいで…かわいいじゃん…もう…
どうしよう…体がもっと熱くなった

振り向いた時、裏との境目から僕を見ているウシクと目が合った
怖いくらい熱い瞳でこちらを見ている
…どうしよう…また襲われちゃう?…
…。…。
やだ…
続けてはやだ…
…。今挽回しとかないと引越してからヤバい…
だってウシク、体太いんだもの…
あんな太さで圧し掛かられたらひとたまりもないもの…
僕は胸の内ポケットから眼鏡を取り出そうとした

あっ!眼鏡かけようとしてるっ!ダメって言ってるのに!もう!
…でも…僕変だ…
今日は先生が眼鏡をかけても構わないと思ってる…
僕は先生の行動をじっと見ていた

う…なんだ…引っ掛かってる…くそ…
ああん、この動作をスムーズにしないと渋さが薄れちゃうのに…もう…
よいしょっ…あり?えいっ

「どうしたの?イヌ先生…」
「あ…す…すみません…ちょっとツルが…」

ああん…カッコ悪いぃぃ…どうしよう…
焦りまくっている僕を、お客様はなんだか嬉しそうに見てらっしゃる

「す…すみません…」
「いいのよぉ可愛い(*^^*)なんだか若いころのイヌ先生見てるみたいぃ(*^^*)」

う…。よ、喜んでくださってるみたいだから…いいか…
眼鏡断念しよう…
僕は内ポケットから手を抜いてお客様にごめんなさいと言った

「ダメじゃない!ちゃんとやらなきゃ!」

僕はきつい口調で先生に言った
先生は驚いて僕を見上げた

「やりかけて止めちゃうの、最低!」

先生を睨むと、先生は俯いた
お客様もびっくりして僕を見上げている
僕は先生に判らないようにお客様にウインクした
お客様はこれがパフォーマンスだと理解し、安堵の笑みを浮かべた
先生は口をムッとさせてまた胸の内ポケットに手を突っ込んだ

何よ!何怒ってるのよウシクは…
明日部屋見に行くことにはっきり返事しなかったから?
なんだよ…ちょっと僕を○▲◇からって…えらっそう…
僕は段々腹が立ってきた
ふん…十コも年下のくせにっ!
ふんっ…こないだまでピーピー泣いてたくせにっ!
ふんっふんっ…僕が抱きしめてやんなきゃ眠れなかったくせにっ!
ふんふんふんっ
…でぶのくせに…
柔らかくて張りのあるウシクの胸板を思い出してしまった
眼鏡は胸から出てこない…

焦ってる焦ってる…
怒ってるし拗ねてる…
くふ…そんなトコ見せられるとほんとに…
ああ…ほんとに…我慢ができなくなるぅ…やっばぁぁい…
僕は胸ポッケにいつまでも手を突っ込んでいる、アヒル口の先生に近づき
上着の襟を開けて内ポケットにそっと指を伸ばした
先生が弾かれたように僕を見る
あれぇ…ちょっと涙が滲んでるぅ…
…たまんない…
僕はポケットの中の眼鏡をそっと掴み、先生の瞳を見つめながらゆっくりとそれを引き抜く
先生の唇が中央の部分だけ一分開きになった

あ…やだもう…ウシクがかっこいい…
でぶのくせに…あ…
ポケットの眼鏡を取り出すだけなのに…意識しなくていいのに…
まるで…あ…僕…変…
まるで%&▽◆されてるみたいな…
ああん…惑わされちゃだめだ!このままじゃ控え室で襲われちゃう…

『ウシクはデブウシクはデブ…』

僕は心の中で平常心に戻る呪文を唱え続けた

先生の唇がへんな風に動いている
よく見ていると何か唱えている
お祈り?なに?
僕は目を凝らして読唇してみた

『う…し…くは…えむ?』

「酷い!僕はえむじゃないからねっ!どっちかっつーとえすだからねっ!」

ついカッとなってお客様の前で怒鳴ってしまった

「え?」
「唱えてたでしょ!今!わからないと思った?満足にパフォーマンスもできないくせに、人の事『えむ』なんて言うな!」
「え…そんな事言ってないもん…」
「言ってた!こそこそこそこそ僕に解かんないように言ってた!」
「…『えむ』だなんて言ってないもん…」
「じゃあ声出さずに言ってごらん、はい、ウ・シ・ク・ハ・エ・ム。ほらっ!」
「違うもんっ!眼鏡返してよ!」
「正直にそう言ったって言わなきゃ返さない!」
「言ってないもん!なんだよ!ここは僕を指名してくださったお客様のボックスだぞ!ウシクなんか呼んでないもんっ!」
「眼鏡取り出すだけなのにちんたらノロノロやってっからイライラしたんだよっ!」
「なんでウシクがイライラしなきゃなんないのさっ!」
「先生はのんびりしすぎなんだよ!なんでもかんでもっ!」
「せんせぇといるとおちつくっちったじゃないか!そのゆったり具合がとっても好きっちったの、ウシクじゃないかっ!」

先生はますます涙目になる
僕はそれを見るとますます…けほ…苛めたくなっちゃう…
お客様はハラハラしながら僕達を見ている
ヒソヒソと話す声が聞こえる

『ウシクちゃんどーしちゃったのかしら…』
『そうね、こないだまで先生に甘えきってたのに』
『なんだか今日はウシクちゃんの方が凛々しいわ…』
『イヌ先生、可愛いわね…たまにはこういうウブな学生風イヌ先生もいいわね…』
『なんだか知らないけど本気でケンカしてるみたいな気もするわ』
『やだ、ケンカじゃなくて「痴話喧嘩」って言うのよぉ~』

痴話喧嘩…ふふ…僕はそのつもりなんだけど先生は…ちょっとマジになってる?
うーん、収拾つかないなぁ…本格的に拗ねられても困るし…
しょうがないな…
僕は取り上げた眼鏡を先生にかけてあげた

「うん…かっこいい…ほら、お客様に見せてあげてよ」
「…」
「いつまでも拗ねてないで、ね?せんせ」
「…いつもなら…人に見せちゃヤダって騒ぐくせに…」
「いつもならね。いつもは渋いもん…今日はダメだ」
「なんだよっ!ひどいよウシクったら!あっち行けっ!」

本気でプリプリしだした先生がものすっごく可愛くてたまんない…
僕は先生の腕をぐっと引っ張って抱きしめた
先生にだけ聞こえるように囁く

「ほんとは見せてほしくないんだけどな…」
「…」
「眼鏡姿も、こぉんな可愛らしいトコも…」
「…う…ウシクのデブ!」
「!」

抱きしめていた腕を緩めて肩を掴んで先生を睨み付ける

「だってデブだもん!」
「僕のどこがデブよ!」
「プクプクしてる…腕だって太いし太腿だってパンパンだもん…」
「なんだよっ先生だって若い頃ふっくらしてたじゃない!」
「…でぶ…」

むっかっつっくぅぅ!

でも…かっわいいい…
もうだめ…帰ったら速攻○▽◆…

もう一度先生を抱きしめて耳元で

「許さないから…」

って囁いた
お客様はニヤニヤ笑って僕達二人を見つめていた
くふん…


mio tempo riservat_9  妄想省mayoさん

ドアの前に2人で立ち..向かい合うミンギと聞き耳を立てる
聞こえてくるのは”営みの声"…
喉奥から絞り出されるような"くぐもった呻き"ではない..
全くもって遠慮のない嬌声は女性と思われる

『ふふ→→ん..っ↑..』

僕がドアノブをゆっくり回すと鍵をかけてない様子..
僕はミンギに@@で合図をし..「ハナ..トゥル..セッ..」ドアを開けた..

「おぉ?」

っと振り返ったのは黒のセルフル眼鏡の"若い"BH顔..

『また眼鏡君か..』

隣のミンギは凝視している…赤×紺の太ストライプのトランクスから覗くBH顔の双丘を…
BH顔は”ひとり営み”をご満悦の最中..
ぃゃ..もしくはこれから..という時か…最中であれば振り返る余裕など無い筈..
普通そうでしょ..ぁ…僕らしくないコトを..心で呟いてしまった..

歓喜の嬌声を上げ..撓りを繰り返す背中に大きくもない胸..それに纏わりつく胸毛たっぷりの胸..
画面へちらり視線を送った後..ふっ#…小さくため息をつき..
ミンギの開いた口を親指と人差し指でむにゅっと挟み閉じた..

「ミンギ..」
「ぅ..ぅん?..」
「TV消して..」
「ぁ..ぁ..ぅぃっス」

ミンギは横たわる"営み君"を跨ぎ床に転がっていたリモコンを拾い..ボタンを押した
絶頂の嬌声が籠もっていた部屋は静寂が戻り..黒い画面に僕等の姿がうっすらと映る

僕がちょっと首を伸ばして覗くと
BH顔の彼はさして慌てる様子もなく.."彼"と"双丘"をトランクスに収めた..

『っ…こういう事態に慣れているのか..この”営み君”は..』

僕は厨房の彼女がこの彼の確保を僕等に依頼した理由に納得した..
近くにあった椅子を引き寄せ座り..膝に腕を乗せ掌をだらり下げた
ミンギは椅子に座る僕の後ろに付いた..
彼はトランクスとランニングで床に胡座で座り僕等を見上げ口を開いた

「おたく達..誰?」
「僕の顔を見たらわかると思うけど?」
「ぁ..もしかして..BHCの人?」
「そっ..君..名前は?」
「イ・ジョンドゥ..おたくは?」
「僕はキム・ソヌ..こっちはミンギ..」

彼は僕とミンギにピョコンっと頭を下げた..

「じゃ..ジョンドゥ君..」
「はぁ..」
「そのままじゃ何だから服着てくれるかな..”ほてり”も治まったようだし..」

彼はまたピョコンとした後立ち上がり着替えを始めた

『割に素直ね..』

僕は椅子に座ったまま僅かに顎を上げ眼球だけを回し..部屋の中をぐるり@見回した
床には何冊も重なっている小説本..
小さなテーブルの上にはページを開いた2,3冊の本..レポート用紙と書きかけの原稿用紙..
テーブルの回りにはくしゃっ#っと丸めた紙くずがそちこちに散らばっている

『物書きなのか?…この彼は..しかも今時原稿用紙に書くとは..PCはないのか..』

ミンギも同じように部屋を見回したらしく..屈んだ姿勢で僕の耳元に唇を近づけた..

「先輩..まぁさか小説家ってことないっスよね..」
「どうだろぅ..イ・ジョンドゥ…って小説家いない筈だけどな?」
「先輩..」
「何..」
「小説とか..読むんスかぁ?」
「読みますょ↑..たまに..」
「ぅ..うっそだぁ~~..見たことないっスよぉ..先輩がマジで本読んでんのさぁ~~」
「@@//」
「まっさか恋愛物とか読まないっすよね..」
「@@##」
「ぁ..ぁひ..僕の勝手でしょ↑..っスね..はぃはぃ..イシシ..」

”営み君”は着替えの後トイレに入り出て来るとまた床に胡座で座った..
黒のボトムに極細の線の入った白シャツを着ている..
>_<..ちーん!!..ソックスが..白いのょ..黒のボトムに白ソックス..致命的ょ..これ..
そういえば..昔白ソックスだったメンバーがいた..って聞いたけど..誰だっけ..

「ジョンドゥ君..」
「はぁ..」
「君の処にもスカウトが来た筈だけど?」
「はぁ..予備訓練に行く前に来ました..」
「ぁっ..そっ..で?」
「拘置所出てから..ヘイリに来て..」
「こ..拘置所って..何やらかしたんスかぁ?」
「予備訓練の時にビアホールに乱入して..銃ぷっぱなして..」
「ぷっ..」
「乱入~~..銃ぷっぱなし..って..先輩と同じっスね#」
「僕はレストランだょ..ミンギ..」
「ビ~アホールもレ~ストランも変わんないっスよぉ--」
「@@##」
「ぁ..ぁ..はひ.."お洒落なスカイラウンジ"..っスね..はぃはぃ..」

『怒らせると怖いわけか..この彼は..』

「ヘイリに何故来たわけ?」
「ジュヨンに小説を書くにはいい環境だって言われて..」
「..??彼女?」
「はいっ#^0^..」

彼女の話題に一際元気になった彼..
自分が元製薬会社営業マンで..周りに無能呼ばわりされてて..
上司になった彼女が大口の得意先を決め..その祝いの席だったビアホールに乱入..
で..捕まって..拘置所..嘆願書のおかげで不起訴..だって..
彼女は彼の小説家になる夢を応援しているという..
ちょっと目を潤る潤るにして彼が語った..

『ちょい縺れて元のサヤに治まったってことね..よかったこと..ふぅ..若い子はよく喋るわ..』

「ぁの..車で来たんですか?」
「そぅだけど?..」
「ぁのぉ..ソウルまで乗せてもらってもいいですか?」
「ぃぃけど..君の捕獲に来たんだし..」
「ぁ..そうですか..」
「但し..BHCに寄って貰うょ..いいね@@..」
「ぁ..ぁ..はい..」

彼がテーブルの2,3冊の本と書きかけの原稿用紙..少ない衣類をバックに詰め始めた
床に散らばるくしゃくしゃの紙をせっせと拾いゴミ箱に入れるミンギに..すいません..っと頭を下げる彼

ミンギが床に重ねてある本を何冊か取り上げ..バックに詰めようとした..

「ぁ..それらの本は[ブックハウス]に返す本なんです.」
「ぁぅ..そっスか..自分で買ったんじゃないっスね」
「ブックハウスは"ツケ"が効かないから..」
「っ..ツケ..っスか?」
「僕..何処でもツケで買うクセがあるんです..肉店とか...中華店とか..ビデオレンタルもだし.」
「ぁ..ぁ..レンタルもっスか..」
「ジュヨンにいっつも怒られてます..」
「ジョンドゥさんちって金持ちなんスか?」
「一応実家の田舎には大きな土地はあるけど..」
「ぁひ..そっなんスか..」

薄グレーのJK(これは..まぁまぁね..白ソックスで台無しだけど..)を羽織った彼とミンギと車に乗り込み..
先に[ブックハウス]へ寄り彼の借りていた本を返した

後部座席に座る彼は片膝を立て..白いソックスを脱いだ
靴下を履き替えるのか?と思いきや..膝に顎を乗せて足指の間を擦り始めた..
あろうことか..擦った手を鼻先に持っていき..香りを堪能している..あらら..

助手席のミンギも首を少し後ろへ向け確認したようだ..

「先輩ぃ~~^^;;」
「ぷっ..」
「げーじつかの欠片もないっスよ..」
「こんなもんじゃないの?..」
「そっスかね..」

ソウルまでの帰り道...車のエンジンがばっほん#..ばほばほ>>>ばるるんっ#....と音を立てる..
疲れるじゃないのっ#とご機嫌を損ねるように..
扱いにくい女性にも似た僕のこの”めるせです”..やっぱりちょっと気に入っている…
エンジンがばぁ~るんっ#っとまた音を立てた
僕は口端を上げ..握っていたハンドルをスルッ..と撫でた…


BHCのドアを開け店内に入っていく..
僕..彼..ミンギ…ずんずんと店内を歩み進む間..出勤しているメンバー達は

そそそそっ…のっしのっし..ダダダッ…ひょいっ…のそのそ…ぅんしょ..それぞれの動作で群がる..

厨房近くで当然黒眼鏡君をメンバーが囲む輪が出来た..

「ぉ?..まぁ--た新人かぁ^0^//..」

バナナにかぶり付きながら厨房からテプン君が出て来た..
テプン君は左手にバナナを持っているから…右手で黒眼鏡君の右手を取り..わっしわっし#握った..
その後..テプン君は右手でバナナをさく..と分け..黒眼鏡君の口に入れた..
「んぐっ..」っとなった黒眼鏡君がむせると背中をバン#バン#..バンッ#..叩いた..
彼なりの歓迎の挨拶である..

「先輩..」
「ミンギ..」
「確か..足指擦ってたの..右手っスよね..」
「そぅょ..ミンギ..」
僕とミンギは思わず自分の右手を鼻先に当てた..

「バナナ..旨いっスかね..」
「自分の香りだから..美味しいと思うょ..」
「そぉっスね..」

「どうしたの?何か問題?」
メンバーの輪に後ろから天使の声がふわり広がる..
皆が振り返り..輪が少し解かれる..天使は黒眼鏡の彼を確認した..

「..???..」
ほんの少し首を傾けた天使は厨房の入り口に立つスカウトの彼女を手招きして側に呼んだ

「報告貰った3人の最後のメンバーじゃないね..雰囲気が違うけど?」
天使の物言いはあくまでもソフトだ..

「ぁ..はぃ..最後の彼はまだちょっと..事情がありまして..」
「事情?」
天使と厨房の彼女は後ろ向きになったこそこそ..
頷いた天使がこちらに向き直った

「あの彼は?」
「早くにスカウトしてたんですが..事情がありまして..遅くなりました..」
「事情が多いのはBHC特有だからね..」

天使は結んだ口を横に広げ柔らかく微笑む..
隣には天使を顔をぼぉ---っと見つめるフグが寄り添っていた…


会いたくない男  足バンさん

夕方、オールインにいつもの水を届けに行った

厨房では調理スタッフが仕込みを始めている
何やら隅で作業をしていたチュニルさんが僕の顔を見てにっこり笑った

「ご苦労さまですヨンナムさん…外は寒そうですね」
「はい、今日の冷え込みはこの冬一番だそうです」
「おいしいお茶が手に入ったんですが一杯いかがです?少し暖まっていきませんか?」
「やぁそれは嬉しいなぁ」

再びにっこり笑ったチュニルさんは僕に店の方で待っていて下さいと言って
小さな箱を出し茶の用意を始めた
ちょうどひと息つきたかった僕はありがたく店内に向かう

しかし入ってすぐにしまったと思った
そこには今一番会いたくない男がいた

「ヨンナムさん…」

照度を落とした店内の片隅
そこだけ明るい照明がおとされたルーレットのテーブルに
イナはぼんやりと寄りかかるように座っていた
僕を見てびくりとしたのはテジュンの野郎と見間違えたからだろうか

引き返すわけにもいかず声をかける

「イナさん…今日は…こちらに?」
「あ?ああ…ちょっとこれ…備品のチェックに…」
「ああ…なるほど」
「何でここに?」
「ああ…配達だけど…チュニルさんが今お茶を…」
「あ…お茶ね…寒いしね…」
「そう今日はこの冬一番の…あ、どうぞ作業つづけて」
「あ、うん…」

イナは居心地悪そうに目をぱちぱちさせてテーブルの上に視線を戻すと
僕にはよくわからないがチップのようなものを鮮やかに手早くまとめている
妙な沈黙がとても長く感じる

「それ…イナさんの仕事なの?」
「え…いや…特に誰って…でもたまにリクエスト入るから…ちゃんとしておかないと…」
「そう…」

真上からのライトにイナの顔は濃い影に覆われて表情が読めない
でも間違いなく僕を意識しているだろう
先日僕が唇に触れた時のことを思い出しているだろう

沈黙に息が詰まって部屋を出ようと思った時
チュニルさんが盆にお茶を乗せて入ってきてくれた
僕は促されて彼と一緒に手前のソファに座ったが
イナはもう少し作業をつづけるからと言ってそのまま下を向いている

「もういいんじゃないかイナ、チョングがチェックしたばかりだから」
「うん…まぁ念のため…久々にいじりたいし…ヒマ…だし…」

変なやつだな普段は人に任せっきりなのに、とチュニルさんは笑った
僕は知らんふりをしてお茶のうまさについて言及し
それからしばし最近の水時事情の話題に花が咲く
その間イナは黙ってただ手を動かしていた

何となく早くここを離れたかった僕は
不自然にならない程度に急いで飲み終えて立ち上がる

そしてただチュニルさんに礼を言って出る、それだけでよかった
なのに僕はつい余計なひとことを言った

「イナさん、あいつ遅くても日帰りでしょ、深夜でもどうぞ遠慮なくおいで下さい」

イナの手が止まったように見え
積まれていたチップの山の一部が小さく揺れた
こちらを向いたイナは子供のような顔をしていた

「日帰り?…テジュンがそう言ってたの?」
「あ、うん…3日ともそうって…聞いてないの?」
「あ?いや…聞いてたかも…うん、そうだった」

チュニルさんは僕らをほんの一瞬交互に見てから茶を飲み干し
「厨房に仕事を残しているので失礼しますよ、ごゆっくり」と微笑んで出て行った
僕はそのうしろ姿に慌ててお茶の礼を述べた

振り返るとイナは照明の下で手元をじっと見ている
僕はどくんという心臓の音とともにまた必要のないひとことを言う

「本当に聞いてた?」
「え?」
「またあいつ変な気をつかったんじゃないの?」
「いや…俺が忘れてただけ」
「そう…ならよかった…あいつの思いやりって思いやりにならない時があるから」

僕は自分で何を言っているのだかよくわからなくなった

影になっていたイナの目がいきなりこちらに突き刺さるのを感じた

「ヨンナムさん…あなたテジュンが嫌いなんですか?」
「イナさん…」
「イナでいいです」
「…」
「ね、そうなんですか?」

そんなことはない…
小さな声でつぶやいたけれど彼には聞こえていただろうか

「俺とテジュンがどうしようといいじゃないですか…なんでそんなに絡むんです」
「から…むつもりなんてない」
「それとも俺が気に入らない?俺何か気に触ることやった?」
「そんなことはないよ」
「じゃ何で恐い顔して俺を見るんです」
「はっ?…恐いってそんな…はは」
「あの場所に入ったから?」
「…悪いけどもう行きます…まだ配達が残ってる」

なぜかまた急に苛ついて
でもそのまま笑顔を貼り付けて出て行こうとしたのに
イナの言葉が乱暴に僕の肩を引っ張った

「もうテジュンのことを悪く言うのはやめてください」

一歩踏み出しかけた足を止めて僕は振り向く

「悪く?」
「確かにテジュンはそのいろいろとアレだけれど…でも…すごい人なんだ」
「そうね、すごいやつだよ」
「ヨンナムさん…」
「わかってるよ…僕がいくつからあいつと付き合ってると思ってるの」
「じゃどうして冷たいんですか」
「身内には厳しいだけだよ」
「それだけ?」
「他に何があるの」
「あなたって優しくて誠実で親切だけど…」
「だけど?」
「時々それが…ろいに…」
「何?」
「…鎧に…見える…」

僕はなぜか一瞬貧血のような感覚をおぼえた
羽根虫がまた飛び回りはじめた

ゆっくりとルーレット台に近づき台を挟んでイナと向き合う
僕は台の上に両手をついて頬に睫毛の影をおとすその無防備な男を覗き込んだ
頭のすぐ上の白熱灯は思ったよりも熱かった

「イナ…君に何かがわかるっていうの?…僕のこと」
「わかるんじゃなくて…」
「聞きたいの?僕のこと」
「そんなんじゃない」
「だから僕を刺激するんでしょ?」
「俺は…」
「わかってるんでしょ?僕の話を聞くってことはテジュンの話を聞くってことだって」
「ヨンナムさん…」
「知りたいんでしょ?」
「ヨ…」
「僕があいつを殺しかけたわけ」


※注:文中ルーレット台は余興用です。
 オールイン店内で賭博行為は行われてはおりません(__;)


いとこの恋  足バンさん

強い陰影の中で蝋人形のように動かないイナに向かう

僕とテジュン
顔はそっくりでも性格はずいぶん違うと…思うでしょ?
周りの人間はみんなそう言う…でも実際はそうじゃない

手に入れたいと思う物に近づくのに時間がかかること
自分自身を表現するのが苦手なこと
そして自分の考えを曲げられないところ…
僕たちはとても似ている

「だからあいつが誰かのために仕事を辞めたと聞いた時、正直言って信じられなかった」

イナがぴくりと僕の目を見上げる
その叱られている子供のような目に触発されて僕の口は動き続ける

テジュンは学生時代からモテるやつだったよ
しっかりしたイメージとどこか危ういイメージがあるんだろう
世話好きの女の子たちがいつも回りにいた
ホテルマンになって忙しくなってからも

でもあいつは仕事が好きで好きで一年中仕事中心の生活だったから
あいつを追う女の子は常に寂しい思いをしていた

傷ついた女の子たちのケアをどれだけやってきたことか
そのうちの何度かはその女の子が僕に夢中になってね
きっとあいつを重ね合わせていたんだろうけど
気のない僕はかえって面倒なことに巻き込まれたりもした

「その度にあいつは悪かったといって驕ってくれる…朝までね飲むんだ
 泣いたり笑ったり愚痴ったり説教し合ったり…年中行事みたいで楽しかった」

僕はルーレット台の右隅の3という赤い数字を意味なく指でなぞった
イナはその指の動きをぼんやりと見ている

もうそこで終わりにしてもよかった
まぁそんなことばかりで殺したいほど大変な目にもあったんだと
無茶に話を締めてもよかった

でも僕はつづけた
"3"をなぞる指先から腕、肩を登って僕の目に辿り着く警戒の色を帯びた瞳
その瞳が僕の中のくすぶっている暗いものを動かす

ー穏やかに見えるひとの心の中がその通りだとは限りません
ソクさんの言葉が頭のどこかをかすめる

僕は整然と数字が並ぶテーブルに両肘をついてイナを覗き込んだ
同じ高さの目線になると彼の目の色がはっきりとわかる

「でもね…そんなことじゃ済まないひとに出会ってしまった」

そのひとと初めて会ったのはあいつのホテルの創立記念パーティだった
旅行業界で世界を飛び回っている女性
目立つような美しいひとではなかったが
でも旅先の話や自分の夢を語る彼女のきらきらした目は本当に綺麗だった

僕は生まれて初めて本気で女性を好きになった
そしてテジュンの目も今までと明らかに違った
3人で出掛けることもあったけれど
あのテジュンがスケジュールをやりくりするなんて初めてだった
ずいぶん派手なアプローチもしたらしい

「彼女はテジュンを選んだ」

イナの目が小さく揺れた
そして何も言わずに遠慮がちにまばたきをした

ふたりは幸せそうだったよ
忙しい時間をぬうように会っていた
僕はそんなふたりの間をずっと取り持って
喧嘩の仲裁までやってきた

「僕がかわいそうなやつだと思う?」
「…」
「信じてくれなくてもいいけど…辛くはなかった…彼女が幸せそうだったから」

イナの目が今度は大きく揺れた
少し潤んだように見えたけれどそれは無視した
そうしないと話をつづけられなくなりそうだったから

あの鈍感でひとのいい男が僕の気持ちに気づいてから
状況が一気に変わってしまった
ずっと隠してきたのに何か小さなくだらないことからバレたんだ

よくある三角関係…でしょ?

でもね、テジュンの場合はちょっと違う
あの大バカ正直の石あたまの悩み方は凄まじかった
僕に隠れてよろしくやることすらできないんだあの野郎は

暫く距離をおこう…なんて
それも僕のことには一切触れずに
相手に夢中になってる女性にそんなことが理解できるはずないだろう?

折り悪くその頃ホテルの再建プロジェクトが持ち上がって
あいつの忙しさは殺人的だった

彼女は悩んで疲れ切って僕のところにきた

僕は彼女に正直に話したよ
テジュンがなぜ距離をおこうと言い出したのか
仕事だけが理由じゃないことを
あなたのせいじゃないってことを
あいつがどんなに僕のことを考えてくれているのかを
大バカだけど素晴らしいやつだってことを
そうすれば彼女も理解してくれると思っていたんだ

理解はしてくれた
そして僕に詫びてくれた

でも僕は彼女をよくわかっていなかったんだ
彼女は僕が考えている以上に強いひとだった
自分を選んでくれと
そうすれば仕事を辞め全てを捨ててついていくと
真正面からあいつに向かい合った

「テ…ジュは…応えなかった…の?」

イナが初めて口を開いた
亡霊を目の前にしているような濡れたうつろな目で
たった1枚のチップを握りしめている左手の指が白くなっている

「あのバカは言ったんだよ…僕のために自分の夢を捨てることはないって」

イナは唇を噛んで目を伏せた

あの馬鹿野郎は正直過ぎるんだ
自分にもひとにも正直すぎるんだ

彼女の憔悴ぶりは見ていられなかった
こんなに愛しているのにと泣き崩れる彼女の肩を抱いて僕も泣いた
テジュンを何度も説得したけれど
殴ってまで説得したけれど
僕や彼女の将来を考えないふりはできないと言い切ったんだ

「最高のバカだろう?君の恋人は」

イナの白くなった唇を見ながら僕はつづけた

結果的に彼女を哀しませたテジュンとそして自分を責めたこと
抜け殻のような彼女がシカゴの支社に転属を願い出たこと
せめて見送れと言った出発の日にもあいつは姿を見せなかったこと

※169に続くm(__;;)m

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