ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 181

Montre de complications de Grandes  妄想省mayoさん

地下鉄4号線..大学路の恵化駅で降りた
青い鳥..マロニエ..アリラン..っと大小の小劇場を横切り..通い慣れた雑居ビルの薄暗い階段を上った
ドアノブを回し..ぐっ#押し出すようにドアを押した..
少々錆付いている重いスチールのドアがぎぎぎゅ~~ぅぃ!..っと音を立てた..

『あちゃ>_<..』
はるみと顔を見合わせ同時に『どぉ~もすいませんっ..m_m』っとデコに手を当てた..(はるみは前足..)
「ぷっ#..」「みゃ(>▽<)」

中へ入ると今日は入り口に蝋人形が立っている..ちらとそれに目をやり一応黙礼をした
小汚い外観とは違い中は壁面は白壁で大きな窓からはたっぷりと採光を取り入れている
窓際に細長い作業机..それに垂直に白の大きな作業机が2つ置かれ..いつものように座る2人がいる..

初老の頭のてっぺんが薄い方は私が[アジョッシ]と呼んでいる親父の同級生..腕のいい時計技師だ..
背中合わせに座るのは息子のスジョン..父と同じ時計技師で私の同級生でもある..

決して座り心地がイイとは言えないぺったんこのソファに座ってリュックを降ろした
ブルゾンのジッパーを下ろすとはるみが懐から抜け..膝に乗った
作業中に声を出して息を吐けば集中力を欠く..
父子の横顔を見ながら作業のキリのいいところまで声をかけないのはいつものことだ..

スジョンは父の仕事を手伝っていたが,合間を見て英・仏語をみっちり勉強した
その後スイスへ渡りヌーシャテルにある時計技術者育成機関WOSTEPで学んだ(授業は英語)
WOSTEPは3000時間のカリキュラムの内マイクロメカニクスカリキュラム(部品・工具を製作する)を重視し
構造化する力を養い時計技術に必要な「測定(目測)」と「感覚」を身に付けることができる
WOSTEPでカリキュラムを終えた後ジュネーブのムーブメント工場を経て2年前に帰韓した

機械式時計の構造は昔とさして変わらない..
時計ブランド各社のコンプリ(グランドコンプリケーション=複雑時計)だけがエライわけではない
各社定番のムーブメントにこそブランドの考えや拘りが詰まっている..コンプリは各ブランドの芸術品..といえる
~~~
物心付いたときから此処の時計工房は遊び場だった
親父は暇が出来るとお人形遊びやままごと遊び等に興味を示さなかった私をよく工房へ連れてきた
キズミ(瞼に押し当てて使うルーペ)や精巧ドライバー..ピンセット..
螺旋状で蚊取り線香の様なヒゲゼンマイ..天輪..中心軸の天真..時計の部品が遊び道具だった

事故の後..家に戻り..食べることも寝ることもせず何週間も部屋に籠もった私に親父はキレた
部屋の鍵を叩き壊し暴れる私を部屋から連れ出しこの工房へ引っ張って来た
止めに入るスジョン父の手を振り解き親父は何度も何度も私の頭を小突き

『お前はガキの頃から此処で何を見てきたんだ?恥ずかしい生き様を☆になったあいつに見せるなっ#』
と震える声で言い..さして高くもない時計を手首から外し裏蓋を取り..時計の部品をばらばらと落とし
『部品の1つ1つをお前のメッセージを込めて組み立てろっ#それまで家には戻ってくるなっ』
と言い放ち..この工房に置き去りにして親父は帰った

スジョン父も一切口を挟まず..手を介せず見守った
ようやく組み立てを始めた頃..一面雪景色の窓の外はハンズ(針)が動き始めたとき新緑が芽吹き始めていた
~~~
ふぅ..と小さくため息を吐いて先にスジョンが腕を上げ「ん~~..ん#」っと伸びをした
切れ長だがデカイ目ではるみと一緒の私に目を止め「ぉ?..」っ首を前に出した
そして少し遅れて顔を上げ..首をぐるり@回した背中合わせの父親を突っ付いた..

スジョン父子は共に自分の胸を人差し指で指し..その指で私を..セーターを指した..
照れを隠し..父子に紅茶を淹れるためソファから立ち上がった..

紅茶と土産のパウンドケーキでスジョン父子はほっと一息ついた
何人ものコレクターを顧客に持つ父子のツテと自分のアンテナがあれば
今回の時計の仕事の時計は調達できるだろう

「さて..」っと膝を叩いたスジョンは立ち上がり金庫の中から時計の箱を出してきた
白手袋を手にはめ..喉が狭まってごくり..と唾液を飲み込む音が自分でも解った..
スジョンは「んくく…」っと笑い..ビロード張りのトレイに箱から出した時計を乗せた

ヴァシュロン・コンスタンタン_[ パトリモニー スケルトン ミニッツ リピーター ]
スケルトンのPG(ピンクゴールド)ケースにムーブメントが組み込まれ..
PGの部品には細工彫が施されている..見事な機能美である

ヴァシュロンはムーブメントの開発..組立てに至るまで一貫した製造技術を持ち..
体制を変えず歴史が絶えることなく時計を作り続けてきた
Crown(竜頭)とDial(文字板)に刻印してあるシンボルマークのマルタ十字が私のお気に入りだ

リピーターはコンプリ4大機構の1つでボタンやレバーを押すと時刻をチンチン..或いはカンカン..と音で知らせる
元々は文字盤が見えない暗闇でも時刻を確認出来るよう音で時刻を知るために装備された機能で
18世紀の懐中時計にはもうすでに組み込まれていた..
ヴァシュロンのこのモデルはミニッツリピーター名の通り1分単位まで3種の音で打ち鳴らす

「聞いてみる?..はるみ..」
「みゃ#..^o^」
作業台に前足を付き時計を覗いていたはるみは青い目をくりくり◎させる

時計の針は3時34分を指している..ケース左側のレバーを押した..
ムーブメント右上部分の歯車が複雑に動き内蔵のハンマーが上下しゴングを叩き始める..

チン..チン..チン(3時)…チンタン...チンタン(15分X2=30分)…チンチンチンチン(4分)...

「(e▽e)//..(>▽<)//..(^▽^)//..」
はるみは音に合わせチン・チン・チンで縦上下..チンタン..チンタンで左右に頭を振り..
チンチンチンチンではカメのように一打毎に首を前に出した..
側に立つスジョンが頭をなでなで〃するとはるみは両前足を叩き喜んだ..

「どうだ?」
「今回はヴァシュに軍配だなぁ..スジョン..」
「ぅん..これはこの間のパテ(パティック・フィリップ)よりいい音がする」
「これは..ケースも影響してるよね..」
「そうだね..両面スケルトンだからさ..音が籠もらない..」
「ぅん..澄んだ音がする..響きが違う..綺麗だ..」
「だろ?..こぅ...責っつくようなさ..追い立てられるようなリズムの音色じゃないんだ」
「スジョン..これバラしてみた?」
「もち#..こそこそとね..部品の造りも極上だったよ」
「部品の彫りもいいよね..バランスどう?」
「薄からず..厚からず..彫りも計算してるね..やっぱ」
「そっかぁ..」

はたからみればこの時のスジョンと私の目はギラギラとエキセントリックに見えるであろう..
現に2人を交互に見上げはるみの目は(*_ _)=いいかげんにしてくだしゃい#..である..まっ..いつものことだけど

「お前もなぁ...時計師になれば良かったのにな..」
「ふっ..おんなに技術は教える時計師はそういないよ..」
「まぁな..一応お前も生物分類上おんなだしな..ま..気の済むまで見て行けよ..」
「ぅん..まさかこれ..買ったんじゃないよね..」
「買えるわけ無いだろぉ~~貸し出しだよ..だから..ほら→→..」

スジョンは工房の入り口に立つ蝋人形擬きガードマンを顎で指した..

はるみが飽きて居眠りを始めるまで時計を眺めていた
肩に手を置かれて振り返ると穏やかに微笑むスジョン父がいた..
~~~
「厨房でラブ達と時計の仕事の話してた時さ..闇夜が言ってたんだ..」
「ん..」
「『時計も生きてる』って..」
「あいつらしいひと言だな」
「ぅん..ちぇみは時計..詳しいの?」
「闇夜程ではないが..一応ひと通りの知識は持ってるつもりだ」
「そぅ..」
「俺よりリュルの方が詳しいぞ..だから今回の仕事にリュルは大いに興味を持ったとも言える」
「そうなんだぁ...闇夜が見にいった時計って..どのくらいするもんなの?」
「そうさなぁ..ベントレー3台分ってとこか..」
「ぁぉ..ぅ..ひゅぅ~~..そんなの腕に嵌める人いるわけ?」
「ん~~そこまで値の張る類は実用的な価値ではない..機械の芸術品だな」
「だよねぇ..ちぇみのは?どのくらいよ..」

俺が普段している時計は黒文字盤のOMEGAのクロノだ..仕事で幾度も壊れその度に同じ物を購入していた..
今ので3個目になる製造中止になったそのモデルは今..タレ目のカミさんと共有で使っている

「OMEGAか?」
「違う..もう一個の方..」
「ぷっ..あれは..ん--Sassicaia95を毎日1本空けて1ヶ月分..か..」
「全っ然安くないじゃん..」
「ちょいとな..昔リュルの仕事を手伝って小金が入ったんでスーツ用に買った..今は殆ど出番が無いな..はは..」
「凄いシンプルなデザイン時計だよね」
「ん..だがヴァシュロンの自社開発ムーブの超極薄時計だ」
「へぇ..」
「こぅ..手首にひたっ#っと吸い付く#..ってな感じがいいんだ..」
「ヤらしく笑わないでよ..」
「^^;;..」
「あれ..手巻きだよね..」
「ん..テスが毎晩巻いている..」
「ふふ..いいな..それ..」
「ん..」

「ねぇ..ちぇみ..そのリュルさんの仕事..合法?」
「ぅん?..ぅ..ん#..」
「あやしい..@@..」

上目使いに俺を見るテソンを横目に俺は顎を撫でた..


ありときりぎりす?  ぴかろん

僕達は近々引越しをする
だから僕達は日々荷造りに励んでいる
励んでいるけど片付かないのは何故だろう…

「先生、服の片付けできた?」
「ん…まだ…」
「…あれっ…この服の塊、昨日箱に詰めたヤツじゃん!なんで出してあるの?着るの?」
「ん…ちょっと派手なのがあったから…処分しようかと思って…」
「…。あ!この本も箱に詰めたはずの…。なんか調べる物でもあったの?」
「ん…ちょっと気になった本があったはずだと思って…」
「…。で、探してたもの、あった?」
「うん…」
「じゃあ今度こそ箱に入れちゃっていいね?両方とも」
「うん」

ニコニコと先生は返事する
なんで僕を見る?

「せんせ?自分で箱に入れてごらんよ」
「…」
「あん?」
「入れてみたけど入んない」
「え?」
「これだけの量がここに入ってたって信じられない」
「…。だから…。服は畳んで入れれば入るよ。本はきっちり詰め込めば入るよ。ん?」
「そうやって入れたけど入んない」
「…。ちょっとやってみなよ先生」
「えー」
「えーじゃなくてさ…」

先生は口を尖らせて服を畳み始めた
…畳み方が…下手だ…
遅いくせにどうしてそんなに雑?

「こうだよ先生!」

つい口と手が出てしまう
先生の口がますます尖がった

「ウシクやってよ!」
「何甘えてるんだよ、自分が散らかしたんだから自分で片づけしなきゃ」
「だって最初にこの箱にこれだけの量を押し込んだのウシクでしょ?僕じゃない」
「先生じゃないけど…きっちり畳めば入るし…」
「ぼくはもっと少ない量しか入れないもん!」


また先生の「…もん…だもん!(ぶんむくれ)」が始まった…
困ったトッショリだ…
だけどこれが始まると…【僕】でイケるし…ふ…
僕はニンマリ笑って先生をからかう

「じゃあ先生がちょうどいいと思う量だけ畳んで入れてみて」
「えー」
「僕、あっちの食器類詰め込むからね」
「しょっき?」
「うん」
「ぼくのまぐかっぷ割らないでよ!」
「…」

先生じゃあるまいし…僕がどじって割るわけないじゃん!

「ウシク膨れるのやめなよ、顔が余計に大きく見えるよ」

!
マジメな顔でそーゆー事言うかなぁ?!

絶対今夜は【僕】だからなっ!

「…。じゃ、僕は先生の大切ぅぅな『雪ダルマさんのまぐかっぷ』を丁寧に梱包してまいりますから、先生はこの服を畳んで箱に入れておいてね」
「えー」

えーじゃないっ!
ムカつく!
ま…いいけど…可愛いから…
絶対今夜は【僕】だから!

食器棚の前で先生の大事な『雪だるま柄』のマグカップを包んだ
これは先生の娘さんとお揃いらしい…
先生はそんな事言わないけどこの雪だるまを見つめる先生の目は『お父さん』の輝きだ…

…会いたいんだろうな…言ったことないけど…

僕はいつか先生を娘さんと会わせてあげたいと思ってる
会って話ができなくても、遠くから見つめるだけでもいいから…
娘さんの姿を見せてあげたいと思ってる

そんな大切なカップを割るわけないでしょ?センセ…

ちょっとセンチになっちゃったけど、マグカップ無事梱包終了…
他の食器の包装にかかっていた僕の耳に、あうーんもぉぉっという先生の可愛い叫びが聞こえた
くすくす…どうせうまくいかなくてブーたれてるに決まってる…
僕はそぉっと様子を見に行った
先生はぐちゃぐちゃの衣服の海と本の山の中で天井を見上げていた

「なにやってんの?」
「ウシクが苛める」
「は?」
「僕に無理難題を押し付ける!」
「は…」
「畳めないもんっ!」
「…」
「畳んでも箱に入れようとするとバラって解けるもんっ!」
「…」
「本だって…きっちり入らないもんっ!」
「…」
「箱に入れるのきらい!」
「…せ…」
「ウシクに入れるのは好き!」
「ぜ…」
「今のは冗談!」
「…」

変な事を言って真っ赤になっている先生
僕も赤くなるよ…そんな…げほん…

「み…見ててあげるから…一度畳んでごらんよ…」
「えー」
「えーばっかり言ってるとずっと【僕】主体でいくよ!いいの?」
「えええーっ」
「わかった。永久に【僕】主体でいいなら、荷造り全部僕がやってもいいよ」
「えええええーっ」
「じゃ、畳んでごらんよ…」
「…えー…」

先生は渋々服を畳みだした
畳む…というより…ただ折るだけで…
折るというより…時間をかけて丸めているような…

「先生…ふてくされるのはやめなよ…マジメにやんなよ…」
「マジメにやってるんだもんっ!」

先生は一枚目の服を丸めて箱に入れ、二枚目の服を畳み…いや…折り…いや…丸め始めていた
僕はじっと我慢してそれを見ていた
僕が畳んで箱に詰めると二十から三十ぐらいの服が入るのだが…先生のやり方でいくと…
十個…
そのまま蓋をしようとするのを止めて、全部出した

「ぶー!せっかく僕が畳んできっちり入れたのにっ!ぶーぶー!」
「…こんなまま箱詰めしたら…シワシワになっちゃうよ…」

仕方なく僕は服を畳みなおしてきれいに箱に入れた
10分もかからないうちにその服の海はきれいに箱に収まった

「すごいなぁウシク」
「今見てたでしょ?ほんとはこうやって、こうして畳めば一番いいけど、先生の場合はこういう袖だたみ方式でいけば楽にできるよ。やってごらん」
「…えー…」

先生はまた渋々、僕が箪笥から出してきた服を畳み始めた
横についてきっちり教えているのにどおおおしてっ丸くなるのぉぉぉ!

「うざうざやってるからだよ先生は!こことここを合わせて!」
「…」
「そうそう…んでここをこうして…」
「…」
「…ちっと…アレだけど…まあいい…。んでこれがこうなって」
「…」
「…。普通コレぐらいにきれいに畳めるはずだけど…」
「ぶー!」
「…。わかったよ先生…。本を…箱に入れてみて…」
「えー」

さっきから先生は「えー」と「ぶー」ばかり言っている
…困ったトッショリだけど…
たまらなく可愛い…ぐふ…

「ね…先生…。僕ってさ…『入れるの』得意だろ?」
「箱に物を入れたり片付けたりする事が得意って事だろ?!」

…。ヤな言い方…
確かにそうだけど…先生に入れるのだってくふ…ぐふ…

「顔、ぐにゃぐにゃしてて気持ち悪い!」
「なっ…」
「変な事考えるな!」
「先生のが先に変なこと考えてたんでしょ?もういい!とにかく早くその本を箱に入れてよ!」
「えー」

また!…
さっきよりもうちょっとムカついて、僕はすごいスピードで服を畳んできっちり荷造りした
本ぐらいは入れられるよな…と思って台所の鍋類を梱包にかかった

1時間ぐらい過ぎたろうか…
先生もようやく静かに作業できるようになったみたいだ
鍋やら台所用品やらもあらかた梱包できたのでそっと先生のところを覗いてみた
そして僕は絶句した
さっき僕がきっちり詰めたはずの衣類が洪水のように溢れかえり、本の山は全く片付いていない
そんな中で先生は一冊の本を顔に乗せて眠りこけている…
ああ…
このひとったら僕がいないと何もできないひと?
僕はその場にへたり込み、へたり込んでる場合じゃないと衣服の海に手を伸ばして畳み始め…急にバカバカしくなって先生の顔の上の本を乱暴に取り上げた
そこに安心しきって眠っている困った可愛いトッショリの顔があった

ちゅ

唇に軽くキスをする

ん…ん

ちゅちゅちゅ

んんん…ん…

ちゅうちゅうはむはむ
んんんぁむ…ぁ…

ふん!夜まで待たない!っていうか昼も夜も【僕】決定!
トッショリが止めてくれって言ってもダメ!
違う意味で『泣いて懇願』させてやるからっ!

数十分後、衣服の海と本の山の中で僕は【僕】を【先生】の箱に、きっちりと収めたのだった


交渉人  オリーさん

電話をしてからグァンスと昔話に花を咲かせた
そして30分もしないうちに来たっ!
たかびーきつね、いや元チーフ・・
喫茶店のドアを開くと、まずそこで見得を切り店内を見回しこちらを確認
すぐにカツカツ歩きで近づいてきた
あの歩き方からして、もう誰も逆らえない雰囲気・・
グァンスはちょっと固まったようだった

「ミンチョルです」
僕達のテーブルに来るとグァンスに手を差し出す
グァンスはあわてて立ち上がってきつねの手を握った
そこでふっと笑って、急に呼び出して申し訳ない、と口だけの台詞を吐き
グァンスに椅子をすすめ、自分もとっとと座った
そして笑顔で僕を振り返った
「チョンマン、ありがとう。早速動いてくれて」
「いえ、いいんです。あのう、その代わり、何とか監督から僕のチケットを・・」
「それで早速だけど、グァンス君、どうですか?例の話。電話でも少し説明しましたが」
おいっ!僕のチケットの話も聞いてくれよ・・監督に何とか言ってやってよぉ・・
だが僕の心の叫びはたかびーきつねには届かないようだった

ウェイターにコーヒーを頼んでから、さてと、とグァンスをじっと見つめた
グァンスはすっかりきつねペースにはまりそうになりながらも
あまり派手な世界は好きじゃありません、と抵抗の構えを見せた
よしっいいぞ!って何がいいんだかよくわからないけど・・

「初めて君の曲を聴いたのはもう何年も前です。無実の罪を着せられた青年の作った曲・・
あれは美しい曲でしたね。心が洗われるようだった・・」
たかびーを引っ込め、突然憂いを身にまとったきつねは遠くを見つめてそう呟いていた
この変わり身の早さって役者級じゃないか?
「あれを聴いてから君をぜひウチでプロデュースしたいと思っていたんですが、
あいにく僕の所もそれどころではなくなってしまって・・ご存知でしょう?」
遠くに投げていた視線をグァンスに視線を戻しふっと笑う

そして力強い口調でグァンスに言った
「でもそんな後ろ向きの話をいつまでしていても意味はない」
グァンスがゆっくり瞬きをした
あいだにはさまった僕は何となく落ち着かない
きつねはかまわず続けた
「未来の話をしましょう。誰にも触ることのできない僕たちの未来の話を」
強い光を放つきつねの目がグァンスを捉えた

「派手なことが嫌いならそれでも結構。覆面ってことでやりましょうか?
やり方はこちらで考えます。でも曲はぜひ作ってもらいたいんです」
きつねは話し続け、さらにふふっと笑ってとんでもない事を打ち明けた
「実は、君にやってもらうってことですでに監督にプレゼンしてまして。通ったのはその企画なんですよ」
「ええっ!チーフっじゃなくて元チーフっ、それって僕の得意な先走りってやつじゃないの」
きつねは僕を見た
目が笑っている
ちょっと可愛いかも

「そうなんだ。だからやってもらわないと僕が困る」
出たぞ、たかびーきつねっ
「僕が困るって、それって自分のせいじゃないですか」
「妥協はしたくないんでね」
きつねは真顔に戻ってまたグァンスを見た
グァンスは僕ときつねのやりとりを聞きながら、途方にくれた顔をしている

「ストーリィを簡単にお話ししましょうか」
ああ例の映画の話だね
きつねはグァンスを見ながらある男の喪失と再生の物語を話し出した
淡々としたきつねの説明に、僕はつい聞き入ってしまった
途中から涙腺がやられてしまいそうになった
グァンスを見ると、あいつも目がうるうるしていた

「大まかなストーリィはこんなところです。どうでしょう?
ありきたりのラブストーリィではありません。僕もこの本を読んで感動しました」
話し終えるときつねはあのポーズを取った
ほら、テーブルに肘をつき鼻の前で指を交差するあれだよ・・
目ヂカラ最大五段活用ポーズっ!
それでグァンスを見つめ、僕の方にも視線を飛ばした

僕は思わずグァンスに言っていた
「グァンス、いい映画じゃない?」
「あ、ああ・・」
「主人公のジンっていうのはチーフのスヒョンさんがやるんだ」
「そうなの?」
「そうですよね、チーフ!じゃなくて元チーフ?」
「スヒョンがジンのイメージにぴったりだという事で、監督がわざわざ指名したんです。
相手の女優さんはシム・ウナさんです。引退なさるとかで記念の映画にこれを選びました」
「ひょえー!シム・ウナだってよ、僕好きなんだよなあ。あの楚々とした感じがさあ・・」
僕はついでれでれとなってしまい
メグ・ライアンはどうしたの?とグァンスに突っ込まれてしまった
僕はキっとグァンスを睨みつけながらきつねに聞いた
「ところで、もう一人の相手役の男性は誰ですか?やっぱ人気俳優?」

げほげほげほげほげほっ!

運ばれてきたばかりのコーヒーを飲みかけていたきつねがいきなり咳き込んだ
「チーフ、じゃなくて元チーフ、大丈夫?」
「ああ、大丈夫だ。驚かせてすまない」
「いや、いいんですけど、もう一人の相手役は誰ですか?」
「そんな感じなんだけど、グァンス君どうだろうか?」
「元チーフっ!だからもう一人の相手役は?」
「でね、映画の最初と最後に君の書く曲に合わせてスヒョンの語りを入れるという企画なんだ。
最初はさびしい感じで、ラストはやや明るい感じで。語りにのせて君の曲をたっぷり入れたい」
きつねは完璧に僕を無視して話を進めている
僕は悔しかったのでもう一度トライした
「ねえ、相手役!」
きつねはゆっくりと僕を振り返って言った
「チョンマン、今グァンス君と話がしたい。ちょっと黙っててくれないか」
そしてちっと片方の眉毛をつと吊り上げたので僕は黙った

「最初も最後も同じメロディを使うけれど、転調することによって曲風を変えるのはどうだろう。
モーツァルトにように、たった一音マイナーにするだけで曲のイメージをがらりと変える・・」
「ああ、それは面白い」
グァンスが初めて積極的な言葉を口に出した
「後はエンドロールに流れる曲を一曲。これは男性のデュオが歌います」
「僕が勝手に書いていい?」
「もちろん。君のイメージでやって欲しい。本を読めばより明確なイメージが湧くでしょう。
監督に話して本を届けるよう手配します」
「ちょっと考えさせてください」
グァンスがそう言って下を向いた

睫毛が案外長いんだ、グァンスは・・はひん・・なんて言ってる場合じゃないか
グァンス、よく考えろよ。きつねに惑わされるなよ
でもお前にとったらいい話かもしれないし・・
とにかくよく考えろよ
グァンスは手の中のサングラスを指でさすって考え込んでいる
僕はグァンスをじっと見守った

グァンスが顔を上げた
「あの・・」
「何か?」
「僕やっぱり派手な事はダメです」
「それで?」
「だから、なるべく目立たないようにしてくれますか?」
「考えられる限りの手を尽くします」
「なら、やって・・・」
「え?」
「やってみます」
グァンスはきつねを見てはっきりと答えた
同時にきつねがパンと手を打ち、テーブル越しにグァンスに握手を求めた
グァンスは顔を上げて、差し出された手を握った

あれ、グァンス、ちょっと顔が赤い?
お前のエリザベス・シューはこっちだよぉん、おぅいってばよ・・
僕もグァンスに手を差し出した
「どうしてチョンマンと握手?」
無粋なことを言うグァンスの言葉に僕は大げさにガクッとしてやった
「僕はお前のエリザベス・シューだろっ!いいから俺の手も握れっ!」
「う、うん・・」
「ぎゅっとだぞ!お祝いだからな」
グァンスは照れくさそうに俺の手も握った

きつねも満足そうな柔らかい笑顔になっていた
何だかふたりとも可愛い・・ってか
グァンスはもう一度きつねに向かった
「僕がやってみようと言う気になったのは、好きな曲が書けそうな気がしたから。
それと、僕の未来は誰にも触れられない僕自身のものだから。そうですよね?」
「過去に縛られない未来があってもいいでしょう」
グァンスはそれを聞いて頷いた
俺は嬉しかった

なので俺の未来の話もしたくなった
「あのう、僕のチケットのことなんですけど、監督に話して・・・」
「チョンマン、僕と一緒に店に行く?まだグァンス君と話がある?」
「え?」
「そろそろ店に入らないと」
「はあ」
「僕はもう行く。一緒に乗って行く?」
「ああ、はいっ、お願いします」
「グァンス君、近いうちにまた連絡させてもらいます」
きつねは伝票を掴みながら席を立った
僕はグァンスにピアノバーに行くからな、と言ってきつねの後を追った
チケットの事は車の中で話そう
後ろでグァンスの声がした
「待ってるよ」
僕は振り返って手を振った

そして・・・
きつねは街中をぶいぶいと強気な運転した
僕は危ないっ!ぶつかるっ!と心の中で叫びっぱなしだった
実際はベンツにぶつかると後が面倒なので先方がよけたが・・
途中から乗った高速では噂の車線変更を体験させてもらった
店に着くまで僕は生きた心地がしなかった
「怪我をしたミンを乗せているから、最近は丁寧に乗ってる。
車線変更も二車線までだし、砂浜に乗り入れることもしてない」
店の駐車場に着いて、きつねは僕を振り返ってそう言った
僕は意味不明な引きつった笑いを浮かべた

じゃあギョンビンが怪我してない時はどんな運転なんだよっ!
というわけで、僕はまだチケットの件を解決できずにいる
誰も触ることのできない僕の未来ってのはどうなってるんだよっ!


想像する人々  ぴかろん

おうちに帰る時、車から降りたダーリンに「油断禁物には油断禁物ぅ」って言ったらものすごーくバカにしたような目で僕を見た
これを蔑視という…
ちがーう!
…昔弟に難しい言葉を教える時に、僕は実演しながら教えてやっていた…
そう…『蔑視』…
この言葉を解説する時僕は実際に弟を『蔑視』するような目つきをした…
でもでも可愛くて心の底から蔑視できなかった…当たり前だ!弟は『太陽』だったんだぞっ!『月』の僕が『太陽』を『蔑視』などできるかっ!
むしろ『眩しくてお目々があけてらんない状態』で…ああ…あの頃の弟は可愛らしかったなぁ…
そうやって僕が実演すると、弟も僕を真似て『蔑視』を実演したものだよ…フフ…
弟の『蔑視』はとっても上手で、僕は少しだけ「本気だろうか…」と不安を感じたりもしたな…
ああいけない…弟との思い出にふけってしまってダーリンを軽んじてしまった、ごめんなしゃ…あれ?

ひどいっだーりんっ…なんでそんな早足で先にいっちゃうのぉぉ?ひんひんひん…
ああん待って待って、僕を置いてエレベーターなんかに乗っかって誰かに襲われたらどーすんのよぉぉぉと叫びながら
やっとの事でダーリンにバタバタ追いつくとダーリンは怖ろしい形相で僕の顔を睨みつけこう言った
「わけの解んない事言ってると俺のマンション出入り禁止にすっけどいい?!」
あは~んいや~んとくねくねしてたら頬っぺたをぎゅうううと摘んで左右に広げられた…
あん…いたぁい…と涙を浮かべたらダーリンはパッと指を離してくれた
くふ…優しいなっと思った瞬間ばっちーーーん☆と強烈な両手挟みビンタ(ダーリンの必殺技)をくらった…
油断禁物は油断禁物ら…ひぃぃん…

バカがうるさいったらありゃしない
油断禁物って何のことよ!
…まさかこのバカイナさんの気持ちに気づいてる?
俺は疑いの眼でバカを見た
俺の視線に絡めとられたバカはなぜか急にシュンとなった…
そのまま瞑想に入ったバカをほっぽらかして俺は駐車場のエレベーターに向かった
このバカったらイナさんに関しては結構敏感だし鋭いんだよな…くそっ…
俺の気持ちにもそれぐらい敏感でいて欲しいもんだわ…
それにしても…イナさん…もうコクっちゃえばいいのに…
あの人きっとイナさんの気持ち…受け止めてくれるはずだ…
でもそうするとやっぱりテジュンが可哀想…
はぁぁどうしたらいいんだろ
はぁぁなんで人の事なのにこんなに気にしちゃうんだろ俺ったら…
…バカが何事か叫びながら走ってきた
油断禁物が油断禁物だの襲われるだのほんとーにわけの解んない発想をする
俺のマンションに出入り禁止になってもいいかと言ってやったら急にくねくねしだした…
ああ…このバカって本当はかっこいいはずなのに…なんだコレ?
腹が立つ。イライラする。だからバカのほっぺたを両側にぎゅううっと引っ張ってやった
こいつってえむだからこういうの好きなんだよなぁなんて思いながら…
したら…痛いって言うんだ!バカ!
余計に腹が立ったのでパッとほっぺたを離してからばっちーんって叩いてやった
涙流してた
ざまーみろ!ふんっ

お部屋に戻ってからもダーリンはご機嫌斜め
そんなにご機嫌悪いんだったら自分のおうちにお帰んなさいよっぷんぷん
いっくら忍耐強い僕だって、こぉぉんな不機嫌顔のダーリンは可愛くな…可愛くな…
…ぐふん…可愛い…
一人百面相状態を続けている僕に気付いてぇんダーリぃぃン…
でもでも、気付くどころか難しい顔をして黙って部屋から出てった…
ああんもう…
行き先は解ってる
イナの部屋だ…
イナの『クソジジイ』は今日からまた仕事だ
だから寂しがってるってわけ?
それでダーリンがイナをケア?

どんなケア?

キスとか…
手を使うケア?(ごくり)
ぜ…全身を使う…ケア?!(ごくごくごくりっ)
あああああっ
そんなっ
イナ相手にそんなっ!
見たいっ!
僕好みの二人がぜんしんをつかうケアをっきいいいひいいいあはぁぁん
ひとしきり暴れてから急に馬鹿馬鹿しくなって僕は手洗いうがいをした後ダーリンの時計の本をめくってお勉強の続きをした

イナさんの部屋に行くとイナさんは窓辺でタバコを吸っていた
タバコ、吸いすぎじゃないの?
毎日苦しいの?
俺はイナさんを背中から抱きしめた
イナさんが吐き出せないなら俺が言ってやるよ…
ヨンナムさんなんだろ?イナさんの好きな人って…
背中が揺れた
てのひらにイナさんの心臓の鼓動が伝わる
ああやっぱり…
俺はあの人もイナさんを好きだと思うってこととあの人ならイナさんの気持ち、受け止めてくれるって事伝えようとした
イナさんはみなまで聞かずに俺を制した
突くなって…テジュンと仲良くやっていくって…
「キスしたんだろ?」
そんな仲なのに…
きちんと気持ちを終わらせなきゃダメだよ…イナさん…
イナさんはそのキスを普通のキスじゃないと言う
どんな状況だったかも知らないくせにと言う
じゃあ説明してよ!分析してやるから!
また突いてしまう俺
イナさんは諦めてしまっている…
諦めきれないくせに…
辛いよ…そんなのって…
泣きたいだろうな…毎日泣いてるんだろうな…
うんイナさん…うまく隠してるよ…
俺はイナさんから話聞いてたからピンと来ただけだよ…
うん…うまく…やれるよきっと…
諦めてるんなら…離れた方が…辛くないよね…
けどヨンナムさんは無邪気にイナさんを求めてる…
そうだね…イナさんの言うように…友達としてのイナさんを求めてるんだね…
だから…だからそんなの辛いから…
テジュンだって可哀想すぎるから…
言ったほうがいいのに…あの人への気持ちを…
イナさんの体を離して俺はバカの部屋へ戻った

あっダーリンが帰ってきたっ
聞いて聞いてっ。今日はこんな短時間でクロノグラフのお勉強をしたよっ
クロノグラフとはストップウオッチ機能がついた時計のこと。さらに高度な技術を要するワンプッシュ・クロノグラフやスプリット・セコンド・クロノグラフがある。ワンプッシュクロノグラフ とは、1つのボタンしかないクロノグラフのこと。通常は、スタートとストップ用ボタン、リューズ、リセットボタンの3つがあるが、リューズにプッシュボタンが組み込まれているものをいう。そしてスプリット・セコンド・クロノグラフとは、2本のクロノグラフ針によって1着と2着、また中間タイムの記録、計測中の区間タイムなどを計測することができるものの事。きわめて複雑な機構なので、非常に高価であーる。これはこないだ勉強した4大複雑時計機構であーる…どう?あってる?あってる?

ダーリンは上の空でふーんしーらなかったぁ…風呂入ってくる…ってぽやぽや行っちゃった…
…ぜ…ぜんしんをつかったけあでつかれたのかしら…(@_@;)
僕は忍び足でダーリンの後からバスルームについていった
ドアの隙間からダーリンのストリッ…脱衣を盗み見る…いや…心配で見ているだけだけど…ごくり…
時々はぁ~(ん)とかふぅ~(ん)とかいうため息をつきながら…ごくっ…ゆっくりゆっくりストリッ…衣服を脱いでいる…
ああ…肩のいれじゅみが美味ししょうら…ごくりっ…
ダーリンはふーっと…まるでミンチョルさんがするように前髪フーをして、Gパンのジッパーを下ろしたごくりっ
そしてするする脱ぐ…あとはぱ○つだけ…ん?…んん?…もうオシ○がっ(@_@;)
ダーリンはバスルームに消えたっ
シャワーの音がしてから僕はダーリンの脱いだGパンをこっそりと確認しに行った
ぱん○と一緒に脱いだのか…それともどこかに脱ぎ忘れてきたのか…

Gパンにはぱん○が残ってなかった
脱衣カゴにもぱん○はなかった…
え…
イ…イナのとこに置いてきた?
ど…どんなぜんしんけあを?!ごくり…
僕はイナの事は好きだけどもでもっダーリンとイナがそんなこんなあんな事をするのはいささか…いや…断じてゆるさんっ!
僕を交えてならばちょっぴり許すけれどもダーリンとイナが二人っきりであはんうふんなんて事になったら
ただでさえあの略奪陵辱男がダーリンを略奪陵辱してから僕達四人の間柄は思いっきり4大複雑人間関係なんだからっ!(うまい僕っ座布団十枚!)
僕はいきりたってバスルームのドアを開け、叫んだ
「おぱん○どこで脱いできたのぉぉぉ」
叫びながら僕は泣いていた
振り返ったダーリンの瞳は『蔑視』…
「バカじゃない?今日ははじめっから穿いてないよ!」
えええええっ?!
そんな危険な状態で店に出てたのぉぉぉ?!
僕はその場で失神しそうになった
僕の頭の中で走馬灯が高速回転している
走馬灯の一面一面に次のような文章が書かれている
「挟まないものなのか?」
「痛くないものなのか?」
「気持ち悪くないのか?」
「逆に気持ちいいのか?」
「トイレの後はどうするのか?」
「それって…汚くないのか?」
「いやダーリンのものはどれも愛おしい」
「でも『愛おしい』と『汚い』とは別問題だ。別個にして考えろと以前イナも言った…」
「どおしてダーリンはきょう…おぱん○を穿いていなかったのだ?」
僕はどうやらその文章全てを音読してしまったらしい
走馬灯がピタリと停止した瞬間、目の前にあったのは閻魔大王のようなダーリンの怒り顔とデコパッチンの準備段階の両手の中指と親指
次の瞬間僕は顔中にデコパッチンの集中砲火を浴びたのだった…


ダーリン (by ギョンジン) れいんさん

ダーリン I LOVE YOU
見つめてよ
時を越えて 僕は来た
タトゥを刻みつけて 眠る横顔に
口づけするのは 僕さ

ダーリン I LOVE YOU
許してよ
僕は何も 持ってないけど
君のその危うさを
君のそのしどけなさを
見つめるだけで 震える

僕は君の中 溶けてゆく
僕のハート そのけだるい指で包んで
Umm・・ダーリン

君と僕は今ひとつだね?
甘い夢に手まねきされて 溺れてゆく
I LOVE YOU

ダーリン I LOVE YOU
拗ねないで
瞳濡れると 僕はとまどう
誰も君の髪に 触れさせたりはしない

死ぬまで 僕だけのものさ
僕のハート そのけだるい指で包んで
Umm・・ダーリン

(キャンディ / 原田真二)


替え歌 「狐のテーマ」 ロージーさん

アナタが僕にみせる何もかも
すべてシビれるしぐさ
心にいつもアナタだけを 映しているの

愛は言葉じゃなく 二人だけの Story,yeah
Darling my darling my darling
I'll be so crazy about you
oh No oh No... 

アナタの心に映る何もかも
独り占めしたいのに
瞳の中に今も想い出が見えるから

すき間にしのびこむ 哀しみの Melody,yeah 
Darling my darling my darling
I love you more than you love me
oh No oh No yeah

オトナになれない Crying my heart
ね、どしてなの なぜに泣けるの
僕だけのアナタに戻る
それまでは かりそめの Night and Day No

アナタが僕にみせる何もかも
すべてシビれるしぐさ
心にいつもアナタだけを映しているの

このまま二人して あぁばら色の Memory,yeah
Darling my darling my darling
No-one could love you like I do
oh No oh No yeah

オトナになれない Crying my heart
ね、どしてなの なぜに泣けるの
僕だけのアナタに戻る
それまでは かりそめの Night and Day
Woo No No Woo NO NO

オトナになれない Crying my heart
ね、どしてなの なぜに泣けるの
僕だけのアナタに戻る
それまでは かりそめの Night and Day

オトナになれない Crying my heart...


(サザンオールスターズ『 栞のテーマ 』)


艶姿悩殺ラブチン びょんきちさん

艶姿悩殺ラブチン 色っぽいね
悩殺ラブチン 色っぽいね

夕暮れ抱き合う鋪道 みんなが見ている前で
ラブの肩にもたれて 襟巻きして泣いたの
ラブチン寂しくない? 僕と離れて寂しくない?
バカだね また会えるじゃんって 余裕あるよね

ダーリン ダーリン マイラブ
意味深 I love you
ダーリン ダーリン マイラブ
意味深 I love you

なぜだか涙が止まらない ラブを見ているだけ
艶姿悩殺ラブチン 色っぽいね
おぱん○履かないなんてさ 色っぽいね

僕はアヤフヤだけど 少しも迷っていない
恋して抱き合うことは 自然なことだもんね
時々恋人は あっさり別れちゃうからさ
心配事が増えて 不安なんだよ
ダーリン ダーリン マイラブ

(艶姿ナミダ娘/小泉今日子)


僕たちの物語  れいんさん

それは研修の日の事だった
店が終わる少し前にスハ先生に呼び止められた

「今夜、ホンピョ君をうちでお預かりしてもいいですか?」
「え?」
「久しぶりにゆっくりお話でもしたいと思って」

スハ先生の申し出に僕は少し戸惑った

「なぜ僕に?子供じゃないのだから、僕の許可など必要ないでしょう?
あいつがそうしたいと言うのなら、そうすればいい事です」

そんな言い方をした事を、僕はすぐに後悔した
これじゃ八つ当たりだ・・
でもスハ先生の穏やかな笑顔に変化はない

「そうですね、これじゃドンヒ君が『保護者』みたいで変ですね
えっと・・わかりました。では、責任もってお預かりいたします・・ああ、これも何だかおかしいな」
スハ先生は困ったように額を掻きながらしきりにブツブツ呟いた

そして少し考えた後、僕の目をまっすぐに見つめた
「とにかく・・心配しないで下さい。きっといい方向に向かいますから」


気まずい雰囲気のまま、同じ場所で同じ時を過ごすのは、お互いに心地よいとは言い難い
だから僕にとってそれは有難い申し出だった・・
はずなのに、いつも一緒にいる事に慣れてしまっていたからか
僕は心のどこかに一抹の寂しさを感じていた

いや、あいつの事だ。すぐに音を上げて帰ってくる
我儘なあいつをを受け止められるのは僕しかいない
僕以外の人達に囲まれて、今までとは勝手が違って、思い通りには行かないって事
あいつも身を持って知るだろう
もしかすると、あいつより先にスハ先生達の方が降参してしまうかな
いずれにしても、どこをどう探したって僕ほど忍耐強い男などいないさ
その時の僕はまだそんな風に思っていた

ところが、僕の予想に反して、それから二日間ホンピョは帰って来なかった
勿論、店では顔を合わせるが、あいつはスハ先生の後をついてまわり(まるでカルガモの親子だ)
営業中は誰かのヘルプについている
会話もなければ、接触する機会さえない

もしかして、意識的に僕を避けているのか?
もう戻る気はないのか?
あの時僕が突き放したから?
そうなのか?
ワケのわからない苛立ちが僕の中に湧きあがる



お客様のお見送りを終え、一息つこうとスタッフルームに立ち寄った
テジンさんがいた
他には誰もいない
少し遅れてきたテジンさんは着替えの最中だった
開いたままのロッカーの扉から、時折背中が見え隠れする
無駄のない均整のとれたしなやかな背筋
テジンさんは薄水色のワイシャツを素肌にひらりと羽織った

聞こえよがしに、コホンと一つ咳払いをしてみた
テジンさんは無反応
ホンピョの様子を知りたいけど・・
でも・・どう切り出したらいいものか・・
僕は腕組みしたままテジンさんの背後をうろうろと何往復もした

「・・僕の着替え、そんなに気になる?」
声をかけられ振り向いた時には、テジンさんの着替えは終了していた
ダークスーツのテジンさんは、ちょっと顎を突き出して、ネクタイの結び目を整えていた
「あ・・いえ・・」
僕の方は見もせずに、上目づかいに鏡を覗き込み、今度は髪なんか掻きあげている

「気になるなぁ・・ちらちら見ながら僕の後ろを5往復・・ひょっとして僕に特別な感情でも?」
「えっ・・」
「弱ったな。すまないが君の気持ちには応えられそうもない。僕には心に決めた人が」

「ゲホゲホっ、そ、そんなんじゃありませんっ!からかわないで下さいっ」
「はははっ。冗談だよ、冗談」
「・・」

ったく、この人、真顔でこんな事言うんだから・・
顎や唇カクカク震わせたりなんかしてさ

「で・・何?」
「え?」
「僕に用があるんだろ?」
「えっと・・その・・」
「ふっ・・ホンピョなら・・元気にしてるよ」
「・・あ・・」
「最初は随分沈んでいたが、日ごとに元気を取り戻してきた」

「コホ。・・あいつ、その・・ご迷惑をかけてませんか?自分勝手な奴だから・・」
「いや、スハにとても懐いていてね、今朝も朝早く起きてきて、スハと一緒に庭の手入れをしていたよ」
「え?あいつが?」

「自然の摂理だとか、花や木の育て方なんかを熱心に教わってる」
「・・信じられない・・」
「僕もちょっと意外だったけどね。でも、実によくやってくれてる。すっかりスハの弟分って感じだ。
そういえば、あの日から、午後はいつもスハと一緒にクッキー焼いて、夜はスハの指導のもとアイロンがけに挑戦してたな」
「ええっ?クッキー?アイロン?」
う、嘘だろ・・あいつが?
そんなの今まで一度も見た事ない・・

「まぁ、慣れてないみたいで、アイロンの腕は微妙なところだし、クッキーの出来具合は・・ふっ・・想像に任せるよ」

フリルのついたエプロンをつけ、小花柄のミトンを嵌め、クッキーをオーブンに入れて、ヘヘンなんて鼻の下ゴシゴシ擦ってるあいつの姿が目に浮かび、僕は思い切り頭を振った

「ところで・・君はどうなんだい?」
「え?」
「距離を置いたはいいが・・案外寂しがってやしないかと思ってさ」
「そんな・・身軽になってせいせいしてます」
「そう・・」

テジンさんはロッカーの扉をパタンと閉じた
それから向き合う形で僕の肩に手を置き、長椅子に座らせた
続いてテジンさんも並んで腰掛けた
長椅子の背に手を回し、ゆっくりと話はじめるテジンさん

「何があったか知らないけど・・ホンピョは何も言わないから・・
まぁ、君達の様子を見てると大方の予想はつくけどね。」
「・・」
「それで・・まだ仲直りをする気にはなれないの?」
「・・」
「ホンピョが君のところに帰らないのは、帰りたくないからじゃないと思うけど」
「え・・」
「君との距離を置きながら、あいつなりに自分を見つめなおしていると思うんだ
求めるだけでなく、与えられる人間になりたいと、頑張っているように見えるんだけどね。
・・今朝も2階の窓から外を眺めていて・・そこからの眺めは最高なんだ。小高い丘に昇る朝日・・心洗われるね。
で、まぁ、それを、寂しい顔して見つめていたんだ。ちょっといじらしくなったな。
きっと君の事思い浮かべてたんじゃない?一緒に見たかった・・なんてさ。」

ホンピョ・・おまえ・・ぐすん
不覚にもちょっとジワっときてしまった

「ホンピョは意地っ張りだからな・・君の言葉を待っているのかもしれないね」

僕の言葉?
言葉って・・

「帰っておいでと言ってあげるのはそんなに難しい?」
「・・あ、いえ・・その・・」

「・・なぁ、ドンヒ。例えば、君が・・そう、大事に大事に育てた植物があるとする。
それがすぐに花や実をつけなかったらどうする?君はすぐに諦める?見捨てたりする?
違うだろ?次の春にはきっと咲くって、そう信じて、育てる事を止めないだろう?
手間をかけて育てた花が美しい花を咲かせてくれたら、その時の喜びはひとしおだよな。
だから・・まぁ、なんて言うか・・うん、気長に待っててやれよ。くさったりせずにさ。・・なんてね、これは全部スハの受け売りだ」

「テジンさん・・」
「・・実を言うと、連日のクッキーの試食・・正直、参ってるんだ。食べ残したりすると、『作った人の気持ちを無にして』ってスハが小言を言う。
可哀想だと思うなら、早いこと、この状況から僕を救ってくれないか?」

テジンさんはふふっと笑いながら僕の肩をポンとたたいて立ち上がった

「じゃ、そろそろ行くよ。ただでさえ遅刻だ。チーフに叱られるな」
僕はペコッと頭を下げ、テジンさんの後姿を見送った










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