鍋・フライパンあれこれ美味
100万ポイント山分け!1日5回検索で1ポイントもらえる
>>
人気記事ランキング
ブログを作成
楽天市場
1709143
ホーム
|
日記
|
プロフィール
【フォローする】
【ログイン】
ぴかろんの日常
リレー企画 182
Chasm オリーさん
彼はチョンマンさんと店に来た
僕は知らんふりをしていた
ドンジュンさんとセットになってもらい、店に出た
ドンジュンさんも今日はちょっとテンションが下がり気味
もちろん、店では愛想を振りまき、みんなにも明るい笑顔を見せ、いつもの調子は変わらない
でも僕にはわかる
目がちょっと虚ろだ
時々遠くを眺めて、そして僕と目が合うとあわてて作り笑いをする
僕もそれに応える
休憩時間には二人で黙ってお茶を飲んだ
話すとまたあの話になるってわかってたから、お互い口を閉ざしていた
そんな事を繰り返して、店を終えた
また彼が帰ろうと僕に言い、僕は彼の後をついていった
通路でジホ監督が彼を呼び止めた
「演るんだって?」
監督がそう彼に話しかけ、彼が何かを答えた
後ろにいた僕にはよく聞こえなかった
もっと近づこうとした時、腕を掴まれた
「ギョンビン」
「チョンマンさん、何か?」
僕は監督と彼の会話が聞きたかった
「お前いつもあんな車に乗ってんの?」
「何?あんな車?」
「かっとびベンツだよ」
「かっとび?」
チョンマンさんは僕の腕を掴んだまま放してくれない
「今日乗せてもらったんだけど、もう大変っ!」
「そうですか?」
「割り込み、ばく進、急カーブ、車線変更、尋常じゃないよ」
「坂道いきなりバックはありませんでした?」
「それはなかったけどさあ、僕もう死ぬかと思った」
「戦闘機に比べればヤワいですよ」
僕は話を切り上げたくてちょっと乱暴なことを言った
「あ・そっか」
「どうかしました?」
「そういう世界か」
「は?」
「いや、いんだ。やっぱお前たちいいコンビだわ」
「そんなこと…」
「わかった。僕、今度からヘルメットつけるわ」
チョンマンさんはそう言うと手を放し、するすると前へ進んだ
監督と彼の話は終わっていた
チョンマンさんは監督に近づいて行ったのだ
彼は僕を振り返って目で合図した
「人のワイン勝手に飲まないで」
車の中で僕は彼にそう言った
彼は意外そうな顔で振り返った
「昨日飲んだあのワインのことか?」
「僕が買ったんだ」
「…」
「特別な時に飲もうと思って奮発した」
「悪かった」
「飲むならちゃんと聞いてよね」
「寝てたから」
「起こしてよ」
「今度からそうしよう」
「ハムとチーズも」
「美味かった」
「あれも奮発した」
「わかった、そっくり同じものを買ってきて返そう」
「そういう意味じゃないよ」
「じゃあどういう意味だ」
「もういいっ」
それからは口をきかなかった
何を飲まれて何を食べられても、そんな事は問題じゃない
問題はもっと別にある
わかってるんだ…
マンションに着いて、彼はまた書斎にこもった
僕は一人でベッドの上に寝転んだ
ドンジュンさんの貼りつけたような笑顔
スヒョンさんの余裕の笑顔
そして台本を投げつけた時の彼の凍った顔
次々と色々な浮かんでは消えた
心がざわついて落ち着かない
やっぱりこのままじゃだめだ
僕は起き上がって書斎へ向かった
ノックもせずに書斎へ入ると、彼はパソコンに向かっていた
僕が入ってきたことに気づいているのかいないのか、それもわからない
僕は戸口の所から大きく息を吸い込んで彼に話しかけた
「聞きたい事があるんだけど」
彼が振り向いた
「どうした?」
もう一度深呼吸した
「聞きたい事があるんだ」
「何?」
顔だけ振り向いていた彼が、椅子ごと僕の方へ向き直った
「どうしても映画に出るの?」
「決めた事だ」
「僕がやめてって言っても?」
「映画に出るのがそんなに嫌なのか」
「嫌に決まってるだろっ。あの人と抱き合って、あの人とキスして、あの人と…」
「映画なんだ。実際と違う」
僕は一歩踏み出した
「本当に違うって言える?じゃあ、もう一つ聞く」
「何?」
「僕とスヒョンさん、どちらか選べって言われたら、どっちを取る?」
彼は僕をじっと見つめた
僕も彼を見つめた
長いこと二人とも黙っていた
彼がかすかに首をかしげて口を開いた
「どうしてそんな事を聞くんだ」
「聞きたい。答えてよ」
「答えられない」
「どうして?」
「答えられない」
「僕だって言えないの?」
「それは…言えない」
「どうして言えないの?」
「どっちも大事だ。決められない」
僕は急に力が抜けた
やっぱりそうなんだ
やられちゃった…
「わかった…」
「何がわかったんだ」
「十分だよ」
「何が十分なんだ」
「僕だって言えないって事だけで答になってる。決められないって事で答になってるよっ」
僕はしゃんと立つことができなくなってすぐ後ろの扉にもたれかかった
涙が出ているかもしれない
「僕が入れないくらいスヒョンさんと結ばれてるって事でしょ…」
「ミン…」
「そうなんでしょ?本当に必要なのは僕じゃない、スヒョンさんでしょ」
「やめないか」
「僕は努力したよ、いつか…スヒョンさんを越えられるって思って頑張った…でも…」
「そんな話じゃない」
「どうして祭りの時に戻ってきたの?あの時二人でどこかへ行っちゃえばよかったじゃない
こんな暮らしを始める前に…二人でどこかへ行っちゃえば…ひどいよ」
やっぱり涙が出ていた
彼の顔が見えない
「ひどいよ…こんなに…僕はこんなに好きなのに…」
僕はもたれかかった扉を後ろ手で開けて書斎を飛び出した
後ろで彼の声が聞こえたような気がした
冷たい夜2 足バンさん
涙をぬぐってとにかく車を出した
早くスヒョンの家から離れてしまいたかった
なのに…
寮の駐車場に着いてから車を降りられずにいる
助手席の携帯をずいぶん長いこと見つめて何度も手を伸ばしかけてやめた
鉛のような身体を引きずり暗い部屋に帰っても
僕の気持ちはスヒョンの部屋から出られない
荷物をその辺に放り投げてそのまま玄関に座り込んだ
後悔するくらいなら口にするなよ
他人になら絶対にそう言うに決まってる
俯いて目を閉じて僕の声をただ聞いていたスヒョンの横顔
ただ僕の言葉をじっと受け止めてくれていた
僕はそんな優しささえなじったんだ
いきなりポケットの中の携帯が鳴りだして心臓が飛び出るかと思った
僅かな期待はすぐに打ち消されたけれど
今の僕にとっては嬉しい懐かしい声が響いた
「ドンジュン…元気か?」
「お父さん…どうかしたんですか?」
「いや…おまえの手紙届いたよ…仕事頑張ってるようだな」
「あ…うん…もう少しでメドが立つと思います」
「そうか」
「と言っても本当に大変なのはそれからだけど…」
「そうか…まぁできるところまでやってみろ」
父の暖かい声に目の奥が熱くなる
「そっちは…雪…すごいですか?」
「相変わらずだ」
「悪い風邪引かないように気をつけて」
「おまえも無理するなよ…メシはちゃんと食えよ」
「はい」
「じゃあな」
「お父さん…」
「あ?」
「ありがとう…電話…」
「ああ…じゃあな」
相変わらずの一方的な電話だけれど…嬉しくて…堪えていた涙がまたこぼれる
真っ暗な玄関で膝を抱えて目を閉じると
父の家の周りの桜の木が頭の中いっぱいに広がった
霞む陽の中に散る白い小さな花びらが積もり
辺りを真っ白に変えていく…
こんな僕にもまた春を感じる日が来るんだろうか
車が出ていく音がして
僕はミルからやっと手を離した
中途半端に漂う珈琲の香りに心が痛む
ドンジュンの吐き出した言葉のどれにも反論ができない
あいつがあんな風に言わなきゃいけないほど追い込んだのか?
「スヒョンは誰にでも優しくて包んで拒まなくて
何でもわかってて隙がなくて大人で動じなくて海みたいに…」
何でもわかってるわけじゃない
わかってたらおまえにそんなこと言わせないでしょ
動じないなんて…
ひどい思い違いだよ…
突然椅子に掛けられたジャケットが揺れ携帯が鳴った
ポケットから取り出す時間がもどかしい
ささやかな期待は裏切られ
電話の向こうは元気な声のシン監督だった
その日の昼突然キャンセルになった打合せのお詫びと
その日したかった話を兼ねて飲みに出て来ないかという誘いだった
周りには騒がしい音が響いている
僕はその頃やっと沸いたポットの小さな音をぼんやり聞きながら
了解の返事をした
指定された無国籍風の店に行くと
奥の部屋で監督やプロデューサーや何人かのスタッフが盛り上がっていた
ジホ君がまたちゃっかりと座っていた
「おお!我らが主役!ちゃんとタクシーで来た?飲むんだから」
「打合せは?」
「兼用兼用!まぁ座って座って」
「監督ね、脚本の直しがうまくまとまったとかでご機嫌なんです」
「ああ…」
「そうそうスヒョンさん!あのイ・ミンチョルさんね」
急にミンチョルの名が出てどきりとした
「いいですよあの人!すごいよ彼」
「私も行けばよかったなぁ…」
「チョさんがいると話ややこしくなるもの」
「そんなにいいの?彼」
「自分の魅力に全然気づいてないってところがすごいんだよ」
「監督がそこまで言うの珍しいじゃない」
「ユン女史なんてどう撮ってやろうって目ギラギラ輝かせてたよ」
「彼女今回テンション高いよね」
楽しそうに笑っているみんなの中で
ジホ君だけが僕の顔を観察するように覗き込んでいる
今後のスケジュールなどを含めた打合せも兼ねられていたが
僕はその日そのムードについて行けずにいた
焦りに似た落ち着かない気分
僕はつがれるままの酒を口にしながらただ黙っていた
少しずつ麻痺していく頭の中に
「大丈夫だ」とぽつりと言ったミンチョルの微笑みと
涙を堪え唇を震わせるドンジュンの姿が交差する
できる…きっとできると思っていた自信が今は跡形もない
こんなにも脆い自分に腹が立つ
「ね、スヒョンさん」
「え…はい?」
「どう?今の話」
「え…」
「すごい個性的な店だって聞いたよ」
「スヒョンさんたちの親しい人たちにも会ってみたいしな」
「そうそう是非」
「僕のプライベートには触れないって約束だったじゃないですかっ」
思わず出した大きな声に一瞬場が静かになってしまった
その声に一番驚いたのは僕自身だ
監督も意外そうな表情で僕を見つめた
「いや…そんなつもりじゃないよ」
「いつか評判のお店に行ってみたいってことで…」
「あ…?」
「あの…チーフちょっと疲れてるんですよ今店も忙しくて…ね、チーフ」
「そうか…急に呼び出したりして悪かったね」
「いえ…すみません…大きな声を出して…」
「でもさっきの怒った表情いいなぁ」
「また監督ぅそれしか頭にないんですかっ」
「当たり前だ…これは私の天命だ」
どうかしてる
こんなところであんな些細なことに反応するなんてどうかしてる
「チーフ…大丈夫ですか?」
「うん?」
「気分が悪いとか言って帰ってもいいですよ」
「大丈夫だよ…ありがとう…」
僕はグラスの残りを飲み干した
「ねぇ…」
「はい?」
「役者さんてどうしてるんだろう…自分と役の境目」
「境目なんてありませんよ…厳密には」
「…」
「どんなに自分と違う人間になったってその人の人生や内面が必ず滲み出る」
「そうか…大変な仕事引き受けちゃったんだな…」
「チーフ…」
「ごめん…ちょっと愚痴っぽい?」
「でもだからこそチーフならできると思いました…人の気持ちがわかるあなたなら…
ジンってそういう男じゃないですか」
「気持ちが…そうかな…」
「…」
「もしも…」
「え?」
「もし今僕が降りるって言ったら…どうなるかな」
真剣な眼差しを向けるジホ君はその質問には答えなかった
「不安はわかりますが…チーフの表現するメッセージが誰かひとりにでも伝わって
その人を癒せるとしたらって…その素晴らしさを考えてみて下さい」
「できるだろうか」
「できます」
「一番身近な人間を癒せない僕が?」
「チーフ…」
「いや…ごめん…ちょっと酔ったかな…絡んでごめんね」
「チーフ…焦らないで下さい」
「うん」
「僕にできることなら何でもしますよ」
「ありがとう…」
今日は彼の強い目の光が心強かった
その後
僕はやはり監督たちに詫びて先に席を立たせてもらった
車を拾わずにずいぶん長いこと歩いた
知らない路地に入るとチラチラと舞うものがある
見上げると大きな桜の木の枝をすり抜け小さな氷の粒が降りてくる
雪になりきれない霧のような氷の雨
外灯に反射する宝石のような塵は哀しいくらい美しい
僕はしばらくそのきらきら光る桜を見上げ
満開の優しい花びらを夢想した
不確かな 心に灯る 花明かり 冷たい夜の 見せる幻 (ロージーさん)
ジュンホの観察日記 れいんさん
このところ、ご無沙汰だったお勉強
この前ソニョンさんに
「せっかく書ける様になったのに、忘れちゃうわよ。カタカナ」って言われました
でも大丈夫。カタカナはちゃんと書けます
時々『ツ』と『シ』を間違いますが…
そういうわけで、手始めに今日は日記を書いてみます
当然、観察日記です
お祭りの頃からすると、またまた色んな事がありました
まず、チーフが交代しました
今のチーフはスヒョンさんです
ミンチョルさんは『ミューズ』という会社の再建も担う事になり、多忙になったからです
ミンチョルさんがチーフの時は言えませんでしたが、実は現チーフに相談したい事があるのです
あの…ミンチョルさんの靴音が少しうるさいので困っています
フロアをカツカツ、カツカツ…
だからその件を現チーフから注意してもらいたくて…
僕が直接本人に言えばいいのですが、目力が怖くて言い出せませんでした
聞いた話では、病院でも平気でカツカツ歩くそうです
ミンチョルさんは、絶対にスニーカーを履くべきだと思います
そういえば、この前チーフとミンチョルさんが話している時、二人の周りに紫色のもやが見えました
精神的な疲労のせいで目までおかしくなってしまったのでしょうか
そうそう、BHCに新しい仲間が三人入って来ました
どんな人達なのか未知数で、これからが楽しみです
先日、スヒョンさんが研修をしていました
新人君達は真っ赤になってドギマギしていました
気持ち、分かります
実は、僕、体内時計の研修を頼まれるかと、密かに張り切っていたのですが、僕の出番はありませんでした
ギョンビンさんは、イギリスで(イギリスってどこですか?)刺されたり撃たれたりしたそうですが今は元気です
でも時々、激しく目が吊り上ります
イギリスに行く前からそうだったかもしれませんが、とても心配です
スヒョンさんが通りかかると、その症状が悪化するように見えるのは気のせいでしょうか
ドンジュンさんは、やたらハイテンションな時とやたら凹んでいる時があります
躁鬱病ではないかとこれまた心配です
何か力になれる事はないかと思って、店の隅に埃被ったまま放置されてるシュミレーターに誘ってみるつもりでいます
そしたらきっと元気になりますよね
テソンさんは…
あ、そうそう、ずっと前『ショコラ』という映画を観ましたが(字幕だと漢字が難しいので吹き替えで観ました)
それに出てくるチョコレート、とても美味しそうでした
テソンさんはあんなチョコレート、いつでも作れるのでしょうね
そういえば、もうすぐバレンタインデーです
テソンさんは、貰うよりあげるのではないかと思います、チョコ
テプンさんは、いつだってうるさいくらい元気なのですが、最近では年中行事奉行になっています
餅つき、豆まき…
ああ、でもこの前、凄い形相のお坊さんが、豆をぶん取ってソクさん達に豆まきさせてた様な…
幻覚だったかもしれません
もうしばらくしたら、テプンさんは雛人形を通気性のいい場所においたり、手入れを始めるのではないでしょうか
シチュンさんの事は、実は僕、今までどういう人なのか、よく分かっていませんでしたが
最近になってやっとその人物像がつかめました
へー、ほー、ああいう人だったのですね…ふふん
チョンマンさんは「チケット返して」って、ジホ監督に涙目で訴えています
ジホ監督はそれをのらりくらりとかわしています
それにしても、ジホ監督…
サンダル履きで店まで来るのはどうかと思います
ソヌさんはよく厨房に入り浸っています
テソンさんのチョコが目当てなのは分かっています
僕はソヌさんにデンタルフロスをプレゼントしようかと迷っています
テジンさんとスハ先生は、ひっそりとほんわかと仲良くしています
スハ先生は、せっかく前髪がシャギーだったのに、最近またきっちり揃ってきています
ギョンビンさんが所持している物差しを借りて、スハ先生の前髪水平度を測りたくなりました
それにしても、その髪型はやめろと、早く誰かが教えなくては…
いつも一緒にいたホンピョ君とドンヒ君は、この頃様子が違います
ふぅ~、まったく…子供のケンカというものは…
うちの子供たちもよくケンカをします
…放っておくのが一番ですね
そうそう、この前、凄いものを目撃しました
イナさんが三つ子に取り囲まれていたのです
同じ顔が三つ…ソクさん、テジュンさん、ヨンナムさんの三人なのは分かりましたが
誰が誰やら分かりません
ただならぬ雰囲気を感じて、元ボクサーの僕は思わずファイティングポーズをとりました
何かあったらイナさんに助っ人するつもりでいました
でも、途中からラブ君やギョンジンさんがその中に入ったので様子をみる事にしました
ラブさんは気だるそうにソファにもたれていました
ちょっと姿勢が悪いのが気になりました
ギョンジンさんは、三つ子の三人を過剰にガン見していました
かと思うとラブ君に、「ダーリン」だの「ハニー」だの「子猫ちゃん」だの言いながら
まとわりついていました
足がちょっと内股気味でした
その時スヒョクさんが、睨んだり抓ったりしていたのが、多分ソクさんですね
ソクさんは結構それを喜んでいた風でしたが、今のところまだ渋い雰囲気をキープしています
それにしても、あのそっくりさん達はややこしいので何か目印があるといいんですけど…1号、2号、3号なんて名札をつけるとか、イメージカラーを決めるとか…
まぁ、とりあえず、その場は暴力沙汰までには至らず、イナさんが無事だったので安心しました
あ、階下でソニョンさんが呼んでいます
それでは、今日のところは僕の観察日記、この辺でおしまいにします
片付かない! ぴかろん
僕達は近々引越しをする
だから僕達は日々荷造りに励んでいる
励んでいるけど片付かないのは何故だろう…
このままだと引越しができなくなる
もしかして先生は引越しをしたくない?
「ねぇそうなの?!そうなんだろ!そうに決まってる!ひいいんひいいん」
いつまでたっても片付かない荷物の山の中で僕はついにブチ切れ泣いてしまった
ひんひん泣く僕に驚き(それにしては動きが鈍い)荷物の山の中からむっくり起き上がった先生はポリポリと頭を掻いて、それから机の上の眼鏡をとった
「卑怯だっ何かっていうと眼鏡かけるんだっ!ひいいんひいいいん」
僕は多分ヒステリーを起こしている
だって…
何度箱に詰めても一時間後には箱から出されている服と本…
何で出すのよ!何でなのよ!絶対おかしい!
鍋や食器は出さないのになんで服と本をちらけるのよっ
先生は落ち着いて眼鏡をかけた…
「ウシク…どうしたの?」
「どーしたのじゃないよっ!何だよっ先生のばかっ!ひいいんひいいん」
「馬みたいに泣くなよ」
「きいっきいっ」
「あ…猿になった」
「ひいいんひいいん」
「くふ…馬…」
「ばかああんああん」
「可愛いっウシク」
「何言ってるのよ先生はぁっ!あさってには引っ越したいと思ってるのにどおおして僕が詰めた服と本、いつもいっつも出しちゃうのよっ」
「だって…着る物ないもん…」
「あるじゃない!二、三日分はちゃんとクローゼットにかけてあるじゃないのぉっ」
「なんか…やだ…」
「いつも僕が選んだ服着るくせになんでよっ」
「だって…」
「だって何よ!引越したくないんでしょっ!」
「違うよ」
「じゃあ何でよぉええんええん」
「えっと…ちょっと意地悪したくなったから…」
「意地悪?!」
「だってウシク力強いし体僕より太いし…僕このところお前のいい様にされてる気がしてヤだったから」
「はあ?!」
「片付けさせられたりさ、叱られたりさ…その上…ゴニョゴニョ…」
「…はあ?」
「なんか…悔しいもん…。可愛くないもんウシク」
「…」
がーん…可愛くない?
「うっ…うっうえっ…うええんうええん酷いよ先生はっ先生が片付けないから僕が一生懸命片付けてるのにっ酷いっひどっえっえっ…」
泣きながら先生を盗み見てみた
先生は…何だか嬉しそうにニヤついてる…
「なっ何で笑ってるのよっひっくひっく」
「可愛いんだもんっ♪」
「…」
「泣いてるウシク、可愛い」
…せんせい…
先生はにこにこしながら僕の頭をすりすり撫でている
そんな事やってる先生のがよっぽど可愛いんだけど…
あはーん…このところ僕が主体だからか?
なるほどぉ…挽回したいって事かぁ…
うーん…どぉしよっかなぁ…代わってあげてもいいけどぉ…
いや!待て!
そんな事にかまけてたら僕達本当にお引越しなんかできなくなるっ!
僕は涙を拭いて先生に提案した
「お預けにしよう」
「え?」
「僕も我慢するから先生も我慢するの」
「え…何を?」
「お引越し完了したらその日は…」
「は?」
「だからっその日は先生主体でもいいよ」
「…え…」
「んもっ鈍いなぁっ。お引越しした日は僕を抱いていいよって言ってるの!」
先生は真っ赤になった
そしてボソボソと
「そんな事言ってないのにっ…」
と呟いた
何だよっ!それが望みなんじゃないのかよっ!
「僕は可愛いウシクと一緒にいたいんだもの…何だかこの頃のウシク、キリキリイライラしてて怖いしさ…」
「きいっきいっ!先生がちっとも手伝ってくれないからじゃないかぁああんああん」
「僕はのんびり過ごしたい」
「…」
「お前とのんびりゆっくりほわほわ過ごしたい」
「僕だってそうだけど」
「最近…ちっとも甘えてくれないしさ…つまんない…」
「だって先生が可愛らしすぎるんだもん」
「ふん」
何拗ねてるんだよ!僕にどうこう言う前に自分がもっとしっかりしろよ!可愛すぎるよっ!
と思ったんだけど…勢いで泣いたらちょっとばかり甘えたくなったのも事実…
「せんせぇ~」
「なぁに♪」
そんなに嬉しいのか…僕がこういう甘えた声を出すと…
「ヨシヨシして」
「いいよっおいで♪」
…なんだかなぁ…
チョロすぎないだろうか…
僕は両手を広げた嬉しそうな先生の胸に頭をぐりぐり擦り付けてみた
「いて…。ウシク…頭硬くない?」
「…」
「あは。ウシク」
「…なに…」
「そんな怖い声出しちゃ嫌だ!」
「…」
先生さぁ…『大人らしい振舞い方』忘れちゃったんじゃないのかなぁ…
「可愛くなぁに?って言って」
「…なぁに?」
馬鹿馬鹿しい…
「ぶー。甘えてない」
「…んなぁにぃん」
「ぶー。そんな過剰なお色気似合わない」
全く!僕と先生とどっちが可愛いかみんなに判定して貰いたいぐらいだ!
「せんせぇ~僕のこと好き?」
「好き♪」
「僕もせんせぇが好きっ」
「えへっ」
く…。我慢できないぐらい可愛いんだけど…
「ちゅってしたげよっか♪」
せんせい…可愛らしすぎる!
「…ん…うん…」
「でもぉ」
何だよ!
「この頃ウシクさぁ…僕に『眼鏡かけちゃだめぇ』っていうの、本気じゃないよね」
「は?」
「お客様からリクエストされてぇ巧みに演技してるよねぇ…それが寂しい…」
先生はシュンとなった
ああっもうっこんな人にどうやって甘えればいいんだよっ!きいっ
全くトッショリの望みを叶えてあげるのってややこしいよな…
機嫌損ねると拗ねまくってまた荷物散らかすだろうし…
だいたいさぁ…何で眼鏡かけちゃだめぇって言ってたかというとだなぁ…
先生の大人の魅力が…先生の渋さが爆発してさぁっ…他の皆が寄ってくるのが嫌だったからなんだよっ
今の先生じゃ、眼鏡かけても『アラレちゃん』だよっもう!違う意味で危険だよっくう!
でも…トッショリには親切にしなきゃな…
「くぅん…先生…」
「なぁに?ウシク…」
「眼鏡はぁ僕の前でだけだよっ」
「どぉしよぉかなぁ♪」
あーあ…嬉しそうに…
どうしようもなく可愛いんだけど…
このまま行くとまた僕…我慢できなくなりそうなんだけど…
でもそうするときっとまた拗ねて片付けた箱ひっくり返すよな…
そうするといつまでたっても引越しできない…
そうすると…いつまでたっても…一緒に暮らせないぐす
「えっえっうえっうえっ…」
「ん?ウシクどうしたの?」
「ぜんぜいぼぐどぐらじだぐないんらな…らからごんなごどじでぼぐをごまらぜるんらなっ」
「…」
「えっえっぼぐがでぶだがらだなっ…」
「ウシク…」
「早く一緒に暮らしたいのに…先生はイヤなんだな…」
「そうじゃないよウシク」
「ええんええん…」
久々に本気で駄々をこねた
先生の腕が僕を抱きしめてくれる
そうだよ、祭の頃からずっと僕は先生の腕の中で甘えてきたんだ…
それがとっても心地よくて…だから離れたくなくて…
だから一緒に暮らしたいのに…
「ウシク…可愛い♪」
だからっ!もっと渋く抱きしめるとかっ!もっと大人なカンジで僕を慰めるとかっ…
「ねぇウシク…僕、君とくっついてから自分の気持ちにどんどん素直になっていく」
「…」
「君は僕がカッコイイとか渋いとか言ってくれたけど、僕は格好よくないし渋くもないよ」
「んなことないよセンセ」
「君が僕に甘えてくれるととっても嬉しい♪」
音符つけるなよ…
「でも僕も君に甘えたくなるの…」
「うん…甘えてるよね、先生…」
「…何も変わらないよね…」
「ん?」
「一緒に暮らすようになっても…何も変わらないよね…」
「…」
「このまま…こんな風にいられるよね…」
「先生…」
「ウシク」
「なぁに?」
「…今僕すっごく我儘言った」
「…」
「変わらないものはないのに、変わらないでずっと一緒にいて欲しいと思った」
「うん。僕もそう願ってる…」
「けどさ…でもさ…」
「先生」
「…先のこと考えちゃうんだ…」
「うん…」
「ゆっくりのんびりほわほわしたいのに焦っちゃうんだ…」
「うん先生」
「君より十も年上なのに…頼りなくて情けないよね…」
だから可愛いんじゃん、先生…
「一緒に暮らしたら僕もっともっと頼りなくなるかもしれない…」
「うん…」
「渋くも格好よくもないよ」
「…」
「ほんとにいいの?」
「せんせぇ…」
「ん?」
「…まだそこで留まってるのぉ?」
「…」
「僕が引っ張り上げる。僕は太くて力もあってしっかり者なんでしょ?」
「それに可愛い」
「先生はかっこよくて渋くて大人に見える。でも可愛いの」
「…」
「僕だけが知ってる」
「…」
「僕だけが知ってる事もっと増やしたい」
「ウシク…」
「大好きだよ先生」
「…ウシク…」
ちゅ
「んふ♪」
がわいずぎる!罪な男だ先生はっ!
「だからとにかく!片付けて引っ越そう!」
「…」
「ねっ?」
「…」
「本片付けて。引っ越すまで箱、開けないで!」
「やだ」
「…じゃ…服片付けるから…引っ越すまで箱、開けないで!」
「やだ!」
「何でよっ!」
「くひっ」
こいつ!
結局じゃれあってキスして…片づけが進まなかった…ああんもう…
僕たちの物語 2 れいんさん
昼食にはまだ早い朝のひと時
日が差し込む気持ちのいいリビング
テジンさんは窓際のソファに座っていた
「そういえば昨日ドンヒと話したよ」
ふいの言葉にティーポットを持つ俺の手が止まった
スハ先生はキッチンで、オーブンの中のクッキーと睨めっこしている
俺をドキリとさせた張本人は、足を組み『plovencal interors』なんて雑誌をパラパラめくっている
「なんだか少し元気がなかったように見えたなぁ…」
雑誌から目を離さず、テジンさんは独り言みたいに話し続けた
「目の下には隈、頬はげっそり、胃の調子も悪いとか言ってたな…
おまけに呼吸も苦しくて、血圧まで高いとか…若いのに気の毒な話だ」
え…?
あいつ、体の調子が悪いのか?
そんな風には見えなかったけど…
医者には診せたんだろうか?
無理して店に出てんじゃないのか…?
一人で…大丈夫か…?
「なに、病院に行くように言っておいたから大丈夫さ。そんな事は気にしないで君は気が済むまでここに居てくれたらいいんだよ」
「…」
「ウサギは寂しいと死んでしまうらしいけど、ドンヒなら心配ないさ。さぁ、君も座ってお茶にしよう」
「あ、俺…あの…ちょっと…」
いてもたってもいられずに、俺はキッチンの方に駆け出した
ティーポットを乱暴に置き、慌ててスハの所に駆け寄るホンピョ
身振り手振りであたふたと何事かまくし立てている
まるでぜんまい仕掛けのロボットみたいだ
オーブンの前にいたスハは、かがみこんだ姿勢のまま、こちらはぜんまいが切れた人形みたいに固まっている
一方的に言うだけ言った様子のホンピョはそれからダダダと二階に駆け上った
荷物を取りに行ったとみえる
考えるより先に、体が動くってタイプだな
ふふふ、分かりやすい奴
あっけに取られて階段を見上げているスハ
何が何だか分からないといった様子
そりゃそうだろう
今の今まで一緒にクッキー作ってたんだから
予定ではこの後はあのクッキーでティータイムのはずだった
この展開は僕にとって幸か不幸か…
固まっていたスハがはっと我に返った
エプロンの端で手を拭きながら首を傾げてこちらに来る
さて、僕は今からどう問い詰められるのかな
「ホンピョ君、帰るって…急にどうしたんでしょう」
「そう」
「テジンさん、ホンピョ君に何か言いました?」
「さあね」
「正直に白状して下さい」
「んーー…意地っ張りに効く魔法、ちょっとだけかけてあげた」
肩をすくめて見せるとスハは軽く睨みつけてくすっと笑った
「だからってクッキーの食べ残しは許しませんからね」
俺はスハ先生に「帰る」という主旨の事をまくし立て、ダダダと二階に駆け上がった
ドンヒが病気だって
きっと俺が困らせたからだ
だ、大丈夫なのか?
ど、どーしよう…
と、とにかく帰らなきゃ…
えっと、荷物、荷物…
…あ…
そういや、荷物なんてほとんどなかった
着のみ、着のままここに来たんだった…
俺はとりあえず、間に合わせに揃えた洗面用具や下着類をその辺にあった紙袋に投げ入れた
時間にして一分程度
そしてまた俺はダダダと階下に駆け下りた
テジンさんは片手にティーカップ、もう片方の手でスハ先生の髪を弄んだりなんかしてちょっといいムード
だがこの俺はそれどころではない
テジンさんの腕を鷲掴みにし、寮まで送ってくれと頼み込んだ
テジンさんは飲みかけのカップを慌ててスハ先生に渡した
俺はテジンさんを強引に、玄関近くまで連行した
「あっ…テジンさん、クッキーは…」
「ああ、スハ、こういうわけだから、そのクッキーはまた後で…
ああ、せっかく作ったんだから、ホンピョ君にそれ持たせてあげたら?」
「あっそうですね」
テジンさん、ひょっとして俺のクッキー食いたくねえのか?
そんな事をちらっと考えている間に袋づめにされたクッキーをスハ先生に手渡された
できたてだから密封はされてない
俺は礼を言って、またそれを紙袋に入れた
そして、玄関先でまだ名残惜しんでる二人を引き離し、テジンさんをせっついて寮まで送ってもらった
もぞもぞとソファから起き出す朝
あんまり早起きとは言えない朝
テーブルには昨夜飲んだビールの空き缶やピスタチオの殻が散乱している
あいつは昨夜も帰ってない
小さな溜息を一つ吐き、テーブルの上を片付け始める
空き缶をクシャっと握りつぶし、ダストボックスにシュートする
それはダストボックスに拒否されて、コロンと床に転がった
はぁ~…何やってんだ
しっかりしろよ、ドンヒ
普段の僕はこんな風じゃないのにな…
フローリングの床がひんやりと足先に伝わる
テーブルの場所を最小限だけ確保し、チーズとミルクで軽く腹ごしらえする
これじゃまるでブルーの朝飯だ…
僕しかいないこの部屋はひどく殺風景で無機質だ
クッションの下に埋もれていた携帯をゴソゴソと探し出す
着信履歴を確認してみた
ホンピョからの電話はない
あいつ…どうしてるのかな…
電話くらいよこしたってさ…
ふと昨日のテジンさんとの会話を思い出す
『君の言葉を待っているのかもしれないね…』
僕の言葉、か…
どうしてる?
元気なのか?
いつ帰る?
帰って来いよ…
待ってるからさ…
なんでもない言葉なのに、なぜこんなにも難しいんだろう
縺れた糸をそのままにしていたら、もっと複雑に絡んでしまって
どこから解していけばいいのか、すっかりワケがわからなくなった
握り締めた携帯をコツンと額に打ち付けて、僕は何度目かの溜息をついた
Tears オリーさん
こんなはずじゃなかった
こんな事を望んでいたわけじゃなかった
ただどうしても知らんふりができなかった
ついしかけてしまった
そうしたら彼ははまった
僕を選んでくれなかった…
嘘でもいいから僕を選ぶって言えばいいのに
ばか正直なんだから
できるわけがない
どちらかを選ぶなんて
僕にとって二人は、ミンとスヒョンは…
どちらも自然に存在しているのに
どちらもかけがえのない存在なのに
選ばなくてはいけないのだろうか
選ぶ必要があるのだろうか
ミンにぶつけられた言葉がしばらく僕の中で暴れまわっていた
反射的にミンの名前を呼んだものの、そのまま動けずにいた
これで終わるのだろうか
僕は急に怖くなった
彼と終わってしまう?
でも僕が追い詰めた
苦しくて我慢できなくて、僕が吐き出した
だから…終わってしまう?
彼はあの人の所へ行くだろうか
そうしたら、僕だけじゃなく…
ドンジュンさん、ごめん、僕がしくじった
ごめんごめんごめん…
僕はミンを探すために書斎を出た
寝室を覗くと、ミンがベッドの隅に後ろ向きに腰かけているのが見えた
うつむいているせいか、その背中がやけに小さく見える
それでも僕はそこにいたことにほっとして、ミンのそばへ近づいた
「ミン…」
呼んでもミンは顔を上げなかった
僕はミンの隣に腰かけて左の手を握った
ミンの体がぴくんと音を立てたような気がした
ミンは下を向いたまま言った
「あの人のところへ行くの?」
「選ばせたいのか」
「ほんとに…好きな人と一緒にいたいでしょ」
「スヒョンのところへ行けっていうのか?」
「そしたら終わりだね」
「何でそんな風に決めつける?」
「ドンジュンさんには僕が謝る」
「僕はドンジュンとスヒョンの間に入ろうなんて思ってない」
あの人と同じだ
彼もドンジュンさんと争うつもりはないと
ドンジュンさんの気持ちがわかる
「思ってなくても入ってる、自然とね」
僕は下を向いたまま言った
「ばかな事ばかり言うんじゃない」
「ばかじゃない、だからわかるよ」
「確かに僕はスヒョンを失いたくない」
やっぱり…
「だったら…行けば…」
涙がとめどなく溢れ鼻筋を通って大きな粒になって落ちていった
握っているミンの手が震え
うつむいた顔からは涙がぽたぽたと床へ落ちている
僕は思わずミンを抱き寄せた
「ミン、泣かなくていい、そうじゃないんだ」
その瞬間ミンは声をあげて泣き出した
「行かないでよ…やっぱり嫌だ…」
ミンは自由になる左手で僕にすがりついた
「スヒョンさんを想っててもいい…行かないでよ…」
「そんなことじゃないんだ」
僕は子供のように泣きじゃくるミンを抱きしめた
彼に抱かれたとたん、最後に残っていた柱が折れた
嫌だ、嫌だ、嫌だ…行かないで…
僕は彼にすがりついた
彼を失うなんて考えられない
どんな風でもいいから、行かないで
どんな風でもいいから…
彼は泣いている僕をなだめるように言った
僕がいつか言った言葉を覚えているか
僕らは終わらない
どこにいても何があってもずっとお互いを想ってるって
忘れたのか?
忘れてない、祭りの時に言ってくれたね
忘れてないけど
こんなにも涙を流すミンを見るのは初めてだった
「すまなかった。僕が悪かった」
ミンは僕の胸に顔をつけてまた泣いた
僕は涙の代償を払わなければと感じた
泣いているミンに言った
「僕の気持ちを話してみようか」
ミンは顔を上げ、泣きはらした目で僕を見つめ唇を結んだ
僕はまたミンの手を握った
「スヒョンは特別な存在だ
イナとは親友だけど、居候させるくらい親しいけど、それとはちょっと違う」
「それは…僕はイナさんに嫉妬したりしないもの…」
僕の肩にもたれかかったミンが泣きながら笑った
「スヒョンは僕に教えてくれた。誰かに頼ってもいいんだ、甘えてもいいんだって
苦しまなくていい、自分を責めなくていいって言ってくれた
そんな風に言ってもらえて初めて僕は自由になれたような気がする
だからミンにも真直ぐ向かっていけた」
スヒョンが癒してくれた事を思い起こしていた
本当に初めてだった
親でさえ頼ったことのない僕だったから
「じゃあスヒョンさんとは…」
ミンの声で我に返った
「スヒョンはドンジュンと歩いていく。僕たちはお互いにそれを見て安心する
どっちを選んでどっちを取るかなんて問題じゃない」
「…」
「祭りの最後の夜、僕とスヒョンで出かけただろ。その時の話はしてなかったね」
「聞きたくなかった…怖かったから」
「スヒョンとキスをした」
あの森でのあの抱擁を思い出して、僕の胸の底がかすかにうずいた
彼はあっさりと言った
あの人とキスした…
僕の心がまた大きく揺れた
どんなキス…
でも彼は話し続けた
「その後、スヒョンは何て言ったと思う?」
「何て?」
「もどろうって」
「戻る?」
「大切な場所へ、ドンジュンとミンの待っている所へもどろうって
ミンだから、僕をまかせられるとも言った」
そう、そうなんだ
あの人は大きすぎる…
まるで空のよう、まるで海のよう
僕は小さな鳥、小さな舟
一抹の不安を感じながらも、僕は話し続けた
スヒョンの存在を僕自身が確認するかのように
僕の話がミンにどう伝わっているのだろう
どう伝わろうと、伝えなければいけない気がした
僕はどちらも失いたくない
「ミューズをやると決めた時、自分も映画で忙しくなるのにチーフを代わってくれた
僕がイギリスに行きたいと言った時は、お兄さんと一緒に手続きを全部やってくれた」
「…」
「スヒョンは僕が辛い目にあったり、悲しんだりするのが嫌なんだ
だから僕はそうなりそうな時は、スヒョンの所へ助けを求めに行く、甘えに行く
僕も同じだ。スヒョンが困ったら、僕が助けたい、支えたい…愛かもしれない」
愛という言葉がふと口からこぼれた
他に表現できなかった
紛れもなく愛
僕は思った
とても大きくてとても深い…
とどまって踏み堪え、そしてなお互いを慈しむ
いや、踏みとどまるからこそ…
「スヒョンさんに負けたくなかった…かなわないってわかるから、よけい…」
「勝ち負けじゃない。スヒョンはミンに、いや僕たちが終わる事なんか望んでない
僕の帰る場所はミンのところなんだ。それでもだめなのか?
いつだってミンの顔を見て、ミンを抱いて、ミンを感じていたい」
彼は僕の顔を覗き込んだ
その瞳は真剣な光を帯びていた
「そんな言い方されたら、僕はまるで聞き分けのない子供みたいだ」
「子供みたいなミンを初めて見た。そんなミンも…いいよ」
彼は僕の頬にそっと唇をつけた
僕はまた泣いた
腕の中で泣いていたミンが少しづつ静かになっていった
それでも僕はミンをずっと抱きしめていた
「やってみれば…」
突然ミンが小さな声で言った
「え?」
「映画、やってみれば」
「応援してくれるのか」
「そこまではわからない。でもやってみれば」
ミンはそう言いながらまた僕の胸に顔をすりつけた
彼に抱かれながら、僕は今までほど腹が立たない自分に気づいた
今はこれでいいのかもしれない
僕に出来ることはひとつしかない
彼のそばにいること
こうやって彼を掴んでいること
仕事は終わりにしてもう休もうよ…
僕は彼の腕の中でにそう囁いた
修行する人考える人 ぴかろん
バカの顔中にデコピンしてやった
バカだから!
はあっ!何がぱん○だよっもうっ!
俺がどこででもぱん○を脱ぐ男だと思ってるわけ?!…はあぁっ
俺はイライラしていた
イナさんの事が気になった
苦しそうなのに何にも言わない
甘えてもこない
俺なんかには甘えたくない?
…拒絶されるのって痛い
けどきっと拒絶する方はもっと痛いんだろう…
俺はうまく踏み込めない
イナさんはバカやソクさんの心にするっと入り込むのにな…
仕方ない
俺はイナさんじゃないもの…相談にのるだとか傷を癒すだとかそんな事
俺にできるわけない…
ぼんやりシャワーを浴びながらイナさんの顔を思い出していた
ひいいんひいいんいたいよう
だーりんのゆびったらはがねのようだよう
あまりの痛さにしばらく蹲っていたらいつの間にかダーリンはシャワーを終えて出てきたのだひんっ
ダーリンは蹲っている僕を見下ろして「邪魔」と一言吐き、バスタオルを腰に巻いてブォォォンとドライヤーをかけだした
ひいいんひいいんいたいよう
声に出して訴えてみた
ダーリンは知らん顔
冷たいっ
ブォォブォォ
あ、そうか。ドライヤーの音で聞こえないんだっ♪じゃ、こうしよう
僕は立ち上がり襟巻きになってダーリンの耳元でもう一度訴えた
ひいいんひいいんいたいよう
ブボボボボ…
あうえうっ熱いっ
酷いっだーりんっ僕の傷だらけの顔面にドライヤーの熱風を浴びせたっ
ひいいんひいいんいたいようあついようひどいよう
うっとおしいなぁもう
髪が乾かないじゃんかっ!
襟巻きになってひんひん言っているバカを無視して俺はドライヤーをかけ続けた
…イナさん…どうする気だろう
あんなんじゃそのうちテジュンに気付かれる…
もしかしたらもう気付いているかもしれない…
無理なんだよ、イナさんに隠し事なんてできるわけない
話せばいいのに…
テジュンは…そりゃショック受けるだろうけど…だからって突っぱねたりしないと思う…
…『ひいいんひいいん』…
…
ああうっとおしいいっもうっ
俺はバカを睨み付けて風呂に入れ!と怒鳴った
ダーリンが怖ろしい顔で風呂に入れと言ったので、僕は涙を浮かべながらお洋服を脱ぎ脱ぎし始めた
くふん…僕のストリッ…脱衣をダーリンはどんな気持ちで見てるのかなっ?
ダーリン今日はおもいっきり「えす」な気分だろうなっるんっ
…はっ…『るん♪』って僕…
やだっ…僕やっぱり「えむ」?くふふん…あはんきひん
鏡に写るダーリンに向けて熱いまなざしを送ってみた
はん…ひひん…ひいいんひいいん
ダーリンの瞳は宙を彷徨っている…
ひいいんひいいんぼくをみてないひいいん
泣き続けていたらダーリンはドライヤーを終えて僕を睨みつけ
「綺麗に洗えよな!」
とドスを聞かせた声で言った
あん…ドスを聞かせてもかわいいん♪
腰にバスタオル姿のまんまベッドに横たわった
あーこんなままでいるとあのバカに襲われるかもしれない…
勉強しよう勉強…
で、あのバカが風呂から出てきたら一緒に勉強しようって言って、あいつがどういうデザインの時計を好むか調査でもしよう…
気分よくない…
こんな時は時計の顔を眺めるのが一番だから…
俺はバカが勉強していた時計雑誌をパラパラと捲ってみた
所々にドッグイヤーがある
…
はぁん…もしかしたら気に入った時計んとこ、折った?
あ…これ好きなのかな…結構趣味いいじゃん…
あ…これも俺と好みが一緒だ…へぇ…何だ、センスあるじゃん…
俺は少し嬉しくなって、バカが風呂から上がってきたらご褒美のちゅーでもしてやるか…なんて思っていた
あのバカは『本当の馬鹿』じゃないから…とっても「使える」ひひ…
綺麗に洗えっていつも綺麗に洗ってるもん僕!
でも今日はより念入りにコシコシコシプクプクプク…あはんはぁあん
…洗いながらふっと思った…
僕のレベル…段々下がってきてないか?
いかん…このままではダーリンに主導権を握られてしまうっ!
僕はもっとかっこよくならなくてはっきいっ!
シャワーのお湯を水に切り替え、僕はその場でプチ修行をしてみた
温かかったお湯が徐々にぬるくなり、しょしてみじゅになりっ、とうとう冷水ににゃったっひいい
…あわわあわわわあわあわわ…
僕はまたお湯が出るようにコックを調節
はぁぁ気持ちいい…
はっ!いかん!修行するのであった!
もう一度水に切り替える
我慢が大切っ我慢我慢心頭滅却すれば水もまた温かしっがまんがまんがまんが…
…ひいひいひいいっ…
大声で叫んで、僕はシャワーのコックを止めた
もういいっ!
プチ修行終了…ひん…
真冬には向いてない
耐えられない
って事は僕は『完全なえむ』ではないという事かしらんふふん
でもでもお湯と水を交互に浴びたせいで逆に体が火照ってきた
あはんうふんな火照りではないぞ!そんな「水を浴びたらえろくなる」なんてとってもかっこ悪いではないか!
そうじゃなくて『交代浴』にあたるだろう、これは
ほら、サウナなんかでさ、冷水浴してサウナ入ってまた冷水浴してってやつさ。うふん
僕の知識のファイルを開いてみようくふん…
『交代浴による温度変化は自律神経系の訓練となり、それによって自らの器官機能を調整するので大きな健康効果が期待される』
きひんっ!だから体がぽかぽかなのっきひっ僕ってあったまいーい
風呂場からバカの悲鳴が何度か聞こえた
それから暫くしてバカが腰にバスタオル姿で戻ってきた
俺がベッドに寝転がっているとああんラブゥお待たせぇんと叫びながら俺の上に乗っかってきた
ばかっ!冷たいっどけよ!
怒鳴るとしゃきっと正座した
くふふ…
らぶぅぅ…きょうも『はうすぅ?』
俺の腹に人差し指をくねらせて上目遣いでおねだりしてる…
俺はくふっと笑って俺の隣をパンパンと叩いた
バカの瞳がキラッと輝き、バカは俺の隣にすっぽりダイブした
そして俺に纏わりつく
ああもううっとおしいっ!…だってラブ、呼んだじゃんか…一緒に勉強しようと思ってさ…ええ~…イヤなら離れてくれる?…ああん離れたくなぁい
…じゃ勉強しよう、ねね、このドッグイヤーしてあるとこの時計さ、好きなの?…え?ああ、これはここに色々解説が載ってたから折ったの、勉強熱心でしょ?
…んじゃ時計は見てないってわけ?!…だぁってぇ時間判んないじゃんこの時計ごちゃごちゃしてるしぃ…むむむ。じゃあアンタどんな時計が好き?
…えーっとぉ、これとかぁこれとかぁ、あ、これもいいなっ
バカが嬉しそうに指さしたのは、どれもオーソドックスな文字盤の時計だった
…要するに判り易い文字盤の時計がいいって事ね?…そうでしょ?普通。これなんか訳判んない、針一本だよ?何でよ!それにこれなんか何で数字がバラバラなのよ!どうやって時間を知るのよ!
…それは複雑な機械構造になってて、針が飛ぶんだよ…え?どういう構造?針が飛ぶって何?ちゃんときっちり説明してくんなきゃわかんなぁい
…せ…説明は俺は…ああそうだった!ラブったらからだでは解ってるけど説明できないのだった。くふ…ほんとかなぁ…ほんとにわかってるのかなぁ…
あああむかつく!センスのセの字もなかったんだやっぱし!
俺はヤな感じのバカに、その複雑機構の説明が書いてあるページを押し付けてブンむくれた
はんはん…ほんほん…へぇぇFrank Mullerっててんさーい…
僕はダーリンが投げ出したFrank Mullerのクレイジーアワーズの構造について読み耽った
うーん確かにどういう構造なのかハッキリは書いてないな…そりゃそうだ…こんなのバラしたらみんな真似してつくるよな…
でも面白いなぁふんふん
僕は夢中になって機械の構造の勉強をした
ああ俺とは感性が違うのね?このバカ…
期待した俺が馬鹿だったんだ…
バカはお勉強が好きみたいで、興味を持つと没頭するタイプらしい…
それはそれで頼もしいけどさっきまであはんくふん言ってたくせに何よこの変わり身の早さ…
ちっとつまんないな…
そんな事を考えていたらバカの携帯が「えまーじぇんしーえまーじぇんしー」と叫びだした
♪ポールさんだっ♪
遠慮なく出る
やっぱりポールさんだった♪
バカはまだ勉強に夢中だ…
ひとしきりポールさんと喋って、集中している馬鹿に電話を渡した
ジャンル別一覧
出産・子育て
ファッション
美容・コスメ
健康・ダイエット
生活・インテリア
料理・食べ物
ドリンク・お酒
ペット
趣味・ゲーム
映画・TV
音楽
読書・コミック
旅行・海外情報
園芸
スポーツ
アウトドア・釣り
車・バイク
パソコン・家電
そのほか
すべてのジャンル
人気のクチコミテーマ
ひとりごと
恋しさは今
(2026-08-03 05:17:34)
みんなのレビュー
ビリビリに破れた椅子の座面をセルフ…
(2026-08-02 09:18:05)
政治について
消費減税に関する税制調査会合同会議…
(2026-08-03 07:07:21)
© Rakuten Group, Inc.
X
共有
Facebook
Twitter
Google +
LinkedIn
Email
Design
a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧
|
PC版を閲覧
人気ブログランキングへ
無料自動相互リンク
にほんブログ村 女磨き
LOHAS風なアイテム・グッズ
みんなが注目のトレンド情報とは・・・?
So-netトレンドブログ
Livedoor Blog a
Livedoor Blog b
Livedoor Blog c
楽天ブログ
JUGEMブログ
Excitブログ
Seesaaブログ
Seesaaブログ
Googleブログ
なにこれオシャレ?トレンドアイテム情報
みんなの通販市場
無料のオファーでコツコツ稼ぐ方法
無料オファーのアフィリエイトで稼げるASP
ホーム
Hsc
人気ブログランキングへ
その他
Share by: