ぴかろんの日常

ぴかろんの日常

リレー企画 205

千の想い 72  ぴかろん

あらかたパンの成型を終えて二次発酵を待っていた
俺は、今一体何歳なのか解らないイナを見てニヤけている
イナはキッと俺を睨んで唇を尖らせた
テソンのアヒル口に負けてるがな…

「なんだよ」
「濃…バルサミコ…本命さ…いや、テジュンさんはどうした?」
「…なんで今になって聞くの?」
「うーむ…今日のこどもぱんの出来はなんだか焦りを感じるなぁ」
「…え?」
「焦りというか…待ち遠しさを感じるというかぁ…」
「…」
「それに『こどもぱん』にしては…艶っぽいよぉなぁ…」
「…なにが言いたいのさ!」
「この後、濃…バルサミ…ほんめ…いや、テジュンさんとナニのアレか?お?」
「そう」
「…お?」
「そう!」
「な…なにのあれ…なのか?」
「そう!だから何!」

イナの奴、開き直りやがった
ちょっとからかって奴が赤くなるのを見たかったのに、可愛くない!
イナはそわそわと時計を見上げたり、腰高窓から外を覗いたりしている

「…なんで一緒に来なかったんだ?」
「…なんで今になって聞くの?」
「んと…今、手が空いたからだが…」
「ヨンナムさんと話したいって…二人で…」
「濃顔さんと爽顔さんが話すのか?」
「同じ顔だよ!」
「でもテジュンさんは濃いだろぉ?お?お?」
「ニヤニヤすんなよ!」
「イライラするな。今日のパンはいらいらぱんだな」
「ふんっ!」
「こら!師匠の教えを聞かんか!」
「…教えなの?今の…」
「…ちょびっとな」
「ふんっ!」
「くぉらっ!」

生意気なイナをヘッドロックしてやった

「げげげ…ぐるじい」
「くぉんのぉ…ったく色気づきやがってこいつ」
「…げ…はなじで…」

マジで苦しそうだったので腕を緩めてやった
イナは首を擦りながら呟いた

「早く会いたい…」
「…けほ…さっきまで一緒にいたんだろ?」
「…1時間もいなかったもん…」
「お?!昨日、濃…バル…テジュンさんは1時過ぎにここを出たんだぞ」
「…え…」
「何時に帰ってきたんだ?」
「…朝の7時頃…」
「ふぅむ…どぉこでぇだぁれとぉナニをしていたのやらぁ」
「…」
「そう言えばテスが言ってたけど、ラブが濃…バル…テジュンさんに纏わりついて誘いかけてたらしいぞぉ怪しいずぉ」

イナがムキッと俺を振り返った
涙目になっている
これこれ!これが見たかったんだ!
俺はにっこり笑って「うっそぴょ~ん」と言ってみた
途端にイナの瞳が蔑み色になった

「…な…なんだ…」
「そういう言葉、使わないほうがいい」
「…お…」
「ぜんっぜん似合わねぇ!」
「…。くぉのっ!」

俺は手を振り上げて奴を殴る真似をした
そんな事をしていたら工房のドアが音もなくそっと開いた
俺を睨んでいたイナはサッとドアの方に顔を向けた
お待ちかねの濃顔さんのお出ましってわけだ


イナを迎えにcasaまで歩いてきた
ヨンナムにイナを抱くと宣言したけれど、イナは…イナはヨンナムの気持ちを知ったら…僕を拒むかもしれない…
先にヨンナムとイナを会わせた方がいいのだろうか…
迷いながら工房のドアを開けた
振り向いたイナの瞳が妖しく光っていた


チェミさんと軽口を叩いていたらテジュンの香りがした
俺は確信して振り向いた
テジュンがそこにいた
『男』の香りを纏わせてそこに立っていた
テジュンを見た瞬間、俺の細胞ひとつひとつがざわざわと蠢いた
俺はテジュンの傍に行く
テジュンは少し微笑んで「お待たせ」と言った
低く囁いた張りのある声に俺の腕は操られ
テジュンの首に纏わりついた

「…イナ…チェミさんがびっくりしてるぞ」
「…行こう…」
「行こうって…まだパン焼いてないんでしょ?ん?」
「…行こう…待てない…」
「…イナ?」

テジュンのうなじに鼻を寄せると体中にテジュンの香りが広がった
俺の細胞は小躍りを始め、徐々に俺を崩していった

「イナ、ちゃんとパンを作らなきゃ…」
「…ん…作った…」
「…まだ焼いてないじゃない」
「…チェミさんに…頼む…」
「お前どうしたの?」
「…」


イナは小声で僕の耳に囁いた

欲しい…

生唾を飲み込んだところをチェミさんに見られた
目が合ってしまい、気まずかった
チェミさんはニコッと笑い

「今日だけ、特別に許してやるよ。テジュンさん、どうにかしてやってください。欲求不満みたいですよ」

と言った
僕は恥ずかしくなって「はぁ」と言って俯いた
イナは僕の顔を妖しい瞳で見つめて「早く行こう」と急かした

「…どこへ…」
「いいから早く」

切羽詰ったように僕を引っ張るイナ
僕はイナに引き摺られ、チェミさんに会釈して工房を後にした

「終わったらパン、取りに来いよ!」

チェミさんの声が背中に届いた

「イナってば!恥ずかしい!」
「なにがっ」
「…お前どうしたの?」

僕の手を引っ張って外に出たイナは血眼で何かを探している

「車は?」
「は?」
「…車じゃないの?!」
「…いけなかった?」
「…」

車に乗ってこなかったと知ると、イナはまたグイグイと僕を引っ張り、表通りでタクシーを呼び止めた

「何…どうしたのイナ…どこ行くの」
「マンション、俺の」

止まったタクシーに僕を押し込んで重なるように自分も乗り込み、「RRHへ。大急ぎで」と告げて親指を噛んでいる
僕はその横顔を見つめてクスッと笑った
イナが怒ったように僕を見た

「なんでそんなに焦ってるの?ん?」
「…時間ないじゃん…」
「?」

呟いた後に真っ赤になって俯いている

ほんとにどうしちゃったの?そんなに僕と一緒に居たいの?

…イナ…
ヨンナムがね…
お前の傍に…居たいんだって…
どうする?
それ聞いたら…お前こんなに焦ったりしないよね…
それを今言わない僕は卑怯者?

ううん…
ヨンナムに直接聞けばいい
ヨンナムの気持ちを…
その時お前もヨンナムに
お前の気持ちを言えばいい…
隙間の時間は…僕の『お前』で居てくれるよね…イナ…

僕はイナの膝に手を置いた
イナはビクリと動いた

タクシーがRRHに着いた
イナはお金を払って僕の手を引っ張った
僕達はトンプソンさんの前をドタドタと通り過ぎた
トンプソンさんは少しだけ驚いた顔をした

エレベーターの扉が開くまでの間イナは左手で僕の手を握り締め、右手の親指を齧っていた
やっと扉が開き僕はイナに引き摺られて箱に乗り込んだ
イナは閉ボタンと40階のボタンを押し、扉が閉まると同時に僕にむしゃぶりついた

「ん…イナ…イ…」
「…」

こんなイナは初めてだ
僕はイナの肩を押さえ、無理矢理唇を離した
イナの瞳は妖しいだけでなく、餓えさえも感じさせた

「…どうしたんだよ…何を焦って…んむ…」

イナは…キスするのが巧い
キスを仕掛けるのが…巧い
いくら防ごうとしても、これには負けてしまう…
でもこんな事は今までなかったと思う
祭の時だってこんな…獣じみた事はしなかった…
閉じていた目を薄く開けると、イナはギラギラした眼で僕を見ていた

そんなに僕が欲しいの?

僕はその熱く滾った瞳をわざと冷たく見つめ返した
イナの瞳がほんの少し怯えた
瞬間を見逃さずもう一度唇を離した

「…は…」
「お前…焦りすぎてない?タクシー使ったりこんな事したり…どうしたんだよ」
「…時間ない…」
「なんの」
「…欲しいもん…」
「何が?」
「…お前が…」
「…。ばか…。焦んなくてもいっぱい時間あるじゃん」
「ない!」
「?なんで?」
「…。だって…おととい…しゅごかったもん…」

イナは真っ赤になって俯いた
僕も顔が赤くなった

「あれは…まぐれだ」
「へ?」
「その…あの時だけだって。今日は三分もあれば大丈夫だ」
「いやだ!」
「え…」
「いやだっ!」
「イ…イナ…」
「…」
「…こら…イナ…」
「…ごめん…はずかしい…俺…」
「…くふ…」

しゅんとしたイナに優しくキスをした
直後に箱は40階に着き、扉が開いた
フロアに降りた途端、イナはまた僕の腕を引っ張り、一番奥の自分の部屋へと向かった

「イナ…イナって…みんなに挨拶は?」
「いい!」
「こら…イ…イナ」

なす術もなくイナの部屋に引っ張り込まれた僕
イナは僕をベッドに押し倒し深くキスをする
それから僕のシャツを脱がしにかかった

「こら。話を聞けよイナ」
「いやだ!」
「イナ?」
「ずっと待ってたんだからっ」
「…イナ…」
「先に…欲しい…」
「…。珍しいな、お前がこんな」
「お前がいけないんだ!あんな事しゅるからっ!朝からずっとおかしかったんだからっ」

泣きそうな顔で僕に訴えるイナ
僕は可笑しくてクスクス笑う
イナが膨れっ面になる

「ねぇイナ…毎回こう?」
「…え…」
「これからずっとこうなの?」

これからがあるかどうか解らないのに…

「…しらない…」
「今日だけ?」
「…しらないっ!」

今日だけかもしれない…今日限りお前と繋がれないかもしれない…

「そうだな…先の事なんか解んないもんな…」
「…」
「ふ…。解ったよ…覚悟しろ」
「…てじゅ…あっ」

僕は体を入れ替えてイナの服を脱がせ始めた
イナも焦って僕のシャツのボタンを外し始める
体からシャツを剥ぎ取りながらイナが僕の唇を吸う
僕達はぶっ飛んでいた
まるで体だけを求めるかのようにお互いを貪りあった

体だけじゃない…
お前の心も…
僕は…
欲しい…


La mia casa_37  妄想省mayoさん

薄く開いた俺の右目に朝陽が拡がる..
ぶるりと頭を振り..目を凝らし..瞬きの後..俺は己の瞼を開いた..
~~~
夜..仔猫はベットに入ると..途端..俺にBe~~ったりと甘えてきた..
高まるにつれ..躰を取巻く凝る熱をどうにかしたいと見え..
「ぅ..ふ..ぁん….」
俺に縋りついたまま..可愛い甘ったるい声でよがりながら..
ふるふる..ふるふる...短い首を振り続けていた..
全身を総毛立たせ..背筋を戦慄かせ..
がくがくと揺らす俺に仔猫の首はゆらゆらゆらゆら..反り返った後..
あられもない甘い悲鳴を部屋に響かせた..
余韻にひたる躰は最後.力無く俺の懐へ頽れた...
~~~
深く眠り込んでいる俺のタレ目仔猫の鳥の巣の頭を撫でつける..
短いうなじをゆっくり..ゆっくり愛で撫でると..
タレ目仔猫は"ぼぉぅ"..っと寝惚け顔で..とろりんこ..俺に笑いかけた..
俺にとって堪らなく可愛いこの顔は俺の眉を30度下げる..
ぷるん〃..とぷっくりした下唇を人差し指で弾き..甘噛みをしてやると..
仔猫はまたすぅ-- っと寝息を立て始めた..

…そろ~り..そろ~り..そろそろそろ..

『くっ..来たな..』
枕に肘を付き横になっている俺の腿を這ってくる..白雌子猫..
俺の腰で白雌子猫の後右足が上がった..その足が降ろされる刹那...

「お嬢..」
「@_@..」

お嬢はいつもより低い俺の声音でぴくん#..と目を丸くし..上体を起こした..
後右足は上ったまま..であるからにして..
お嬢は俺の腰骨で..後左足一本でピタリ#..状態静止..である...

「微動だにしないバランス感覚..毎度のことながら..見事だ..誉めてつかわす..」
「@_@〃(ん..かたじけにょーごじゃる..)」
「だが..」
「@@??」
「知っておろう..今朝..同志の”中心”はいつもより.."ほんのちょいと"..お疲れのご様子だ..」
「〃@_@〃(ぅんぅん..のーのーのぉーー...えんどれす..だったみゃ..)」

「ん...従って.."ふみふみ"..今朝は勘弁願いたい..後生だ..」
「(みゃん..しかたあるみゃい..しょうちちゅかまちゅった..)..〃(-_-)〃」

無言で頷いたお嬢は後右足を降ろし..足を揃え俺の腰からベットに降りた..
お嬢がそのままおとなしく..素直に終わる筈もなく..シーツの上から前足が伸びてきた..

…すりすり〃..

「腰は大丈夫だ..お嬢..鍛え方が違う..ん..」
「(^^)..(みゃ#..がってんしょうちのしゅけ..では..こちりゃをば..るん♪..)」

…する~~り..さわさわ〃..くる◎くるりん◎....(おまけ)..っっ..つつん#..ふわぁ~~ん♪..

「ぁふ..ぅはっ..ぉぉ..ぅ..っ..ふぬぬっ..はふっ…」
「ンッケッケッケ..(>▽<)..」
「く~ぅぉ~~らっ#.."中心"に必要以上の甘美な刺激をするでなぃっ#..」

ペッ...チン★..
(>o<)..
いつもより強めにぺちん☆されたお嬢..
…ぃ..いたいでしゅぅ..(;_;)..己のデコを右前足で撫で始める..

テスに枕を抱かせベットから降りた..
シャワー後の着替えの最中..お嬢の悪戯は続く..
ジーンズのベルトに飛び付き..ぶら~~んぶら~~ん..躰と尻尾を振りながら..
ズリズリ..ズリリ..ベルトも一緒にちょいと俺のジーンズを下げ始めた..

「ぁちゃちゃ..お嬢~~」
「(^o^)..(ちょいわるおやじぃ~みしぇぱん~~)」
「ぁ..ぁのなぁ..いかんぞなもし..」
「みゃぅぅん(;_;)..(ぱんちゅぅ..)」
「ったぁぐ..甘美な刺激といい..誰に似たんだっ..怪猫めっ..」
「(>▽<)//..」

「朝から元気な奴だ..ふんとに...」
「(^^;;)〃(どぉーもしゅみましぇん..)」

片前足をぺとん..とデコに当てた悪戯お嬢を肩に乗せ..
ちょい振り返り..一緒にほっぺすりすり〃..(e▽e)..お嬢の最近のお気に入りである..
今朝はお嬢のほっぺちぅ◎のおまけが付いた..
冷蔵庫からお嬢のバナナ牛乳を取り出したとき..着替えたテソンが部屋から出て来た..

「ふぉ?..ずいぶんと早いな..」
「ぅん..今日の仕入れ..師匠といろいろ廻ってみようと思ってさ..」
「そうか..」
「ぅん..はるみぃ..お~~はよっ#..」
「みゃぁ~~みゃみゃ#..(^o^)//」

テソンは俺の肩からはるみを抱き上げ..右..左ほっぺすり〃..鼻すりすり〃..
テソンとエスキモーの挨拶の後.はるみはテソンにもほっぺちぅ◎をした..

「珈琲..淹れるよ..ちぇみ..」
「ぉ..すまん..」

ベランダのベンチに座り..
(^×^)..ちゅうちゅうとストローから牛乳を飲んでいるはるみの頭に軽く掌を置いた..
親指でデコぺちん☆した小っちゃなデコをちょぃちょぃと撫でていると
テソンがベランダのテーブルにトレイを置き..ベンチに座った..
俺の珈琲はマグカップ..テソンが手にしたカップ&ソーサーから紅茶の香りが漂った..

「昨日届いたkusmiか?..」
「ぅん..朝だから..」
「Matin No 24か..」
「くふ..当たり..」

互いにカップからひと口啜り..ほっ..っとため息を洩らした後..
俺とはるみがテソン顔を覗く..

「(→_→)..(→×→)」
「っな..何よ..揃って..」

…すりすり〃……@×@?..
はるみがストローを銜えたまま片前足でテソンの背を撫で..
俺に振り返って首を捻って見せた..

くるん◎..
テソンははるみの頭を掴んで徐に廻し..自分の方へ向かせる..

「はるみぃ..僕の背中..今日は疲れてないから..」
「(^^;;)..(ぁぅぁぅ..やっぱ..しじゅかにおねんね..だったんでしゅね..みゃぅ.しょれはじゃんねん...)」
「もぉ..はるみは探知機みたいだな..」
「(^^;;)〃(どぉーもしゅみましぇん..あたしはえっちたんちきでしゅ..)」

はるみはまた片前足をぺとん..とデコに当てた..
テソンはくふふ..っと笑った後..紅茶を飲み..小さくため息をついた..

「闇夜は..また遅かったのか?..」
「ベットに入ったの..4時ぐらいだったかな..」
「リュルの仕事なんだろ..」
「ぅん..例の3つめの企画..」
「そろそろ具体化させろ..ってことらしいな..」
「ぅん..そうみたい..今日午前中までに資料..持ってこいって..」
「リュルは仕事に関しては容赦ないからな..」
「みたいだね..」
「だが..一度企画を通したからには約束を違えることはない..必ず成功させる奴だ..リュルは..」
「闇夜もさ..."ぁぃぅ..キっツイな"..て言いながらも"こっちも意地だ.."ってさ..」
「はは..そうか..」
「出掛ける前に闇夜が仕上げたディスク..テーブルに置いておくから..」
「ん..チェックしておく..」
「サンキュ..ぁ..ちぇみ..出張の件は?言ってくれた?..」
「ぉぉ..昨日お前達が店に行ってる間..電話しておいた..」

テナントビルの出店で契約を済ませたインテリアブランドの視察と市場調査を兼ね..
リュルは再度北欧へ出張する予定になっていた..そしてリュルは闇夜に言った..

「北欧へは君を同行するからね↑?..」
「語学に長けているインテリアのプロは他にも[メゾネット]にいらっしゃいます..」
「そうだね↑?」
「では何故..私なのでしょうか?..」
闇夜はリュルに詰め寄った..

「君の感性はプロのそれとも違う..僕にとって参考になる部分が実に多いわけね↑?..」
「はぁ..」
「それに..1週間一緒に行動すればさ↑?..君の新たな発見できるじゃない↑?」
「それは"公"の発見ですか?.."私"の発見ですか?..」
「勿論..両方だよ↑?..」
「っつ...」

[メゾネット]との今後の仕事もあるからにして..
社内に妙な噂が立つ前に何とか断りたい..
社員を差し置いて自分を同行するというリュルに闇夜は困り果てた..

「確かに北欧の出張はそそられる..でもどうせなら気心の知れたミンジュンと行きたい」
「mayoの莫迦..ぐぅー☆」

闇夜はアヒル口のテソンにぐー☆を落とされていた..
とにもかくにも..「1週間もcasaを留守にしたくないんだ..」っと..闇夜は俺等に言った..
ならば..俺がリュルの提案を撤収させるしかあるまい..

「シン社長の反応は?.」
「まぁ..あいつもしつこい性格だからな..俺に言われたのが気に入らないのか..憮然とした声音だったな..」
「ぁぅ..シン社長も怖そう..で?..」
「ん..一応..畳みかける様に..話はしたんだが..」
「ぅん..」
「そのうち..リュルがぐだぐだぐだぐだ文句をタレ始めた..」
「で?..」
「ん..ちょいと脅しを仕掛けた..」
「ぁぅ..そ..それって..」
「内容は言えん..」
「ぁ..ぅん..わかった..それで?」
「ん..最後にな..」
「ぅん..」
「俺がな……キ・レ・た..」
「はぅっ@@...ちぇみ..キレた..」

「ん..."秘書代わりに使うのもいい加減にしろっ#..”っとな.."ホリデーバージョン"で..リュルを怒鳴った..」
「ぁ...ぁ.....はるみは聞いた?」
「〃@@〃..(ぉぉ..おそろしかったでしゅ..ひん..で..でんわがこわれるかとおもいみゃした..(>o<)..」

「まぁ..闇夜の北欧出張同行は無し..の言質は取った..安心しろ..」
「よかったぁ..大体にしてさ..1週間もちぇみ顔と一緒なんて..気が気じゃないもん..」
「”俺顔”が心配か..」
「ぅん..その顔..闇夜には..とってもキケン..」
「ぁ..ぁのなぁー..大きさが"若干"違うだろうにぃ..」
「そうかな..」
「おいっ#..」
「ごめん..^^;;..」

ぴったん☆...スリスリ〃..
テソンの後頭部にお見舞した..

「ぉ..そうだ..朝イチでヨンジュンからメールがあった..」
「あっ#..PCの件?..」
「ん..セットアップ完了だそうだ..」
~~~~~
昨日の朝飯の際..闇夜が俺に言った..

「ちぇみ..PC1台..手配してくれるかな..」
「ぉぅ..ノートか?」
「ぅん..」
「用途によってセットアップが変わってくる..何に使うんだ?..」
「アタシ等みたいな特別な機能は必要ないんだ..普通でいい..」
「ん..」

俺はその場ですぐヨンジュンに電話を入れた..
微かな衣擦れの中..ヨンジュンは短い返事で電話を切った..

~~~~~
「ヨンジュンさん..徹夜したのかな..」
「気にするな..あいつには朝飯前の仕事だ..恐らく今晩..PC持参で飯食いに来るだろう..」
「じゃ..美味しい物作らなくちゃ..」
「ふっ..ん..ジュノのバイトの件はどうするんだ?..」
「ぅん..やっぱし..あいつにちょっと..頼んでみようかと思ってさ..」
「そうだな..」
「ぅん..」

テソンは紅茶を飲み干し..仕入れに出掛けた..
俺はダイニングテーブルにテソンが置いていったディスクを手にし..部屋のPCで闇夜の資料をチェックした..
さして手間のかからんチェックを終えた後..ベットのタレ目のカミさんの顔を覗く..
ぷりん@とした尻をむにゅ..っと掴む..

「ぁん..ゃ..もっと..」

夢見心地のカミさんは枕をぎゅぅぅ..っと掴み..吐息めいた喘ぎを吐いた..

『ぷっ..ったく..可愛い奴..』

タレ目カミさんのこめかみにちぅ◎を落とし..俺は工房へ降りた..


千の想い 73  ぴかろん

イナも僕も崖っぷちにいるようだ
落っこちてバラバラになったら、あの割れた皿のように捨てられるだけだ
この間よりもっと、もっともっともっと、僕達は深く熱く快楽の海を漂った
ヨンナムの顔が脳裡を過ぎる

「てじゅ…てじゅ…ああ…」

イナの声に呼び戻される

…ヨンナムとイナが…こんな風になってしまったら…

『ラブと寝たくせに!ラブと楽しんだくせに!俺にはなんの楽しみもくれないで、いつも自分ばっかり…』

イナ…イナ…イナ…

ぐったりしたイナの肩に顔を埋め、首筋ではあはあと息をしていると、イナはくふふと首を竦めた

「はぁはぁ…なによ…」
「くすぐったいよ…」
「あ…意識ある…」
「…は…」
「ちぃっ…。イかなかった?」
「…」
「ん?」
「ばかっ!」

イナはうつ伏せになって顔を枕に埋めた

「ん?イけた?ん?ん?」
「ぶぁが…」
「くふふふ…」

僕はその背中につっ伏した
心地よい余韻に浸っていた
二度と浸れないかもしれないその余韻に…

イナの髪を撫でた
僕はお前の傍を離れないよ…いい?
…お前がヨンナムを選んでも僕は…ここに居てもいい?

ごそごそと体を動かしてイナが僕を潤んだ瞳で見つめた
イナの指が僕の頬や鼻や唇をなぞる

「イナ…」
「ん?」
「満足したか?」
「…」
「ん?」
「んと…」

イナはベッドサイドに置いた僕の時計を取って時間を確かめた

「…なにしてんの?」
「あといっかいぐらいできるかなって…」
「…イナ?…」
「もうしゅぐ『いちじはん』ら…『よじ』にここでればいいから、んっと」
「お前…どうしたの?急にえっちになっちゃったの?」
「らって…」
「ほんとにしたいの?」
「…らって…おまえ…あしたはしごとらろ?」
「うん」
「…」
「こら」

イナが僕の胸に頭を擦り付ける

「もいっかいしよ…」
「イ…イナ?」
「…らって…」

僕を見上げる瞳が不安そうだ
なんで不安?僕はここにいるのに…

ああそうだ…僕も不安だった…

『…お前が側にいてくれるだけで俺は天国だ…えへ…』

お前…不安だった僕にそう言ったよね?
あの時間はもう二度と帰ってこない
今のこの時も、もう二度と…

あれからお前はヨンナムに『恋』をした
僕にそっくりで…僕とは別人のあの男に…

僕を好きだと、僕が必要だと言いながら
今もお前は大きく揺れている
…お前の中の恋心はまだ終わってないんだもんな…

僕がいない間が怖い?
イナ…僕はもっと怖い…
ヨンナムが…ヨンナムがね…お前の事、必要なんだって…

「てじゅ…だめか?」
「…」
「てじゅぅ…」

イナが甘えた瞳で僕を誘う
僕の体の全てが
お前の全てを欲しがっている
でも
ヨンナムが…

「くふ…イナ、勘弁してよ…」
「…」
「僕昨日ほとんど寝てないんだもん…眠いよ…」

抱きたい…ずっと抱いていたい
イナ…お前が僕を求めてくれているのに…

「ふ…」
「ごめん…頑張れそうにないや…」

あの男が僕の欲望を拡散する

イナは目を伏せ、少しだけ唇を尖らせて呟いた

「わがっだ…」
「…」
「んじゃお前今から家に帰ってゆっくり寝ろよ」
「ん?」
「おれ、みせおわったらいく」
「ん?!」
「よる、もいっかいする」
「…」
「いいだろ?」
「…イナ…。ヨンナムんちでってこと?」
「…くひひひ…」

イナがいたずらっ子のように笑った

「ん?」
「ぶぁか!心配すんなよ、ヨンナムさんちでは『みだらなこうい』は禁止だろ?…ただ一緒に居たいだけだよ…」
「…イナ…」
「夜、行ってもいいか?」

可愛いイナ…
傍に居てくれるの?

「いいだろ?なぁ…」
「…うん…。あ!そうだ!お前に渡すものがあったんだ!ちょうどいいや、取りにおいで。待ってる…」
「あおんっ♪」

嬉しそうに僕に抱きつくイナ
ヨンナムの家には『ヨンナム』が居るんだよ、イナ…
お前、何も聞かないけど、本とは聞きたいんだろ?僕たちが何を話したのかって…

イナ…イナ…大好きだよイナ…

「しゃわーあびよう、てじゅ」
「ん?あ…うん」
「しょいで、ぱんたべにいこ♪」
「パン?ああ…」
「チェミさんとこにぱんとりにいこ♪」
「…チェミさんに…なんか言われそう」
「だいじょうぶら」
「…はるみちゃんになんか突っ込まれそう」
「だいじょうぶら」
「…でもぉ…」
「おれのちゅくったぱん、たべたくないのか!」
「た、食べたいけど…」
「くちびるぱんのあじ、たしかめなくていいのか?」
「あ…ああ…そうだったな…」
「…てじゅ…」
「ん?」
「しゅきらっ…けへん…しゅ…好きだ、テジュン」
「なんだよ、改まって」
「好きだ」
「ん」
「俺を…離さないでね…」
「…いいのか?ホントに離さないぞ」
「うん。シャワーいこっ♪」
「イナ」
「ぅん?」
「好きだよ」
「でへっ♪」

それから僕達はシャワーを浴び、衣服を整え、手を繋いでcasaまで歩いて行った


「たらいまぁ~。パンできてるぅ?」
「…」
「チェミさんって、俺のパン…」
「じぃぃぃぃ」
「…」
「じぃぃぃぃぃ」
「げほ…」

チェミさんは俺とテジュンをいやらしい目でじろじろと見た

「ぱん」
「そんなうるうるした瞳で俺を見るな!」
「は?」
「ったく…この手の顔は色気づくと始末に終えん!ですなぁテジュンさん」

張りのある声でチェミさんは俺達を威嚇している
ふん…負けるもんか…

「よる、もういっかい、する」
「…」
「なっ、てじゅ」
「…い…イナ…」
「ぱんは?おなかすいた」
「げほ…。飯も食わずに専念してたのか?」
「そう」
「イナ!」
「…この…可愛くないっ!」
「ぱん!」
「ほれ!」
「袋に詰めよう袋、袋。外行こう♪」
「おい、イナ。食うだけならそっちのcafeで食ってもいいぞ。それと…」
「ん?なに?」

チェミさんは俺の耳元にこそこそと囁いた

来てるぞ…お狐様が…

「え?ミンチョルが?一人で来たの?一人で来れたの?あいちゅが?!ここへ?!ちゃんと入ってこれたの?チェミさん脅かさなかった?」
「…」
「威張ってた?気取ってた?両腕上げて扉んとこでポーズしてなかった?」
「…。イナよ…。お狐様はお前の『親友』じゃないのか?」
「そう」
「…」
「なにしにきたの?」
「まぁ仕事絡みだがな…。只今お食事を終えられたところ…じゃないかな?」
「しょくじ?!あいつたべてもいいのか?!ミンの呪縛は緩んだのか?!」
「こほ…さぁなぁ…」
「…」

俺は籠に盛られた俺の『こどもぱん』を見つめた
『呪縛』が解けたのなら…せっかくだから…食べさせてやろぉっと♪

「てじゅ、ちっとまってて」
「なに?」
「ちっときちゅねにおやつやってくる♪」
「あ…うん…」

あいつ、俺のパン、食べたことないもんな♪
甘いのが好きだから、くりいむ入りかな?しょれともちょこくりいむのがいいかな♪

俺はウキウキした気分で階段を駆け上った


「お食べになられるだろうか…」
「は?」
「あ…いや…。で?テジュンさん…心は…決まった?」
「…。決まってはいますが、浮き沈みが激しくて…」
「貴方の?イナの?」
「…多分…イナもきっとそうなると思います…」
「…」
「また悩むかもしれない」
「ほぉ…ってことは…ヨンナムシが何かコトを起こすと…」
「…」
「ふぅむ…」
「イナに僕は必要なんでしょうか…」
「…必要でしょう。あんなに待ち焦がれていた」
「…僕の…体だけでいいんじゃないでしょうか…」
「…。テジュンさん…」
「…はは…」
「そうだとしたら…どうします?」
「…どうもしない…。それでもきっと…傍にいます…」

俺は濃顔さんの背中にバンっと気合を一発いれた
そしてニッコリ笑ってやった
濃顔さんは自信無さそうな顔で笑った


ぶぁがっ!おまいなんかしんゆうじゃないっ!ぎらいだっぶぁがぎぢゅねっ!

どだだだだだだ…ばぁぁぁん☆

程なくイナが、パンの入った籠を抱えて泣きながら工房に駆け込んできた

「あうっあうっええっええってじゅっでじゅぅぅ」
「…どしたんだよ…」
「ぎぢゅねなんが…ぎらいだっええっええっ」
「…喧嘩したの?」
「おれのぱん…いらないってええんええん」
「…」

やはりな…

「イナ、仕方なかろう。カロリー制限中であらせられるからなぁ」
「らけろ飯くったんらろっ?こんなちっこいぱんなのになんれ食わないんら…あいちゅはおれがきらいなんらぁあああんああん」
「よしよし…僕がぜぇんぶ食べてあげるから。許してあげなよ、ミンチョルさんもきっと辛いんだよ…」
「うぇっうえっ…」
「そーだそーだ。お前はテジュンさんに食ってもらえばいいだろう。ん?お?お?」
「…。ぶぁが!じじい!すけべっ」
「こら、イナ!」
「…てじゅ…食べてくれるか?」
「…も…もも…もちろんらよっははっ」
「どっちを食ってもらうんだ?お?お前か?お前のパンか?」
「…」
「お?」
「両方!」
「…お…」
「…い…イナ…」

目を擦りながら濃顔さんに縋りつく甘えたこどもを、俺は微笑ましく思った
濃顔さん…大丈夫なんじゃないのか?
たとえ爽顔さんがコトを起こしたとしても
コイツはアンタに身を預けてるぞ
ったく…濃顔さんはすっかりイナにヤられてるな…
まるで仔猫にぞっこんの俺のようだ、たははは

俺は籠のこどもぱんを袋に詰めてやった

「どーすんだ?ここで食うのか?ここでナニだったら俺は席を外すからごゆっくりどうぞだぞ。ブラインドは閉めてくれよ、あまり大きな声は出さずに…
それとあまり店内を汚すなよ。終わった後はテーブルを拭いてだな…」
「公園に行くからいい!ぶぁが!」
「外でナニか?」
「ちがうっ!よる、もいっかいするっちったろ!ふんっ」

くそう…泣き虫のくせに負けず嫌いめ!つまらん!
涙目イナは袋に入ったパンを引っつかみ、濃顔さんの腕を取って出て行った

夜な…
先行きが色々と楽しみなカップルだ…はっはっはっ…


再会2  オリーさん

このところ彼の帰りは遅い
店が終わった後、グァンスさんと仕事をしている
今日は店も休んだ
CMの仕事が追い込みだそうだ
とっくに午前0時をすぎ、僕はベッドの中で
うつらうつらしながら今日のことを思い出していた


もう少し落ち着いたら連絡しようと思っていたんだよ
なぜこちらに来ていることを教えてくれなかったのかと
先生の隣に腰をおろし尋ねた僕に先生は苦笑しながら答えた
君たちには隠し事ができないようだねとも
僕はただ色々お手伝いできたんじゃないかと思ったと伝えた

先生は丁寧に礼を言い、何とかやってると言った
住まいを訪ねると、まだホテル住まいをしていると言う
ホテルじゃお金がかかるでしょうと驚いた僕に
先生のお祖父さんは大した資産家で
お母さんも含めその遺産にたいそう助けられていると答えた
アメリカの金持ちはスケールが違う
驚いている僕を見て先生は笑った
本当に君は正直だね、と
慣れてきたら引っ越そうと思ってはいるんだよ、とつけ加えた

それより怪我はどうか、と先生は聞いた
僕がもう大丈夫だと答えると、心底嬉しそうな顔をした
ずっと気になってたんだ、と先生は僕の肩先を見つめながら言った
僕はその視線に気づかないふりをして話をかえた
それより先生、なぜここで?
先生ならもっといいオファーがいくらでもあったでしょう
なぜ臨時講師なんです?

先生は遠くに視線を飛ばししばらくの間黙っていた
幸いオックスフォードはすぐ辞めさせてもらえた
あんな事件があったからだろうがね
でもそういう事には関心がなくなったよ。それより・・
それより・・?
思わず尋ねた僕を先生は静かに見つめた

世界中あちこち見て回ろうと思ってるんだ
世界中?
色々な国を見てみようと思っている
それで臨時講師ですか
色々肩書きがあると面倒だろう
しばらくしたら次の場所へ、そしてまた次の場所へ
どうだい?

なんだか放浪者みたいですね
その響きはいいね、開放された感じがすると先生は笑った
ちょっと意外ですと、僕は思ったとおりを口にした

そうかな
先生は少し首をかしげた
そしてまた視線を飛ばした
遠くを見つめながら先生は言った
僕は一人じゃないんだよと
え?
僕はすぐには意味がわからなかった

これからは、ふたりで世界を見て回ろうと思ってる
ふたり?
僕はとてつもなく鈍感だった
先生は両手を後ろについて、ゆっくりと空を仰いだ
その横顔が少し揺れた
そう・・学生の頃、ふたりの夢だった
先生は目を閉じて呟いた

ああ、そうだったんですか・・・

いつかふたりで世界を回ろうって
だからこれから世界を旅するんだ
先生は静かに笑った
僕は何も言えずただ黙っていた

実は、と先生はまた僕を見つめた
その放浪で感じた事なんかを少しづつを書いてみようかと
文筆業ですか?
どうなるかわからない。でも・・何か残したいとは思っている
面白そうですね。書けたらぜひ読ませてください
そう言った僕に先生は僕を見つめながらさらに続けた

そうだな、まず君の事でも小説にしてみようか?
やだな、僕の事なんか書いても仕方ないでしょう
君が主人公のエスピオナージュでも書いてみようか?
先生は僕を覗き込んでいたずらっぽく笑った
それは放浪とは関係ないでしょう
先生はただ面白そうに笑っていた

それからちょっと困った顔をした
ただし目下の課題はハングルだ、今格闘中だと
思いのほか英語が通じなくて。軽いカルチャーショックだ
僕は声を出して笑った
先生も笑った
最初からこれじゃ先が思いやられると

でも先生が元気そうでよかった
僕は本当にそう思った
先生は、つと僕を見て尋ねた
それより君のあの人はどうしてる、元気にしてるかと
僕は答えるかわりに微笑んだ
なぜか映画の事は触れなかった
そして僕の歌のことも

先生は微笑んだ僕の顔を確認してそうかと頷いた
彼には悪いことをしたと思ってる
今度会ったらちゃんと謝ろう
え?何ですって?
聞き返した僕に先生は意外そうな顔をした
彼から聞いてないのかい
いえ、何です?
僕は重ねて聞いた

いや、聞いてないならいい、と先生は軽く頭を振った
そうか・・彼らしいな、とも
何かあったんですか?
いや、いいんだ
さらに問いただそうとして僕がちょっと乗り出した時だった
突然頭の上から声がした

ワインバーグ先生・・

振り仰ぐと逆光の中に影が見えた
少しして目が慣れるとそれが少年だとわかった
細身の体にそれを引き立たせる黒い服
そして小さな顔は驚くほど美しい

よろしいですか、お邪魔ならまた後で
美しい顔がそう言った
先生もその影を見上げると、やあ君かと言った
たまたま友人が訪ねてきてくれてね
先生は僕に同意を求める視線を送り
僕はOKという合図を送った

学生は僕をちらと見ながら
先生のお友達ですかと言って
ごく自然に先生の向こう側に腰をおろした
僕は微笑んだ
そしてその声の主をさりげなく観察した
細い体躯にぴったりのジーンズ、流行りの派手なプリントTシャツ、
その上に半そでのシャツを羽織っている様は今時の若者だ
がその服は派手なプリント模様以外すべて黒かった

小さな顔と口元に少年のようなあどけなさを残し
長い睫毛をあしらった大きな黒い瞳と艶のある黒髪が大人びた印象も与える
青年と少年の間を彷徨っているアンバランスさが、
何ともいえない中性的な魅力を際立たせている

ミン・ギョンビン君だ、以前僕の仕事を手伝ってくれてね
先生は僕を学生に紹介し、そして学生を僕に紹介した
彼は留学したいしたい病のファン・ミンス君だ
学生は僕にはじめましてと言って会釈した
僕も会釈したが、
彼は、したいしたい病だなんて、ひどいな先生
僕は本当にハーバードに行きたいのにと先生の二の腕を叩いた

彼の英語は訛りがなく綺麗だった
海外に行ってたの?と聞いてみた
彼は鼻筋に皺をよせて、いたずらっぽい目で答えた
ロンドンに少しだけ、でもすぐ帰ってきちゃった
だってシャワーがボロッちいんだもんと
それを聞いた先生が、なのにまた留学したいらしい、と苦笑した

アメリカだったらシャワーは大丈夫でしょ?
学生はまた先生の腕を叩いた
そのしぐさに軽い違和感を覚えた
先生は学生に軽く叩かれる存在ではないはずだ

先生もハーバードでしょう?
ファン・ミンスというその学生は屈託なく話し続けている
そうだよ
いい学校でしょ?
そうだね
先生は何でハーバードにしたの?
僕は家が近かったんだ。通える距離だったから
じゃあどうして寮に入ったの?
大学生になったら自立するんだ。アルバイトもしたしね
そうなの、それで寮ではどんな生活だったの?

専攻は決めてるの?
学部や教授で考えたらどうかな?
僕は思わずふたりの会話に割って入った
先生に学生時代の話をさせたくなかったから
彼は僕に顔を向け、少女のような美しい微笑みを浮かべた

父さんの後を継ぐから専攻は経済か経営かなあ
僕はそれを受けて言った
アメリカは広いから知られてない大学でもいいところがあるよ
UCLAやスタンフォードもあるし、経営だったらペンシルバニアなんかどう?
ペンのビジネス・スクールはトップクラスだよ
ミンス君はまた笑った
ウァートンでしょう?卒業してMBA取るならそこもいいですよねえ。
でも学部はやっぱりハーバードがいいなあ、ねえ先生?

話しかけられた先生は、まさに先生らしいコメントをした
問題は入ってからだ、卒業する覚悟がなければね
それよりまず入る前の準備だ。テストを受けなさい
スコア次第ではハーバードは難しいぞ
ミンス君は口をすぼめて、はあいと返事をした
そのすねた顔もとても愛らしい
ほころびかけた薔薇の花のようだ

しばらく薔薇の花の君は僕たちとたわいのない会話をして
講義があるからと、立ち上がった
立ち上がりながらも彼は話し続けた
先生、今度僕があのホテルで食事する時一緒にどうですか?
先生のこと父さんにも紹介したいんだ
いつまであのホテルにいるかわからないから約束できないと先生は答えた
ミンス君はまた愛らしい口をすぼめて
じゃあ、今夜は?と食い下がった

先生は首を振って
留学の件で君のお父さんに助言できる立場ではないと言った
釘を刺した
薔薇の花の君は悪びれた様子もなくただ綺麗な顔をほころばせた
なあんだ、見抜かれてたか
先生に話してもらえれば父さんも納得すると思ったんだけどなあ

とにかく勉強して試験を受けることだよ
先生はもう一度念を押した
それを聞いた薔薇の花の君は肩をすくめバイバイと手を振って去って行った
先生は彼の後姿を見ながら僕に説明してくれた
偶然宿にしてるホテルで声をかけられてね
それから私の経歴を調べたらしい
学部は違うんだが、ちょくちょく来ては話をするんだ
父親は会社の経営者で随分裕福らしい
おかげで発想も裕福だね

僕はおかしくて笑った
先生だって裕福でしょう
リッツカールトンを常宿にしてるんですから
先生はきょとんとした顔をしたが
次の瞬間、確かにそうだと言って体をゆすって笑った
まだ放浪者にはほど遠いかな、と
それから講義が始まるという先生と別れた
そのうち食事をしましょうと約束をして
先生は来てくれてありがとう、と手を差し出した
僕はその手をゆっくりと握りしめた

そこまで思いだした時、脇の下からすうっと手が伸びてきて
肩越しに彼の香りがした
「ただいま」
「おかえり」
彼は後ろから僕を抱き寄せた

「CMの方はどう?」
僕は抱き寄せられたままの格好で聞いた
「明日決まる」
彼はそう言って僕を抱き寄せ、僕の肩に顔をくっつけた
「うまくいきそう?」
「わからない。けどやるだけはやった」
「じゃあ大丈夫だよ」
「そんなに簡単じゃない」
「自信ないの?」
「そうじゃないが、いろいろあるから」
「うまくいくといいね」
「ああ」
「・・ねえ」
「ん?」

「今日先生に会ったよ」
「先生?」
「ほら、オックスフォードの」
「やっぱりこっちに来たのか?」
「うん」
「そうか」
「ねえ」
「ん?」
「先生と何があったの?」
「何?」
「先生が悪いことしたって」
「悪いこと?」
「今度謝りたいって」
「・・・」

僕はちょっと彼の方に顔を動かして聞いた
「ねえ、何があったの?」
「何もない」
「じゃあどうして謝りたいなんて言うの?」
「勘違いじゃないか」
「勘違い?」
「じゃなかったらたぶんミンの仕事の事を僕に話したからだろう」
「仕事の?」
「怪我した時の状況とかを少し話してくれた。それがまずかったのかもしれない」
「まずくはないけど、ほんとにそれだけ?」
「ああ」

彼はそう言って僕をさらに抱き寄せた
「疲れた。寝るぞ」
「ん」
しばらくすると肩越しに彼の規則正しい寝息が聞こえてきた
それでも僕は少しの間寝つけなかった

薄闇の中、薔薇の花を思わせる学生の妖しく魅力的な目つきが浮かんだ
無邪気にほほえんで僕を見つめる彼の目の中に
黒曜石のように輝く黒い瞳の中に
僕は確かに感じた
好奇心と共に、もう一つ別の何かを
棘のある何かを・・
もしかて・・jealous・・


La mia casa_38   妄想省mayoさん

「ぬぁんだとっ!!!??」

ちぇみの怒声が工房に響き渡った..

配達のパンと焼き菓子を袋に詰めていたテスの手がびくん#..っと止まり..
僕の背筋が無意識にピンっ!!..っと伸びた..

テスと2人で振り返ったちぇみの背から立ち上がる怖ろしい程の怒気の焔..

「もういっぺん言ってみろっ#」
後ろ手にちぇみは木製の"のし棒"を握り始めた..

「ぉ..お前って奴はっ..屁理屈捏ねやがってっ!!!..」
「…」
「くぉ~~ん..のやろうっ#...」

バッッッ----------ぢん..★..ぢんぢんぢん....ガラガラ...カラコロカラコロ..コロ....コロン..

"のし棒"が作業台に叩きつけられた..一枚板の作業台に罅が入るかと思われるほどに..
"のし棒"は叩きつけた勢いでトト..トト..トトン...っと妙なリズムを刻む..
作業台に置かれたステンレスのボールが台から一瞬腰を浮かし..降りた..
ボールの中でツール類はガラガラガラ...騒がしい会話をし..
振動する台の上でケーキの型やら小型のセルクル達は寄り添う様にカラコロ..コロと互いに近づいた..
敷紙達はふわぁ~ん..っと浮き飛び..5秒後に作業台の端にふわりと着地した..

「「@_@...@_@」」
テス...電話の相手..誰?..
ぁん..わかんない..
申君かな..例の仕事のこととか..
それは違うと思う..
そう?..
ぅん..仕事の時はぁ..ちぇみ..もっと冷静だもん..
だよな..闇夜もそうだし..
ぅん..それにちぇみは申君にあんな風には怒らないよ..
じゃぁ..誰..

「みゃぅん..」
テスとひそひそ話をしていると..はるみが小さく啼いた..
僕とテスが工房入口..椅子上のはるみに目を向けた..

○...○…はるみは片前足でくるん@くるん..と自分の小ちゃな顔の輪郭をなぞる..
…????…僕とテスはそれを見..首を傾げた..

o○o…次にはるみは両前足を自分の左右のほっぺにそれぞれくっ付け..
<○>…小ちゃな顔からほんのちょっと両前足を離し..
..○..…もう一度小ちゃな顔の輪郭をなぞり..
..<<○>>...今度は両前足を自分の左右のほっぺからさっきよりも離し..そのまま左右にきくきく..動かす..

『(?→→)..(←←?)』
『ねぇねぇ..顔が大きいってことじゃない?..テソンさぁん..』
『大きい..』
『『ぁ”#..』』

リュルさん?…僕は口唇ではるみに伝えた..
〃@_@〃…はるみは『ぅんぅん..』と頷いた..

ねぇねぇ..テソンさぁん..mayoシの出張の話..また拗れたんじゃないの?..
でも..”北欧同行無し”の言質取った..って..言ったよ..ちぇみ..
だよね..

バッッチン★
ちぇみが携帯を閉じた..
テスはすぐさまちぇみの懐に廻り..ぽちゃぽちゃでちぇみの顔をすりすり〃撫で回す..
僕は"のし棒"を握ったまま..筋の浮き上がったちぇみの手の甲に自分の掌を置いた..
ちぇみがテスの"ぽちゃすり〃..ぽちゃすり〃"で躰から強張りの抜けた気配がして僕は掌を離した..

「ちぇみぃ~..ん~~~◎..」
テスは口を窄めてちぇみにたこちぅ◎のおねだりをする..
ちぇみは僕に背を向けたままだから..2人のむっちゅ◎..の♪だけが僕の耳に入って来る..
はるみは首を伸ばし..覗いていた..
振り返ったちぇみは「すまん..びっくりさせた..」っと落ち着いたいつもの低音で僕に言った..

「ちぇみ..リュルさんなんでしょ..」
「ん..」
「何の話..だったの..もしかして..出張の話?..」
「ん..」

「って..やっぱり..行くの?..同行無しの言質は取ったじゃない..ちぇみ..」
「ん..『約束通り....同行無しだよ↑?..”北欧は"』だとっ..屁理屈捏ねやがって..っつたらなんつったと思うっ」
「「さぁ..」」
「『僕の特技は屁理屈捏ねることだし~~ぃ↑?..お前の特技はパン捏ねることだし~~ぃ↑?』..っと来やがッた#..」
「「ぁ..パン捏ねは..当たってる..っと思うケド..」」

「テスっ#..テソンっ#..」
「「ぁ..ごめん..」」

「ぁぃぅ#...のらりくらりの..むかっ腹の立つ奴だ..」
「ねぇ..他にも何か言われたんでしょ..ちぇみぃ~..」
「ん?..ん..まぁ..」
「何て?..」
「…」

ちぇみは無言で口端を引きつらせ..僕とテスから視線を散らす..
『余計な事は聞くな』の意だ..
そんな時は僕とテスは何も問いただせない..

「じゃぁさ..」
「ん..別の場所に出張だ..」
「「オモ..」」
「何処なの..出張..」
「ん..でだな...」

ぶぅぉん..ぶるる...しゅるる...ぅぅ..

銀狐様が帰られた後..
闇夜はいつもの黒上下に薄手の革ジャンパーをはおり..単車でミンジュンの店へ出掛けた..
頻繁に仏と伊を訪れるミンジュンやミンジュンのスタッフが今回も調達してきたバターを取りに行ったのだ..
仏産のこのMarie‐Anne Cantinのバターだけは仏から持参するしかない..

闇夜は工房の脇に単車を停め..カフェ側のガラス扉をぱたぱたと開けて工房へ入って来た..
リュックからごそごそと仏の新聞..Le Figaroに無造作に包まれた塊を取り出し..
ぽ~ん..ぽ~ん..ぽ~ん..っと僕等3人放った..

「んと..今回はDoux(無塩)が3個ね..」
「@@..@@..@@..」
「何..3人揃って..」

「闇夜..リュルから連絡が来たぞ.."ご丁寧になっ#"」
「ぁ...ぁぅ..そう..」
「昼にお前の返事は貰ってるそうだが..」
「ちぇみ..そうなの?」
「ん..テソン..リュルはそう言った..」
「mayo!..何処行くのっ!...」
「ぁ..ぁ..」
「何故さっき帰ってきたとき言わないのさっ..」
「ほーだ#..お前から聞いていたら俺も対処のしようがあるだろっ#..ったぐ..」
「ぁ..そりは..その..さっきはお狐様がご来訪だったから..」
「ミンジュンさんとこに行く前に言えばいいじゃないかっ..何だよもうーっ..」
「ひん..(;_;)..てしょん..」

闇夜は工房の入口へずずず...っと後ずさりし..はるみを抱き上げ..椅子に座った..























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