瞳の住人

大切な人へ・11/9








大切な人が病気という形で奪われてしまった。






朝、それを知ったとき教室でみんないるのにも関わらず泣いてしまった。






3年間一緒に野球をやった友達だった…






彼は一年生の頃からベンチに入り試合に出場し、一つ上の代では常に四番を打つなどのて野球部内では飛び抜けたのセンスの持ち主であった。






そして、誰よりも野球を良く知っていて、私たちの精神的な支えでもあった。






だが、自分達の代の秋の大会が終わってから病気にかかってしまった






それがことの始まりであった。






その入院の後、手術をし退院して一度は回復したかと思われた。






だが、回復などしてはかった…。






また入退院を繰り返し、まともな運動すらできない体になってしまい、夏の大会では辛うじてスコアラーとしてベンチに入ってもらった。






彼は、どんな思いで試合を見ていたのか。






彼は、どんな思いで試合のあと、笑いあっていたのか。






思い出せばその時に無理をしすぎたのかもしれない。






でも彼と一緒にやる野球は楽しかった。






出来れば、彼と少しの時間でも一緒に野球がやりたかった。






学校でも、ふざけ合い、くだらない話ももっとしたかった。






彼から野球を奪ったものが憎かった。






あれだけ野球を愛した彼からなぜ野球を奪う?






そして、なぜすべてを奪う?






今、彼の名前を呼んでも答えてくれる人はいない。






不器用ながらも冗談を言い、そして笑っていた彼も、もういない。






何がいけなかったのか、何がわるかったのか。






さがせど答えは見つからない。






いや、もとより見つかるはずはない。






私たちに何ができる?






私たちに出来るのは彼が安らかに休めるように見送ることだけ。






そして私は思う。






天国は信じていなかったけれど、彼なら『天国に行けたのではないか』と…







彼の冥福を祈る。ひたすら・・・

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