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朝まだき 山かげの背ぞ 陽の温む
【解説】 朝というにはまだ早い時刻で、黒々とした山陰の背だけが、
僅かな陽光で暖められているものよのう
ブログ開設1周年記念ひとり俳句大会 特典特賞作品より
「あーすんましぇん、自転車がパンクしてしもて・・・」
機先を制して、奇襲攻撃をかけた 私が近寄ってくるのを、
電線雀のように縁側に並んで
待ち構えている一家の 長 と思しき中年人に話かけた。
『あゝ、うちの畑じゃけんど』
婆さま が答えた。
長 はむっつりと黙って、私を凝視したままだ。
坊主頭の小学生が私を見上げたまま、その足を使って
ポールダンス をしている。
「すんましぇん、勝手入り込んでしもて・・・
「パンクで先に進めんようになったもんじゃけん」
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私は時系列を二つほど入れ替えて説明した。
咄嗟の戦略であった。 突然のパンク発見という災難を上手に利用したのだ。
そんな不利な状況を素早く有利に展開させる技を見て、
人は、私を 小池元防衛ファッション大臣 の 突発 辞任戦略 の男版だと謗る。
こう書くと、訪問された方の中には、ああ、また偏見に基づく政治ネタが
始まるのかと嘆息が聞こえそうである。
しかし今回はその裏をかき別の機会に譲りたい。
(タイミングを逸するのは残念であるが、書けば文字制限にかかる)
『はあ、パンクしよったんじゃ?ほら困ったもんじゃ』
『ほれ見てみぃ。ほやけん、うちが言うとらぃ・・・
あんな、この子な、ゆんべ石でもくせたろかい言うてな・・・
ほんないじくされよばんのよって、うちが言うたんよ。』
(それでね、この子が夕べ、石でも投げつけてやろうかって言うから・・・
そんな意地悪な事を言わないでおきなさいと私が言ったのよ)
『ほやって、あやしいやつが勝手にうちの畑で
うろうろしとったら、 そない思うじゃろが』
長 が不満そうに答えたが、 すでに警戒が解けた口調に変わっていた。
訳が飲み込めた農家一族は一気に饒舌になった。
私の戦略勝ちである。 ほくそえみながら、止めを刺した。
「心配おかけして、ほんまにすんましぇん」
『かんまんよ、ほんで何処までいぬるんぞ?』
(構わないよ、それで何処まで帰るの?)
「今日中に徳島までいぬんですけど」
『ほうかな~ 徳島までいぬんじゃ・・・』
(そうなんだ~、徳島まで帰るんだ)
『ほじゃけんど、パンクしてもたらだちまかんのう。』
(しかしパンクしたんだったら埒があかないね)
『このねきは自転車屋はひとっちゃ無いけんのぅえ』
(この近所は、自転車屋は全然無いからねえ・・・)
『○○町に下ればの、○○にはあろうが』
『あゝほうじゃ、ほうじゃ、このまま一山越えたらの、次の村の
とばにあるが、こまこうに言わんでもわかるけぇ』
坂はえらいけどのぅえ』
(ああ、そうだそうだ、このまま国道を進んだら、次の村のとば口に
あるけど、細かく言わなくてもわかるから。坂道はつらいけどね)
まだ朝7時前・・・ 阿波徳島
までの距離約
180km
休まず走り続けても9時間余り。
途中の険しい高低を 差し引いても厳しい行程だ。
最も肯定したくない行程。
厳しい行程に先立つ、愛車のケツ押し、自転車店を探し、
パンク修理という、考えたくもない無益な時間。
「ほな、探しもって行ってみますわ。」
一時も無駄に過ごせない事情がじんわりと肉体に沁みこんできた。
『おう、早ういなんと暮れてまうわぃ』
(おお、早く帰らないと日が暮れてしまうよね)
テントの傍らで、闇に向かって銀色の飛沫を飛ばしたことは伏せた。
しかし、彼らは私が夜テントを張ったのを知っていたのだ。
息子が石を投げつけてやろうかと言ってたという。
してみると、彼らは私が闇に潜む魑魅魍魎の類に向かって
抜き身で3mの放物線を描き出す技も眺めていたのかもしれない。
妖怪に向かって、てんしき攻撃を備え、括約筋を激しく調節する様も
目撃したのかも知れない。
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そんなわけで、
私は早く逃げ去りたい思いを抱えながらも
ヘコヘコと米搗きバッタのように頭を下げ
沈み込む後輪を苦労して持ち上げながら、畑から押し出していた。
国道に出て尚も振り返っては、ハンドルに覆い被さるような姿勢で
登りにかかった。
坂道を押しながら歩を進めれば、
パンクをした後輪にぶら下げた荷物が進行の邪魔をする。
早くも額から這い落ちる雫が、 彫りの深い 眼窩に流れ込む
不愉快さに、音を上げ始めた。
昨夜の闇は跡形もなく、潜んでいた妖怪に魑魅魍魎も
路傍の隅々まで行き渡る陽光を怖れて森の中に逃げ去った。
着の身着のまま、パンクで空気が抜けたように精気も抜けて
妖怪に勝ち名乗りを上げる気分も失せ、よろよろと
鬼婆の
去った峠道
を這い登っていた。
これで完結なのに、生臭さ記事が多過ぎて… 2009.04.19 コメント(13)
酩酊し、泥酔し、漂泊する政治 2009.03.15 コメント(16)
それでも私は帰ってくるのよ 2009.02.10 コメント(14)