Studio Life『銀のキス』観劇報告
2006年12月9日・10日 シアター1010にて
主な配役
サイモン:山本芳樹(Vita)/曽世海児(Anima) ゾーイ:松本慎也(Vita)/舟見和利(Anima) クリストファー:深山洋貴(Vita)/荒木健太朗(Anima) ハリー:高根研一 アン:林勇輔 ロレイン:関戸博一(Vita)/吉田隆太(Anima) フォン・グラブ:前田倫良(Vita)/船戸慎士(Anima) 他
*ストーリー*
16歳の少女・ゾーイは物思いに沈んでいた。母は重い病気で長い入院生活。その看病と仕事に忙しい父は、ゾーイを省みる余裕もない。しかも親友のロレインまでが、遠くオレゴンに引っ越してしまうことになる。
そんな時、月明かりの公園で、ゾーイは銀色の髪の美しい青年・サイモンに出会う。一目で互いの中の孤独を見抜き、惹かれあっていく二人。だがサイモンは普通の人間ではなく、人間の命を糧として悠久の時を生きる吸血の民だった。
自分の母を殺した犯人に復讐を誓い、何百年もの時を一人きりで生きてきたサイモンは、初めて一人の人間の少女に心を奪われたのだった。しかしゾーイに惹かれれば惹かれるほど、近づけば近づくほど、サイモンのなかの悪魔が彼を駆り立てるのだった。
サイモンは自分の過去を全てゾーイに打ち明け、ゾーイはどこかに疑念を抱きながらも、心を通わせていく。サイモンの母を殺した犯人、兄クリスファーへの復讐に、ゾーイは手を貸す決意をする。
クリストファーとの死闘に辛うじて勝利した、サイモンとゾーイ。今まで生きてきた意味をなくし、途方にくれるサイモン。理解しあう余裕もなかった父との間の溝を、少しずつ埋め始めたゾーイ。彼女の目は、ゆっくりと未来を見つめ始めた。
夜。サイモンに呼び出されてゾーイは初めて出会った公園に向かう。そこには、朝日の中に溶けて行く決意をしたサイモンが待っていた。行かないでほしいと訴えるゾーイ。全てのことは変化していく、変化しないものがあるなら、力を加えても変えなくてはいけない。サイモンはそう諭して、太陽が昇るまで一緒にいてほしいと頼む。
最後のときを、時折口付けを交わしながら過ごす二人の上に、朝日が昇り始めた。サイモンの身体は次第に薄くなり、陽炎のように朝日の中に消えていった。「愛しているよ、ゾーイ」。サイモンの最後の言葉を胸に、ゾーイは新しい朝に向かって一歩を踏み出すのだった。
*感想*
まず、いつもながらのシンプルなセット。舞台の上・下に幾本かの金属のポールが立てられていて、これも上・下に一箇所ずつ、地上3メートルくらいのところに人が一人立てるくらいの板(・・・上手い言葉が見つかりません)がありまして、原作ではサイモンが、霧に変化して様子を窺っている、そのしかけです。原作と違うところは、ゾーイが少し足が不自由だと言う設定。これについては、大好きな友達もいて、美人でスタイルも良くて、両親にも愛されて、端から見ているとどうして孤独なのかと言う境遇を、少し理解しやすいように設定したそうです。
で、両チーム観て、どちらにも良さがありますし、『ちょっと・・・・』ってところもあります。それがダブルキャストの醍醐味だとも思いますし。
まずVita。山本さんはとても繊細そうで、しなやかな美しさのあるサイモンでした。人間の部分の弱さ、みたいなものが見える感じ。ダンスをなさる方ですから、身ごなしは綺麗です。松本さんは、思春期の少女の心の葛藤を、ご自分なりの解釈で作っていらっしゃいました。言うまでもないんですけど、可愛いです(真顔)。深山さんは、子供の皮を被った悪魔、って言うのが良く見えました。時折クリストファーの実年齢(300歳以上のはず)にそぐわしい、狡猾で陰湿な表情を浮かべるかと思えば、天使みたいな笑顔で女性に抱きついたりします。サイモンを吸血鬼にする件の「貴方を死なせたくないんだ」と言うのが、実は心の根底に流れている印象を受けました。こっちのチームは、クライマックスのサイモンVSクリストファーのアクションがね・・・お二人とも小柄だし、すごくしなやかに動く山本さんに比べると、深山さんはあまりアクション向きじゃないらしくて・・・ちょっと長いな~って感じてしまったのでした。
それから、Anima。曽世さんは、頼りがいのあるサイモン。恐らく自分の中にあるのであろう弱さを、極力ゾーイの前では見せないような感じかな。・・・でも、感情豊かっていうか、・・良く泣いてしまうんですよね、曽世さんて。朝日に溶けるところも、ゾーイに抱きしめられながら泣いてたかな。・・好き好きですけど、私はそこで泣かない方が好きかも。舟見さんは、すごく自分の中に篭っていくゾーイ。多分自分で思っていることの三分の一も表に出せないでいる、そういうイメージです。ちょっと大人びた16歳。こういう16歳もありかなって思います。内面がきちんと練れてないと表現できない部分かなって思うので。荒木さんのクリストファーは、子供の仕草がすごく上手い!配役を見たときに、ちょっと想像できないぞ、荒木さんの6歳?と思ってたんですけど、可愛らしかった。だからこそ、女性を襲って血を吸うところの残虐さが浮き立っていました。こっちのチームはサイモンもクリストファーも小さくないし、アクションもダイナミックでした。
そのほかで特筆は、やっぱりゾーイのママ・アン役の林さん。この方、ほんとに前回、あの(笑)ティターニアさまをされた方ですか?って程の変わりよう。末期のガンで、薬の為に髪の毛が全部抜けてしまっている設定なので、坊主頭でベッドに横たわっているのですが、それでも女性に、と言うか、娘を愛する母親に見えるところがほんとに素敵。だるそうに、でも精一杯の冗談を言ったりするのがもう、切なくてたまりません。ストーリーラスト近くで、ゾーイと色々話しながら、自分の中にある恐怖も、不安も、隠さず娘に打ち明ける。それでいて「(母さんのことを)思い出すなら楽しいことにしてねぇ」なんておっしゃるのが、もう涙涙です。
それから、約半年ぶり(?)にお目にかかった高根さん。やっぱり素敵だったな~。自分のことにいっぱいいっぱいになってしまっている父親。背中に哀愁が漂ってます。しかし・・・松本ゾーイの時はちゃんと親子に見えるのに、舟見ゾーイだとなんだかカノジョに見えちゃうのは、何故なんでしょうか・・・?
それから、フォン・グラブ。・・・う~ん、どっちもさ~・・・まあ、あの時代の鬘とヒゲが悪いんだけどさ~・・・単なる『スケベオヤジ』風のビジュアルが、ぴよりーぬ的に見ていてあまり嬉しくないです。でも、前田さんは一見上品げに、船戸さんは見るからにワイルドなフォン・グラブでした。
我がもう一人のご贔屓、三上俊さんは、ゾーイのクラスメイトやサイモンのママなどをされていました。いやぁ、クラスメイトのジュリア!やばいですよ、あのカワイさは。ギャルギャルだし、ダイナマイトバディだし、オヤジなぴよりーぬのハートはがっちりキャッチされてしまいました。自然すぎです、・・・そのバスト・・・。また、サイモンママ・スカーレットではクリーム色のドレスが素敵。クリストファーがいなくなって、ちょっと精神的に疲れてしまったところが、カワイ切ないのでした。
ところで、10日夜公演はVitaチームのトークライブ(初参加です)があったのですが、内容はともかく(って言うか、あんまり覚えていない・汗)、トークも終えて袖にはけるときに、最後まで残っていた山本サイモンと松本ゾーイ(主役コンビだから当然)。手を振ってはけようとしたその時。サイモンは上手に。ゾーイが下手にはけかけた!ええっ!?一緒にはけないの?!と思っていたら、松本ゾーイが「ああっ!」みたいに山本サイモンを追いかけていき・・・山本サイモンも「ああ、置いてきちゃったよ」みたいにゾーイのところに戻り、・・・手を差し出したんですけどね。「・・・また姫抱っこ・・・?(『夏の夜の夢』でよく山本ライサンダーは松本ハーミアを姫抱っこしてカーテンコールに現れてました)」と一瞬思うような出し方をしたんですよ。片手を松本氏の膝くらいまで下ろして。結局姫抱っこはなく(笑)二人で手を振りながら去っていかれたのですが。・・・ちょっと見たかったな、ゾーイを姫抱っこするサイモン。本編が、綺麗だけど切ない別れ方をするから・・・。
話が逸れましたが(苦笑)、原作を読んだ時の、清清しいけどちょっと切ない、なんともいえない余韻を味わうことができました。ライフの作品て、私はいつも思うのですが、見た直後より、例えば自宅に帰ってきたころくらいに、無性に「ああ、もう一度観たいな」って感じる気がするのです。