はっぴぃ★ぶ~け

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『アドルフに告ぐ』観劇報告

Studio Life『アドルフに告ぐ』観劇報告

2007年12月21日 銀河劇場にて

*主な配役*
アドルフ・カウフマン:荒木健太朗 アドルフ・カミル:松本慎也 峠草平:曽世海児 カウフマン父:寺岡哲 カウフマン母・由季江:三上俊 カミル父・イザーク:藤原啓児 カミル母・マルテ:関戸博一  エリザ・ゲルトハイマー/芸者・絹子:吉田隆太 ランプ:倉本徹  小城先生:林勇輔 赤羽刑事:奥田努 米山刑事:牧島進一 ゲルハルト:船戸慎士 本田大佐:石飛幸治 本田芳男:仲原裕之 ボルマン:河内喜一朗 アドルフ・ヒットラー:甲斐政彦 他(Mutチーム)
*ストーリー*
1936年(昭和11年)8月。ナチス党員の隆盛極めるドイツで、ベルリンオリンピックが開催された。特派員記者の峠草平は、取材の為ドイツへと渡るが、その間、留学生の弟・勲を何者かに殺害される。 やがて真相は、時の支配者アドルフ・ヒットラーに関する重大な秘密を知ったことによる口封じの為の暗殺で、ささにその秘密を記した文書が日本へ向けて発送されていたことを知る。
一方、神戸ではドイツ領事館員のカウフマンも、本国からの指令を受け、秘密文書の行方を追っていた。熱心なナチス党員であるカウフマンは、一人息子のアドルフを国粋主義者に育てようとするが、 反ユダヤ主義思想にアドルフは強く反発する。同じ名を持つ親友アドルフ・カミルがユダヤ人だったからだ。カウフマンはドイツ人の父と日本人の母をもち、ハーフであることが原因で同級生から差別を受けていた。 ドイツ人でありながら、日本人と同じ学校に通うカミルも同様であったが、ある日カウフマンを庇ったことを機に二人は親交を深め、無二の友情を築いていく。
しかし、時はヒットラーと言う独裁者が支配する暗黒の時代。はるか彼方にある3人目のアドルフは、日本の神戸の片隅で懸命に生きる二人の絆をも、無残に引き裂いていくのだった・・・。

*感想*
え~と、ストーリーについてはほんとに原作を読んでいただきたいんです。ヒットラーの秘密文書の内容が、実はヒットラーにユダヤ人の血が流れているということであったり、結局はドイツのアドルフ・ヒットラー・シューレ(ナチスの幹部候補生育成機関)で冷酷なナチス将校に 育っていくアドルフの成長過程とか、でも親友・カミルや初恋の少女・エリザがユダヤ人であることに苦悩したりとか、母が峠草平と再婚して、また彼の中の何かが変わって行ったりとか、 そんなのが複雑に絡み合う、実に深いストーリーです。
舞台は、グレー系の壁が場面により移動。舞台奥に高さのある通路が上手から下手へ伸びており、そのセンターから舞台全面にかけて、傾斜のある通路が縦に伸び、上手と下手を分ける感じです。
幕開けは、銃弾の音。逃げる子供たちが銃殺され、イスラエルの兵士が中尉・カミルに任務の成功を告げ、カウフマンが『アドルフに告ぐ』と言うビラを撒き、二人が再会して銃撃戦になるところで暗転。峠草平が、物語のきっかけとなる事件を紹介するところから、本編へとぐんぐん 引き込まれます。お~、ここから始まったのか~、と言う感じです。上演時間の関係で、いくつかのエピソードが割愛されたり、ちょっと変更されたりしていますが、基本は原作に忠実に、 でも主にカウフマンの感情の流れに焦点を置いた作品です。
カウフマン・荒木さん。日記にも書きましたが、主役が段々と板についてきた印象です。また、彼の持っている爆発的な熱さや紙一重的な勢いが、長じてナチス将校になったカウフマンによくマッチしていましたし、よくは存じ上げませんが、普段トークショーなどで垣間見る ちょっと天然ぽい、柔らかいところが子供時代の無邪気なカウフマンに似合っていました。
カミル・松本さん。関西弁を駆使するドイツ人。常に一本通ったものをお持ちで、素朴な印象の松本さんもまた、カミルが似合っていました。原作を読んだときに、カミル役は松本さんがお似合いなんじゃないかな、と思っていたのですが、実際に拝見すると やっぱり良かったです。晩年、イスラエル軍の中尉となってユダヤ民族の為に戦う姿の中にも、正義と信じつつも心のどこかの戸惑いの感情があるんじゃないのかなって思いました。・・・カミルが中尉の格好して出てくるのなんて、全編通して1分くらいなんぢゃ・・・?とも思いますが、 それでもそこまで見て取ったのは、私が勝手にカミルファンだからでしょうか?(苦笑)
峠草平・曽世さん。原作よりもコミカルタッチ寄りです。何に対しても正直に当たる峠さん。かなりぼろぼろな人生を送る時期があったりするんですが、そこは結構ソフトに描かれていて、ぴよりーぬ的にはちょっとほっとしました。 両アドルフを見守る深い眼差しを感じました。
それから、カウフマンのお母さん・三上さん。確か、公式HP内のチケット情報局で、古き良き日本女性について研究中とおっしゃっていましたが、健闘されていたと思います。優美で美しいビジュアルも、母親であり妻であるあり方も違和感なくて素敵でした。 以前からちょっと気になっていた三上さんのお芝居のクセみたいなものが、大分なくなってきたんじゃないかなと思います。
そして、なんといってもピカイチは林さん!小城先生という、カミルや、峠の弟・勲の恩師の女性なんですが、原作よりもコメディ要素がたっぷり。色んな大変な目に遭い、沢山の登場人物が死んでいく中でも最後まで生き残っている女性で、林さん版小城先生のキメ台詞は 「私は死にませんっ!」なんですよね(笑)。こんなん、原作にあったかいな?と思いましたけど、確かに作品の最後まで生きている方です。他にも色んな役をされていて、そのどれもがまた最高に良い味が出ています。 ぴよりーぬ的には、アドルフ・ヒットラー・シューレの教官の制服姿がたまらなく素敵でツボです(おいおい)
忘れてはならない、3人目のアドルフことヒットラー・甲斐さん。ビジュアルからして、写真や映像で見るヒットラーっぽい。立ち方とかも研究されたんだろうなと思いますし、それこそ紙一重的な、でも孤独な独裁者像が印象的です。 彼に寄り添う、愛人のエヴァ(深山洋貴さん)だけが、どんなことがあってもヒットラーの支えであり、正義であり、愛だったのが、何だか哀れでした。
「この年末の時期に、この作品」。初日にご挨拶で荒木さん(だったと思いますけど)がおっしゃったように、平和の尊さや生きられることのありがたさを感じて新年を迎えられそうな気がします。 重いテーマですが重くなりすぎず、某劇団の、戦争を描かせてみたらすごく思想的で声高な反戦劇みたいな息苦しさはなくて、自然に色々なことを考えられる、そんな作品だと思いました。



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