日本語はダメか2

日本語はダメか2

2010.04.16
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勘違い・八つ当たり・嫉妬……そのような言葉を思わずにはいられないような些末な事件。

 自尊心や向上心がそれらを生み出すのであろうが、向けられたこちら、ちと参った。木曜柏教室のUさんからの夕方の電話。

 その前に……。
 16日付の某新聞に「某文学賞」の発表があった。大賞受賞は、小生が講師を務める柏教室の30台前半の女性。S・H子さん。
 その日は、錦糸町教室での講義があった。在籍するYさんは、H子さんと最後まで受賞を争った実力の持ち主。
 だが、あっさりと「相手が強力だったのだかから(仕方ないわ)」と認めた。

 選考会の進行・展開を生徒さんに細かく説明はしない。公平を期するためだ。


 家に着いて間もなくだった。テレビ画面には「水戸黄門」のドラマが半分ほど進んでいた。


「あの受賞作、あたしの作品と重なるんです」
「重なる?」
 聞けば、
 ……大賞受賞作を紹介した新聞記事にある「遊女、問わず語り、方言(をうまく生かした作品)」が「あたしのものと重なる」
 と。
「そうでしょう、今、提出して読んで頂いているあたしのあの作品がそうですよね」

 彼女は60代。昨年の「児童文学賞 佳作」受賞者。
 作家になろうね、と暫く前に言ったら「なる、ではない、あたしは作家です、先生」と言う自信家。
「なぜあのような作品が受賞したのか、なぜ選考委員として選んだのか」というための電話でもない、ようだ。まだ発表されてもいないのだから。




 どうやら、彼女の<作品>をこちらがH子さんに漏らした、という苦情らしい。
 (電話を受けたときは、まったく思いつかなかったことだが。)
「作品を読んだの? その上でまた話しましょう。読みもしないうちからそのような言い方は。そんなワク付けだけから、他人の作品についてとやかく言うのはおかしいでしょう。どっちみち、女と男が出てきてドラマがあるのだから。大のオトナたちが選んだのだから」

 だったらこんな時間、ムダだ。
「……『俄』や『蒼穹』や金曜柏教室で、あの子は凄い、と言って、どうして木曜柏教室では言わなかったのですか」
やれやれ。そんなことをどうして知っている? それがどうした?
 ということは、木曜柏教室でもH子さんについて「凄い新人が入った」と言ったのを聞いているのではないか。
「聞いてません」
「言った聞いてない、はムダだから」


 どうやら、「先生はあの子に(あたしの骨組み・プロットを)漏らした、従って都合が悪いから木曜柏教室ではあの子に触れなかった」というようなことを言いたいらしかった。

 万が一、木曜柏教室の彼女の作風・プロット・ストーリーについてこちらが喋ったところで、それを聞いた誰かが独自の「優れた作品」を生み出す、などということはあり得ない、のではないか。
しょんぼりそもそも、いつだってどこかで誰かが似たようなものを書いている、完全な「オリジナル」などというものはないのだ、当のUさんが書いている「平戸・出島物」だって、すでに誰かが書いている書いていたかも知れないのだ。

「三題噺」と銘打って、三つのキーワードから原稿用紙二枚とか三枚の作品を仕上げる、などということもやっている。
 仮に、
 下宿 田の神さま 小川 
 あるいは、
 一夜妻 サイドカー 田起こし
 の三題……。
 感性と思考、体験や年代によってまったく別々の作品が生まれる。実に多様な才能。

教室でも語ることがある。
「だめ、あたしの作品の話を他の教室でしては。盗まれてしまう、などと心配するヒトもいるが、それはあまりにも狭量、あるいは傲慢。発想も文体もまったく違うのだから、自分の世界がしっかりしてさえいれば無用な心配」
 と。

「教室を辞めます、提出した原稿は」
「はい、事務所に預けておきましょう」 

怒ってる<物書き>の矜恃と屈折と焦燥と、言いたくはないが、嫉妬をもろに見せつけられた一時間だった。
 前の会で仲間とぶつかってこちらへ移ってきたように、これからもまたどこかへ移って行かざるをえないような矜恃と自恃を持てあましている感覚を、人ごとながら不安に思う。心配する。
 怒ったらいいのか、笑ったらいいのか……行き場を見つけられない馬鹿ばかしい困惑だけが残った。

 新聞に発表された作品を読んで「独り相撲でした、済みません、教室に戻らせてください」などと反省する奇跡が起きるタマではないようだ、どうも。





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最終更新日  2010.04.17 03:29:36 コメントを書く


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