日本語はダメか2

日本語はダメか2

2012.12.09
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ぽっ


「最近、日本庭園が見直されている。動と静、わびの世界がこの荒廃したヒトの精神によい影響があるらしい」
 これは、添削朱ペン進化塾の生徒さんが書いた作品の中の文章。

「わび」は「侘び」と書くこともあろうし、「ヒト」は「ひと」「人」、「よい影響」は「良い影響」「いい影響」を選んでもよ(良)い。

 ローマ字ではどうなるか。
「Saikin nihonteien ga minaosarete irurashii.Dou to Sei,Wabi no sekai ga
kono kouhai shita hito no seishin ni yoi(ii) eikyou ga arurashii.」

 ある新聞の大見出し・中見出しびっくり「55校が統合・移転検討  被災3県の小中 遠い正常化」をローマ字にしてみると、


「琴奨『責任』連敗阻止」「市船 執念の逆転劇」「東九州龍谷6度目V」「栄冠目前…力尽く」「重症化する人 早め受診を」
これらもローマ字ではどうなるだろう。

もちろん、「ヘボン式」「訓令式」などによって、上に書いた書き方ではない表記の仕方は色々あるだろうが、いずれにしろ、一目では意味を取りにくい。

 漢字の持つ「表意」の強みを改めて感じた。そして、漢字・平仮名・片仮名混じりの文章の奥深さを。

 戦後、志賀直哉、山本有三などの主張で、日本語をフランス語に変えよう、英語を採用しようなどの動きがあった。
 文部省(文部科学省)内には伝統的にローマ字論派が根強い、と物の本にあった。

 軍関係の流れの中でも、「この日本語のために戦争は負けた」という意見が根強くあった、と聞く。
「漢字は効率的ではない、これでは世界の情報戦の流れから遅れる」らしいが、「効率」だけが言語の効用ではないのではないか。


 そもそも、我々の先輩は、和語の音声に漢字を当てはめる「一字一音表記」などの苦労を重ねた。
「列島が生まれて海月(くらげ)のように海面を漂う」様子を「久羅下(くらげ) 多陀用弊流(ただよえる)」などと書いた。

「日本語の書き言葉の中には、凄い緊張がある。しょんぼり漢字か平仮名か片仮名か常に選択を迫られる。こんな言語は他にない」と作家リ-ビ英雄さんは言う。「日本語の書き言葉の魔力にとりつかれてきた」リービさん。

 あるいは多和田葉子さん。「ヨーロッパの文学にあこがれて」渡独、29年。例年、日本に滞在するのは二ヶ月程度。
星平家物語や内田百けん(門構えに月。機種依存文字と指摘され表示出来ず)などの作品を読み、世間で広く使われる日本語からは少し変質した言葉で文学を成り立たせている自覚を抱いている。

 若者向け娯楽小説「ライトノベル」の書き手はほとんど20代。今年の第18回電撃大賞は「エスケヱプ・スピヰド」。作者は久丘(くおか)望さん。23歳。
 昭和101年が舞台のSFメカアクション(って、こちら「メカアクション」を知らないのだが)。
「ヱ」や「ヰ」をわざわざ選んだのは、それなりの言語感覚からの工夫だろう。

 情報伝達の効率だけが文字・言語の命ではない、ということをじっくりと考え直したある夜。

 そして、その日本語による言い表し方の星代表の一つを掲げてみたい。
 川端康成『雪国』の冒頭にある「夜の底が白くなった。」という表現。
「夜」も「底」も「白い」もごく普通の言葉で、難しい言葉は一切入っていません。なのに、「夜の底が白くなる」と書き切った怖ろしいまでの巧みさ。日本語を極限にまで駆使したワザ。

 英語ではどのような言い表し方が可能か。
サイデンステッカー(Edward George Seidensticker)さんの英訳は以下の通り。
「The train came out of the long tunnel into the snow country. The earth lay white under the night sky. The train pulled up at a signal stop.」(国境の長いトンネルを抜けると雪国であった。 夜の底が白くなった。 信号所に汽車が止まった。)

 直訳すれば「夜空の下に白く横たわっている大地」という「論理的」「常識的」「日常的」な言葉の並びでしかない。
 日本人よりも日本の文学に通じていると言われるドナルド‥キーンさんならどのような英語で言い表したろうか、想像するだけで愉しくなる。

 日本語が駄目なのではなくて、効率だけを考える便法を優先する思考が日本語を使いこなしていないのであろう。





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最終更新日  2012.12.10 03:52:39 コメントを書く


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