February 1, 2009
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◆小説のかなり大雑把なあらすじ・登場人物◆ は、記事の下のコメント欄を。
  最初から、または途中の回から続きを読まれる方は、 ◆ 一覧 ◆ からどうぞ。
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 夜が明けた。だが病院らしいクリーム色の無地のカーテンを開けると、空には重そうな雲が広がっていた。今日は雨になるのだろうか。
「吾朗…ちゃん?」
 振り向くと紗英は目を覚まして周りを見回していたが、心電計に気が付き顔を歪めた。
「少しは眠れたか?」
 紗英は小さく頷いた。
 ナースコールで紗英が目を覚ましたことを告げると、しばらくして女性看護師がやって来た。
「気分はどうですか? もう少ししたら坂下先生も来ますからね」
 看護師の明るい声が、それまでの緊張した部屋の空気をぱっと蹴散らした。
「先生ね、もう勤務時間は終わってるくせに、何だかんだ言ってまだ病院にいるんですよ。月野さんのことが心配なんでしょうね。だったらここにいればいいのに。どうせ勤務時間外なんだから。ホント、坂下先生って、照れ屋って言うか、素直じゃないんだから。ねぇ」
 看護師はてきぱきと紗英の血圧を測りながら、可笑しそうに喋っていた。その間、紗英はただ苦笑いしているだけだった。
 やがて看護師と入れ違いに坂下がやって来た。何となくその場に居辛かった僕は、喉が渇いたので何か買って来ると二人に告げて部屋を出た。
 ホスピスのロビーに行くと車椅子に座った老人が、一人でテレビの天気予報を眺めていた。今日の天気は曇りのち晴れ。どうやら雨は降らないで済むらしい。
 僕は自販機で紙カップのコーヒーを買い、部屋には戻らずロビーの椅子に腰を下ろした。気が緩んだのか、急に疲れが出て強い眠気が襲ってきた。
 コーヒーがカップの半分程に減った頃、坂下がやって来た。
「お前、何で部屋に戻らないんだ?」
「いや、何んとなく…」
 坂下もコーヒーを買って、僕の隣に座った。
「紗英の容態は落ち着いたようだ。後はまあ、さっき言った通りだ」
 天気予報が終わり今年の芸能界十大ニュースというコーナーが始まると、車椅子の老人はテレビを消してどこかへ行ってしまった。
「なぁ、余計なことだとは思うが。紗英とのこと、お前は本当にこのままで…」
 僕が何を言おうとしているのかを察した坂下は、またその話か? と言って笑いながらコーヒーを啜った。
「それより、お前とくるみちゃん、やり直さないんだってな。この前、紗英から聞いたよ」
「その話は…」
「まあ、いいから聞けよ。お前には一言、言っておきたかったんだ」
 今さら言っても仕方ないことだろうけどと前置きをして、坂下は話し始めた。
「俺に言われるまでもないだろうが、お前、ちゃんと反省しろよ。結婚を前提に考えてる彼女がいるのに、いくら紗英が強引だからって押し切られて元カノと一緒に暮らす奴がいるか? その時点で妹だってことは知らなかったわけだし。くるみちゃんがよく許してたと思うよ。普通、他の女と暮らしてるって分かった時点でご破算だろ。だいたい紗英も紗英だ。いくら余命があと僅かだからって、何やっても許されるって訳じゃない」
「そんな言い方ないだろう?」
 紗英に対する容赦ない正論に、一瞬ムカッときた。
 だが僕自身に関しては、自分の非を認めるしかなかった。ブラックのコーヒーがやけに苦く感じた。
「悪かったのは僕だ。紗英の様子がおかしいことばかり気になって、くるみの気持ちを考えることができなかった。そりゃあ、良くは思っていないことは分かっていたけど、くるみの口から聞くまで、くるみがどれ程苦しんでいたのか知らなかった。僕にはくるみに信じられているっていう、自惚れもあったのかもしれない」
 僕の言葉を聞いて、坂下は笑った。
「少しは自分を正当化したらどうだ。お前も紗英も、悪かったのは自分だって言うし、くるみちゃんはくるみちゃんで、自分で自分を追いつめたとか言ってるんだろう? 三人とも悪役希望とはな」
「お前、何が言いたいんだ。僕に反省しろって言ったり、正当化しろと言ったり」
「さあな。俺も疲れてるみたいだ。要は反省しとけってことだ。だが自分を責めることはないだろう。そんなことしても何にもならないからな」
 そう言うと坂下は一気にコーヒーを飲みほして、一般病棟へと戻って行った。

 紗英の容態が落ち着いたので、僕は一旦家に帰った。誰もいない部屋はカーテンが閉められたまま、暗く冷え冷えとしていた。
 紗英と一緒に暮らした二ヶ月間はついこの前のことなのに、遥か遠い昔のことのように感じられる。
 正月は実家でゆっくりしている場合じゃないな。顔くらいは出せるだろうけど。母さんに電話しておかないと。何でって聞かれたら、何て説明すればいい? くるみと別れたこともまだ話していないし。
 そんなことをぼんやりと考えていると、玄関のチャイムが鳴った。
 回覧板でも回ってきたのか? こんな年の瀬も迫った頃に何だろうと思いながらドアを開けると、そこには紗英の元夫がいた。
「突然すいません」
 男には以前訪ねて来た時のような荒々しさはなく、今日は落ち着いた様子だった。
「連絡してから来るべきでしたが、紗英の新しい携帯の番号とか分からないし、こちらの電話番号も伺ってなかったので連絡の取りようがなくて。ところで紗英は?」
 いつかまた来るんじゃないかと思ってはいたが、今更…。
 僕は戸惑いながら、紗英の元夫を部屋に入れた。(つづく)

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読んでくださり、ありがとうございました!


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今回の物語の補足
 紗英の元夫が吾朗のアパートで暮らす紗英を訪ねて来た時の話
「第30話  ~ goro(15)  雫 ~」

またしても週末に間に合わず、こんな時間の更新…(;一_一)
(これ書いてるのは2/2 AM1:15です)
週末、見に来てくださった皆様、ごめんなさい
心からお詫び申し上げます。m(__)m

さて、今回は本文とは関係なく、皆様にご報告&お願いです。

一つ目は 昨年の10月にお願いした
「遠位型ミオパチー 患者会」の署名について

2008年末までの目標は60万筆でしたが、
100万筆突破 だそうです!!

ご協力くださった皆さん、ありがとうございました
患者会並びに関係者の皆様、これからが勝負!頑張ってください!!

詳しくは 
遠位型ミオパチー 患者会


二つ目は、昨年里親を募集した40匹のワンちゃん達のその後

現在も里親募集とあらたに寄付金・支援物資のご協力をお願いしています。

 詳しくは 
40匹ワンコのその後…ブログ、HPお持ちの方、開いているスペースでリンク、バナー協力を! 40匹ワンコのその後…40匹ワンコ達の未来のための活動です。


それではまた、次こそ今週末UPを目標に頑張ります!
(と、一応書いておきます。あくまで一応…)
風邪やインフルエンザにお気をつけて、今週も元気にお過ごしください。
また体調を崩されている方は、1日も早く回復されますように。(*^^)v

今日もありがとうございました ブログ管理人・ぽあんかれ


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Last updated  February 2, 2009 11:54:48 PM
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