素敵な大家さん

NYcityView

ラファさんの部屋のバルコニーからの眺め。ここで毎晩のようにマンハッタンの夜景を見ながら話した。



私は小さい頃祖父と半身不随の祖母と一緒に暮らしていたので、

年寄りがどういうものか分かっていたし、

助けが必要な老人を手伝うのは当然の事だと思っていた。



だから毎日のように大家さんのところに行っては手伝ったり御礼にとご馳走になったりしていた。



大家さんは貧しいイタリア移民の子で1920年代の大恐慌時代を潜り抜け、

体の弱い母親を養うために16歳で高校を泣く泣く辞め、

足の障害ももろともせずに身を粉にして働き続け、

低賃金労働者のために労働組合を立ち上げるのに一役かった人であり、

とても愛情深く暖かい人だった。





私が会った時には子供達はとうに独立し、

5年ほど寝たきりだったご主人は数年前に看取っていた。




大変苦労して買ったこの家は彼女の大のお気に入りで、

入り口付近の窓のある部屋で一日の大半を独りで過ごしていた。




唯一の楽しみは広い庭に遊びに来る鳥のさえずりを聞く事と、

ここに住む学生達(彼女は子供達と呼んでいたけれど)が成功して巣立って行くのを見る事だった。




いつも一人だったのでお邪魔した時はここぞとばかりにいつもいろんな話を聞かせてくれたし、

いつもお菓子などもらえば必ず私にもお裾分けしてくれた。





ちょっと耳が遠くて大きな声で話し、

ちょっと狸にも似た愛嬌のある顔をしていて、

きれいな大きな目をきょろきょろさせながらよく87歳彼氏募集中と冗談で言っていた(本気だったかも)。




大家さんとラファさんへ続く





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