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~ LAZY LIFE ~
なにか
朝靄に薄らと浮上するシルエット。
それはこの街を模る存在。精緻なる建築技術によって、優麗に築き上げられた街並み。
レンガを精巧に組み合せた軒蛇腹を冠するルネッサンス調の建造物。木造と石造とを、利便と端正の見地から程よく調和させた橋梁。それらは未だ靄を貫き切れぬ陽光に対して不満すら洩らさずただ只管に朝を待つ。
街を徘徊する石畳のかんばせには、その一枚一枚に全く異質な表情が刻まれていた。過去彼らを踏み拉いてきた者の残心が織り成した木目。石畳はその木目――自らが生きた証――をより濃く紡ぐため、昨日塗擦された踪跡を乾固させようと、その身に落ちる陰影に光被を祈る。
大都市だろうと、寒村だろうと変わらぬ夜明けは等しく忍び寄るのだ。
朝靄の中。
誰も口にすることこそないが、そこに息づく全ての存在が朝日照る今日を心から待ち望む瞬間。ボクは一足先にその躍動を開始していた。
ボクは少し身を燻らせると、大きく息を吸い込む。
刹那、清浄なる一陣の風がボクの肺腑を駆け巡る。
例え人類が繁栄する裏に大気の濁りが取り糺されようとも、朝とも夜とも呼べぬ世界、その時間に充満する命の吐息は生まれたての赤子のように芳醇な鮮度を誇る。
まるで妖精のたおやかな悪戯のよう。なんて言ったら「夢見すぎ」とか返って来そうだけど、でもきっとここに立って一つ胸を撫で下ろせばわかるはずだ。これがとうの昔に、人が文明との対価に支払ってしまった宝物の忘れ形見だってことが。
「早起きは三文の得」なんていうけど。
この揺蕩う息吹がもし一文で手に入るなら安いものだと思った。
残りニ文もきっと素晴らしい使い道があるに違いない。自ずと期待も膨らんでくる。
今日もコツコツと貯金に勤しんでいる人たちは早く気付くべきだと思った。いくら貯金したって、一日三文までしか使えないことに変わりはないということに。
大通りの歩道を少し跳ねるように歩く。
車道にはまだ早朝とも呼べぬ時間なのに、時折思い出したかのように馬車の宣揚が響く。幾らその存在を示しても、まだ誰も彼を必要とするはずがないのにご苦労なことだ。ちょっと呼び止めて驚かしてやろうか、なんて思ったけど、あまりの吃驚に車輪を外されても困りもの。思うだけで止めておく事にする。
道すがらふと、露店の準備をする光景が目に入った。
さすが要衝と呼ばれる大都市だけのことはある。大通りは車道だけでなく、すでに路肩ですら目を覚まし掛けているらしい。忙しく店内から店外に運搬される売り物。その手際の良さから、この店がこの街と古くからの付き合いであることが窺える。ただ開店準備の手際の良さが裏目に出て、早朝から客待ちで欠伸を噛み殺さなければいいけど。
そろそろ目的地が見えてもおかしくないハズなんだけど。
ボクは先程から引っ切り無しに辺りを落ち着きなく見回していた。
それもこれも兎人ことピーターの奴が悪いのだ。
ことは一日前に遡る。
ボクはピーターに出会い、そして旅に出ることを承諾した。
その経緯とかは追々話していこうと思うけど、簡単に今言ってしまえば「ボクの望み」を叶えてくれる。ただそれだけ。人間の動悸なんて実は凄く単純らしい。
「信じるか信じないかはあなた様次第です。ですが、ここで立ち止まる事に何の意味がありましょう? などと言うと、殆どの方が訝しげな瞳で仰りますね。『あ、今ちょっと立て込んでるんで』と」
うまい煽り文句だったと気が付いた時には、もうこっちの世界に来ていたんだからしょうがないけどさ。中々にボクはそうした駆け引きにまだまだ疎いようだ。気を付けないと、次はどんな誘導に引っ掛かって見知らぬ街を徘徊させられるかわかったもんじゃない。
「おっと、失敬。ワタクシ、約束事をしておりましたのをすっかり忘れておりました。甚だ欠礼にて詫びる言葉もございませんが、明日はお一人で出向いて頂く事お許し下さいませ」
「ちょ、え? どういうこと? 拒否権とかってないってこと?」
「面白い事を申されますね。まあ、在り来たりにお答えするとすれば「Non」。御座いません。もしこれが和気藹々とした旅行ツアーでしたらば、ガイド不在など許されぬ所作でありましょう。ですが、これは云い得て妙ながら、全てが自由行動・自由意志の上に成る放浪。あなた様にその権利は発生なさらない、というのが理で御座いましょうか」
「ん……それだと、ボクはおまえの言う通りにする必要はないんじゃないの?」
「なるほどなるほど。相互の主張に食い違いがあったようですな。ワタクシが申したのは『アナタ様には、ワタクシが計画通り行動するという自由を拒否する権利は生じない』ということ。ですから、アンタ様がワタクシ無き後どうなされようと、それは飽くまでアナタ様の自由で御座います――ですが、何をしに遠路遥々このような異国の地に参じたのかをよくよくお考え頂ければ、自ずと選択は限られてくるのでは?」
さて、小生は映画が好きである。
そこで、この日記では「最近見た」あるいは、
「何か突如想起した」作品をコメントしていこうと思うのである。
注)その際、物語の序盤の紹介文を添え、
どんな内容なのかを伝えていこうと思う次第ですので、
ネタばれが例え序盤であってもイヤな人はこの日記は飛ばして下さい。
というわけで、今日の映画館第十五回をお送りします。
さて、今まではボクがリアルタイムで見てきた最新の映画を、
このページを使って紹介してきたわけですが。
そろそろボクが真にこれぞ、映画。
と思う物件を明かしていこうかと思います。
つまり秘蔵っ子スペシャル第一弾です。
第一弾を記念して、ボクが「神の映画」と崇め奉っている
三本の映画の一つをこっそりお披露目しようと思います。
■ デッドコースター(ファイナルデスティネーション2) ■
生と死は表裏一体である。
生きていることの裏側には常に死の危険性が付き纏っている。誰もその定められた運命からは逃れることは出来ない。
しかし、そんな死神の鎌から偶然にも逃れてしまったとしたら。
その人物は、その後どうなるのだろう。
彼女もそんな一人だった。
きっかけは「死のビジョン」だった。彼女はただそれを踏まえて、未来を少し、ほんの少し変えたに過ぎなかった。その変化が彼女から死を遠ざけ、生を呼び戻した。
彼女は生き残ったのだ。
けれど、ひりつくような不穏な空気は、未だ彼女の前から姿を消そうとはしなかった。彼女はまだ知らないのだ。死が如何に絶対的な順序を伴って生じているかということを。
死は逃れても連なり、そして鎖となる。
● コメント ●
とりあえず、オープニング見て下さい。
絶対に目を離せなくなると思います。
とこう言っておいて、友人の一人は「何、あれ?w」って言ってましたが、どうもちょっと残酷なシーンのある映画は敬遠気味とのことだったので、その友人のように「凄惨なシーンを生涯避けて生き抜こう同好会」を除いて、と付け加えさせて頂きます(笑)
とにかく、主人公たちに付き纏う死の影。
そして、偶然が偶然を呼び、絡み重なり、そしてそれが一瞬のまばたきの間に「死」に転じる壮絶さ。これは本当に素晴らしいです。そして我々は知るのです。偶然として認識していた出来事全て、それ全てが運命の策略による一手であったことを。
とりあえず、オープニングだけ見て下さい。
そこで背筋が凍るほど
さて、小生のお送りする今日の映画館第十五回、どうだったでしょうか?
そろそろ形も固まってきましたが、もちろん今以上の向上のため「ここはこうした方が」などのご指摘はいつでも心よりお待ち申し上げております。
また「これはもう見た?」や「これオススメ」などのご意見も、
聞かせていただけると大変参考になりますです。
映画好きな人種として、やはり「知らないで見逃す」ことほど、
悔しい想いはないと常々思っておりますので。
というわけで、今後もこんなカンジで続けていくつもりです。
よろしければまたお目通し・ご賛同・ご批判などなど書き込んで交流を持って頂けたらと思います。では、また第十六回でお会いしましょう。
で、後編。
実は友人の中で、ちょいと「すすきの」もとい北海道に行ったやつがいる。そのボンクラの話になった。ただここではそんな話を書けようはずもないので、ちょっとお茶を濁そう。
というわけで、S君。
君の話したことを赤裸々に書こうと思う。
でも、きっと文面は見てないはずだから、大丈夫だよね。
フフフフ。
S「いやぁ、絶対あれっすよ。すすきの先輩はすすきの行きますって」
ク「じゃあ、S先輩も行きましょうよ」
S「いや、オレはキャンプで北海道とか行かないし。卒業旅行の話だろ? おまえらだけで行ってこいよ」
ク「スキーのとき行けばいいじゃないすか。じゃあ、こうしましょうよ。どうせこのメンツで北海道行くとしたら、スキーしない人もいるわけじゃないすか。だったら、スキーかすすきのかで分けましょうよ」
S「わけねーよ。ていうか、オレ、スキーだし」
ラ「Sは一日目で膝が死ぬんで、二日目はすすきのっすね」
I「え? どういうこと?」
ク「いや、あのですね。S先輩は一日目は普通にスノボーとかするんですけど、二日目になると、膝がやばいんでっていって、途中で宿舎に帰っちゃうんすよ」
I「あ、そうなんだ。じゃ、すすきので! すすきので! よろっすよろっす」
ク「まあ、N先輩がきっと持て成してくれますって」
S「雑誌とかで、ちゃんとチェックはしてるでしょうね」
ク「むしろきちんとしてる人なんで、自分で下見とかに行っちゃうんじゃないっすかね?」
ボクを除く一同「はっはっは」
それを冷めた目で見つめるボク(R)。
この集団はやばいと思うが、もはや四面楚歌。
逃げる場所すらない。
あ、そうか……北海道の方もこれを見る可能性があるわけで。
バレバレの内容ですか、そうですか。
こんなこと書いていいんだろうか。
本当に冗談なんですよ。ボクは。
まあ、冗談で書いて良いことか、という気がしないでもないが、本当にこんな冗談が飛び交っていた現場だったので、誠実な小生にウソを捏造することは不可能であった。しょうがない。
そもそも北海道に行ったやつが面白すぎた。
あいつでなかったら、ここまであんなにいじられることはなかったと思われる。いや、うそかも。誰でもああいう風にいじられたかも。
まあ「ネタ」の分からない人。時々出てくる単語で検索なんぞかけないように。そんな値打ちなぞない言葉である。というか、普段友達の少ない小生と、それでも仲良くして頂いている方々には見て欲しくないものである。
しかし、それは自分を偽ることになる。
なので、本当に冗談なのだ、とわかって頂けるかたのみにオススメしたい。と書くのが遅すぎる気もするが、まあ諦めよう。
というかお茶を濁すの忘れた……。
どうしよう……。
昨日水10ココリコミラクルのSPを見た。
途中からで残念だったのだが、それでも20分遅れくらいで見れたので、まあ、よしとしよう。感想、面白かった。以上。
だと、日記にならないのは自明の理。
なので、とりあえず思ったことを書き連ねよう。
そのためにキーボードを手に取ったのだから。
その前に、少々の補足をせねばなるまい。
まずココリコミラクルという番組。要は何かお題を決めて、そのお題に相応しいタイプの人間を投稿によって募集。その中から、面白いストーリー(ネタ)をレギュラー陣による再現VTRで紹介していく、というエンターテイメント番組のことである。レギュラー陣も相まって、意外に面白かったりするのだ、これが。
そのココリコミラクル、今回のお題は「嫌われる女」
古今東西から、嫌われるであろう女性の物語が異性同性問わず集められた。
再現VTR自体がそこそこにきちんとした見世物として成り立っているので、それに関してはいつも通り楽しめた。満足。終了。
ではなくて、この度なぜキーボードを取ったかと言えば、その「嫌われる女」の中に「思い出にまで僻む(嫉妬する?)女」というのがあったのだ。
ん? どういうことだ?
と見ていくと、どうも事故にあった美人Aのお見舞いにやってきたやや容姿的に劣った女性Bに焦点を合わせた物語の様子。そこでBは、Aに「事故にあったとき、走馬灯のように思い出が見えちゃって」と中々に羨ましい過去の思い出を宣われる。それを聞いたBは「ばっかじゃないの。ちょっと美人だからって自惚れてんじゃねーよ」的なことを吐き捨て、病室を出る。
要約すると第一部はこう。
この最中も、なんだか適当に脳内僻みのようなものが度々流されており、また最後の吐き捨てが結構な侮蔑度合いだったから、「嫌われる女」なのかな、と思った。
ただここまで見せられても、なんで羨ましい境遇にある人を妬ましい目で見ると「嫌われる」のだろう、と正直思った。ある種、嫉みなど誰でも抱く行為だろう。それに対して、それを
例えば、何かこの世の中に不都合があったとき、あなたは一体どうやってそれを打開するだろうか。とりあえず自力でやれる処までぶつかってみる? それとも、三十六計逃げるにしかず? まあ、人それぞれだと思うが、そんなとき手を差し伸べて、こんな状況から助け出してくれる人が現れたらどうだろう。
少なくとも私だったら、掴んでしまうだろう、その手を。
喩えそれが愚行でしかなかったとしても。
焼ける大地。太陽の搾り出す、没する前の最後の輝きが校舎を染める。
陰を含んだ部分は、まるで焼け焦がされたかのように黒く闇を刻んでいく。
この時間の小学校ともなると、もはや生徒の姿は見えない。
最近は下校中の誘拐事件などの問題も取りざたされており、学校側もそうした時間を繰り上げているのかもしれない。今ではない昔、子供達の放課後はしゃぐ声が聞こえたのが、まるで夢幻かのように校舎は静まり返っていた。
そんな中、ジャングルジムの上部に腰をかけ、我先にと帰路につく太陽を眺める少年が一人。ただ何をするでもなく、ずっと凝視している。まるで母親に迎えに来られてしまい、自分を残して帰って行く遊び友達を見送るときのようだった。
何とも抑揚のない瞳をしている。
もし傍を誰かしら大人が通ったならば、その様子をいぶかしんで声をかけたに違いないだろう。だが、この夕暮れ時、誰もが忙しそうにする時刻。学校という辺境の取り残された少年に気が付く大人は誰一人いなかった。だからこそ、少年はこうしてずっと逃げる太陽を見張ることが出来たのかもしれない。
少年はふと思い立ったように膝から下の足をゆらゆらと動かした。
彼は想像していた。自分の影が、自分の後方でまるで息吹を注ぎ込まれた存在であるかのように踊り遊ぶ光景を。そひて、少しだけ微笑う。
少年しか知らない、秘密の出来事。
誰も知らないという事象だけでも、小学生にとっては途方もない魅力を含むことがしばしばある。少年はゆっくりと体全体を使って、自分の分身を解き放とうとする。
がバランスを崩し、少年はジャングルジムから危うく身を投げ出しそうになり、慌てて両手をジャングルジムの棒部分に巻き付ける。ふぅ、と小さな息が聞こえた。寸での処でピンチを脱したことに安堵の息を吐く少年。その額にはうっすらだが、汗の玉が浮かんでいた。
「帰ろ」
誰に言うとはなしに、少年はそう口にした。
もしかすると、帰路につくために、何かキッカケが欲しかったのかもしれない。
ゆっくりとジャングルジムに立ち上がると、少年は狙いを定めて飛び降りた。
少年は落下の瞬間下半身に走る痛みは好きじゃなかったが、飛び降りる瞬間の一秒にも満たない時間がとても好きだった。
なぜならば。身体で風を切る瞬間。その瞬間だけ、彼はアクション映画のヒーローになれたからだ。爆発に巻き込まれ、ビルの屋上から決死のダイブ。目指すは隣のビルのアドバルーン。それは少年が一年前に見た映画「イテ。でもちょっとイタ気持ちいいかも!」のラストシーンだった。
「オレの左腕のサイコガンが死なせてくれないのさ」
着地と同時にジャングルジムを振り返る少年。
双眸にはいつもと違った輝きが浮かんでいた。そのままのポーズで余韻に浸る少年の影が、
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