くそばばあっ その3


第一外科は癌が圧倒的に多いから、そりゃ、亡くなる人もいる。個室や2人部屋に亡くなる人が多い。そりゃ、だれでも知っている。しかし、看護士もプロだから、決して患者に気付かれないように亡くなった人の処置を済ませて霊安室にいくようだ。だから、「あっ、親戚が黒い服で集まっている。危篤だな」と感じてはいるものの、直接なくなったかどうかは知るすべもない。いや、知らない方がいいのだ。

ある日、前日に2人ほど亡くなったようだ。朝、オバサンが病室の掃除にきたときに、「いやー、昨日は2人も死んだから、後かたづけが忙しかったわー。一人は元気だったのに急に死んだものねぇ。同じ癌だから、死人が出るとあなたも嫌な気持ちでしょう?」と聞いてきた。
私は亡くなった人がいたことすら知らなかったが、オバサンの口調にむっときたので、「私達は癌なんだから死ぬ覚悟で入院してきてるんだよ。他の人が亡くなったからっていちいち動揺したりしない」と担架をきってやった。

本当は死人が出ると動揺してしまう。次は自分かなーとか。
でも、おばさんの言い方がすごく悔しかった。
で、私はつい、婦長さんにいいつけてしまった。

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