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November 23, 2024
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カテゴリ: 教授の雑感
半分仕事、半分趣味で常盤新平さんの著作を次々読破しているのですが、今週は『おとなの流儀』と『小さなアメリカ』という本を読了しました。ので、心覚えをつけておきます。

 まずは『おとなの流儀』。

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 この本は、先週読んだ『威張ってはいかんよ』の前編で、常盤さんの日常をもとにしたエッセイ集でございます。ただ、漠然と日常のよしなしごとを切り取ったものではなく、タイトルが『おとなの流儀』であることからも窺えるように、「『おとな』たるもの、このぐらいのエチケットというか、気構えで日々過ごして欲しい」という、常盤さんなりのダンディズムを披露した本ですな。

 たとえば大人の服装について語ったエッセイでは、「服を買う時は、その前に自分の裸体をつくづくと眺めてみろ」とか、「集金能力のある服を着ろ」とかね。あるいは「結婚式などでスピーチを頼まれたら、30秒以内にまとめろ」とか。公共の乗り物に乗る時は、足を広げて二人分の座席を占有するような馬鹿な真似はせず、身体を小さくして座れとか。大人のホテルの活用の仕方とか。香典はいくらくらい包むべきか、とか。

 また常盤さんがお好きな作家、たとえば山口瞳とか、藤沢周平の作品世界を讃えた後、そこから常盤さんが学んだことを披歴したりもする。藤沢周平の作品の登場人物が「市塵に生きる」ということを実践し、ある意味藤沢周平自身もそうなんだけど、自分も市塵に生きるという心構えで生きていきたいなあ、なんてことが書いてあったりもする。「市塵」というのは、要するに目立たない隅っこ、という意味ね。人の中にあって、しかし、その表舞台ではなく隅っこの方でつつましく生きる、そういうのが望ましいと。




 ところで、『大人の流儀』みたいな感じのエッセイって、昔からあるような気がするけれど、どの辺から発生したもんなんでしょうね。

 常盤さんは、山口瞳の弟子という自覚があるから、山口瞳の『男性自身』シリーズを手本にしているのかもしれないし、あるいは常盤さんは池波正太郎も好きで、池波さんもこの種のエッセイを書いているから、源流はその辺かもしれない。

 でまた、この系譜をたどると、開高健とか、伊集院静とか、その辺の名前も浮かんでくる。

 しかし、山口瞳、開高健、伊集院静と並べると、ひとりでに「サントリー」という言葉も浮かんでくるよね! 

 あ、わかった。常盤新平は「サントリー系エッセイスト」だったんだ。常盤さん自身がサントリーの広告と関わったかどうかは知らないけど。でも、とにかく常盤さんは、サントリー系エッセイストと同じ匂いがすると言ったら、結構当たっているんじゃないでしょうか。要するに、「男の美学」を前提にして軟弱な世相を切る、いかにも男臭いエッセイを書く人、というね。

 そういう意味で、常盤さんのエッセイは、男性には受けると思う。だけど、どうかな。女性には受けないのかもね。


 さて、一方の『小さなアメリカ』にも寸評を入れておきましょう。


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 ニューヨークの有名な葬儀社の話とか、ニューヨークでホームレスがどんな暮らしをしているかとか、一流モデルの生活ぶりとか、「死亡記事」専門の記者というのがアメリカにいた、とか、ニューヨークで旨いビールが飲みたかったらどの店に行けとか、まだ不動産王に過ぎなかったトランプ氏の動向とか、アメリカの有名な評論家であるメンケンの長大な日記が出版されることになった、とか、最近ニューヨークのモデルの間では、足首に小さな入れ墨を入れるのが流行っているらしい、とか。

 要するに、アメリカの雑誌のゴシップ面に載っているような話題を取り上げて紹介するような感じのもの。悪く言えば「受け売りエッセイ」ですな。

 だから、そういうことに興味がある向きには面白いけれども、興味がなかったら全然響かない。

 常盤さんは、この種の「受け売りアメリカエッセイ」をたーくさん出しておられるのですけれども、こういうのって、同時代性が重要なので、時間が経ってしまうと、どうなのかなと。この本は1991年の出版だけど、30年以上前のニューヨークの街を言葉でスケッチしてあるとはいえ、そのスケッチもすでにセピア色になっているわけだからなあ・・・。

 でも逆に言うと、この本が出版された1990年代初頭には、まだアメリカの街のゴシップに興味がある日本人がそれなりに居た、ということでもありましょう。隔世の感がありますな。



 というわけで、評価のことはさておき、「サントリー系エッセイスト」と「アメリカ受け売りエッセイスト」という二つの側面を見た、今週の常盤新平読書だったのでした。





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Last updated  November 23, 2024 12:17:01 PM
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