ザ・リッツカールトンの桧垣さんの講演など


5月17日(金)にマルコムボルドリッジ・ナショナル・クオリティ・アワード
(MB米国国家品質賞)を2度も受けた、顧客満足で群を抜くザ・リッツ・カールトン大阪のクオリティ担当部長の桧垣さんのお話を三重県品質協議会の例会で聞くことができましたので、印象に残ったことを紹介します。

・リッツ・カールトンはお客様にとって「第二の我が家」を目指しているので、ロビーに暖炉を置いている。
・お客様の要望に対して「規則(内規)や前例がないのでできない」と言うことがあるが、「マーケットにおける最高の商品と利益」という、ミッションを上回る決まりなどないはずである。
・お客様へサービスを提供する上で「人」が一番大切だと考えている。個人の成功が会社の成功であると考える。
・「エンパワーメント」は日本語で「権限委譲」と訳されるが違う。権限委譲では判断は上司がするのに対して、エンパワーメントは判断の権限も与える。そこには信頼がある。
・クレームに対して、対応者がその場を離れ、担当者や上司を呼びに行くケースがあるが、その間にお客様の不満が増大する。これは自分で判断させないから起こる仕組みの問題である。
・クレームにはその場で対応し、結果を記憶して、それをすべての部署に回し、情報を共有する。お客様にいやな気分は思い出させないようにするが、従業員が知っていれば気をつけられる。問題解決レポートとして次回に活かせる。
・エンパワーメントの上限額は、二千$(約20万円)になっている。お客様に柔軟な対応をするのにそれだけあれば可能と考えている。
・問題は、お金よりも社内のルールづくり。どうすれば自分のとった行動が周りから支援されるのか。従業員が精神的に楽なように判断基準が共有化されている。
・無理な注文は、お客様の期待度が高い証拠。特別な注文であるほど従業員は張り切り、従業員満足の測定方法になる。

 これまで、リッツカールトンについては、ビデオを見たり、本を読んだり、講演録で調べたりして、ある程度知った気になっていましたが、生のホスピタリティあふれる桧垣さんのお話をお聞きして、顧客ロイヤルティについての認識を新たにしました。
 それにしても「クオリティ」の原意は、基準を満たすことで、実は顧客満足のことなのでこれをを「品質」と訳すのはおかしいですね。


[ザ・リッツ・カールトン大阪のビデオを見て]
 平成13年1月23日に三重県庁の議会図書室で、「ザ・リッツ・カールトンのビデオを見て、経営品質を考える」会がありました。
 副知事の吉田さんをはじめとした、出席の皆さんと議論した後、庁内のみなさんに送った「真実の瞬間」の情報を送付させていただきます。
○ザ・リッツ・カールトン大阪は開設にあたり、世界中のチェーン店から集められたトレーナーたちによって各部門の長がトレーニングを受けたそうである。
○その際の中心課題は従業員とお客との「真実の瞬間」(moment of truth)であったという。この「真実の瞬間」とは、欧州では日常的な言葉として使われていて、たとえば闘牛士が牛をしとめる「トドメの一撃」のことを言う。
○これをマーケティング用語としたのが、スウェーデンの経営コンサルタントのリチャード・ノーマンで、企業が顧客と接する瞬間を表した。その後、スカンジナビア航空の社長兼CEOヤン・カールソンは、「企業は顧客と接するとき(真実に瞬間)から、すべてを学ぶべきである」と提唱し、彼の経営哲学に結晶させた。
○だから、リッツ・カールトンでは、この意味を理解した後は、お客の予期せぬリクエストに対して機敏、かつ適切に創造的対応ができるかどうかが、話し合われたという。(「『真実の15秒』で個客をつかむ」浦郷 義郎著 光文社より)

◎顧客(個客)が従業員と接して(面談、電話等)、何かを感じ、判断するまでの時間は15秒といわれています。この真実の瞬間で悪いイメージを抱かれたら、その 信頼を回復するのは、3年かかるといいます。
 ですから、ヤン・カールソンは、自社の飛行機に乗ってトレイを出したとき、汚れているのを見て、「トレイにさえこの程度の注意しか払わない航空会社が機体の整備にどれだけの注意を払うだろうと、おそらく乗客は考えるのではないか」と判断して「真実の瞬間」の重要性を悟ったそうです。
 三重県でも市町村と違い、県民と直接接する窓口は少ないですが、県税、保健所、福祉事務所、パスポートの窓口などで県民と直接接する部所があります。その真実の瞬間(日本語では「一期一会」の方がなじみやすいかもしれません)を大事にすることから「エクセレント・ガバメント」への道が始まるのではないかと思います。  


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