北川正恭教授の四日市大での講演


2 場 所:四日市大学
3 講演者:北川正恭氏(四日市大学客員教授 前三重県知事)
4 テーマ:「激動の時代を生き抜く力を持つために」
5 内 容
 ・知事退任のとき、四日市大学から「地域のことを一緒に考えていきたい」とい うお誘いを受けた。
 ・国が決定し、県が中継し、市町村が実行するという固定した役割が果たして良 いのか。国が地域の事情も考慮せず、一方的に決めることが良いのか。行政がす べてを仕切る時代は終わった。政治と行政だけではなく、学識者、地域住民、NPO も交えて考える時代である。
 ・四日市のコンビナートも発展しているわけではなく、海外や国内との競争に負 けている。雇用の確保、税収の確保には何が良いのかということで特区構想が出 てきた。
 ・先日、鴻池特区担当大臣に「北川さんでも学者になれたので自信を持った」と 言われたが、「学者になるには学力が要る。腕力だけではだめだ」と言っておい たが、特区の評価委員への就任を要請された。
 ・四日市大学でローカル・マニフェストをつくっていただいた。他人のことを言 うのではなく、自分が9回選挙をやっているから言えるが、選挙の時の甘い公約は うそである。
 ・厳しいことも言い、期限を付けて選挙前に国民に言う必要がある。民の意思で やれば官僚は動く。今は、政治が機能していないから官僚が余計なところまで出 てきている。
 ・マニフェストは英国首相のトニー・ブレアのが有名だが、首長にあちこち電話 をしてマニフェストを取り入れて欲しいとお願いした。それを学問的に支えたの が四日市大学である。
 ・今までは、政治、行政、経済界だけの参加であったが、学者やNPOも参加すれば
 良い。
 ・役所は日々の暮らしー秩序維持が最大の仕事であるが、その日々の暮らしの前 提が変わってしまった。世の中を変えなければならない。現状は、役人が悪いと いうより制度が悪い。厳しいことを選挙公約で言うことで政策論争が起きる。
 ・これまでの官主導から民主導へ時代は動いている。これまでは知事を辞めたら 国会議員になるのが常識だった。しかし、巨人の4番の松井が大リーグへ行く。イ チローは茶髪、サングラスで以前ならヒンシュクを買うかもしれないが、主体的 に生きていることがかっこいいということになる。
 ・NPO(ニッポン・プータロー・オジサン)を名乗っている。NPOの力がこ の国にあった方が成熟社会と言える。
 ・30年の議員経験を生かして、地方分権の仕事をしようということで、「新しい 日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)を再出発させた。
 ・国会議員に「マニフェストは良いけど、公選法で配れないではないか」と言わ れたが、立法府だから法律を変えればいい。車で言えば仕様書のようなマニフェ ストが中心にならなければならない。
 ・三位一体改革では、国、県、市町村は対等と言いながら、みんな国に陳情に行 くが、国に逆に来させればいい。
 ・金が足らなければ他人の金だから「取ってこい」と言うが、本当は国の金は自 分たちが納めた税金である。これが積もり、積もって700兆円の借金になった。上 下主従の関係から独立して、対等・協力になった方がいい。(教授になってから 初めての講義だと言いながら板書を始める)
 ・四日市大学から始まったマニフェストは「北京の蝶々」と言える。これまでは ケインズの理論により、ものごとには原因があるとされたが、北京の蝶々では複 雑系により、訳がわからないうちに大ブームになる。
 ・たとえばサッカーは川淵チェアマンにより、企業代表ではなく、地域代表とい う形を取ったことでJリーグがにぎわった。前監督のトルシエは実力主義で本選 ベスト16になったし、日韓共同開催では外交が弱いと批判されたが、日韓が互い の国を応援するようになった。
 ・何でも国を頼ったところは、おそらく滅びる。自己決定しなければならない。
 ・物を買うときは普通、後銭だが、税金という先銭を納めた人が何で官庁に陳情 に行く必要があるのか。「来い」と言えばいい。知事を辞めると楽になって言い たいことを言っているようだが、ものの考え方のことを言っている。
 ・国民が決めたことを官僚がやるとものすごく強いが、現状は政治が頼りない。 これまではお任せ民主主義を良しとしていた。一つの町や国のレベルは首長では なく、町民や国民が決める。これが言いたいために、国会議員にならなかった。
 ・みんな相手のせいにするが、みんなが正しければ日本は良くなるはずだ。内在 的な力を蓄える必要がある。
 ・役人は年功序列でロイヤルティ(忠誠心)を誓うが何に対して誓うかが問題。 組織に対する忠誠心はあるが、県民に対する忠誠心はない。県庁職員も出入り自 由にすればどうか。税を取る方と取られる方の立場を代えて経験すれば相手の立 場がわかる。
 ・知事を辞めてわかったのは、北川個人では通用しないということである。前知 事ということであれば通用するのでそこにはバリアがある。
 ・自立し、自己決定し、自己責任を取ることで「会社人間」から「社会人間」に なる。企業が儲かっていないのは、貢献よりも給与が多いからだろう。
 ・誉のない国家ではいけない。甲子園の球児は、夢を実現するために一生懸命に やるが、大企業や公務員はやらされ感を持っている。志をもって自立することで ある。
 ・産官学で連携してマニフェストをやったから、四日市大学は有名になった。思 い込みをなくすことが大事。組織にもたれるのではなく、組織に貢献する。国に 対しても悪いことは言うが、自分たちの甘えは捨てる。
 ・三重県の吉田副知事はまじめで堅い人だが、私が教授になると言ったら「プロ レスラーになるのか」と言った。「プロレスラー」ではなく「プロフェッサー」 である。
 ・アカデミックなことはできないが、経験は活かせると思う。                                           以上


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