小西砂千夫関西学院大学教授の講演


2 場所:津市 アスト津 アストホール
3 講師:関西学院大学大学院経済学研究科・
     産業研究所 小西 砂千夫教授
4 タイトル:「自治の確立はキレイごとではない」
  ~分権時代の広域滞納整理機構の意義~
5 内容:次のとおり

・自治の確立はきれいごとではない。税はきちんととらなくては
いけないことは、わかっているが簡単ではない。
・社会的正義は知っているという前提の下で、現場の方として
は、どのあたりで腹をくくるか。
・野呂知事が「県にとって最大のパートナーは市町村」と言った
が、パートナーの組み方が問題である。今回の広域滞納整理
機構のことは、自治の全国ブランドであり、トップランナーである
三重県にふさわしい話である。
・しかし、イベントや権限移譲を求める話と違い、きれいごとでは
すまない。
・北川県政の三重県の外からの評価と内からの評価の格差があ
る。野呂県政の評価はこれからである。
・県と市町村がトータルで県民にサービスすることがベストである
が、そこへいくまでに北川さんの任期が切れた。
・今回の取り組みは北川さんの時代から考えられていたことであ
り、三重県政を象徴するものであるが、もう一歩先へ行くには、
県と市町村が補完関係を結ぶ必要がある。
・「窓際の税務官」という漫画が事務局の方により置いていただい
てあるが非常に面白い。
・「税は自治の基本」と言われるが、例えば予算や企画に比べると
そうなっていない面がある。
・私は、月2回自治体関係者と勉強会をしている。山路さんはいま
すか?ここで自治の勉強会をしていると聞いています。
・税をとりにいくと担当者は役所の無駄遣いや不祥事で文句を言
われる。滞納整理をしている職員が住民から一番、厳しい声を受
ける。
・その職員が文句に対して「ちゃんとやっています」と言えるパフォ
ーマンスをしておかないと税は徴収できない、ということを役所の
中の全部が知っているわけではない。
・税の現場から上がってくる声を反映し、それを基本にしていかな
ければならない。
・市町村は身近であり、規模が小さいと知り合いも多いので、そこ
から税をとるのは難しい。
・市町村の性格は県と違い、官僚機構という面だけではない。税と
いう権力行政の面だけではなく、住民の自治組織という面がある。
・理屈上は両者は両立できるが、現実は難しい。
・今回の機構はワンクッション置くという仕組みである。原則はわか
ったが、機構の制度設計は難しい。
・今日の話はきれいごとではないから、歯切れが悪くなる。山路さん
にメルマガで「いつになく元気がない」と書かれそうだが、言論の自由
があるから書いていただいても良い。

(今までが総論でここからレジュメに沿って各論に入る)
<三位一体の改革の動向>
・6月は国の予算編成のキックオフの時期である。片山知事が分権
会議に厳しいことを言って一挙にマスコミで話題になった。
・片山大臣のプランに官僚は冷ややかで、分権会議の方針が示され
骨太の方針に至っているが、それは片山プランに似ている。
・玉虫色の決着は日本的政策合意であるが、三重県はこれを捨てた
ことがすごい。
・地方交付税の仕組みは向こう3年間はいじらないと読める。基本的
には交付税の仕組みは残すということである。
・交付税の財源保障機能を維持するのか。すなわち、財政力が弱い
自治体でも国が定めた基準を維持できるようにするのか。
・「歳入を増やすのではなく、歳入の質を高める」と前の分権委員会で
は言っているが、これは自治の現場の意識とずれている。
・財務省の審議会は、「税の財源保障機能をやめなさい」と言っている。
・交付税が後退するが、どこまでの後退にするか。一方、地方税の徴収
率は上げておく必要がある。
・小泉内閣の優先順位の一位が郵政民営化というのはつらい。こう見
てくると三位一体の改革は強烈である。
・私もこちらで気楽に話しているように思われるかもしれないが、大学も
改革を迫られており、立場が逆転することもある。あの1601年という
関ヶ原の年にできたケンブリッジ大学が顧客主義を打ち出す時代である。

<北川県政における県と市町村の関係>
・三重県庁が自治のブランドになった。三重県は、学者の言うことに乗ら
ない。自己改革している。三重県の改革で一番評価できることは、議会
との関係である。三重県議会のHPには「改革する議会」とある。
 http://www.pref.mie.jp/GIKAIS/kengi/gikai.htm
・ここは他の先進自治体と言われるところと大いに違うところで、他で、
議会と改革を競っているところはない。
・議会との相互作用が大事だが、「行政評価をやると議会はいらない」と
いう錯覚に陥りやすい。
・議会と執行部が、行政評価を前にディスカッションする。行政評価はその
ための道具である。
・最近は「行政改革」と言わずに「行政システム改革」と言うのが主流にな
っている。自治の現場は流行に弱い。
・「住民の目線で」ということをどこの自治体でも言うが、議会に飛び火しな
い改革は内部改革に留まる。
・住民からは、県の仕事は市町村の仕事かの区別がつかない。市町村と
県がトータル・パートナー・シップを組むのは難しい。市町村にすれば、県は
きれいごとだという意識があるのではないか。県は過渡的な存在で、なくても
良いとか。
・市町村は、自前でノウハウを持てない。特に小規模市町村は、バランスが
悪い。ノウハウを持った税務専門の職員をずっと置いておけないので、機構
の存在意義がある。

<滞納整理における「権力」と「顧客主義」>
・現状では、機構はあった方がいいが、いつかなくなるものである。
・滞納整理は、何のために、誰のためにやるのか?
・黙々と納税義務を果たしている人に「ばからしい」と思わせないためである。
簡単に言えば、税の公平感を確保するということ。
・自治体は課税権を持って、それにふさわしい自治をする団体であるべきであ
る。

<分権時代における広域滞納整理機構の取組>
・機構に入らずに、自前でやる市町村があってもいい。一部事務組合では県は
正式の構成団体ではない。
・この取組で県はどうあるべきかの答えを出そうとしている。
・分権時代は、自前でフルセットでやるため合併するか、一部事務組合でやるか
である。

<きれいごとではない「自治の確立」>
・この機構の前例としては、茨城の一件だけである。しかも中身が薄いので参考
になりにくい。
・この機構は、制度設計が難しい。一部事務組合職員として、モチベーションの
持ち方が難しい。この組織のマネジメントは難しい。ミッションを確認して実績を
積み重ねる必要がある。
・構成市町村が送り出す職員をどう見るかということもある。

6 質疑応答
 Q) ニセコの逢坂町長が言っているように「税には報償性がない」ので徴収率
  が上がらないという面がある。これに対するお考えはどうか?
 A) 個人ではなく、共同体意識の議論をしなければならない。逢坂町長の話が
  出たが、彼の改革に一つの予算書の改革がある(「もっと知りたい今年の仕
  事」予算説明資料)http://www.town.niseko.hokkaido.jp/
   予算書と決算書の改革をやって何に使われているのか、わからないという
  状態をなくすことが大事である。
   役所が見せたい目玉だけ見せても住民はだまされない。



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