千葉夷隅GC元総支配人加藤さんの講演


○場 所:三重地方自治文化センター
○講 師:千葉県ゴルフ団体総合事務所 
      専務理事 加藤 重正氏
○テーマ:「千葉夷隅ゴルフクラブにおけるお客様第一への旅」    
○内 容:以下のとおり(文責 山路)

・経営品質に業種は関係ない。考えることは同じである。現代は何
でもデジタル化というが、まず、みんなでアナログでなぜかを考えて
からでないと、作業だけになる。戦略的にどの部分をデジタル化す
るか考えないといけない。
・千葉夷隅ゴルフクラブの入場者は年間、7万人前後となっている。
・企業環境の変化により、サービスを提供する側の論理は通用しな
くなっている。
・顧客志向と顧客満足は違う。顧客志向は売るまでが勝負であるが、
顧客は買った後を問題とする。顧客満足ではアフターサービス、販
売後を問題にする。
・歴史的に見ると、フォードが生産革命を起こし、それから販売革命
になり、顧客志向になってきた。
・組織を人と人の関係で見直していく必要がある。ゴルフ場では「人」
が商品。ゴルフ場のコースはつくるときだけであり、後は商品といえる
ものは芝と料理ぐらいしかない。
・チャスター・バーナードの理論によれば、共通の目的を社員が共感
する必要があるが、その前提として何を大切にするのかという方針
なりビジョンをトップが出す必要がある。
・例えば、顧客満足で有名なTDSのホテルで社員パーティーをしたと
き、社員の子供の風船が飛んでいったが、すぐにスタッフが同じもの
を持ってきた。
・これなどはマニュアルはあるが、そのときどうするかがいかに大切
かを示している。TDSは「ファミリー・エンターテインメント」-家に帰っ
たとき、楽しかったと思ってもらうことを共通のビジョンにしている。
・決め事で縛ってしまうと対応できない。結果に結びつくまでの流れ
が大事である。
・お客様の満足の「事前期待」と「実績評価」の関係ではお客様の期
待以上のことをやることである。
・サービス向上の取組みであるQCや経営品質はあまりドラスティック
にやらない方がいい。薬は苦いものをオブラートで包んであっても体
の中に入って効けばいい。
・経営品質には岡本先生の指導を受け、日本IBMにいた大久保さんと
いっしょに学んで取り組んだ。
・組織ではお客様を最上位にし、幹部を最下位にする逆さまのピラミッ
ドとしている。
・クロスファンクショナルな業務では、男性社員は全てキャディ業務を
修得し、フロント・レストランとコース売店のローテーションをして誰の
ために働いているのかを認識するようにしている。
・ゴルファーのためであるのに、料理や芝のために仕事をしがちにな
ってしまう。
・ダイレクト・コミュニケーションでは風通しのよい組織になるようにし
ている。「やまびこシステム」という社員相談窓口をつくり、中間ポスト
を飛ばして意見を言えるようにしている。フェデラル・エクスプレスを
ベンチ・マーキングして取り入れた。
・アンケート調査のほかに「情報カードシステム」をやっており、お客様
の声を青紙(ほめられたこと)、白紙(提案)、赤紙(クレーム)に分けて
部門担当者がお客様の声を拾い、トップに上げるようにしている。
・このカードは年間、7,600~8,000枚出る。アンケートでは出ないお客様
の本音が出るので貴重である。同じようなことを他のゴルフ場でもやっ
たが、続いているのは福井の芦原カントリーだけである。それほどこの
カードを従業員に書かせるのは難しい。そういう風土がないとできない。
・グッドマンの理論ではクレームにきちんと対応すると信頼が高まる。
・お客様は1/200ではなく、一人ひとりが主役と思ってみえるからそうい
った対応が要る。
・二日酔いと言われた人に胃薬を出したら喜ばれた。その体験を共有
すると組織知になる。
・顧客視点に立つことは一つひとつは小さなことであるが、それを重ね
ていくことが差別化になる。改善を創発していくということ。
・目標とかけ離れているときはたゆまなく改善すること。社内上層部を
満足させることとお客様満足とは違う。
・ベテランから新人まで情報共有するため、キャディ(リレーションカード
&お好み帳)をつくったが、このデジタル化に二千万かかった。
・満足は足し算ではなく、掛け算であるため、どれかひとつでもゼロがあ
るとすべてゼロになる。
・「サービスの天才たち」野地秩壽著 新潮新書でも当ゴルフ場のことが
紹介されている。

<質疑応答>
Q) 卓越したサービスなので新規の客が期待し、さらなるサービスを求め
 る一方、従業員に慢心が起きたりして顧客が求めるクオリティとのギャッ
 プが生じることはないか。
A)  慢心はないが、油断はあるかもしれないので内部チェックをしている。
  初心忘れるべからずだが、うまくいっているとつい忘れる。キャディの
  個人評価が出てくるが、基準を下回っていると面接がある。そこは文句
  を言う場でははなく、組織の問題としてとらえる場としている。
   後天的についた技術はいざという時に出ないと言うが、アドリブがで
  きるかどうかでる。お客様は結果ばかりではなく、努力もよく見てくれて
  いる。
   人間は、生まれながらにしてエクセレンスを持っていない。訓練によっ
  て出てくるものだ。
   10の力がありながら8しかやらない人と、5の力しかないが5やる人が
  いたら後者を取る。お客様は2の手抜きを見ているし、5の人は6や7にな
  る可能性がある。
Q) アンケートを取った結果を改善してしないと指摘されたが、改善にはお
 金がかかりすぐにできない。
A) 応えられることと応えないことを区別する。その方と会って話しするのが
 一番。その結果、サービスより施設の充実を選ぶかはお客さまの選択。
  改善の結果を伝えないのなら初めから要望を聞かない方がいい。
Q) 社員満足度をどう把握されているか。
A) ウォルト・ディズニーは社員を「ピープル」と呼んだということに象徴され
 ている。
<感想>
・紹介のあったTDSの風船の話では、リッツカールトンの対応(総務の人で
も外人客に病院の手配をするなど)を思い出しました。
 こういった対応ができる組織というのはエンパワーメントされているところ
だと思います。マニュアルでは臨機応変に対応できません。マインドなり
センスがスキルよりも大事なのだと思いました。 
                                       以上


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