【プリンスウィリアム郡】戦略計画に基づき、パフォーマンス指標の目標値を定め、目標値と現状値の比較による予算配分の重点化を行う評価システムを構築している。その調査の項目は、 ・フォーカス・グループ(Focus Group住民の代表からなる小グループ)の形成、住民の調査、住民集会、住民と職員によるテーマ別タスクフォース(Task Force 改革グループ)、公聴会などの実施、運営手法 ・パフォーマンス指標を使った評価手法と、その詳細なレポートをフィードバックし、計画改定やサービス改善に活用する手法
これらの自治体以外にも、NAPA(National Academy of Public Administration全米行政アカデミー)、UI(The Urban Instituteアーバン・インスティテュート)、GAO(General Accounting Office会計検査院)も調査対象とした。
2 調査結果の概要 調査結果の概略は次のようになる。 【フロリダ州】ベンチマークスを使った評価は州知事の交替によりお蔵入りしており、予想外の状況だった。これはベンチマークスが「政治家の公約」という特徴を持つことからくる限界かもしれない。ただ、ベンチマークスの情報はデータベース化されており、その積極的な情報活用には大いに驚かされた。ヒアリング結果のポイントは、 ・94年、州議会が「政府アカウンタビリティ法」を採択し、各省庁のパフォーマンス測定、効率性と有効性の改善を求めた。スタート当初は、予算とプログラムが連動し、さらに予算と業績が結びつくようになっている。 ・OPPAGA(Office of Program Policy Analysis and Government Accountability政策・施策、分析・説明責任室)が、上院のプログラム策定や司法での指標審議を支援したり、業績測定の相談に乗り、指標開発や業績データに関するバックアップを行っていた。 ・ゴール(政策の達成水準、到達すべき目標値)を明確化するということは、省庁の仕事である。その顧客を明らかにし、なぜその業務を行うのか、もしくは、その仕事をしなかったら何が起きるかということを示すとものになっていた。ここでいうプログラムとは、州のゴールに寄与する一連の集積であり、それは単一の機能ではなく、予算、組織構造、顧客を考慮してなされていた。 ・指標(過去、現在、未来の状態を表す尺度となるもの)の開発については、ステークホルダー(Stakeholder内外の利害関係者、例えば、議会スタッフ、予算管理スタッフなど)を巻き込んで、コメントを得たり、顧客グループや外部の委託者のフォーカスグループを組織したり、コンサルタントを加える努力をしていた。 ・フロリダベンチマークスを策定した州政府のGAP委員会(The Florida Commission on Government Accountability to the People政府の州民への説明委員会)は98年、廃止されていた。 ・ベンチマークス運用の焦点は、市民の信頼、税金が賢く使われているということを示すアカウンタビリティの確保にあった。そこでは7つの関心領域(家族・地域・社会、安全、学習、健康、経済、環境、政府)が設定され、260の指標をつくっていた。それは「行政活動の通信簿」であり、市民理解を助けるものと位置づけられ、グラフを使ったわかりやすい説明に努力していた。 ・ゴールは①数値目標で示す②州全体に関わる対象を選ぶ③挑戦的で野心的なものにする④将来の修正余地をもたせることなどが、基準となっていた。 ・指標には階層があり、そのトップにベンチマークスが位置づけられていた。
私たちに、ベンチマークスのフロリダという思いこみがあった。しかし、行政府の一機関として存続しているとされていた独立機関のGAP委員会は、新しい州知事(=ブッシュ現大統領の弟)と議会の理解が得られず、98年5月をもって解散していた。ベンチマークスはその時点で、かつての地位を失い、お蔵入りと同じ扱いを受けていた。 これはベンチマークスとプログラムレベルの評価をつなげるときに議会から「予算編成に使う段階ではあてにならない」というような反対意見が出たことによるものらしい。 このことは州政府としてアカウンタビリティを保持することと、予算的措置を講じることを両立させることの難しさを物語るものともいえそうだ。 産みの親のひとり、カレン・スタンフォード博士の話にも、「住民との協働の産物」であるベンチマークスを大きく育てられなかった無念さがにじんでいた。 しかしながら、学ぶべき点のひとつに、議会の中に設けられた評価機関、OPPAGAの存在があった。このスタッフが各省庁の業績測定や施策・事業評価に関わっていた。また、DCF(Department of Childlen&Familiesこども家庭省)には、試作段階ではあったが、評価情報のデータベースづくりをすすめていた。 大統領選挙をめぐる混乱のまっただ中にあったが、州都タラハシーでは、ベンチマークスから業績測定へと、評価手法の舵を大きく切り替える現場を見ることができた。事前の情報と違った結果になったが、そうであるからこそ、Seeing is believing(百聞は一見に如かず)ということで、実際の調査の意味があるのだろう。
【その他の機関】 ①NAPA(全米行政アカデミー) 自ら作成に加わったGPRA(Government Performance and Result Act)連邦政府業績結果法)の運用実態に、極めて懐疑的、批判的な分析があった。自分の選挙区関連の予算額にしか関心を示さない議員、リーダーシップを発揮しない大統領(前クリントン大統領)への批判であり、システムが政治的影響を強く受けること、運用にはトップの支援が不可欠なことを改めて感じさせられた。 質疑により、シェアード・アカウンタビリティ(Shared Accountability共有責任)や中間アウトカム(Intermediate Outcome)の考え方は正当な思考であるとの指摘を確認できたことは収穫だった。